AIによるB2B購買はまだ先?企業が今、優先すべきこととは

  最終更新日: 2026.10.27

  • AIによるB2B購買はまだ先?企業が今、優先すべきこととは
  • 【この記事でわかること】
    1.AIエージェントによる購買への期待と、B2B購買が抱える現実的な課題
    2.AIによるスピード・効率の追求で見落とされがちな「価値ある摩擦」の重要性
    3.AIエージェント時代に向けて、マーケターが優先すべき顧客理解や情報整備の取り組み

生成AIの進化によって、AIエージェントが人間に代わって商品やサービスを比較し、購入する「エージェンティックコマース」への期待が高まっています。企業も、AIが買い手となる未来に向けて対応を急いでいます。

しかし、その未来は本当に目前まで来ているのでしょうか。そして、AIによる購買の自動化は、B2Bマーケティングが抱える課題を解決するのでしょうか。

Content Marketing Institute(CMI)のRobert Rose氏は、2026年9月29日に公開した記事「The Robot Buyer Isn’t Here Yet. So Why Is B2B Sprinting to It?(ロボットバイヤーはまだ来ていない。それなのに、なぜB2Bはそこへ全力疾走しているのか?)」で、こうした動きに疑問を投げかけています。

本記事では、この2026年の記事を中心に、同氏が2025年9月に公開した記事で取り上げている「Valuable Friction(価値ある摩擦)」という考え方も交えながら、AI時代のマーケティングに必要なことを考えます。

1.AIによる購買は、まだ本格化していない     

AIエージェントが商品を探し、比較し、購入まで完了させる。そんな未来を象徴する機能として、OpenAIはChatGPT上で商品を購入できる仕組みを導入しました。
しかし、Rose氏が2026年の記事で紹介したところによると、この機能は終了し、実際に利用を開始したShopifyの加盟店は30社未満にとどまっていたといいます。
一方で、エージェンティックコマースへの期待は衰えていません。Googleは2026年1月、WalmartやTarget、Shopifyなどが参加する「Universal Commerce Protocol(UCP)」を発表しました。これは、AIエージェントを介した購買を支えるための共通規格です。
また、McKinseyは、エージェンティックコマースが2030年までに世界で3兆〜5兆ドル規模の市場になる可能性を示しています。
こうした動きを背景に、B2B企業でもAIエージェントへの対応が急がれています。
しかしRose氏は、そもそも誰のために、何に備えようとしているのかを問い直す必要があると指摘しています。

 2. B2B購買の本当の課題はスピードではない

AIによる購買の自動化には、取引の効率化やコスト削減への期待があります。しかし、B2B購買の難しさは、購入手続きに時間がかかることだけではありません。

Rose氏が引用するForresterの調査によると、B2Bの購買意思決定には平均13人が関わり、86%の購買が途中で停滞しています。

また、McKinseyの2026年の調査では、買い手が取引先を変更する最大の理由として、販売企業の担当部門間で提供される情報が一貫していないことが挙げられています。

つまり、B2B購買を難しくしているのは、購入までの操作や処理の遅さだけではなく、関係者間の合意形成や情報の不一致なのです。

例えば、マーケティング部門が発信する情報と営業担当者の説明が異なっていれば、買い手は判断に迷います。AIエージェントによって情報のやり取りが速くなっても、その矛盾が解消されるわけではありません。

Rose氏は、日常的な消耗品の補充などには自動化の価値を認めています。一方で、慎重な検討を必要とするB2B購買においては、AIによる効率化だけで根本的な問題を解決できるとは考えていません。

B2B購買課題とAI準備の4施策_1MB以下

3. AI活用で増えるのは、スピード・効率・制作量? 

では、マーケティングの現場ではAIがどのように使われているのでしょうか。

Rose氏は、2026年9月の記事で、CMIの「2027年版B2Bコンテンツ・マーケティングトレンド調査」から、いくつかの結果を紹介しています。

調査では、B2Bマーケターの88%が所属組織でAIを活用したコンテンツ制作ツールを使用していると回答しました。また、60%が過去1年間にその利用を拡大しています。

AIエージェントについては、13%が戦略の中核に位置づけ、46%が実験的に利用していると回答しています。

一方、AIがコンテンツ制作・運用にもたらした効果として挙げられたのは、次の3つでした。

  • スピードの向上:78%
  • 効率の向上:59%
  • 制作量の増加:44%

いずれも、生産性に関わる効果です。

Rose氏が問題視しているのは、AIによって顧客への理解が深まったのか、企業のメッセージが明確になったのか、コンテンツの成果をより正確に把握できるようになったのか、といった点が見えてこないことです。

さらに、StackAdaptの調査では、マーケターの90%がAIを利用している一方、自律的な行動をAIに任せることに抵抗がない人は約半数にとどまっています。

AIの導入が進んでいることと、AIを十分に活用できる準備が整っていることは、必ずしも同じではないのです。

 4.「速い=良い」とは限らない――価値ある摩擦という考え方 

ここまで見てきたように、AI活用の成果として語られやすいのは、スピードや効率、制作量です。

しかしRose氏は、こうした「速さ」への偏重について、以前から別の角度で問題を提起してきました。

その考えを象徴するのが、

“faster is only better sometimes”
――速いことが、より良いことになるのは場合によってだけだ

という言葉です。

AIを使えば、文章作成や情報整理、比較検討など、多くの作業を短時間で行えるようになります。しかし、時間を短縮できることと、結果がより良くなることは同じではありません。

Rose氏は2025年の記事で、「Valuable Friction(価値ある摩擦)」という考え方を紹介しています。

これは、すべての手間や時間を無駄として取り除くのではなく、思考や判断、創造性、学びにつながるプロセスには、あえて残す価値があるという考え方です。

記事では、ある金融サービス企業のマーケティング責任者の経験が紹介されています。

その人物は若い頃、マーケティング、営業、広報部門の職務記述書を調査して作成する仕事を任されました。非常に時間のかかる作業でしたが、その過程で、各部門の役割だけでなく、部門間の関係や組織文化、実際の仕事の進み方まで深く理解できたといいます。

現在なら、同じ文書をAIで短時間に作成できるかもしれません。

しかし、そこで短縮されるのは単なる作業時間だけでしょうか。

調べる、比較する、考える、問い直す。そうしたプロセスの中で得られていた理解や気づきまで失われる可能性があります。

Rose氏が問題にしているのは、AIによる効率化そのものではありません。

重要なのは、

「この作業は速くすることで、本当により良くなるのか」

を見極めることです。

情報を探す手間や、単純な繰り返し作業のように、減らした方がよい摩擦もあります。

一方で、考えること、判断すること、顧客について理解を深めること、アイデアを練ることなど、価値を生み出すために必要な摩擦もあります。

すべてを速く、滑らかにすることが最適とは限りません。

この視点で見ると、AIエージェントによる購買にも同じ問いを向けることができます。

購買プロセスを速くすることは、本当に顧客にとってより良い意思決定につながるのか。

AI時代に必要なのは、摩擦をすべてなくすことではなく、なくすべき摩擦と、残す価値のある摩擦を見極めることなのです。

5. AIエージェント時代に本当に備えるべきこと 

では、企業はAIエージェントへの対応を後回しにしてもよいのでしょうか。

Rose氏は、そう主張しているわけではありません。AIによる購買を支える技術や規格は実際に進展しており、その可能性を無視すべきではないとしています。

ただし、優先すべきなのは、AIエージェント向けの新しい購買機能を急いで導入することではなく、マーケティングの基盤を整えることです。

Rose氏は、具体的に次のような取り組みを挙げています。

  • AIエージェントが読み取れるよう、製品データを正確かつ十分に整備する
  • AEO(回答エンジン最適化)やGEO(生成エンジン最適化)に取り組み、AIが企業の情報を参照できるようにする
  • 顧客と直接対話し、実際に何を知りたがっているのかを理解する
  • Webサイトと営業担当者の説明に一貫性を持たせ、企業として伝える内容を統一する

これらは、AI時代になって突然必要になったものではありません。従来のマーケティングでも重要とされてきた取り組みです。

Rose氏は、将来AIエージェントが買い手になったとしても、その判断材料になるのは、企業が提供するデータやわかりやすい回答だと指摘しています。

AIに選ばれるための準備は、人間の顧客に正確で信頼できる情報を届けるための準備でもあるのです。

おわりに

AIエージェント時代に重要なのは、すべてを速くすることではありません。

情報収集や単純な比較、繰り返し作業のように、AIによって減らした方がよい手間はあります。一方で、顧客を理解すること、違いを考えること、社内で認識をそろえること、伝えるべき価値を言葉にすることまで、急いで省略してよいわけではありません。

Rose氏の2つの記事に共通しているのは、「AIで速くできること」と「速くすべきこと」は同じではないという視点です。

エージェンティックコマースへの対応も同じです。AIが買い手になる未来を見据えることは必要ですが、その前に、自社の商品やサービスが誰のどんな課題を解決し、なぜ選ばれるのかを、わかりやすく一貫して説明できているでしょうか。

AIは、そこにない価値や一貫性を自動的につくってくれるわけではありません。

むしろAI時代だからこそ、顧客理解、正確な商品情報、一貫したメッセージといった、これまでコンテンツマーケティングで大切にされてきた基本がより厳しく問われるようになります。

速くするべきところは速くする。考えるべきところでは、あえて立ち止まる。

その見極めこそが、AIエージェント時代のマーケティングに求められるのではないでしょうか。

 

執筆:今里

CONTENT MARKETING LAB ライター

※本記事は執筆及び画像作成にあたり、生成AIを利用しています。

 

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