アメリカとは違った視点で語られるコンテンツマーケティング
今回参加したイベントの主催団体はイギリスに拠点を持つContent Marketing Association(CMA)。Content Marketing Worldを主催するContent Marketing Institute(CMI)とは異なる団体である。CMIはアメリカを拠点にした団体であるのに対し、このCMAはイギリスつまりヨーロッパを中心にした団体だ。よってこのイベントで語られる内容もイギリスを中心としたヨーロッパにおけるコンテンツマーケティング事情を色濃く反映したものであった。
今回のセミナーを主催するCMAは以前Association of Publishing Agenciesという名で活動していた。この名前からもわかるように、もともとの出自は出版系の会社の集まりであった。しかし近年のメディア環境の変化もあり、今年から団体名をContent Marketing Associationと変更。今回のイベントが記念すべきCMAとして第1回目のイベントである。
このイベントではコンテンツマーケティングを5つの切り口から捉えたセッションで構成され、大手代理店や企業のマーケティング担当者、雑誌編集者など約20名のスピーカーが登壇した。
ヨーロッパ諸国や南アフリカ、アメリカ、そしてアジアから400名ほどのマーケターが来場し、賑わいをみせた。
今回はこの参加したイベントへの参加を通じて得た感想を「ストーリー」「紙媒体の位置づけ方」という側面から紹介したい。
「ストーリーこそがすべての起点」という考え方
最も印象的だったのは、セッション中に何度も強調されていた「ストーリー」という言葉である。たとえば、ここにひとつの物語があるとする。その物語は語り継がれながら、絵本・映画・ゲームなど様々なコンテンツに発展していくことが現実によく起こりうる。このことと同じことがマーケティングコミュニケーションにも適用できる、という発想がセミナーの根底にあるようだった。つまりそれは、根幹となるストーリーがまずあり、それがコンテンツに派生し、そしてマーケテイングコミュニケーションとなって消費者に伝わるというイメージだ。
ストーリーとコンテンツの関係(弊社理解)
この考え方は、購買プロセスに沿って戦略的な配置を行うことを前提として議論されているアメリカにおけるコンテンツマーケティングとはまた別の側面からのアプローチといえるだろう。
コンテンツマーケティングにおける紙媒体事例
ここでひとつ印象的だった事例を紹介しよう。それはJohn Lewisという百貨店が発行する来店促進カタログだ。
表紙
このカタログの特長は、出版社によって制作されている点にある。内容を見てみるとJohn Lewisで売られている商品の紹介だけでなく、ファッションスタイルの提案やコラムも含むマガジンスタイルになっており、まさに出版社のノウハウが注入されたものだといえるだろう。
商品紹介だけに終わらない紙面構成
つまり「欲しい商品を探す」という従来のカタログの役割に加えて、「欲しい商品に気づく」という機能もこのカタログに盛り込んでいるのだ。
そもそもコンテンツマーケティングとは、インターネットの普及により「誰でも簡単にパブリッシャーになれ」そして「その情報を検索したり推奨し合いながら受け手が主体的に発見できる」ことを背景に生まれたアイデアだ。そして「マス広告や紙ツール、そしてデジタルを含む様々なマーケティングコミュニケーション手法を駆使して最大の効果をあげるためにはどうするべきか」という課題の処方箋として登場したという点はアメリカでもヨーロッパでも変わらない。しかしこのような事例紹介はなかなかアメリカでのイベントではお目にかかれないのが実情だ。同じ背景・課題から出発しても地域によって取り入れ方に違いがある、この点は実に興味深かった。
次回からは、このセミナーで印象に残った5つのセッションを順番に紹介していきたい。