マーケターが知っておきたいDX時代の「デジタルマーケティング」手法を再確認したい
DX時代を迎え、デジタルマーケティング・コミュニケーションのありかたにも変化が訪れています。何に注意し、なにをなすべきなのか。そのヒントをお届けします。
自分たちでチャンスを意図的に作れる
「デジタルマーケティングをうまく使うと、小さな会社も細く長くやっていけるって本当ですか?」とよく聞かれます。もちろん、本当です。個人や小さな会社でも、適切な場所で、適切な形で“それぞれの得意分野で席巻するチャンス”を自分たちで意図的に作れます。
必要なことは次のふたつです。
- 自社のマーケティング「理念」を明確にする
- デジタルマーケティングの業務プロセスを取り入れる「設計思想」をもつ
業種によって細分化される部分はありますが、ここでは「理念」と「設計思想」のふたつに絞ってお話しします。
自社のマーケティング「理念」を明確にする
まず、大切なことが4つあります。
- なぜ実施するのか
- ジャーニーマップ
- どんな課題を解決するのか
- どんな結果を目指すのか
課題と結果については、誰しも想定しながら実施されると思いますが、「なぜ実施するか」の理念があるとないのとでは、運営方法が全く違うことをご存じでしょうか。
やや極論になりますが、デジタルマーケティングは課題・施策・実行が揃えば運営が可能です。例えば、ECサイト(以下、EC)の運営。ECは商品・受注~発送までのフロー・決済機能と人手があれば、運営自体成立します。商品の販売開始後、思ったように集客できないとき、売上が伸びないとき、広告を使っても売り伸ばしができないとき、見直すところはどこでしょうか。
【理念がない場合】
見直す場所は広告かECサイトの導線、あるいは商品です。データ分析を行い、効率の悪い広告を止めたり、顧客が離脱している地点を突き止めて対処します。あるいは、「目玉商品」を投入して顧客を惹きつけたり。結果、ひと月後にある程度回復しても、時間が経つと同じことがまた起こります。
【理念がある場合】
こちらもやはり、広告かECサイトの導線、あるいは商品を見直します。加えて、「取り扱い商品が想定顧客にとって必要な商品かどうか」「実施しているプロモーションは、想定顧客にとって有益な情報発信となっているかどうか」の視点でも再検討を行います。ここが違いです。
理念があることで「想定顧客」が自ずと明確になり、顧客にとって「よい体験」を提供できているかどうか検討する必要があるためです。
のちほど事例を交えて解説します。
デジタルマーケティングの業務プロセスを作る
書籍『DX時代のコンテンツマーケティング』から引用します。
デジタルマーケティングは、単に既存のマーケティング業務をデジタルへ置きかえることではありません。マーケティングテクノロジーによって従来型のマーケティング業務プロセスを変革し、時には組織体制や企業文化を変えることもいとわずに、企業の収益貢献へ最適化することが前提となります。デジタルマーケティングを実施するにあたって、大きく3つの観点が重要とされています。
- あいまいな手順を整理すること
- 明確なゴール目標とKPI を設定すること
- データをもとに改善を続けること
上記を図解したのが、下図です。文字が小さくて読みにくいと思いますが、大丈夫です。画像をクリックすると拡大して読めます(笑)。
*書籍『DX時代のコンテンツマーケテイング』6-2 デジタルマーケティングにおけるコンテンツマーケティング活用より引用
設計思想に必要なのは、この全体感です。なぜ実施し、どんな課題を解決し、どんな結果を目指すのか。それを実現するのがこの戦略設計フローです。
一見取り組むために奮起が必要に見えるかもしれませんが、考えてみてください。この順にこの流れでこのタスクを実施すれば、今ある環境を活かしながらデジタルマーケティングで実装した業務が実現できるのです。やみくもにやるWeb施策の虚無感に比べたら、ずっと現実的で、実現可能な世界を作れます。
戦略設計フローを使うと何が変わるのか?
ECを例に考えます。
私が運営していたECは、紙媒体のカタログ(以下、紙カタログ)が主役。顧客への配布時期、商品の取り扱い開始時期もすべて紙カタログがベース。ECは「おまけ」扱いで、「運よくECでも売れればいいな」というモチベーションで運営されていました。
そこで、デジタルマーケティングの戦略設計を取り入れ、
- あいまいな手順を整理すること
- 明確なゴール目標とKPI を設定すること
- データをもとに改善を続けること
この3つに沿って運用全体に手を入れました。
ひとつ条件があって、「紙カタログ顧客への販売を先に行い、販売数も優先する」点です。紙カタログのデータは入荷数・販売数・在庫数は計算できる数字があったので、人気・不人気商品のランキングと購入傾向をシーズンごとに出しました。ECも過去データを分析し、同様のデータを出して比較。結果、購入傾向に明確な違いがあることがわかりました。
そこで、紙カタログと利益相反にならないよう、EC顧客の特性に絞ったメディアの理念と運用方針を定め、購入傾向を起点にペルソナを作成。ペルソナのライフスタイルを日次・週次・月次・年次で想定し、1回あたりの購入金額を若干引き上げつつ、1年に3回ないし、4回購入したくなるような販売戦略を立てて実施。
ECの運用設計においては、下図「購買態度変容フロー」での「③-2お悩み客」に対してコンテンツ発信を行い、SNSで「リード」を獲得。「④もうすぐ客/⑤いますぐ客」に対してメルマガで販促を行う、というサイクルを作成。この運用を行った結果、ECは年間の販売総額が最初の年は前年比で3倍、翌年は実施前の5倍に伸びました。
*書籍『DX時代のコンテンツマーケテイング』4-5 購買態度変容コンテンツフローより引用
戦略設計フローの取り組み方
ここまでで先に挙げた「デジタルマーケティング戦略設計フロー」の「①マーケティングプロセス」を概ねクリア。「②顧客データ仕様」についてはデータドリブン環境になっていませんでしたので、既存データの分析を行った後に、新運用を行いながら新たなデータ取得環境を作りました。図を再掲します。
「③組織体制」については、最初はひとりで運用を始めましたが、「理想の組織体制」をあらかじめ描き、業務が溢れそうになったときに、ひとりずつ想定に沿ったメンバーを増やしていきました。
データを蓄積し、メンバーも増えていくことで、結果的に社内に対してアウトプットやコミニュケーション頻度も上がりますので、「④プロジェクト方針浸透」については自然と行うことができました(たぶん)。
戦略設計フローは、最初から全部行えたらすばらしいですが、今すぐ全部同時に行うのは正直難しいです。時期を分けて、ひとつずつ着実に積み上げていくことで、これまでとは違うEC運営ができると思いますので、「自社でもやろう」と思った際は、半年、1年と長期スパンで取り組むことをおすすめします。
デジタルマーケティングでできることを再確認
最初の問いを振り返ります。
「デジタルマーケティングをうまく使うと、小さな会社も細く長くやっていけるって本当ですか?」については、
- 自社のマーケティング「理念」を明確にする
- デジタルマーケティングの業務プロセスを取り入れる「設計思想」をもつ
このふたつを実施することでやっていけます。
本稿ではデータ分析やコンテンツについてはあまり言及していないのですが、詳しく知りたい方にはこちらの動画をおすすめします。集客のためにコンテンツを公開した後、それらが想定しているペルソナに届き、意図している行動を取っているかどうかの検証が必要です。本動画では、ユーザーの行動を左右している根本理由を見つけるためのウェブ解析の方法を知ることができます。
動画は、2020年11月のコンテンツマーケティングイベント(CMD2020)で公開した中田吉彦氏(and,a 株式会社 取締役CAO)の「コンテンツマーケティングのウェブ解析」です。
執筆:川俣 沙織
株式会社Rdesign factory(アール・デザイン・ファクトリー)代表取締役
出版業界で実用書・タレント本・インタビュー雑誌などの編集者として働いた後、WEBディレクターへ転身。2020年にデジタルマーケティングプロデューサーとして独立。
出版社における雑誌のWEBメディア・EC・CRM・システム構築のほか、他社メディア受託制作等を経験。コンテンツマーケティングを軸に、事業に最適化したコンテンツ制作のほか、メディアのブランディングや全体のグロース設計や戦略設計、運用オペレーションの設計や再構築を得意とする。
「必要な情報が、必要な人に、必要なタイミングで伝わる」メディアづくりが信条。
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