いまこそコンテンツマーケティングに戦略を持とう~Content Marketing World Sydney2014のキーノートを振り返る
2014年もコンテンツマーケティングに関する世界最大級のカンファレンスのアジアパシフィック版「Content Marketing World Sydney」が開催された。企業によるコンテンツ施策が活発化する中、その第一線で活躍する識者たちは、コンテンツの役割をどう考えているのだろうか。カンファレンスのキーノートから探る。
「Content Marketing World Sydney」が、今年も3月31日~4月2日にシドニーで開かれた。このカンファレンスは、2011年から毎年開催されている世界最大級のコンテンツマーケティングカンファレンス「Content Marketing World」のアジアパシフィック版だ。近年アジアパシフィック地域においても注目されているコンテンツマーケティング。そんな状況を踏まえ、昨年2013年からシドニーでも開催されている。
今回はそのメインイベントといえる4月1日2日に行われたカンファレンスのキーノートについてレポートする。
「戦略のないコンテンツ施策が多い」…コンテンツマーケティングの中心人物が語る
まずは同イベントを主催するContent Marketing Instituteの創業者であるJoe Pulizzi氏が今年もキーノートの舞台に立った。Joe Pulizzi氏は、コンテンツマーケティングが広く世に知られるはるか前の2000年ごろから、普及に取り組んできた人物だ。
Joe Pulizzi氏は、コンテンツマーケティングの認知は広がっているが、いまだ戦略性に欠けた施策が多く、具体的な効果を実感できている企業は少数派だとの見方を示した。同氏が紹介したデータによると、コンテンツマーケティングに取り組むオーストラリアの企業は80%以上であるものの、効果を実感できたとする企業は33%にとどまる。
この点について「戦略のないコンテンツ施策が多いのではないか」と指摘する。ドキュメントに落とし込むまでに具体的な戦略を持って施策に取り組む企業は少ないという。資料化された戦略を持って施策に取り組む企業の割合は、一般には15~20%。CMWSへの参加企業に限っても約40%程度だという。
より戦略的にコンテンツ施策へ取り組むために、Joe Pulizzi氏は「マーケターが成功するためには、コンテンツによってどのような目的を達成できるかを考えるべきだ」と具体的な目的を設定する必要性を強調した。この目標設定においてに考慮するべき3つのポイントとして、「売上に貢献すること」「コストを削減すること」「顧客満足度を上げること」を挙げている。
さらに実際のコンテンツの内容についても指摘した。彼によると企業によるコンテンツマーケティングの取り組みが増えているものの、他社を真似した横並びのコンテンツ(“me too” content)が増えているという。「次に課題とするべきは、いかにオリジナルなコンテンツを作るかということ。二番煎じであったり、他媒体が簡単に真似できるようなコンテンツでは効果を発揮できない」と語った。
ウェブ上での影響力に重要なものとは…ソーシャルメディアの専門家が語る、コンテンツのあるべき位置づけ
続いてのキーノートには、Mark Schaefer氏が登壇した。Mark Schaefer氏は、いかにウェブやソーシャルメディアでの影響力を高めて活用するべきかについて説くソーシャルメディアマーケティングの第一人者だ。2012年に出版した“Return On Influence”がThe Wall Street Journalをはじめとする大手紙に取り上げられるなど、高い知名度を誇る。また今年3月には”コンテンツ限界論”(Content Shock)を唱えたブログ記事が大きな話題となるなど、コンテンツマーケティング業界でも知られる人物だ。
Mark Schaefer氏はコンテンツの重要性について、個人や企業のブランディングの観点から強調した。同氏によると、影響力の源泉はリアルの場からウェブへと移ることによって人物や企業を判断する基準は、性別や社会的地位などの属性やステータスよりも、ウェブで「どのようなコンテンツを提供しているか」がより重要になってきている、とした。
かくいうMark Schaefer氏自身も、コンテンツによって自身の影響力を高めた一人だ。ソーシャルメディア上の影響力を測るツール「Klout」(クラウト)について説明したブログ記事を2011年に公開したところ、大きな話題を呼んだという。
属性・ステータスからコンテンツへと影響力の源泉が移ってきている点を踏まえ、企業がウェブでの影響力を高めるには何が重要になるだろうか。Mark Schaefer氏は、「戦略を持ってコンテンツを届けること」と語った。個人も含めて誰もがコンテンツを発信できる時代だからこそ、やみくもに施策を進めるだけでは成功できないという。戦略を考える際に考えるポイントは2つ。「誰がコンテンツを発信すれば影響力を生み出せるか」と「どのように取り組めば影響力を生み出せるか」だ。
コンテンツの発信者は社内の人間である必要はなく、開催したキャンペーンの参加者や外部のブロガーなども視野に入れて検討する必要がある。たとえば自動車大手Audiなどでは影響力のあるブロガーに商品を無償で使用してもらい、自身のblogやSNSでレポートしてもらうことで、話題喚起につなげているという。
最後に影響力を高め、効果を得る(Return On Influence)施策に必要な要素を3つ挙げて締めくくった。一つ目は、積極的にオーディエンスを見つけて獲得すること。「オーディエンスは築き上げるもの。コンテンツを発信しただけで集まってくるわけではない」。二つ目は質の高いコンテンツを発信すること。コンテンツの内容だけでなく、ブログやポッドキャスト、動画など、適切な媒体を選ぶことも重要だとした。三つ目は、長期的にオーディエンスとつながることができる仕組みを作ること。単発の取り組みではなく、継続的にオーディエンスとつながることで、より大きな影響力を生み出すことができるという。
Joe Pulizzi氏とMark Schaefer氏はそれぞれ異なる観点からコンテンツの重要性を語ったキーノートであった。そしてその両者のキーノートの共通点が「戦略を持つべきだ」だったというのが興味深い。日本でもコンテンツマーケティング施策が増え始めている。いま一度その戦略について検討することは有益ではないだろうか。
執筆:三友直樹(日本SPセンター)
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