【アーカイブで学ぶコンテンツマーケティング】⑥ なぜ良いコンテンツを作れないのか。顧客視点・組織・チャネルから考える
最終更新日: 2026.09.03
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この記事でわかること
1.2012年にJoe Pulizziが指摘した、良いコンテンツづくりを妨げる6つの課題
2.編集カレンダー、ペルソナ、組織のサイロ化などに対する考え方が、現在までにどう変化してきたのか
3.生成AIや新しいチャネルが登場した現在も、コンテンツづくりで大切にされている考え方
2012年に指摘されたコンテンツマーケティングの課題。14年後の現在、何が変わったのか
2012年の記事「12 Challenges that Stop Marketers from Creating Epic Content Marketing」において、Content Marketing Institute(CMI)の創設者Joe Pulizziは、世界各地でマーケターと話す中で耳にした悩みをもとに、コンテンツマーケティングを妨げる12の課題を紹介しました。
それから14年が経った2026年(当記事執筆時点) 。SNSをはじめとする発信チャネルは増え、マーケティングツールは発達し、現在では生成AIによってコンテンツを作る環境そのものが大きく変わっています。
では、当時の課題はもう過去のものになったのでしょうか。
今回は、Pulizziが挙げた12の課題のうち、元記事で具体的に説明されている6つを取り上げます。2012年の指摘と現在の状況を照らし合わせながら、変わったこと、そして今も変わっていないことを見ていきます。
課題① エディトリアルカレンダーを使っていない
2012年:コンテンツが最後に回されていた
Pulizziが最初に挙げたのが、エディトリアルカレンダーが使われていないという問題です。
当時、多くのマーケティング担当者はコンテンツ制作にエディトリアルカレンダーを利用していなかったといいます。
Pulizziは、コンテンツ以外の要素を先に作り上げ、すべてが完成してから「ここに入れるコンテンツが必要だ」と探し始める状況を皮肉交じりに紹介しています。
つまり、コンテンツがマーケティング活動の一部としてあらかじめ計画されるのではなく、最後に用意するものになっていたのです。
2026年:カレンダーがあれば十分、ではなくなった
2026年にCMIで公開されたRobert Roseの記事では、エディトリアルカレンダーで公開予定を管理するだけではなく、その前に「何を作る価値があるのか」を判断することの重要性が指摘されています。
参考:Why a Story Budget Is the New-and-Improved Content Calendar You Need Now
Roseは、チャネルごとの公開日や担当者、進行状況などがきれいに整理されたカレンダーがあっても、それだけでは「作るべきコンテンツ」を決めたことにはならないと指摘しています。
2012年にPulizziが問題にしていたのは、エディトリアルカレンダーを使わず、コンテンツが計画に組み込まれていないことでした。それに対して2026年のRoseの記事では、カレンダーで制作や公開を管理するだけでなく、その前段階で「何を作るべきか」を考える必要性にまで話が進んでいます。
大切なのは、予定どおりコンテンツを公開することだけではなく、「なぜこのコンテンツを作るのか」「誰にどんな価値を届けるのか」を考えたうえで制作を計画することです。
課題② 組織がサイロ化している
2012年:メール担当者とSNS担当者が話したことすらない
Pulizziは、あるFortune 500企業のメールマーケティング担当者との会話を紹介しています。
その担当者はメール向けコンテンツの制作・管理を担当していました。そこでPulizziがSNS向けコンテンツの担当者とどのように連携しているのか尋ねたところ、「会ったことも話したこともない」という答えが返ってきたそうです。
メール、SNSなどがそれぞれ別々に動いていては、顧客に一貫したメッセージを届けることは難しくなります。
そこでPulizziは、部署の内外を横断してコンテンツ戦略をまとめるChief Content Officerという役割を提唱していました。
2026年:サイロは今も残っている
14年後、この問題は解消されたのでしょうか。
2026年7月、CMIのRobert Roseは、マーケティング組織の「サイロ」をテーマにした記事を公開しています。Roseは、コンテンツ、ブランド、デマンドジェネレーション、デジタル、PR、コミュニケーションなどの間にある壁をなくそうという考え方が繰り返し提唱されてきた一方で、実際にはサイロはなくならず、組織に残り続けていると指摘しています。
参考:Worst Marketing Advice? Break Down the Silos
ただし、考え方には変化もあります。
Roseは、専門分野ごとの組織そのものをなくすのではなく、必要な情報や目的を共有できるように、組織間の壁を「通り抜けられるもの」にすることが重要だと述べています。
2012年には「サイロから外へ出よう」と語られていた課題が、現在では「専門性を保ちながら、どう横断的に連携するか」という、より具体的な組織設計の問題へと進んでいるといえそうです。
課題③バイヤーペルソナを使っていない
2012年:誰に向けて書いているのかわからない
Pulizziによると、当時、彼が把握している限りでは80%以上のマーケティング担当者がコンテンツマーケティングにバイヤーペルソナを利用していませんでした。
その結果、社内のコンテンツ制作者が「いったい誰に向けてストーリーを語ればいいのか」がわからなくなっていたといいます。
コンテンツを作る前に、まず「誰のためのコンテンツなのか」を明確にする必要があるという指摘です。
2026年:ペルソナはなくなるどころか、更新するものへ
現在でもCMIは、ペルソナをコンテンツ戦略に必要なものとして扱っています。
参考:Build Robust B2B Marketing Personas: The Easy-To-Follow Guide
2025年に公開されたCMIの記事では、ペルソナを一度作って終わりにするのではなく、現在の顧客像に合わせて更新する必要性が取り上げられています。
生成AIとの関係も興味深いところです。
CMIは、ペルソナ作成そのものをAIに任せることは勧めていません。一方で、複数の情報源から集めたデータの分析や、調査を効率化するためにAIを利用する方法は紹介しています。
つまり、「誰に届けるのか」という2012年の問いは変わっていません。変わったのは、その顧客を理解するために利用できるデータやツールが増えたことです。
課題④「良いコンテンツ」が何かわかっていない
2012年:自社製品の話ばかりしていた
Pulizziは、ある機器メーカーとの会話を紹介しています。
その企業は自社のコンテンツマーケティングが成功していると考えていました。そこでPulizziが、コンテンツのうち教育や情報提供を目的としたものがどのくらいあるのか尋ねると、答えは10%でした。
しかも、成功の根拠は「コンテンツマーケティングを実施していること」だったといいます。
Pulizziが考える優れたコンテンツは、自社の商品やサービスについて語るものばかりではありません。
人に情報を与える、楽しませる、行動を促す。そうした顧客にとって意味のあるストーリーを提供することによって企業への信頼につなげ、購入しやすくすることが重要だと説明しています。
2026年:生成AIで「作る」ハードルは下がった
現在、この問題には新しい要素が加わっています。生成AIです。
CMIの2024年の記事「B2B Content Marketing: 2025 Benchmarks & Trends」では、生成AIによるコンテンツの品質を「Excellent」または「Very Good」と評価したB2Bマーケターは17%でした。
生成AIによって文章などを作ること自体は容易になりましたが、それだけで「良いコンテンツ」が生まれるわけではないことがうかがえます。
2026年のCMIでも、オリジナル調査を活用したコンテンツについて、重要なのは単にデータを並べることではなく、オーディエンスが何を気にしているのかを理解し、そこにストーリーを与えることだと紹介されています。
参考:How To Turn Original Research Into a Content Marketing Superpower
2012年には「自社製品の話ばかりしない」が重要な指摘でした。現在はそれに加えて、「簡単に作れるものを大量に作るのではなく、その企業だから提供できる価値は何か」を考えることも重要になっています。
課題⑤ チャネルから先に考えている
2012年:「Pinterestで何をする?」から始めていた
Pulizziが強く問題視していたのが「Channel First」という考え方です。
当時もコンテンツを届けるためのさまざまなツールやチャネルが登場していました。しかし、新しいチャネルが注目されると、
「Pinterestで何をする?」
というところから施策を考えてしまうマーケターがいました。
Pulizziは、チャネルを決めるのはもっと後だとしています。
最初に考えるべきなのは、なぜコンテンツを作るのか、顧客は情報面でどのような問題を抱えているのか、その問題を解決することが自社にどうつながるのか、といったことです。
その答えを出してから、ストーリーを届けるのに適したチャネルを選ぶべきだという考え方です。
2026年:チャネルは変わっても「手段先行」は起こりうる
2012年のPinterestを、現在の新しい技術やチャネルに置き換えてみると、この指摘はわかりやすくなります。
生成AIが登場すれば「AIで何をする?」、AI検索が広がれば「AI検索にどう対応する?」と、新しい手段そのものが出発点になることがあります。
もちろん、新しい技術やチャネルへの対応は必要です。しかし、それを使うこと自体が目的になれば、Pulizziが2012年に問題視した「Channel First」と同じ構造になってしまいます。
実際、CMIが2025年のAI活用について紹介した際にも、AIを導入することだけではなく、どの業務を効率化できるのかを見極め、小規模に試しながらコンテンツ戦略に組み込んでいくことが提案されています。
「新しいチャネルで何をするか」ではなく、「誰に何を届けたいのか。そのために、このチャネルは必要なのか」。
ツールが変わっても、この順番は14年前と大きく変わっていません。
課題⑥ 自社が持っているコンテンツを把握していない
2012年:「コンテンツが足りない」は本当なのか
「コンテンツが足りない」というマーケターに対して、Pulizziは異なる見方を示しています。
実際にはコンテンツを十分に持っているにもかかわらず、その存在を知らない、見つけられない、整理できていない、あるいはストーリーとして利用できる形になっていないのではないか、というのです。
そこでPulizziが勧めているのが、既存コンテンツを確認する「コンテンツ監査」です。
新しいコンテンツを作る前に、まず自社が何を持っているのかを把握するという考え方です。
2026年:作った後の「更新・再利用」まで考える
この考え方も現在まで続いています。
CMIは2025年の記事で、企業のコンテンツライブラリーには、まだ価値があるにもかかわらず埋もれてしまっているコンテンツが多く存在すると指摘しています。
参考:5 Steps You Can Take Now To Make Future Content Updates Easier
さらに現在では、単に棚卸しするだけではありません。
既存コンテンツを「更新する」「別の形式で再利用する」「不要なら削除する」といった判断を行い、コンテンツを継続的に管理する考え方へと広がっています。
前出の調査では、B2Bマーケターの37%がコンテンツの再利用を課題として挙げていることも紹介されています。
2012年のPulizziは「新しいコンテンツがないと言う前に、すでに持っているものを確認しよう」と問いかけました。
現在はさらに一歩進んで、「作ったコンテンツを、その後どう生かし続けるのか」まで考える必要があるといえます。
14年間で変わったのは「手段」。課題の根っこはあまり変わっていない
2012年と2026年を比べると、コンテンツマーケティングを取り巻く環境は大きく変わりました。
編集・管理のためのツールは増え、SNSなどのチャネルも多様化しました。顧客について得られるデータも増え、現在では生成AIを使ってコンテンツの制作や分析を支援することもできます。
一方、今回の6つの課題を振り返ると、すべてが過去の問題になったとはいえません。
「誰に届けるのか」
「何のために作るのか」
「顧客にとって価値があるのか」
「社内で同じ方向を向けているのか」
「新しい手段を使うこと自体が目的になっていないか」
「すでに持っているコンテンツを生かせているか」
こうした問いは、現在にもそのままつながっています。
ただし、まったく進歩していないわけでもありません。
たとえばエディトリアルカレンダーは、単に「使うか、使わないか」から、その前に何を作るべきかを考える段階へ。組織のサイロ化は、単純に壁をなくすのではなく、専門性を維持しながらどう連携するかという議論へ。コンテンツ監査は、持っているものを把握するだけでなく、更新や再利用を前提とした継続的な管理へと発展しています。
14年前に指摘された基本的な課題が残る一方で、その解決方法は少しずつ変化してきたともいえそうです。
そして生成AIによって「コンテンツを作ること」がこれまで以上に容易になった現在だからこそ、Pulizziが2012年に投げかけた「なぜ作るのか」「誰のために作るのか」という問いは、改めて考える価値があるのではないでしょうか。
執筆:今里
CONTENT MARKETING LAB ライター
※本記事は執筆及び画像作成にあたり、生成AIを利用しています。
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