5年間で2,080本、書き手500人という驚異的な成長を遂げた技術ブログ——。
実はたった一人の広報担当者から始まったお話です。
株式会社SHIFTの技術ブログは、2024年にコンテンツマーケティング・グランプリを受賞したすばらしいオウンドメディアです。今では全従業員7,500人の15人に1人が参加する大きなコミュニティに成長しました。でも、どうやってここまでになったのでしょうか?その秘密には、きっと皆さんの参考になるヒントがたくさん詰まっています。
みなさん、こんな悩みはありませんか?
・技術ブログを立ち上げてみたいけれど、一人での運営って大変そう
・執筆者のモチベーションを保つのって、どうしたらいいんだろう?
・社内を巻き込んで記事執筆と通常業務を両立する仕組みって作れるのかな?
もしこんな風に感じたことがあるなら、SHIFTさんの取り組みがきっと参考になるはずです。
語り手は株式会社SHIFT広報IR部の野澤さんと寺山さん。野澤さんはIT企業の広報として色々なメディアにコンタクトをしてきた経験を持ちながら、5年前にnoteを使って一人で技術ブログを立ち上げました。その時の気持ちを「農業のように地道に耕し続ける」と表現されているのが印象的でした。
■コンテンツマーケティング担当者が学ぶべきポイント!
SHIFTの技術ブログ運営で特に面白いなと思うのは、「技術」の意味を広く捉えているところかもしれません。エンジニアの技術記事だけでなく、営業や人事、広報など色々な職種の方のノウハウも「広い意味での技術」として扱っています。この考え方によって、従来のエンジニア向けのブログから、会社全体でナレッジを共有できる場所へと変わっていったようです。
一人での限界を「作業の分解」で突破
最大の転機は、野澤さんが一人での企業公式note運営に限界を感じた時でした。書き手の個別対応、Wordでの入稿作業、Excelでの実績集計——すべてを一人で抱え込んだ結果、「骸骨のようになった」という状況に。
でも、ここでSHIFTさんが得意としている「業務分解」を元にした「DX」の考え方を導入。定型の作業を細かく分解して、手間がかかっていた作業の自動化に着手しました。
例えば、noteからCSVで書き出されるデータを自動で自前のデータベースに取り込み、ダッシュボード表示。誰がどんな記事を書いて、どれくらい読まれているかが、ほとんど手作業なくリアルタイムにわかるようになりました。
この「見える化」のおかげで、書いてくれる方のやる気が続きやすくなったり、運営側の作業も効率的になったりと同時に実現。毎週のランキング発表や個人の成果をお知らせすることで、みんなが楽しく続けられる環境を作っています。
さらに業務分解を進めることによって、分担も進みました。現在は広報2名を中心に、記事の入稿担当が5名、データ管理をしてくれる方が1名の計8名で運営されているとのことです。
記事執筆から、専門家・有識者のレビュー、入稿作業、公開作業などの一連の業務が、整理された業務フローとしてスムーズに進行できるようになっています。
参加しやすい「雰囲気づくり」の工夫
野澤さんが特に力を入れたのが、社内で「参加しやすい空気」を作ることです。
・社長が出演する社内ラジオでブロガー(社内執筆者)のランキングを紹介
・各部署のリーダーに丁寧に説明して協力をお願い
・社内の勉強会で技術ブログを紹介
・個人の目標に技術ブログ発信を取り入れてもらう
「熱量は人からでしか人に届かない」——この言葉が印象的でした。キーパーソンの方々を巻き込んで全社的な応援体制を作ることで、書くことが「特別なこと」から「普通のこと」になっていきました。
今日からできそうな「小さなおせっかい」
本編動画の中では、野澤さんが実践している社内を巻き込むテクニック=「小さなおせっかい」もお話いただいています。
大きな組織の中で、どうやって広報として信頼を得て、執筆依頼につなげているのか。広く様々な企業の広報の方にしっていただきたいテクニックが満載です。
ぜひ本編動画をご覧ください!
予想していなかった嬉しい効果も
SHIFTさんの技術ブログは、最初に想像していた以上の価値を生み出しています。
・採用への良い影響:あるチームでは、応募者の9割の方が事前にブログを読んでからエントリーしてくれるように
・お客様との新しい接点:自社サービスに関する記事がお客様とのコミュニケーションツールになった
・技術力のアピール:世界で約300人ほどしか選ばれないグローバル認定を含む、AWS認定を延べ14人の方が取得する後押しになった
・会社の文化を伝える:多様性のある企業文化を外に向けて発信できるようになった
一般的な技術ブログを超えて、社内外のブランディングにも貢献しているすばらしいメディアに成長しています。
■このセッションのポイント
SHIFTさんの5年間の取り組みからヒントを学ぶことができます。
・一人担当者でも効率的に運営する工夫
・「見える化」で社内のモチベーションを保つ仕組み
・社内の色々な人を巻き込む「雰囲気づくり」のやり方
最後に、野澤さんはこう締めくくりました。
「地道に耕して、種をまいて、観察と試行錯誤を繰り返す。気がつけば隣で一緒に耕してくれる人がいて、みんなで成果を分かち合える」——短期的な成果を急がず、長期的な視点でコミュニティを育てることの大切さが伝わってきます。
ぜひCMD2025で、あなたのメディア運営を
次のレベルへと押し上げるヒントを掴んでください!
登壇者のコメント
野澤さん: 5年前に一人で始めた時は、正直とても不安でした。でも「誰もやったことがないなら、自分なりにやってみよう」と思って、思いつくことを一つずつ試していきました。技術ブログの運営って、農業みたいなものかもしれません。地道に続けていれば、きっと豊かな実りを得られると思います。特に大切にしているのは、「小さなおせっかい」を積み重ねることと、書いてくださる方々との信頼関係づくりです。同じような取り組みをされている方と、ぜひ情報交換できたら嬉しいです。
寺山さん: 入社してから気づいたのは、発信したい気持ちはあるけれど、どこに相談したらいいか分からない方が意外と多いということでした。私たち運営側から現場に歩み寄ることで、「広報って身近な存在なんだ」と感じてもらえるようになったと思います。これからも、書いてくださる皆さんが楽しく発信できる環境を作っていきたいです。