CONTENT MATKETING DAY 2023 開催レポート
国内最大規模のコンテンツマーケティング専門のオンラインイベント『CONTENT MARKETING DAY』。2018年から始まった本イベントの第7回目が、2023/12/4〜12/10に開催されました。各セッションの見どころを本レポートでご紹介します。
- イベント名:CONTENT MARKETING DAY 2023
- 日時:2023年12月4日(月)~10日(日)
- 参加費:完全無料
- 場所:オンライン開催
- イベントページ:https://lp.contentmarketinglab.jp/cmd2023
イベントテーマ
『CONTENT MARKETING DAY 2023』のテーマは「キミと一緒に、まだ見ぬ風景を」。宇宙レスキュー隊の隊員(参加者の皆様)が、マーケターやクリエイターから伝授されるAI活用スキルや知恵を相棒のAIロボットと一緒に学び、宇宙の問題解決や自分自身の成長を目指していきます。
2010年以降にディープラーニングの活用が可能になってから、私たちとAIの距離は既に近づいていましたよね。『Alexa』は声をかけるだけで細かなタスクをサポートしてくれますし、『ChatGPT』は今まさに私の執筆作業を手伝ってくれています。ビジネスにおける生成AI活用の事例やノウハウ紹介も世の中に溢れるようになりました。
きっと誰もがその有用性を理解しているのに、個人でもビジネスでもAIを活用できている人はまだ多くないそう。AIって「なんか難しそう」だし、「よく分からないから怖い」。でも一度足を踏み入れたら、世界の見方が広く大きく変わりそうなロマンがある。AIはまさに、宇宙のように膨大な未知の世界!
…そんな魅惑の世界を相棒のAIロボット『ノヴァ』と一緒に冒険し、自分自身とAIロボットの成長を目指す物語である『CM-DAY2023』。
「コンテンツ」「マーケティング」「テクノロジー」「クリエーティブ」の4つの銀河をそれぞれ開拓した全20の開拓者たちのエピソードを動画で公開しました。
特別企画
今回のイベントでは、動画を視聴後にアンケートに回答するとAIロボットが成長するためのパーツカードがもらえる(NFT)システムを導入。さらに成長パーツを集めて応募できる、限定アイテムプレゼント企画も実施しました。
コピーライターは淘汰されるのか?~ AI時代の仕事論 ~
コンテンツマーケティングの手法を取り入れた企画立案からツール制作、コンセプトメイクやブランディングまで幅広く活躍されているフリーランスコピーライターの近藤智子さんに、コピーライターとしてのAIとの向き合い方について語っていただきました。
Q:AI時代にコピーライターは生き残れる?
A:生き残るために、AIと共生しながら「再現不可能な仕事」を目指そう。
近藤さんが考えるコピーライターの本質とは、「聞く仕事」。企業の戦略や市場、プロジェクトの全体像を見ながら、様々な可能性を検討・整理し、担当者や関係者の「言葉になっていない想い」を拾い、その複雑さを上手く総合して顕在化(言語化)させる。コピーライティングに行き着くまでのプロセス自体が、コピーライターの仕事の醍醐味なのではないかと語ります。
コピーライターとして一番考えるべきなのは「その情報を受け取る側/読み手が誰なのか」ということ。書き手の効率性ばかりを考えて、AIか人か、と考えるのではなく、読む側が一体どんな気持ちになるのか/どんな行動を取れるのかを考える必要があります。
作業全体の中にはAIが得意とする部分と人が持つ感覚を生かすべき部分があり、それを見極めて上手く活用しながら「再現不可能な仕事」を実現していきたい、と語ります。
「再現不可能な仕事」を実現するための基礎能力として、AIと並べる程度の論理的思考力や分かりやすい文章作成力、基礎的読解力は不可欠。さらにマインドセットとして、「物事の複雑さを受け止める」ことが重要だと言います。
自分と全く違う結論や解釈をまずフラットに全て並べてみて、「なぜその解釈になったのか」を遡る。その要因を考えるというプロセスが、物事の理解を深め、新たな答えを見つけるのに必要であり、それこそが「人間ならでは」の仕事につながるのかもしれません 。
企画や制作に携わるうえで指針になるような言葉や考え方が詰まっています。特に若手の皆様にはぜひ観ていただきたい内容です。
コンテンツマーケティングで知っておくべき10のチャート
株式会社JADE代表取締役である伊東周晃さんは、毎年米国で開催されている世界最大のコンテンツマーケティングのイベント「Content Marketing World」に参加されています。最先端のイベントで得た知見や、コンテンツマーケティングの実践時に役立つ考え方・フレームワークなどをご紹介いただきました。
コンテンツマーケティング戦略を考える上でまず重要なのが、「デジタル広告の代替施策として考えない」ということ。デジタル広告はコストや成果が分かりやすく、その目線で意思決定されている場面も多くあるかもしれません。しかしコンテンツマーケティングが持つ可能性はより広いと語ります。
例えばコンバージョンレートが1%だった場合、ダイレクトマーケティング で1%のお客様は購入に至ったものの、実は99%のお客様は購入に至っていないという現実を考え、その99%の人たちとどう関係性を作っていくのかを考えていきたいとのこと。
自分たちのサービスの評判を広めてくれる人たちや、新たなビジネスモデルのお客様になる可能性のある人たちなど、まだ購買に至っていないものの高いエンゲージメントを持ってくれる読者(ファン)を増やすことで、施策の過程での離脱を防げる可能性が高くなると言います。
自社の情報を理解し、顧客になり得る多くの人たちに情報を広めてくれるようなファンを増やすためにはどういうマーケティングが必要なのか、その人たちはどんな情報接触の習慣があるのかなども含めてコンテンツ設計をするのが重要だと語ります。
そこで今回は、事業計画で行き詰まった時に立ち戻りたい考え方をご紹介いただきました。
- ユーザーにとって「見逃したくないコンテンツ」になっているか?
- 自社でちゃんと管理できるプラットフォームを選べているか?
- ユーザーへ満足度の高い情報提供やコミュニケーションができているか?
- コンテンツ運用をチーム全体でできているか?
- 読者をコアにしながら、複数の施策を構想できているか?
図解やチャートフレームワークを用いて詳しく解説いただいたので、ぜひご覧ください。
広告代理店のリアルな生成AI活用 現場の事例10選 ~ 実際のログ (過去3ヶ月) から引用して解説 ~
アナグラム株式会社の小山純弥さんに、広告代理店のリアルな生成AI活用内容を現場の事例と共に解説いただきました。
小山さんにとっての生成AIは、まだ戦力とは言えない一面もあるけれど、時々面白い視点やヒントになるアイデアを出してくれる新人インターン生のようなイメージとのこと。とはいえ、顧客調査にキーワード洗い出し、広告文やセミナータイトル作成、議事録などの要約、データ分析など、作業効率向上において生成AIをしっかり活用されているそうです。
生成AIを通じてアイデアやアウトプットが無限に出てくる時代、自分たちの仕事の介在価値は「事業との一貫性をコーディネートする」ことにあると小山さんは言います。それは自社の戦略を理解し、自社の独自性と販促施策を一貫させること。
新しい市場の拡大・獲得に注力するのではなく、自社が勝てる市場にはどんなお客様がいるのか、そのお客様に対してどんなソリューションを提供できるのかという発想を持つ。そして、コピーやクリエイティブのアイデアに対して、自社や顧客に対する整合性をとる。Web広告やプロモーションなどで新たな訴求を幅広く試すのではなく、的を絞って継続して検証することで本当の勝ちパターンに近づくことができるのではないかと語ります。
自社のソリューションに合わせて、どんなお客様にどんな提案をしたのか。自社の独自性を生かせる市場でプロモーションを広げていくために、お客様の検討段階とお困りごとに合わせてどんなコミュニケーションを設計したか。アナグラム株式会社が現場で行ったリアルな事例をご紹介いただいたので、ぜひ参考にしてみてください。
コンテンツマーケティングを前に進めるための分析と評価のヒント
どのような視点でコンテンツマーケティングの評価に向き合えば良いのか。株式会社真摯代表取締役のいちしま泰樹さんに、GoogleアナリティクスによるWebサイトの分析だけでなく、あらゆるコンテンツで応用できる日々の運用のヒントや評価軸をご紹介いただきました。
コンテンツマーケティング戦略担当の皆様は、下記の視点をもてているでしょうか?
オーディエンスを捉える
- ユーザーのライフステージは?興味関心はどこにある?
- 自分たちの取り組みがオーディエンスとの関係性構築につながっているか?
- メール/ソーシャルメディア/ウェブサイトそれぞれのオーディエンスの規模を把握できているか?
コンテンツを分類する
- コンテンツの目的とターゲット層、期待するアクションはそれぞれ適切か?
- 既存コンテンツの傾向と結果は?
- 「集客」と「コンテンツを届ける」で違う評価軸を持てているか?
エンゲージメントを捉える
- どんなアクション誘発を設けると効果があるのか?
- オーディエンスビルディングを意識したアクション誘発ができているか?
- まだ関係性のできていないユーザーに次のメッセージを届けるためには?
オーディエンスとの関係性構築
- コンテンツへの反応だけでなく、オーディエンスやコミュニティの規模を把握できているか?
- メディアの成長という評価軸で見たとき、その成果とコストは見合っているか?
施策のデータをすべて計測・分析するのは現実的ではありませんし、そこにリソースを割く必要はないといちしまさんは言います。なぜならこの領域はまさにAIが担える部分だから。大切なのは、「オーディエンスとの関係構築」という視点を持って、どうコンテンツを評価し、運用していくかということ。
この方法について具体的に解説いただきましたので、メディアの成長を目指す担当者の皆様はぜひご覧ください。
AIを活用して推論力を高めよう
生成AI関連の話題でよく上がるは、質の高いアウトプットを出すためのプロンプトエンジニアリングの話ですよね。しかし今回、CONTENT MARKETING LAB Founderの渡辺一男さんに提示いただいたのは生成AI活用のもう1つの視点。顧客心理や情報ニーズの仮説立てを手助けする、推論エンジンとしての活用についてご紹介いただきました。
『GPT-4』で3種類の推論「帰納法」「演繹法」「アブダクション(仮説推論)」の能力を測るテストを行ったところ、帰納法はまだ実用レベルではないものの、演繹法とアブダクションは8〜9割の正答率が出たというデータがあるそう。そこで渡辺さんは「人がなぜその行動をとったのか」という理由を知ることが重要であるコンテンツマーケティングにおいて、アブダクションが活用できるのではないかと言います。
『GPT-4』はアブダクティブ推論ができるのか、見つけた仮説から施策やコンテンツ案は出せるのかを実験すると、意外と有用そうな仮説や案が多い印象。自分では思いつかないような仮説を複数個立てて、順位づけまでしてくれます。何よりシンプルなプロンプトで具体的な案を出してくれるところが魅力的です。
そもそもアブダクションとは、ある意外な事実や変則性がなぜ起こったのかについての「説明仮説」を形成する推論。つまりアブダクティブ推論には、ある意外な事実や変則性があることが前提になります。そして、意外な/驚くべき事実の発見をできるのは人間だけ。
推論を行うテーマが専門的だった場合、専門家の知識や経験による評価が情報要素として必要になることもあります。人間の判断や知見、評価はもちろん不可欠ですが、AIの推論力はコンテンツマーケティングに生かせるのではないでしょうか。この実験と渡辺さんの解説を観れば、推論エンジンとしての活用を試してみたくなるはずです。
なぜ"あの人"は、それでも、ChatGPTを使わないのか? ~生成AIで「仕事を楽しく」する、新しい働き方~
「いったいなぜ、生成AIの活用は浸透しないのか。」
Content Marketing Academy コンテンツ設計士 山本悠人さんの問いかけで始まる本動画では、業務における生成AI活用のボトルネック解消法や、組織全体での利用率を高める手法をご紹介いただきました。
『ChatGPT』の日常利用が進まない真の要因は「圧倒的につまらないから」ではないかと山本さんは言います。凡庸でありきたりな回答がつまらない、そして会話/コミュニケーションとしてつまらない。思い当たる節はありますよね。
この直接的な解決策として、つまらない回答をプロンプトであらかじめ抑制することが重要だと語ります。コンサルタントや大学教授としての人格を持たせて回答内容を面白くさせることや、好きなキャラクターの人格を持たせてコミュニケーションを面白くさせることもできるそう。
毎回プロンプトを打つのは面倒という懸念がありますが、Custom instructionという回答の指示を事前に設定できる機能の活用で解決できます。今すぐ使える面白い実例がいくつも紹介されているので、視聴後にぜひ活用してみてください。
組織でのAI活用を促進するための4ステップもご紹介いただきました。
- 優秀なカスタムインストラクションを組織メンバー全員で設定する
- 業務工程に『ChatGPT』利用を必ず組み込む
- チームメンバーとしての愛称をつけて、人格性を付与する
- 社内の知見や過去の業績を学習させる仕組みをつくる
今回山本さんがお話しされた【仕事を楽しくするための『ChatGPT』活用術】は、『ChatGPT』を楽しく使う方法とも言えます。作業効率化の面で語られることが多いですが、まずは『ChatGPT』を楽しむことで結果的に仕事も楽しくなっていくとしたら、それが一番の生産性向上と言えるのかもしれません。AIと共存する未来がそんな明るいものであればいいな、と筆者自身感じました。
特別企画 地方創生×AI
今回CONTENT MARKETING ACADEMYは、AIを活用した地方の小規模事業者支援プログラムの一環として、京都府京丹後市の2つの事業者に対してコンテンツマーケティング支援を実施。
事業の収益化や人的リソース不足といった課題に対して、CMAメンバーがAIを活用してどんな戦略立案を行ったのか、立案した戦略は実際どのように生かされているかなどを、プロジェクトメンバーの皆さんに取材しました。
AI×人間のチカラ AIと共創をするための思考プロセスとは? -八隅氏へのマーケティング支援を事例に-
京都府の北端にある京丹後市の海は、夏になると青く透き通った美しい海に出会える場所。しかし冬になると海ごみが増えてしまうため、毎年海水浴シーズンの前に地域のボランティアで頑張って海を掃除しているそう。この美しい海に惚れ込んだ八隅さんは有志メンバーを集めるため、誰もが楽しく参加できるビーチクリーンを企画する活動を始めました。
やっさんの愛称で慕われる八隅さんの活動によりビーチクリーンの認知は広がり始めたもの、収益化ができていないことや人的リソースが足りないのが悩み。社会的意義のある大切な活動だからこそ、ビーチクリーンが一般的な職業になり、そこに従事する人が増えていく未来をつくりたいと語ります。
そこで今回CMAは、やっさんの夢を実現するための事業戦略立案を支援しました。
小規模事業継続のカギとは~小規模事業だからこそ大切にしたい顧客視点~
大学を卒業してから、ものを世の中に発信する仕事に携わっていたという安立さんは、自分が愛する温浴文化を自分の手で形づくって後世に残す仕事がしたいという思いから『蒸 - 五箇サウナ -』を立ち上げたそう。コミュニティづくりの一環として、いろんな人がサウナを楽しみながら繋がれるイベントも広く行われています。
実現したいことが沢山ある一方、人手不足が課題。サウナやイベントの準備から集客活動、事務作業までを2人で行われている中、限られたリソースをどこに当てていくかを見極める必要があります。
今回は集客施策に着目。京丹後という村やそこにいる人たちとの交流の中でゆっくりサウナを楽しめるという『蒸 - 五箇サウナ -』の魅力は、現状の発信でお客さんに届けられているのか?この価値をどんな人に、どう届けたいのか?
自分たちのお客さんは一体誰なのか、という視点に立ち戻って、コンテンツマーケティング戦略立案を開始します。
CMAが実際にどんな提案を行ったのか、その後の影響などについては、小規模事業者の方にぜひ観ていただきたい内容です。京丹後の美しい風景とともにお楽しみください。
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