投稿日:2020年08月04日

生活者発・生活者着を徹底したコミュニケーションをグローバルで展開したい|株式会社マンダム様

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生活者との絆をどう深めるか?グローバルブランドマネジメントの中での難しさ

(鮫島)  海外マーケティング部を立ち上げて、今年で2年目です(※取材当時)。私達の部署は、GATSBYブランドのグローバルブランディング、マンダムグループのマーケティング担当者の人財育成を行うところです。設立当時は、上司と2名体制でしたが、現地への訪問や日々のコミュニケーションを通じて情報収集を行い、様々なチャレンジをしてきました。

普段から話していたトピックは、商品自体ではなくブランドの戦略を遂行する上で、どのように各国担当者をサポートするか?各国で共通して使えるコンテンツはどのようなものか?各国ごとにどうすればエンゲージメントを高められるか?など。その中でも、「生活者との絆をどう深めるか?」という課題に取り組むにあたり、コンテンツマーケティングという考え方に行きつきました。


海外マーケティング部 鮫島さん

頭を悩ませていたのは、各国の担当者の入れ替わりが激しいことですね。日本と各国との文化の違いもあると思うのですが…。
ギャツビー国際マーケティング会議という、各国のマーケティング担当者が一堂に会してディスカッションをする場があるのですが、こちらで育成プログラムを行ってもやめられる方もいて、各拠点におけるコミュニケーション戦略立案・実行のスキルの変動が大きいんですよね。

Mandom Principlesを実行するために

(鮫島)  Mandom Principlesというものがあります。これは創業から現在に至る90年以上の歴史の中で、マンダム社員として取るべき原理原則です。その中でも「生活者発・生活者着」という考え方をとても大切にしています。
GATSBYに関しては、常にヤング男性と向き合い、彼らの満足を最終目的のためにお役立ちの方法を考える。これが徹底できていないと、生活者とのエンゲージメントを高めることはできない。Mandom Principlesと照らし合わせると、今の私たちのコンテンツのあり方はどうだろうか?上司となんども議論しました。グローバルを統括していくうえで、コンテンツの在り方を各国の担当者が理解して考え直さないと、結局作るものはメーカー視点のものになってしまうという思いがありました。
ここで、よりうまく活用すべきだと思ったのが「ギャツビー国際マーケティング会議」。今足りないモノを補うためにどのようなトレーニングをするべきか?の計画を練っていました。SNSの運用の仕方が候補に上がっていましたが、先程話したような根本のことを考え直した方がいいよね、ということに決まりました。


検索でヒットしたのが、コンテンツマーケティングラボのサイト。River Pools and Spa社のコンテンツマーケティングの事例紹介記事を見たのですが、こんな「プル型」のコンテンツっていいよね、と上司と盛り上がりました。このようなコンテンツを紹介している日本の会社はあんまりなかったんですよね。そこで問い合わせをしてみました。

コンテンツマーケティングのセミナー実施の計画を練る

(鮫島)  ギャツビー国際マーケティング会議の中でコンテンツマーケティングについて確保できる時間は2時間半。
その限られた時間の中で、コンテンツマーケティングの概念をしっかり伝えた上で、考え方を変える、というのは結構難しいな思いました。なので、まずは生活者…コンテンツマーケティングの基本概念であるペルソナの理解・コンテンツマーケティングのマインドセット・考え方をしっかり共有し啓発する、ということを初回のセミナーの目的としました。


第一回コンテンツマーケティングセミナーの様子

  • 【課題】

    生活者起点のコミュニケーションとはどういうことかの本質を、グローバル各国の担当者が理解しきれておらず、メーカー視点に偏りがちな発信で生活者とのエンゲージメントを高められていない。

  • 【目指すところ】

    コンテンツマーケティングの考え方をもとに、生活者⇒ペルソナ起点の生活者発・生活者着を体現する発信の重要性についての理解を各国のコミュニケーション担当者に根付かせる。

当日、講師の方に話していただいた内容はかなり情報量が多く、各国からの参加者たちはキャッチアップになかなか苦労したようです。よい反応もあれば、全然理解できなかった、という声も…。運営上の問題で、同時通訳がうまくいっていなかったこともあるかもしれません。
日本人チームの方が、意識が変わった、という声が多かったですね。もともと、2027年(マンダム創立100周年)に向けて、マーケティングコミュニケーション上でコンテンツマーケティングを一つの軸としてやっていこう、という機運が高まっていましたから。


個人的に、セミナーの内容では「生活者を四象限に分けて考える」というのが面白く印象に残りました。同じ商品を買ってもらおうとする場合も、生活者の象限が変わればコミュニケーションの仕方が変わる、というもの。アンケートでも、ここが印象に残りコンテンツマーケティングが参考になりました、という回答が多かったです。人間がストーリーを感じる要素、コンテンツのあり方、という内容も腑に落ちました。


セミナー資料より:コンテンツの方向性を決めるために、生活者を四象限で分類する例

セミナーの課題を踏まえ、第二回のカスタマージャーニーマップワークショップの取り組み

(鮫島)  本格的にコンテンツマーケティングを実行しようとすると、マンパワーが絶対に足りない。セミナー後、参加者の皆さんの反応を聞いていると、日々の業務に活かしていきたいけれど、なかなかとっかかりがない、といった感じで、理想と現実のギャップを感じているようでした。実際アンケート結果の数字を見ると、研修が自分にとって参考になったと答えたのは参加者の82%でしたが、普段の業務に活かせそうだと答えた人は59%にとどまりました。
でもあきらめたくはなく、次回のワークショップではコンテンツマーケティングのいいところを改めて伝えたいと思いました。そもそも、コンテンツマーケティングに何が必要なのか?をマンダムの企業理念で見直すと、生活者をどれだけ理解できているか、ということになります。となると、コミュニケーション担当者の、各国でのペルソナ/ターゲットの理解が非常に重要になる。もちろん、ペルソナは国によって変わってくるので、それぞれ現地のペルソナ理解のレベルを統一していきたいと考えました。

(倉掛)  改めて、ワークショップの当日。参加者の経験は、入社してマーケティングを始めてから1年経っていません、という人もいれば、10年マーケティングに携わっているという人までさまざま。なので、ワークはある人にとっては非常に簡単だったり、ある人にとっては初めての経験でハードルが高かった、など反応は様々でした。


各国のグループごとにペルソナを設定し、そのペルソナのカスタマージャーニーマップを作っていく


チュータも入りディスカッションを活発に行っていた

特に印象に残ったのは、コンテンツマーケティングの仮説だて・検証はファクトベースで進めていくということ。例えば、ワークショップ当日はマンダムの商材であるポマード・ムービングラバーというヘアスタイリングに関わる検索キーワードを事前に資料化し、ペルソナの欲している情報のファクトとして扱いました。
それまでは担当者の完全な仮説のみに基づき施策を考えていましたから、ここが皆さん印象に残っているようでした。


ペルソナを仮説だてる際の項目


ペルソナを補強するファクト


各国のグループごとに設計したペルソナとカスタマージャーニーマップを共有・フィードバックを受ける

ワークショップ後に見られた各国参加者の変化

(鮫島)  ワークショップ後は、各国の担当者の中で、明らかな変化が見られましたね。次に行うキャンペーンを計画していた担当者は、自国のペルソナ・カスタマージャーニーマップを作りつつ、そのファクトを集めるためにKeyword Planner(※キーワードの検索ボリュームを調べられるオンラインツール)などを活用した跡が見えました。ワークショップで気づいたファクトの重要さを、実践にも取り入れようとしているんだなと実感しました。

(倉掛)ワークショップでカスタマージャーニーマップの作り方はわかった上で、各国に戻った後ワークショップの成果物を参考に、実務で実践していくことが大事かなと思っていました。実際、ワークショップの経験を活用されている国が増えている、というのが実感としてあります。
今までと違い、キャンペーンを企画・実行する前にカスタマージャーニーマップを各国担当者で作っているようなので、コミュニケーションがうまくいく確率が高まっているように思います。


海外マーケティング部 倉掛さん

ただ一方で、ペルソナ・カスタマージャーニーマップを作ることが目的化しているケースもたまに見受けられます。それを使って、どうマーケティングコミュニケーションに活かしていくか、というところまで落とし込めていないというか。コンテンツマーケティングがなぜ重要なのか、カスタマージャーニーマップをどう実際の業務に活きているのかを、今後も追っていく必要があると思いました。

(鮫島)  私が担当している台湾で、今新しいキャンペーンを企画しています。こちらに提出していただいた企画は、カスタマージャーニーマップに基づいたものでした。最近だと、シンガポールの担当者から、ギャツビー国際マーケティング会議のワークショップの写真を共有してくれませんか?と問い合わせがありました。別のグループの成果物を参考にしたいということで。カスタマージャーニーマップは、ワークシートを埋めることが目的ではなくて、生活者の視点を整理して初めて、マーケティングに関わる全ての人が同じ認識ができ、ひとつのオリエン資料として成立するもの。
そういった位置づけでちゃんと考えているのか?ということを、ブランドマネジメントする立場としてもきちんとチェックしていかなければいけないですね。
世界中の生活者に満足を提供するために、グローバルの視点での実践を継続していきます。

インタビューまとめ

  • 生活者起点のコミュニケーションをグローバル各国の担当者が理解したうえで実践することに課題があった
  • 生活者のペルソナを仮説だて、ユーザー行動のファクトにより検証・補強するプロセスが各国の担当者に興味を持って理解された
  • 各国でキャンペーン実施前にカスタマージャーニーマップをつくり実行しているケースが多く見られるようになった。各国ごとのペルソナ設計の精緻さやコミュニケーション戦略との整合性を、より高めていくのがこれからの目標。

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