第2回でスポットを当てるのは音声コンテンツ「ポッドキャスト」。
紹介するのは、学研の図鑑LIVE編集部の『聞く図鑑』です。

ポッドキャスト「聞く図鑑」(学研の図鑑LIVE編集部)
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取材のお願いに応えてくれたのは、『聞く図鑑』に出演している(株)Gakken「学研の図鑑LIVE」編集長の松原由幸さん、編集部員の庄司日和さん、ブランドプロモーション課広報の戸口木綿子さんです。ご協力いただき、ありがとうございます。
……と、インタビュー後のある日。SNSが盛り上がっているので、見てみたら、なんと驚くではありませんか!
「有隣堂しか知らない世界」× Gakken 『学研の図鑑LIVEエクストリーム ティラノサウルス』
YouTubeライブで図鑑4,000冊が10分37秒で完売

株式会社有隣堂プレスリリースより
有隣堂のプレスリリースを見てみると、
『株式会社有隣堂は、公式YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」にて、2025年11月20日(木)に実施したライブ配信企画『学研の図鑑LIVEエクストリーム ティラノサウルス』(発行:株式会社Gakken)において、限定4,000冊を販売開始からわずか10分37秒で完売いたしました。
最大同時視聴者数は約1.6万人を記録し、リアルな書店とバーチャル空間の両方に“ファン(総称:ゆーりんちー)が集う場”を形成。書店の新しい顧客体験モデルを提示しました』とのこと。
4千冊を10分で? 凄すぎます! いやあ、恐れ入りました。
この模様は、有隣堂公式YouTubeにて視聴可能です。

『学研の図鑑LIVE エクストリーム ティラノサウルス』(Gakken)
2025年11月27日発売
また、SNSの盛り上がりはToggeterにもまとめられていました。
これから紹介する記事内容でも「出版不況の現状」にも触れられますが、松原さんはすでにあらゆるメディアを使って、コンテンツマーケティングを試しているようにもお見受けしました。
気持ちが伝わる音声コンテンツ=ポッドキャスト
さて、お話はポッドキャストに戻します。
いつでも気軽に聴けるポッドキャストは人気が高く、2025年の第5回ポッドキャスト国内利用実態調査によるとその利用者数は2,000万人以上。
「月1回以上ポッドキャストを聴く人」の割合は、17.2%(2024年時点)で、年々上昇しています。
「日本語ポッドキャスト爆増元年」といえる2019年には1年間だけで約50倍になったといわれるほど日本でのポッドキャスト人気が高まりました。
そんな、星の数ほどあるポッドキャスト番組の中から『聞く図鑑』はリスナー数が今も増え続けており、「PODCAST RANKING」にあるデータをみても、Apple Podcastの「2025年ベスト」(エディターが選ぶ、2025年開始のポッドキャスト・ベスト10)に選ばれるなど、注目度の高さがうかがえます。
『学研の図鑑LIVE』シリーズは、写真、イラストと最新情報がつまっている本格図鑑です。2022年6月より『学研の図鑑LIVE 新版』としてリニューアルされ、学習図鑑を更新する取り組みが斬新!と図鑑好き界隈に大好評となっています。
実は先日、すでに『学研の図鑑LIVE 新版 魚』を「ブックサンタ」してきました。こういう図鑑をXmasプレゼントされたら子どもたちは絶対に嬉しいはず。「読んだ子は魚好きになれ〜」と念を込めてきました(笑)。
2024年からすでにYouTubeでライブ配信をしていた「学研の図鑑LIVE」編集部の松原さんと庄司さんのお二人。しかし、もっと視聴者に習慣的に受け取ってもらえるコンテンツを提供したいと感じ始めていました。
『学研の図鑑LIVE 新版 魚』(Gakken)

YouTube【学研の図鑑LIVE】チャンネルより
また、以前から松原さんは先述の『有隣堂しか知らない世界』 や、人気のポッドキャスト番組「ゆる言語学ラジオ」にゲスト出演して、リスナーの反応から感じていたことがありました。
それは「大人になっても知的好奇心があって、図鑑に興味があっても、なかなか触る機会がないという人が多いな」ということ。
それならば「図鑑のファンを広げるために、子どもだけでなく大人に向けて。定期的に自分たちの言葉で発信できるポッドキャストをやってみよう」と思ったといいます。
そして、松原さんが元々ラジオ好きだったこともあり、2025年5月1日よりポッドキャスト『聞く図鑑』がスタートしました。
「ぼくらが無理せず、自然に喋れることを」
『聞く図鑑』はApple Podcast内カテゴリーでいうと「ブック」に属するポッドキャスト。
淡々と喋る(トボけた感じの)松原さんと、かわいい声の庄司さんの雑談は本当に癒やされます。2人のトークの温度感もバランスが良く、とても聴きやすいのです。
専門的な内容でも、知らない分野の話でも、ちっとも難しく感じません。かえって、「知らないことを知れて楽しい・嬉しい」という気持にさえしてくれます。これぞ「図鑑」トーク!
番組の構成はとてもシンプルです。
- 前半が実際に図鑑を開きながら自然科学について話すパート
- 後半は2人の近況について話す雑談パートです
お互い、ひと月に2本ずつネタを持ち寄るそうです。この構成がしっかりしているからこそ、収録音声は「録って出し」状態に近いようなのです。
更新は週1回(木曜日)です。編集は庄司さんが担当。
「毎回ちょっとずつ加工してみたり、どうしたら聴きやすくなるのかを試行錯誤しながら」編集しているそうです。
2人の掛け合いも、自然で親しみやすく、ファンも多いからなのでしょう。
おたよりを募集したところ、たくさん送ってくれて、現在は月に1回くらいのペースでおたよりを紹介するようになりました。。
松原さん曰く「おたよりは全部を紹介できなくて心苦しいのですが、我々が思っている以上に来ています。ありがたいですね」とのこと。
「ずっとラジオ好きだった」松原さんに対して、「今までラジオを聴いたことがない」という庄司さん。
「科学コンテンツにありがちな、リスナーに対して、一方的に教えている——教えられている、という構図よりも、横に座って一緒に図鑑を開いている感じです。一緒に楽しみたいというスタンス。そういうのって音声でしか出ない味でもあるのかな。図鑑や本を開いて『これ、面白いな』『あれ、いいね』という空気感ができているのは音声ならでは、かなと感じています」(庄司日和さん)
「一緒に図鑑を開いている感じ」は、ちゃんとリスナーに伝わっています。
「理解者を増やせたらいいな」
このメディアの明確な目的は何なのでしょう。
まず、この番組は、Spotify(メイン)、Apple Podcast、Amazon Music、YouTubeの4媒体で配信しています。右肩上がりでリスナー登録数が上昇しており、1、2ヵ月で2000人ずつ増えているとのこと。
4媒体合わせて1万人以上のリスナー数という感覚がある、とのことでした(2025年10月現在)。
特に広告宣伝をかけていない企業のポッドキャストでこれだけの成長率がある番組は稀です。しかも、より受け手の感覚・感情に訴えやすい音声メディアのリスナーは、映像の視聴者に比べてよりコアなファンになりやすいと言われています。
松原さんは、『聞く図鑑』が「図鑑の売上げに影響が出ているかはまだわからない。でも、ビジネス的に明確な成功が、ある・なし、はいったん置いておいて『理解者を増やせたらいいな』と思って続けています」と語ります。
「出版不況と言われたり、子どもが減っていたり、児童向けの書籍が置かれている現状は相当厳しいと言えます。その中でも、何百万人じゃなくてもいいから、我々の『一緒に楽しむ』ことにしっかり深く共感してくれる何万人がいることの方が大切です。そういう意味でもリスナー登録数1万人規模になったことはぼくらの中で相当な支えになっています」(松原編集長)
AMラジオでも聴いているのが1万人というのはかなり多い方と考えられます。数字的には1万人規模でも、それ以上のものになる可能性を感じます。
「図鑑は様々な出版社から発刊されており、比較検討されて購入されます。そのときに、作り手の顔が見えることがシリーズへの信頼感につながってほしいという意図があります。あとは、『大人だけど図鑑読んでもいいよね』『大人になって久しぶりに図鑑を読んだ』という新しいお客さんを広げるためでもあるのです」(松原編集長)
このポッドキャスト番組の影響はもっともっと大きくなりそうです。
多分、大人向けイベントやればひとは集まると思います。夏休み期間にぜひ!
作り手の熱が良い温度感で伝わる・伝える!
このメディアの目的のもう一つはブランディング(広報)。 だから、広報の戸口さんからの熱い想いもあります。
今までも「作り手の思い」や「制作現場」を、noteやプレスリリースにして紹介してきたGakken広報チーム。いろいろな手法を試してきたといいます。
ところが、世の中に発信される数多あるプレスリリースに埋もれてしまって、ターゲットどころか紹介するメディアにもたどり着いていないと感じていました。日に700〜800本ものプレスリリースなんて、目を通せませんよね。
「売れてるから紹介してよ」という「逆算」的な紹介ではなく、「こういう熱い想いを持って、本を作っている人がいて」「そういう想いでできあがった本がある」という現場の想いを直接メディアにもお伝えしたい。そんな想いを持っている広報の戸口さん。
「『こんな本が出ます』とただ言っても聞いてもらえないですが、『作っているのってこういう人』って発信すると『なんか面白そうだね』って興味を持ってくれる。『その人』の熱が、良い温度感で伝わるんです。それも『聞く図鑑』は、やらされてる感、言わされてる感がない。自然なやりとりだからこそ人の胸を打つのだと思います」(広報・戸口さん)
広報として、「長い文章を読むために時間を作ってもらうのも大変なこと」なので、「仕事しながらBGM代わりに聴いてください」と広めている戸口さん。
「特に聴いてほしい回」を勝手に共有して「図鑑をつくっている人の、人柄を知っていただく」「興味を持っていただく」ところから始めて、広報としても大いに活用しているといいます。
戸口さんは熱量が高く、なおかつ、とても冷静。「冷静と情熱のあいだ」です。
コンテンツマーケティングで重要なのは、企業と消費者との間で信頼関係を段階的に構築すること。ただ一方的に売り込むのではなく、企業が伝えたいことと消費者が知りたいことをすり合わせて、まずは人として信頼関係を築くことからはじめることが基本です。
「学研の図鑑LIVE」編集部の松原さんと庄司さんのポッドキャストは、まさにコンテンツマーケティングの基本を押さえていらっしゃいます。生成AIが普及する中で、体験談などの一次情報こそが重要だと言われていますが、お二人のポッドキャストは生成AIには代替されにくい独自の世界観を持ったコンテンツだと感じました。
ところで、冒頭も触れた話題の『学研の図鑑LIVE エクストリーム ティラノサウルス』(Gakken)ですが、ティラノサウルス好きとしてはじっとしてはいられません(書店で自分用に買います!)。
好きすぎて、ティラノサウルスが漫才をするコメディ小説『男どあほうT-REX紀』(2009年/第5回新潮エンターテインメント大賞最終選考作品)を執筆したほどです。
誰か書籍化してほしいぐらいですが、いかんせん、私には広報・戸口さんのような存在はいません。
優れた表現者や作品を創るアーティスト、クリエイターの中には、「自分のことを宣伝するのが下手」な人が多いのです。広報担当者は本当に大切な存在です。
有隣堂とコラボする松原編集長は稀有なキャラクターではありますが、やはり「学研の図鑑LIVE」には広報が必要です。
松原さんと庄司さんのポッドキャストがとても良いバランスのように、広報の戸口さんともきれいな三角形を描いて心地よいメディアを作ってくれているように感じました。
これからもPodcast『聞く図鑑』と「学研の図鑑LIVE」に期待しています。
執筆:魚住 陽向
編集:Content Marketing Academy 村上 健太