【アーカイブで学ぶコンテンツマーケティング】③「誰に届けるか」から始める。DuPontの記事に見るオーディエンス戦略の原点
最終更新日: 2026.05.22

この記事でわかること
1.Search Everywhere時代でも、「誰に届けるか」を最初に考える重要性
2.専門企業ほど、知識を「理解できる形」へ翻訳する必要があること
3.継続的なコンテンツ運用には、体制・教育・ルール設計が必要であること
なぜ、いま古い記事を読むのか
いま、コンテンツマーケティングは非常に複雑な時代に入っています。
AI検索、GEO、SNS検索、動画検索……ユーザーはさまざまな場所で情報を探すようになりました。最近当サイトで紹介した「検索はGoogleの外で起きている ―Search Everywhereが示すSEOの新しい現実」でも、検索行動がGoogleだけで完結しなくなっていることを取り上げました。
現在のユーザーは、Googleで検索し、YouTubeで理解し、Redditで評判を確認し、Amazonで比較するというように、複数の場所を横断しながら意思決定しています。こうした変化を見ると、どうしても「どこに出すか」が中心になりがちです。TikTok向けに短くするべきか、YouTube向けに動画化するべきか、AI検索向けに構造化するべきか。
しかし、こういう時代だからこそ、昔の記事を読み返す意味があります。古い記事には、最新アルゴリズムの話はありません。その代わり、「コンテンツマーケティングは本来、何を考えるものだったのか」に立ち返るための視点があります。
今回取り上げるのは、2011年にContent Marketing Instituteに掲載された、DuPontのGary Spangler氏へのインタビュー記事(「Talking Innovation: An Interview with Gary Spangler from DuPont」)です。
DuPontは、化学・素材分野を中心とした世界的な企業で、扱う内容も非常に専門的です。だからこそ、「難しい技術をどう理解してもらうか」という課題を強く意識していました。そこでは、「どのSNSを使うべきか」というテクニック論よりも前に、「誰に、どのように理解してもらうか」という、コンテンツ戦略の本質が語られています。
1.Search Everywhere時代に起きている変化
Search Everywhereの考え方で重要なのは、検索がGoogleの外へ広がっているという点です。
現在のユーザーは、知りたい内容によって検索する場所を変えています。レストランを探すならTikTok、チュートリアルならYouTube、リアルな感想ならReddit、商品比較ならAmazon。これらは単なるSNSやECサイトではなく、「検索の出発点」として機能しています。
さらに重要なのは、競争相手が同業企業だけではなくなっていることです。
現在は、他社サイトと順位を争うだけではなく、「プラットフォームそのもの」ともユーザーの注意を奪い合っている状態になっています。この変化によって、多くの企業が「どの媒体を使うべきか」を強く意識するようになりました。
しかし、DuPontのインタビューで語られているのは、それよりも前の段階です。
Gary Spangler氏が考えたのは、「どのSNSが流行っているか」ではなく、「自社のコンテンツが自然に合う場所はどこか」という視点でした。たとえば、人との交流やネットワーク形成が得意な会社なら、コミュニティ型のSNSが向いているかもしれません。写真素材が多いなら、画像共有系のサービスが合う場合もあります。
つまり、流行っているから使うのではなく、「自社が誰と、どうコミュニケーションを取りたいのか」から考えているのです。これは現在のSearch Everywhere時代にもかなり重要な視点です。
最近は、「TikTokっぽく作る」「YouTube向けに編集する」「AI検索向けに最適化する」といった、媒体向けの加工が増えています。もちろん、それ自体は必要です。しかし、「誰に何を理解してほしいのか」が曖昧なままでは、媒体に合わせただけのコンテンツになってしまいます。
Search Everywhere時代に本当に重要なのは、「どこで検索されるか」だけではありません。「ユーザーがどの流れの中で情報を理解し、納得していくのか」を考えることです。その意味で、DuPontが見ていたのは、媒体ではなく「オーディエンス」だったと言えます。
2.DuPontが重視していたのは「継続的な理解」だった
インタビューの中では、ソーシャルメディアはただの「安い施策」ではないという話も語られています。
現在でも、「SNSは低コストで始められる」というイメージがあります。しかしGary氏は、「企業ではそうはいかない」と語っています。
特に重要なのは、「継続的にコンテンツを供給し続ける必要がある」という点です。ブログ、Facebook、XのようなSNSは、アカウントを作って終わりではありません。継続的に更新し、新しい情報を出し続ける必要があります。
そのためには、コンテンツ制作の仕組み、編集計画、人員、予算が必要になります。つまり、ソーシャルメディアは「無料で使える場所」ではなく、「継続的な運営」が必要なメディアとして捉えられていたのです。
さらに興味深いのは、コンテンツ制作の考え方です。
DuPontでは、「媒体ごとにゼロから別のものを作る」という発想ではなく、「ひとつの情報」を複数の形式へ展開していました。たとえば、プレスリリースをブログ記事へ変換し、さらにSNS向けに短く編集する。つまり、中心となる情報を軸にしながら、各媒体に適応させていたのです。
これは現在のSearch Everywhereの考え方ともかなり近いものがあります。現在でも、記事だけでは届かない領域があり、動画や複数形式を組み合わせる必要があります。しかし重要なのは、「媒体ごとに別人格になること」ではありません。
まず中心となる知識や考え方があり、それを各プラットフォームへ適応させていくことが重要なのです。
この考え方は、現在のGEOにもつながっています。AIは、企業サイトだけではなく、動画、コミュニティ、レビュー、第三者サイトなど、複数の情報源を横断して理解を形成します。だからこそ、「同じテーマが複数の場所で一貫して存在していること」が、現在の可視性にも大きく関わっているのです。
3.透明性と信頼は、昔から重要だった
このインタビューで特に印象的なのは、「倫理」や「透明性」を非常に重視している点です。DuPontは、WOMMA(口コミマーケティング協会)のガイドラインを参考にしながら、ソーシャルメディア運用を進めていました。
そこでは、
- ・誰が発信しているのか
- ・何を目的にしているのか
- ・企業としてどんな立場なのか
を、誠実に示すことが重要視されていました。
現在は、AI生成コンテンツやフェイク情報の問題もあり、「誰が情報を出しているのか」が以前よりさらに重要になっています。
ですが、「信頼できる情報かどうか」という課題は、AI時代になって突然生まれたものではありません。ソーシャルメディアが広がり始めた当初から、すでに重要なテーマだったのです。
つまり、現在のAI時代に求められている「信頼性」や「透明性」は、新しい概念というより、昔から続いているコンテンツマーケティングの基本とも言えます。
まとめ:「どこに出すか」より、「誰に理解してほしいか」
現在は、検索場所も、コンテンツ形式も、発信チャネルも大きく増えました。しかし、その一方で、「誰に届けたいのか」が曖昧なまま、媒体向けの最適化だけが進んでしまうケースも増えています。
今回のDuPontのインタビューでは、かなり早い段階から、
- オーディエンス理解
- 継続的な運営
- コンテンツ再編集
- 複数チャネル展開
- 倫理と透明性
といった、現在にも通じる重要な考え方が語られていました。
Search Everywhere時代になると、どうしても「どこに出すか」に意識が向きます。しかし本来は、「誰に、何を、どう理解してもらうのか」を先に考える必要があります。媒体は、その戦略の結果として選ばれるものです。
配信先やアルゴリズムは変わり続けます。しかし、「誰に理解してほしいのか」から始めるというコンテンツマーケティングの土台は、昔から変わっていないのかもしれません。
執筆:今里
CONTENT MARKETING LAB ライター
※本記事は執筆及び画像作成にあたり、生成AIを利用しています。
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