Facebook社のコンテンツストラテジストは現場で何をしたか~戦略設計から展開までの実際をセミナーに学ぶ
英ロンドンで開かれたイベント「Usability Week London」。そこで開催されたコンテンツストラテジーに関するワークショップに編集部も参加した。そこでは、Facebook社のコンテンツマーケティングにまつわる貴重なエピソードも紹介された。
5月中旬、イギリス ロンドンでNorman Nielson group が主催するユーザーエクスペリエンスをテーマにした7日間に渡るイベント「Usability Week London」が開催された。
編集部はその中で催された「Content Strategy 1&2」という、2日間にわたる座学形式のワークショップに参加した。今回から3回連続で、その模様をお伝えする。
登壇したのは、イギリスの広告代理店Sticky Contentの創業者兼CEO、Catherine Toole氏。同氏は、本ワークショップでコンテンツマーケティングを機能させるためのストラテジーに欠かせない要素、そして、米Facebook社のコンテンツストラテジストに就任したSarah Cancilla氏をモデルに、会社全体をコンテンツストラテジーの実行に巻き込む術を紹介した。
コンテンツストラテジー設計の際に定義すべき要素
コンテンツストラテジーの定義は企業によって異なるものである。また、それぞれが個別具体に設計すべきものでもある。しかし、設計するにあたり検討すべき共通項も多い。ワークショップの中で紹介されたコンテンツストラテジーを設計する上での不可欠な要素は、以下のものだった。
- 企業としての目的・ゴールを明確にする
- ターゲットやユーザー像を定義する
- 効果測定、評価、改善を繰り返す
- 継続して行う
- 数多くあるコンテンツの質や内容が一貫して保たれているよう管理する
- 効率的、かつ計画性の高いプランを立てる
- 作られたコンテンツが世の中に出ていく前の最終チェックを行う
- ターゲットにとって関連性が高いコンテンツとは何かを追求していく
- 組織の中で誰が何を担当しているのかを明確にする
- ターゲットにとって利便性の高い機能を提供する
- 常に正しい情報に整っているか管理し、古くて間違っている情報がないよう更新しつづける
- 企業の目指す姿やバリューが伝わるようなメッセージ設計を考える
- コンテンツを作るだけではなく、どのチャネルを使って、どのようなエクスペリエンスをユーザーに提供するかを企画していく
- 自社ならびに他社のコンテンツのキュレーションを行っていく
ひと通り読まれておわかりだろうが、これらの要素を検討し、実行に移すためには、会社全体を巻き込まなければならない。コンテンツマーケティングという概念自体が知られつつある今のフェーズならなおさら、自社にとってのその定義を明確にし、社内で浸透させていくことが重要となる。
Facebook社のコンテンツストラテジストが実践した社内の巻き込み策
Toole氏曰く、Facebook社で初めてコンテンツストラテジストに就任したSarah Cancilla氏も、実行当初は社内でその役割を全く受け入れてもらえなかったという。何事も作りながら試行錯誤を繰り返す、アジャイル型で仕事をするエンジニアに対して、実行前に戦略を精緻化することの重要性を伝えきれなかった点がその主な要因だ。
そんな彼女は、あるエンジニアがFacebookに登録したばかりのユーザーにその機能を説明するFacebook Tourの開発を行っている現場に出くわした。このエンジニアによると、それを閲覧した人はロイヤルユーザーになりやすいという。
Cancilla氏は、「このTourの閲覧率を上げ、ロイヤルユーザーを増やす」いうゴールをセットし、エンジニアにTourの中でFacebookを説明するコピーの表現や、テキストの配置位置などの改善案を提案した。また、開発を終えてから綿密なクオリティチェックをせず、即座に本番反映を行おうとしたエンジニアを止め、内容やトーンが整っているかコンテンツの最終チェックを行った。
その結果、Tour の閲覧率は50%以上アップ。社内でCancilla氏の認知は高まり、彼女の元には多くの依頼が来るようになった。信頼と期待を得られたCancilla氏は、コンテンツストラテジーの考え方を広め、理解を深めてもらうために、FOCS(Frind of Content Strategy-コンテンツストラテジー仲間)という文字が入ったTシャツを、一緒に仕事をした同僚に配った。このことから、仕事の関係だけではなく、職場環境の関係も改善できたという。
Toole氏はこの逸話を通して、社内からコンテンツストラテジーに対する理解を得るためには、以下の3つのポイントが重要だと述べた。
- 「企業にとってコンテンツストラテジーとは何か?」「どのようなことを達成しなくてはいけないのか?」を明確にし、実行すること。つまり、能動的に社内で働きかけ、小さなプロジェクトから、メソッドの実践と実績を積み上げていくこと。
- コンテンツストラテジーに共感してもらい実行するためには、どのような「情報」や「アウトプット」があればよいのかを考えてみよう。Cancilla氏の例でいうと、コンテンツストラテジーを用いた成功実績や、コンテンツの質を保つためのワイヤーフレーム、そしてTシャツが成功の鍵であった。新しいやり方を導入するときの共通のポイントであるが、実績で安心させ、具体的指針を示し、感情的にも巻き込む工夫が必要なのだ。
- 社内に仲間を増やすこと。先ほどのTシャツの例にあるように、一緒に取り組んでくれた人たちを仲間にし、コンテンツストラテジーは自分ひとりの取り組みではなく、組織の取り組みなのだと認識してもらうことが重要である。結果として、仕事の依頼を増やせるだけでなく、信頼関係を築きあげていくことにもつながるだろう。
次回のレポートでは、コンテンツストラテジーを実行するための手順、コンテンツを魅力的に演出するためのコピーライティングのコツなどを紹介する。
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