新グローバルサイト「Coca-Cola Journey」が伝える、リーディングカンパニーの在り姿
世界的飲料メーカー コカ・コーラがグローバルサイトを刷新した。新しいサイトはあたかもウェブマガジンのよう。その狙いはどこにあるのか。同社のデジタルコミュニケーションを統括するAshley Brown氏のコメントを交えながら、検証する。
世界的飲料メーカー コカ・コーラ社の方針転換
唐突かもしれないが、こちら のウェブページをご覧いただきたい。読者の皆さんはこれがどんなウェブサイトのページだと思われるだろうか。
一見、海外のニュースサイトか、環境系のウェブマガジンだと思われた方もいるだろう。しかしこれは、世界的飲料メーカー コカ・コーラが刷新したばかりの「グローバルサイト」だ。同社は2011年にCreative ExcellenceからContent Excellenceへという方針転換をContent 2020で発表したが、今回のサイト刷新はその流れに沿ったものである。
飲料メーカーのウェブサイトといえば、ソフトドリンクやコーヒー、お酒など商品カテゴリーごとにページが分類され、それぞれのページで個別商品の特徴や成分などが紹介されているのを想起するだろう。コカ・コーラのそれは一線を画している。
このサイトの名称は「Coca-Cola Journey」=コカ・コーラの旅、だ。同社はわれわれをどのような旅に誘おうというのか。同社のデジタルコミュニケーションを統括するディレクターのAshley Brown氏はブログの中でこう語る。
We want Coca-Cola Journey to be a place where thoughtful people indulge their curiosity about the world around them, engage in a civil discussion and hopefully learn a little more about one of the worlds best-known companies.
人々の好奇心を世界に向けさせ、市民の議論への参加を促し、願わくば世界で最も知られている企業の一つであるコカ・コーラについて知ってもらえる場にしたい。
では、さっそくその中身を見ていこう。
サイトの特徴は豊富なコンテンツアーティクルにて構成されている点
グローバルナビをご覧頂きたい。「Coca-Cola Journey」は「STORIES」から「BLOGS」まで大きく5つのカテゴリーで構成されている。「STORIES」にはコカ・コーラがスポンサードする“5by20 initiative”プログラムを通じて、マンゴー農家として軌道に乗ることができたケニアのAlice Kariukiさんのサクセスストーリーが語られているほか、コカ・コーラを使った料理レシピや同社のアンティークノベルティーグッズの紹介、同社でのインターンシップのエピソードまで幅広いテーマを取り上げている。
「OPINIONS」では、ひとにフォーカスを当てた記事が主。女性の社会進出などの世界で共通する問題に取り組む人物やコカ・コーラ以外のグローバル企業の役員も登場し、広く意見を述べる場となっている。中には、Coca-Cola Journeyのために書き下ろされたものでなく、一度ブログで掲載されたものを再編集して掲載するなど、コンテンツ拡充のための工夫がなされている。
これまで要と思われていた商品紹介はどこでなされているのか。「BRANDS」をご覧いただきたい。Sprite、Fantaをはじめ同社が展開するブランドのロゴが並ぶ。
試しにFantaを見てみよう。下にスクロールしていくと、Twitter、Facebook、YouTubeで発信されていたコンテンツがひとつのページで確認できる。27のブランドでソーシャルメディアが活用されている。
「VIDEOS」では世界中のコカ・コーラのTVCMなどプロモーションの映像が楽しめる。Coke Hug Machineというタイトルの動画は、Hug Meと書かれた自動販売機をハグするとコカ・コーラが出てくるというアジアで展開されたキャンペーンの映像だ。この動画はすぐにFacebookなどで共有できるようになっていて、すでに16万回以上再生されている。
「BLOGS」では、同社が関わる世界中の出来事の裏話的な記事を集めた「Unbottled」、コカ・コーラの歴史やポップカルチャーについての記事を集めた「Conversations」、今旬、またこれから注目されるニュースを集めた「Cokezone」を閲覧できる。いずれも広告臭を抑えたカジュアルな文体で掲載されている。
これらすべてのページに共通するのは、各記事の下にコメントの欄が用意されていること。読者とコカ・コーラが同じ目線でコミュニケーションを楽しんでいる。
コンテンツ盛りだくさんの本サイトだが、Ashley Brown氏が執筆したブログ記事 によると、
Coca-Cola Journey consists of 674 article pages and 772 asset pages. For launch, our team of original contributors created more than 80 original pieces. We uploaded 715 images to pair with content, and there are an additional 523 downloadable hi-res images for media use. Finally, we posted and categorized 5,354 YouTube videos.
サイトは11月12日時点で、全ウェブページは674の記事を含む772ページに上る。サイトローンチの時点では、80を超えるオリジナルの記事を作成、715の画像、523のメディア向けの画像、5,354のYouTube動画が用意された。
このような規模のサイトを運用していくためにコカ・コーラは、4人の正社員と40人のフリーランサーからなるコンテンツ制作体制を敷いている。
企業の考え方との共感を目的としたコンテンツマーケティングの可能性
他企業のCSR関連サイトに見られる企業の一方的な発信に比べ、問題意識の高い消費者に見つけてもらうことに腐心したコミュニケーション、つまりコンテンツマーケティングの手法を用いている。消費材メーカーにとって、企業の思想に共感してもらえる機会を増やすことは、ブランドへの結びつきや購買につながりやすいため、消費者に見つけてもらえるようなコンテンツを発信する施策は重要と言えるだろう。
コカ・コーラがここまで広義の社会問題にコミットメントを示す背景について、同氏はこう語る。
Were doing this because were optimistic about our world, and we think we have something to contribute to the global dialogue. While well touch on many subjects over the years to come, well pay special focus to the areas where we believe Coca-Cola is leading: great brands and marketing, innovation, sustainability, entrepreneurship and trade.
コカ・コーラは世界に対して楽観的であり、国境を越えた対話に貢献できる。これから数多くの問題に携わる中で、同社が牽引していると信じるブランド、マーケティング、イノベーション、持続可能性、アントレプレナーシップ、貿易などの分野にフォーカスするとしている。
またこれは推測にすぎないが、世界中で高まるFat Tax(砂糖を多く含む食品への課税)も背景にあるのではないかと考えられる。従来のマス広告では、売り込みメッセージは伝えられても、企業としての考え方などをじっくり語ることはできない。そこで、じっくり語れる場を作ったと思われる。つまり売り込みはマス広告で、企業としての考え方はサイトで、と使い分けているのかもしれない。
Coca-Cola Journeyを見れば、コカ・コーラは飲料を売るだけではないということが一目瞭然だ。同社による社会的問題の解決、新たなビジネスの構築にファン、パートナーは期待を膨らませ、積極的に関わろうと感化されるひとも少なくないはずだ。
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