CMD2025レポート第2弾:旅人の熱量をAIが編集する仕組み ~ ひとり編集部の生成AI活用術 ~

  最終更新日: 2026.01.25

  • 冒頭446_298-solo
  • この記事でわかること
    1.ソロトリが定義する「ソロ旅」と、それにかけた想い
    2.読者の中心像をデータとヒアリングで掴み、熱量をコンテンツとして活かす考え方
    3.旅人の実体験を活かし、AIと人で編集して回すユーザー参加型の仕組み

本セッションでは、一人旅特化メディア ソロトリマガジンの編集長・福田真希さんが登壇し、旅人の実体験に宿る熱量を起点に、生成AIを編集チームの一員として使いながらコンテンツをつくる方法を紹介しました。

AIが進化していく時代に、AIと役割分担しながらどう価値を生み出すか。読者参加型の循環をつくり、メディア運営の負荷を下げながら事業創出につなげていく考え方が、具体例とともに示されました。

登壇者のプロフィール

福田 真希
株式会社ホーン ソロトリマガジン編集長。
大阪出身、東京在住。小学生と保育園児、2児の母。大学・大学院で生活科学(居住環境工学)を専攻後、住宅会社に就職し一級建築士取得。
2023年2月にソロトリInstagramの立ち上げを担当し、2024年から「ソロトリマガジン」編集長として本格参画。住宅業界から転身し、「自分のための時間」の価値を発信するひとり旅特化メディアの編集・企画・発信を一手に担う。

1. ソロトリが定義する「ソロ」と「旅」

1-Jan-15-2026-02-35-41-4007-AM▲ソロでの活動というと「独身者のためのもの」と思われがちですが、福田さんは「既婚者でも自分一人になりたい時間というのはあるのでは」と語ります。


「ソロトリ」とはSolo Trip(ソロトリップ)の略です。ここでいう「ソロ」とは、独身やおひとりさまのことではなく「自分のための時間」を指しています。非日常空間で過ごす自分のための時間、それが「ソロトリ」です。
家族がいても、仕事や子育てがあっても、自分が自分に戻る時間が必要なことがあります。ソロトリは、そうした自分のための時間を取り戻す行為としての「ソロ」を大切にしているそうです。
また、「旅」の捉え方も広めです。新幹線や飛行機で遠くへ行く旅行だけではなく、普段の生活から少し離れて近くのカフェへ行くような時間も、非日常を過ごせているなら「旅」として扱います。

2. アプリではなくメディアを立ち上げた理由

2-Jan-15-2026-02-38-02-9295-AM

▲株式会社ホーンは、もともと「ソロメシ」という一人外食に特化したアプリを2019年から運営していました。コロナ禍を経て、2023年に外食から旅やお出かけへ領域を広げる際、アプリではなくメディアを立ち上げる方針を選びました。


ソロトリの編集部は、なんと1名体制。
福田さんはソロトリを立ち上げる際、まずアプリなどの製品をつくるのではなく、メディアを立ち上げる方針を選びました。製品が先にあると、それを中心に売り込む流れになりやすく、活動に制約が生まれやすいとしています。先にメディアで発信し、興味を持った人に何をどのように届けるかを後から設計する順番にしたかったということです。
その結果、クエスト型旅行・お出かけサービスの「TripQuest」が生まれたり、地域のプロデュースやプロモーションの相談が増えたり、ひとり旅に特化したデータの収集と分析が事業化しつつあることが紹介されました。オウンドメディアは発信の場にとどまらず、事業の源泉になっているのです。

3. データとヒアリングで見えた読者の熱量

3-3

▲ソロトリ立ち上げ時は、「ひとり旅を楽しんでいるのは30代から40代の独身の男女が多いのでは」と思っていたそうですが、蓋を開けてみると、50代の女性が多いということがわかりました。


ソロトリの立ち上げの背景として、福田さんが子育て中に1泊2日のひとり旅をした体験がありました。寝たい時に寝て、温泉に入りたい時に入り、自分の欲求に従って過ごす。そんな時間を経て、自分を取り戻したように感じたといいます。
一方で、その感動は身近な人に話しづらいとも感じました。家族の協力が必要なことや、周囲からどう見られるかを気にしてしまう気持ちがあり、熱い想いを抱えながらも、共有の出口が見つけにくかったということです。
ソロトリの運営はInstagramから始めました。日々投稿して反応を見ながら試行錯誤しやすいこと、コミュニティづくりの起点にしやすいことが理由です。
すると立ち上げ直後からフォロワーが増え、インサイトを見ると、女性が8割以上で、45歳から64歳が半分以上という実態が見えてきました。そこで全国の読者約20人にヒアリングを実施し、背景を掘り下げました。
見えてきたのは、「子育てや仕事が一段落する時期」「親の介護が終わった、あるいはこれから始まる前」といった、人生の貴重なタイミングにいる人たちの存在です。自由な時間には限りがあるという感覚を持ちながら、長年忘れかけていた好きなことに向き合いたいという前向きな熱量があります。

ただ同時に、ひとり旅をしていることを周囲に話しづらいという複雑さもあります。旅先での感動を分かち合いたい気持ちは強いのに、発散しきれずに溜まっている。福田さんは、この熱量を活かすために、AIの力も借りながら、コンテンツ制作モデルを組み立ててきたと語ります。

4. 旅人の実体験を起点にしたユーザー参加型モデル

4-3

▲ソロトリは、読者が「個人的に」「行きたいタイミングで」行った旅の写真や思い出を後からシェアしてもらい、編集部がコンテンツに落とし込む形をとっています。


一般的なメディアの流れは、編集部がプロライターに依頼し、上がってきた原稿を、編集部がチェックして公開する形です。この形はコストが発生し、ライターとのやり取りも多くなり、ひとり編集部で回すのは現実的に難しくなりやすいという課題があります。
そこでソロトリでは、旅人であり読者でもある人々が、自分の行きたい時に旅をし、その写真や思い出を寄せる形を中心に据えています。集まったエピソードを編集側が選び、ソロトリマガジンやInstagramで紹介しています。
紹介されたエピソードには、風景に大興奮した体験、ひとり旅の魅力を表す言葉、街の構造や香りまで気づけるという視点、自分の心になれる時間が持てるという感覚などがありました。こうした投稿は、報酬を支払って集めているのではなく、共有したい気持ちが動機になっているとのことです。
ソロトリ参加の入口として、毎月月初の期間に先月ひとり旅をした人へ思い出を募る企画「みんなのソロトリ」を実施しています。写真とともに自由に綴ってもらい、ピックアップして紹介する流れです。
さらに、短い枠では受け止めきれない長文の熱量に応えるため、noteで「わたしのソロトリ」という企画を開始しました。ハッシュタグを付けて投稿してもらった記事をnoteマガジンに追加し、一部はソロトリマガジンへ転載する運用です。
加えて、ソロトリメンバーというメンバーシップで、プロフィール掲載や記事紹介の優先なども行い、見る人から書き手へ自然に移行する流れを構築していると説明されました。

 

5. 生成AIで編集負荷を下げ、らしさを残す役割分担

5-3

▲生々しくてAIには書けないエピソード。こういう実体験の価値に惹かれた読者から「念願だったひとり旅を予約しました」といった声が寄せられるとのこと。


ひとり編集部をAIとどう分業するか。福田さんは、ひとり編集部でも「頭の中では一人ではない」と表現し、ChatGPTとClaudeを使い分けていることを紹介しました。
企画の構想段階ではChatGPTを使うことが多く、思いつきの段階から企画の形に整える工程で力を借りています。ただ、いきなり新しいチャットで相談してもうまくいかないことがあるため、ソロトリ専用のMyGPTで、これまでの取り組みや年表、企画、コンテンツの情報を入れ、前提知識を揃えた上で相談する工夫をしています。これにより、ふんわりした案から企画書までを短時間で組み立てやすくなります。
記事制作ではClaudeを使うことが多い一方で、こちらも前提の指示が重要です。ソロトリマガジンの狙い、今回のコンテンツの位置づけ、ターゲットなどを、まずChatGPTに整理させ、その指示文をClaudeに渡した上で、旅人の体験談を添付して記事化する流れになっています。
ただし、福田さんは、AIが作る文章は綺麗になりやすい一方で、その人らしさを削ってしまいがちだと捉えています。旅人の言葉はアレンジせずに残したい、ここは違和感があるので直したいといった調整を、人間が担う必要があります。写真の選定も、何が写っているかは理解できても、良い写真かどうかの判断はまだ任せづらいとのことです。
つまり、AIで制作工程の負荷を下げつつ、らしさと熱量を残す編集判断は人間が担う、という役割分担になります。
また、プロが仕事として書いた文章は読みやすい一方で、独自性という意味では弱くなりやすいという比較も示されました。なぜそこに行ったのか、なぜ今その旅なのかというストーリーは、自分のための旅だからこそ語りやすく、誤字脱字があっても、その人の人生が垣間見える文章になりやすい。福田さんは、この荒削りさも含めた実体験の言葉を熱量と捉え、それが共感や驚きを生む価値の源泉になると位置づけました。

まとめと感想

福田さんの取り組みで印象的だったのは、生成AIを「人の代替」ではなく「編集の相棒」として位置づけ、ChatGPTとClaudeを役割ごとに使い分けている点です。単にプロンプトの書き方を工夫するのではなく、どのAIに、どんな前提情報や目的を持たせた状態で相談するかを設計している点で、プロンプト活用からさらに一歩進んだ、コンテキストエンジニアリングに近い実践だといえます。
一方で、価値の中心に置かれているのは常に旅人の実体験です。AIによって編集工程の負荷を下げつつ、言葉の荒さや違和感、写真の選定といった「らしさ」の判断は人が担う。その役割分担が、ソロトリらしい熱量を支えています。
また、みんなのソロトリ、note企画、メンバーシップといった参加導線は、「見る人が書き手へと少しずつ移行する」段階的な設計になっています。これは、Joe Pulizziが提唱するContent Inc.の思想――まずコンテンツとオーディエンスを育て、そこから事業を広げていく発想を、生成AI時代にアップデートした好例とも捉えられるでしょう。
ひとり編集部という制約の中で、AIと人の役割を整理し、読者の体験を事業の源泉へと育てていく。その具体像を学べる、実践的なセッションでした。


 

▼本セッションの内容に興味を持たれた方は、ぜひ実際の動画もご覧ください。

ソロトリ福田さん_本編サムネ

【CMD2025】旅人の熱量をAIが編集する仕組み ~ ひとり編集部の生成AI活用術 ~

 

執筆:今里
CONTENT MARKETING ACADEMY ライター
※本記事は執筆及び画像作成にあたり、ChatGPTを利用しています。

```

NEWS LETTERをお届けします!

コンテンツマーケティングラボの最新情報を、
定期的にEメールでまとめて、お知らせします

当月の更新情報を翌月初にお届けします。

(購読すると弊社の書籍発売イベントの特典資料をダウンロードできます)

関連する記事