コピーライターに学ぶ、読み手を「動かす」コンテンツ作りの7つの手法
コンテンツマーケティングにおいて最終的なアウトプットの質を左右するのがコピーだ。読者の心に触れ、行動を起こさせる力を持ったコピーづくりに欠かせない要素とは?紙媒体時代から重要視されてきたコピーライティングの技術に注目が集まっている。
時代によって変化する「コピー」と「コンテンツ」がそれぞれ果たす役割とは?
コンテンツマーケティングを成功させるためには、まずは「コピー」と「コンテンツ」がそれぞれ持っている役割を知ることが重要だ。
従来のマス広告において、「コピー」とはターゲットを説得するものであり、読者に意図した行動(=購買や成約など)を起こさせることを目的とするものであった。つまり「コピー」とは、「印刷されたセールスマンシップ」といわれるように、購買や成約などのアクションへの“最後の一押し”を担っているものだと言える。
一方で「コンテンツ」とは、それよりもっと幅広い役割を担っている。ターゲットを集客し、関係を築き、持っている悩みに対するソリューションを提案しながら、最終的に購買や成約へと導いていく。つまり、より広い範囲において読者を購買まで“導く”ものだといえる。
インターネットの普及に伴い、情報量に制限のある広告枠を企業が買う時代から、自社メディアやSNSを活用して情報を自由に発信できる時代へと、情報発信のスタイルも変化しつつある。その結果、限られた情報量で“端的に表現し、行動を起こさせる”文章のプロでなくとも、伝えたい情報を伝えられるようになった。時代が求めるものは「コピー」から「コンテンツ」へシフトし、結果的にコンテンツマーケティングという手法を通して、より深く広いコミュニケーションアプローチが可能になったのだ。
重要なのは「コピー」のノウハウをコンテンツ作成に活かすこと
だからといって「コピー」が担ってきた“最後の一押し”の要素が不必要になったわけではない。むしろコピーライティングで培われた「説得力のある語り方」を取り入れることで、より効果的なコンテンツをつくることができるだろう。実際、賢いコンテンツマーケターは、長年広告業界で「ダイレクトレスポンスコピー」の手腕を発揮してきたコピーライターからノウハウを学び始めている。その中から特に注目すべき7つの大切なポイントを紹介しよう。
1.「見出し」を熟考すること
コンテンツの内容がどれだけ素晴らしくても、見出しが曖昧でわかりづらければ、読者は読まずに去って行ってしまうだろう。また、たくさんの読者との接点を設けることができたとしても、彼らと関係性を深めていくためには、継続的に関心を惹き続ける必要がある。読者の目に留まり、心をつかみ、関係性を持続させるために大きな役割を果たすのが、すぐれた見出しだ。(もちろんコンテンツ自体も質の高いものであることが前提だ。)
具体的な見出しづくりのヒントは、下記サイト内にある無料e-Bookで学ぶことができるのでチェックしてみよう。
2.言葉遊びをしすぎないこと
ダジャレや言葉遊びは、書き手にとって実に楽しいものである。しかし、読者にとっても楽しいものであるだろうか?一度考えてみるべきだ。どのような言葉を使うか適度に検討することは、意図を正確に伝えたり、文章をより魅力的なものに仕上げたりするために必要なことだ。しかし、あまり技巧的になりすぎてしまうと、本来の意図が正しく伝わらず、読者に混乱を与えてしまう可能性があることも、覚えておかなければならない。
言葉遊びをするのなら、ほんの少し、スパイス程度にとどめておくこと、そして決して見出しに使ったりはしないようにすることがポイントだ。
3.魅力的なビジョンを語り、読者の心をつかむこと
ただ事実に基づいた情報を淡々と一方的に書き綴ったものは、コンテンツマーケティングにおいて優良なコンテンツとは言えない。読者の心をつかみたいのならば、商品がどのようなメリットをもたらすのか、利便性だけを無機質に語るのではなく、読者の期待やイメージが膨らむような夢やビジョンをいきいきと語ろう。魅力ある壮大なビジョンとともに情報を発信することが、人々の心を動かす大きな力になる。アップル社の「iPod.。1000曲をポケットに。」というコピーがそのよい例だ。
4.コピーを書く前に、調べ尽くすこと
著名なコピーライターであるGary Bencivenga氏の言葉に「もっともすぐれたコピーライターとは、もっとも執念深い探究者である」というものがある。何かのトピックについて権威あるコンテンツを執筆する場合、書き手自身もそのトピックについて熱心に学び続ける姿勢が必要だ。
探究の第一歩は、まずトピックについての深掘りだ。Abe Booksのような、絶版本も扱うサイトを頻繁に訪れてみたり、同じトピックを扱う“大手”のブログだけでなく、レアな情報源となるマイナーなブログを尋ねてみたりするのもおススメだ。深掘りした後は、それらを誰にでもわかりやすいように簡単な言葉に噛み砕いて説明すること。アウトプットが平易な文章になったとしても、深掘りをしっかりしていれば内容は濃く充実したものになるはずだ。要は、その分野のエキスパートとして鎮座してしまうのではなく、常に探究する心を忘れないことが重要なのだ。
5.情報を切実に欲している人々を探すこと
「成功するレストランの条件とは、ロケーションでもなく、料理でもなく、価格でもない。そのレストランが提供するものを熱烈に欲している人々の存在だ」と語ったのは、天才コピーライターと言われるGary Halbert氏だ。
この事はコンテンツマーケティングにも通じる。コンテンツが狙った通りにきちんと届くかどうかは、自身が抱えている課題のソリューションを積極的に求めている熱心な情報収集者がいるか否かで左右されるからだ。
コンテンツの企画を考える前に、まずその分野やトピックについてのソリューションに興味を持っている「最も熱心なオーディエンス」を探すことから始めよう。ウェブを活用すれば、フォーラム、ソーシャルメディアなどを通して、彼らがどういった会話をしているのかを調べることが可能だ。さらに、彼らが持つニーズをつかむことができれば、次はそのニーズを商品・サービスへと反映しよう。
マスメディアで活躍した著名なコピーライター・Bill Bernbach氏が「広告は製品の特長を“生み出す”ものではなく、あくまで“良さを伝える”ものだ。どれほど優秀なコピーライターでも、存在しない特長を訴求することはできない」と語ったように、マーケティングはコピーやコンテンツだけで完結するものではない。世の中の反響に耳を傾け、商品・サービスに反映する――それこそが、本来のマーケティングのあり方なのだ。
6.各コンテンツが持つ「役割」を明確にすること
読者の行動を喚起する「ダイレクトレスポンスコピー」の考え方では、読者にどう行動してほしいか、「コピー」の一つ一つに書き手の“意図”をしっかりと設定することが大切だとされていた。問い合わせなのか、来店なのか、資料請求なのか、購入なのか――「コピー」によって、どのような読者の行動を促進するのか、役割を明確にすることがコピーライティングのベースとなっていたのだ。
「コンテンツ」においても、「コピー」と同様、それぞれ果たすべき役割があり、それを明確にする必要がある。より幅広いターゲットリーチ、メールマガジンの購読数アップ、新商品に関する知識啓蒙など、コンテンツが達成できることは幅広いため、各々のコンテンツで成し遂げたいゴールは何なのかを明確にしておくことは非常に重要だ。用途や役割を特定せず「読者からの反応や様子を見るだけ」というスタンスのコンテンツづくりは避けるようにしよう。
7.つまらない見せ方にしないこと
顧客を育成するという考え方に基づくマーケティングの巨匠であるDavid Ogilvyは、人々の行動を喚起する文章づくりの秘訣をこう語っている。
Tell the truth but make truth fascinating. You know, you can’t bore people into buying your product. You can only interest them in buying it.
「真実を真実のまま語るのではなく、より魅力的に語ること。つまらない言葉では、人を動かすことはできない。わくわくさせる言葉こそ、人を購買へと導くのだ」
つまり、“興味を惹く”という最初の接点から“行動喚起”というゴールまでの間に、言葉の力によって顧客の心理を変化させる(≒育成)プロセスが必要だということだ。そのために役立つ手法としては以下の6つが挙げられる。
- ペルソナを設定すること
- すばらしいビジュアルコンテンツを添えること
- 魅力的なビジョンを語ること
- 読者が親しみやすいフォーマットを使うこと
- ユーモアを加えること
- 議論を巻き起こすこと
有益な要素を取り入れながら、より興味深く読みやすい役立つコンテンツづくりを心がけたいものだ。
Copybloggerの本記事では「コピーライティング」と「コンテンツ」を分けて考えるという議論に戸惑ったが、読み進めてみると得るものがあるということがわかった。マス広告が主流だった時代から培われてきた「ダイレクトレスポンスコピー」の考え方を「コンテンツ」に取り入れる――それは伝統的なコミュニケーション方法を見直し、“提供する情報に力を持たせ、ターゲットを動かす”という点について見つめ直すということでもある。コンテンツが多様化し、発信する情報量やバリエーションを増やすことに注力する企業も増える中、今一度基本に立ち返って「コピーライティングの技法」に習うことで、コンテンツマーケティングに新たな可能性を見いだせるのではないだろうか。
執筆:隠岐由起子
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