【アーカイブで学ぶコンテンツマーケティング】⑧ なぜ企業は書籍を作るべきなのか? コンテンツを資産に変える考え方
最終更新日: 2026.11.06
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この記事でわかること
1. 2013年にJoe Pulizziが企業の書籍制作を勧めた理由と、書籍が持つ3つのメリット
2.既存コンテンツの活用から制作体制まで、書籍を作るための8つのヒント
3.デジタルやAIが普及した現在にもつながる、専門性の発信とコンテンツの再利用という考え方
2013年、なぜJoe Pulizziは企業に「書籍が必要」と考えたのか
ブログやSNS、動画など、企業が情報を発信する手段は数多くあります。さらに現在では、生成AIの普及によって、デジタルコンテンツを制作する環境も変化しています。
そのような時代に、企業があえて紙の書籍を作ることには、どのような意味があるのでしょうか。
2013年1月、Content Marketing Institute(CMI)の創設者Joe Pulizziは、「Print Is Not Dead! Why Your Company Needs a Book and 8 Tips to Make it Happen(紙媒体はまだ終わらない!企業が書籍を作るべき理由と8つのヒント)」という記事を公開しました。
Pulizziは、2007年に事業を立ち上げ、その後CMIへと成長させるうえで、ブログと書籍が重要な役割を果たしたと振り返っています。
記事では、当時のCMIの調査を引用し、約80%の企業がブログを運営している一方、書籍を制作している企業は30%未満だったと紹介しています。
Pulizziは、特定の分野で専門家としての立場を確立したいのであれば、オンラインで配布するeBookだけでなく、紙の書籍を制作するべきだと主張しました。
今回は、Pulizziが2013年に示した書籍のメリットと、制作を実現するための8つのヒントを振り返り、2026年のコンテンツマーケティングにもつながる考え方を探ります。
なぜ企業は書籍を作るのか? 3つのメリット
Pulizziは、企業が書籍を制作するメリットとして、3つの点を挙げています。
① 専門性や思想的リーダーシップを示せる
1つ目は、特定の分野における専門性を示せることです。
ブログでは、個別のテーマについて継続的に情報を発信できます。一方、書籍では、企業が持つ知識や考え方を、一つのまとまった内容として伝えることができます。
Pulizziは、紙の書籍を、企業や個人が業界における思想的リーダーシップを示すための有力な手段として位置づけています。
② 顧客との接点をつくる贈り物になる
2つ目は、書籍を顧客への贈り物として活用できることです。
記事では、マーケティングオートメーション企業Marketoの共同創業者Phil Fernandezによる「Revenue Disruption」が紹介されています。
Pulizziは、Marketoからプロモーションの一環として著者のサイン入り書籍を郵送で受け取ったと説明しています。
また、Constant ContactのCEO Gail Goodmanによる「Engagement Marketing」も紹介されています。同社もサイン入り書籍をダイレクトメール施策に活用していました。
このように、書籍は情報を伝えるだけでなく、顧客との接点をつくるためのコンテンツとしても活用されていました。
③ さまざまなコンテンツに再利用できる
3つ目は、書籍の内容を別のコンテンツに展開できることです。
Pulizziは、書籍を制作すれば、その内容をもとにブログ記事、eBook、SlideShare用の資料、ホワイトペーパーなどを作成できると説明しています。
つまり、書籍は完成して終わりではありません。
一度まとめた知識や情報を、別の形式に編集し直すことで、さまざまなチャネルで活用できるという考え方です。
書籍を実現するための8つのヒント
書籍には、企業の専門性を示し、顧客との接点をつくり、さまざまなコンテンツに再利用できるというメリットがあります。
一方で、実際に書籍を制作するには、企画や執筆、制作体制の整備など、多くの準備が必要です。
Pulizziは、自身の経験をもとに、企業が書籍制作を実現するための8つのヒントを紹介しています。
① 既存コンテンツを棚卸しする
最初のヒントは、これまでに制作したコンテンツを確認することです。
Pulizziは、企業がすでに持っているコンテンツの中に、書籍に再利用できる素材が眠っている可能性を指摘しています。そのまま活用できるものだけでなく、書籍の各章を構成するための出発点になる素材もあるかもしれません。
書籍をゼロから作り始めるのではなく、まずは自社がどのようなコンテンツを蓄積してきたのかを整理することが重要です。
② ブログ記事を活用する
2つ目は、既存のブログ記事を活用することです。
Pulizziは、自身が関わった「Get Content Get Customers」と「Managing Content Marketing」の2冊について、内容の多くが既存のブログ記事を再編集したものだったと説明しています。
また、半年以上ブログを運営している企業であれば、すでに書籍の半分に相当する素材を持っているかもしれないとも述べています。
継続的に発信してきたブログ記事は、単発の情報として終わらせるのではなく、まとまったコンテンツを制作するための素材としても活用できるという考え方です。
③ パートナーと共同制作する
3つ目は、他社との共同制作です。
Pulizziは、同じ見込み顧客や顧客を対象としている、競合関係にないパートナーとの協力を提案しています。
共同で書籍を制作することで、それぞれが持つ知識や経験を持ち寄ることができます。さらに、完成後のプロモーションでは、双方のネットワークを活用できるため、書籍をより多くの人に届ける機会も生まれます。
④ 制作資金を確保する
4つ目は、書籍制作に必要な資金を確保することです。
Pulizziは、「Get Content Get Customers」を当初、自費出版したことを紹介しています。
その後、McGraw-Hillが出版権を取得しましたが、初期投資の多くはパートナー企業への書籍の大量販売によって賄われていたと説明しています。
また、書籍のメッセージを広めたいと考える支援者から、資金面や配布面で協力を得る方法にも触れています。
⑤ 読者に何を得てほしいのかを明確にする
5つ目は、書籍のミッションを明確にすることです。
Pulizziは、読者に書籍から何を得てほしいのかをはっきりさせ、それを書き出して制作中も確認できるようにすることを勧めています。
その理由として、多くの企業が読者の抱える課題ではなく、自分たちが伝えたいことに集中してしまう問題を指摘しています。
書籍を制作する目的は、企業が伝えたい情報をまとめることだけではありません。読者がどのような課題を抱えているのかを理解し、その解決につながる内容を届けることが重要だという考え方です。
⑥ 業界の専門家を巻き込む
6つ目は、業界のインフルエンサーやパートナーをコンテンツに取り入れることです。
Pulizziは、内容に価値があることを前提に、業界の専門家やパートナーの事例を盛り込むことを勧めています。
また、多くの関係者が書籍に登場することで、完成後にその内容が外部へ共有される機会も増えると説明しています。
専門家の知識や事例を取り入れることは、書籍の内容を充実させるだけでなく、より多くの人に届けるきっかけにもなります。
⑦ 外部のライターを活用する
7つ目は、ゴーストライターの活用です。
Pulizziは、著者として名前が知られている人の書籍でも、実際には別のライターが執筆している場合があると説明しています。
記事が書かれた2013年当時、トップクラスのゴーストライターへの依頼費用は、5万ドル程度からが目安とされていました。
社内で執筆する時間やリソースを確保できない場合には、外部のライターに依頼することも選択肢の一つになります。
⑧ 完璧を求めすぎない
最後のヒントは、完璧を求めすぎないことです。
Pulizziは、自身が関わった2冊について、望めばいつまでも執筆を続けられたと振り返っています。
書籍を完成させた直後にも、新しい調査や事例、考え方が登場するかもしれません。しかし、すべてを盛り込もうとすれば、いつまでも出版できなくなってしまいます。
Pulizziは、どこかで区切りをつけて出版し、新しい情報は次の書籍に活用すればよいと説明しています。
2026年、書籍を作るという考え方から何を学べるか
2013年と2026年では、企業がコンテンツを制作し、届ける環境は大きく変わりました。
ブログやSNSに加え、動画や音声など、情報発信の手段は多様化しています。さらに、生成AIの普及によって、コンテンツ制作の方法にも変化が生まれています。
こうした現在の環境では、Pulizziが2013年に主張したように、すべての企業が紙の書籍を作る必要があるとは限りません。
しかし、今回紹介した8つのヒントには、書籍以外のコンテンツ制作にも応用できる考え方が含まれています。
既存コンテンツを一度きりで終わらせない
特に注目したいのが、既存コンテンツの棚卸しと再利用です。
Pulizziは、自身の書籍制作において、過去のブログ記事を再編集して活用していました。
この考え方は、現在のコンテンツマーケティングにもつながります。
たとえば、過去に公開したブログ記事を更新したり、関連する記事をまとめてホワイトペーパーにしたり、記事の内容を動画やSNS向けに再編集したりすることが考えられます。
新しいコンテンツを作り続けるだけでなく、すでに持っている情報を見直し、別の形で届けることも重要です。
コンテンツの中心にあるのは読者の課題
もう一つ重要なのが、読者の課題を中心に考えるという視点です。
Pulizziは、企業が何を伝えたいかに集中するのではなく、読者に何を得てほしいのかを明確にすることを勧めています。
これは書籍に限らず、ブログ記事、動画、SNSなど、あらゆるコンテンツに共通する考え方です。
生成AIによってコンテンツ制作を効率化できるようになっても、読者がどのような情報を求め、何に困っているのかを理解することの重要性は変わりません。
書籍という形で専門性を伝える意味
Pulizziは2013年、企業が特定分野の専門家としての立場を確立するために、紙の書籍を制作することを強く勧めていました。
現在では、専門性を示す方法は書籍だけではありません。独自調査や専門記事、動画など、さまざまな形式で知識や考え方を伝えることができます。
一方で、一つのテーマについて情報を体系的にまとめ、読者に届けるという書籍の特徴には、現在でも価値があると考えられます。
重要なのは、紙かデジタルかという形式だけではなく、企業が持つ知識や経験を、読者にとって役立つ形に整理して伝えることではないでしょうか。
おわりに
Pulizziは書籍の制作を勧めるだけでなく、その実現に向けて、既存コンテンツの棚卸しや再編集、外部との協力など、具体的な方法を示しています。
書籍という一つの成果物を作るために、これまで蓄積してきた情報を整理し、何を伝えるべきかを考え、読者にとって理解しやすい形にまとめていく。この過程そのものにも、コンテンツマーケティングにおける重要な学びがあるのではないでしょうか。
また、過去のコンテンツを活用することは、単に制作の手間を減らすことではありません。以前に発信した情報を改めて見直すことで、当時は気づかなかった価値や、現在の状況に合わせて補足すべき点が見えてくることもあります。
今回取り上げた2013年の記事も、当時の方法をそのまま実践するためではなく、その背景にある考え方を現在のコンテンツマーケティングにどう生かせるかという視点で読み直しました。
新しい手法や技術を取り入れることはもちろん重要です。しかし、それだけでなく、これまでに蓄積されてきた知識や経験に目を向け、現在の課題と結びつけて考えることにも価値があります。
そして、紙の書籍が持つ価値も、現在まで失われていないように思います。たとえば、展示会のブースに企業が出版した書籍が並んでいたり、プロモーションの一環として書籍が送られてきたりすると、一般的なパンフレットやWebコンテンツとは違った信頼感を覚えることがあります。一つのテーマについて知識や考え方を体系的にまとめた書籍だからこそ、企業の専門性を伝える手段として、今なお有効なのではないでしょうか。
執筆:今里
CONTENT MARKETING LAB ライター
※本記事は執筆及び画像作成にあたり、生成AIを利用しています。
【アーカイブで学ぶコンテンツマーケティング】記事一覧
- ① いまこそ原点へ ──コンテンツマーケティングの本質は創世期にある
- ②なぜ新しいチャネルが生まれても、結局コンテンツが重要なのか
- ③「誰に届けるか」から始める。DuPontの記事に見るオーディエンス戦略の原点
- ④ なぜ企業はストーリーを語るのか。コンテンツマーケティングの歴史に学ぶ情報発信の原点
- ⑤SEO・SNS・コンテンツはなぜ連携が必要なのか。Lee Oddenに学ぶ「最適化」という視点
- ⑥ なぜ良いコンテンツを作れないのか。顧客視点・組織・チャネルから考える
- ⑦チャネル戦略はどう設計する? 7つのステップに学ぶコンテンツの届け方
- ⑧なぜ企業は書籍を作るべきなのか? コンテンツを資産に変える考え方
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