どれだけ本気になれるか!?コンテンツマーケティングの成功の秘訣はコミットメント
今年で6回目となるContent Marketing World(コンテンツマーケティングワールド)が9月7日に開かれた。世界60か国から3500人以上が開催地の米国クリーブランドに集まり、会場は熱気に包まれた。初日のキーノートの様子をご紹介する。
今年のテーマは「Content Strikes Back」。スターウォーズの「帝国の逆襲」(The Empire Strikes Back)になぞらえたテーマ名だが、キーノートに登壇した3人に共通するテーマは「コミットメント」。コンテンツマーケティングに取り組むには、中途半端ではなく本気で取り組まないと成果にならないということを自身の経験を交えて披露した。
Content Marketing Worldを運営するContent Marketing Instituteといえば、つい最近朗報が入ったばかりだ。アメリカとアジアにおけるBtoB向けイベント企業の最大手UBM社が親会社になったのだ。つまり同イベントの経営基盤がより安定したことになる。
しかしこのような成功を収めるまでには、失敗もあったということをPulizzi氏は話し始めた。
Pulizzi氏は、長年勤めていたBtoB向けの業界紙を手掛けるPenton mediaを2007年3月31日に退社した後、自分の会社であるJunta 42を立ち上げた。しかしビジネスは中々うまくいかず、2009年3月9日に最大のクライアントを失うことによって、事業が立ち行かなくなったという。「当時はコンテンツマーケティングへのコミットがまだ足りなかった」と振り返る。つまり制作とコンテンツマーケティングの普及の両方を手掛けるという中途半端さが原因だったのだという。
そこでコンテンツマーケティングの普及やコンサルティングに注力するため、2010年にContent Marketing Instituteを創設。当時まだ一般的ではなかったコンテンツマーケティングの普及だけに舵を切った。今やコンテンツマーケティングはバズワードを超えて、当たり前のマーケティング施策として普及しつつある。
Content Marketing Instituteが毎年発表している調査結果によると、グローバル企業の中で、コンテンツマーケティングに「コミットしている」と答えた割合は、わずか20%。一方で残りの80%は「ややコミットしている」と答えている。
この結果について、Pulizzi氏は警鐘を鳴らした。「従来の販促物なのかコンテンツマーケティングなのかもはっきりしない平凡なコンテンツがあふれている」というのだ。「どっちつかずのコンテンツを出すくらいならば、何もやらないほうがマシだ」とまで言い切った。
次にコンテンツマーケティングにコミットして成功した事例を紹介。ゲームや映画マニア向けの商品を毎月届けるサービスを手掛けるLoot Crate社の例に触れた。彼らの商品は月一での発送だが、それにまつわる経験は毎日してもらいたいという考えで、コンテンツを毎日を配信している。
その結果3年間でなんと6.6万%の成長を実現。2016年にアメリカで最も急成長した会社として雑誌「Inc.」に取り上げられた。
最後にPulizzi氏は、会場に集まった参加者に対してもコンテンツマーケティングへのコミットメントを試すために、映画「マトリックス」になぞらえたパフォーマンスを披露した。
次の登壇者は、Lego社でソーシャルメディアの責任者を務めるLars Silberbauer氏。Silberbauer氏によると、レゴ自体は単なるプラスチックのブロックに過ぎない。レゴを選んでもらうためには、消費者とのつながりを深める必要がある。そのためにはソーシャルメディアの活用が有効になるが、同氏が赴任した当時は部署自体が存在しなかったという。そこでソーシャルメディアでの取り組みにコミットすることにしたのだ。
Silberbauer氏が統括する範囲は幅広い。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア、YouTubeなどの動画、Googleなどの検索エンジンでの施策を統括している。中でも特に注力しているのが動画だ。
2013年には、のべ71年間分だったYouTubeでの年間視聴時間が、2015年には4863年分にまで拡大している。これはLego社によるコミットメントが、ユーザーに伝わった結果だろう。
また単に質が高いコンテンツを作るだけでなく、ユーザーとの関係性を深めるための施策にも取り組んでいる。ここでは具体的な施策をいくつか紹介したが、共通点はユーザー自身による参加を促している点だ。
具体的には、子どもが作っているレゴ作品から彼らのイマジネーションを読み取って、商品化したり、消費者からレゴのアイデアを投稿してもらってコンテスト形式で商品化を決めるキャンペーンなどを実施した。
中でも「The kronkiwongi project」はレゴに対する固定概念をうまく打破した成功例だ。レゴは決められた通りに作るため創造性が育たないと考える親が多かったという。そこで同プロジェクトでは、全くのでたらめな造語である「Kronkiwongi」という言葉を伝え、それぞれが思い浮かべたものをレゴで形にしてもらった。
またソーシャル上での露出を図るために、子持ちのインフルエンサーたちにも訴えかけた。「Kronkiwongi」を作るためのキットを200個ほど配ったのだ。その結果顧客によるエンゲージメントが61%向上したという。
またソーシャルメディア施策の成功の要因の一つとして、リアルタイムでの対応を挙げた。パワーポイントで資料化し、1ヶ月遅れでレポートするようなことはしておらず、リアルタイムでユーザーの投稿に対応することが重要だとした。
ただしソーシャルメディア上での状況はコントロールするのではなく、起こっていることを利用してエンゲージメントをより深めるというポリシーで運用しているようだ。
次に自社でコンテンツマーケティングを導入することで成功したOrbit Media社のAndy Crestodina社長が登壇した。彼は「Content Chemistry」という書籍も出版している。
コンテンツマーケティングによるリード獲得に向けて、最初に重要なのは質の高いコンテンツ。ブログ記事の75%はリンク数がゼロだと言われているが、そんなサイトでも必要な要素を盛り込むことでリンク獲得につながるコンテンツを作れるという。被リンク獲得に強いのが調査結果と強い意見を主張したコンテンツだ。
この場合の「強い意見」の例として紹介したのは、当サイトでも記事化したMark Schaefer氏によるコンテンツショックだ。
また被リンクを増やすためには、インフルエンサーとつながることも重要だという。例えば「ブログはネットワーキングツールだ」と考える同氏によると、ブログでつながった人たちをコンテンツの中で紹介してあげることで、自社コンテンツが拡散される可能性が高まるという。同氏はこの施策を「Ego bait」(人のエゴを使った誘惑)と呼んでいる。
次に検索結果の上位を獲得するためのコツだが、まずはキーワードに紐づく疑問に答えることが大前提となる。最初は自社サイトのSEO力を示すスコアをツールによって確認した上で、勝てる範囲の競合がいるキーワードを狙うべきだという。
検索上位に表示させた後に重要になるのが、コンバージョン施策だ。ある調査によると、長文コンテンツのほうがコンバージョンに有利だという。記事の量が20倍長くなると、コンバージョン率が30%上がるというのだ。
今回キーノートや様々なセッションに参加して感じたことは、Content Marketing Worldも6回目を迎え、革新的なアイデアが少なくなってきたということだ。
しかしよく考えてみるとこれは当然のことで、コンテンツマーケティング自体はもともと昔からあった手法で目新しいものではない。アメリカではすでに手法が確立され始めているため、いかに地道に実行するかが重要になるということだろう。
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執筆:三友直樹(日本SPセンター)
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