Content Marketing World 2019 Report

  • Content Marketing World 2019 Report
  • 2019年11月28日に開催された、『CONTENT MARKETING DAY 2019』 のBtoCセッション〜Content Marketing World 2019 Report〜より

世界中から毎年4000人を超えるコンテンツマーケターらが参加する、世界最大のコンテンツマーケティングのカンファレンス「Content Marketing World 2019(CMWorld)」。コンテンツマーケティングのトレンドやTIPSについて、ティーチャー・ジャーナリスト・マーケターという3つの経歴を持つ、株式会社クマベイスの田中森士氏に講演いただきました。

冒頭、田中氏は自身の行動の柱について『100%相手(ペルソナ)の立場に立って、継続的に有益な情報を発信することを通し、信頼関係を構築。何らかの目的達成に繋げることを心がけている』と紹介。『そのためには「顧客視点」と「コンテンツマーケティング的思考」を持つことが重要である』と指摘し、セッションは始まりました。

株式会社クマベイス 代表取締役CEO 田中森士 氏

日本より先を進む米国のコンテンツマーケティング

田中氏は、まず米国のコンテンツマーケティング業界で研究されているテーマについて紹介(以下はその一部)。

ソーシャルメディア エージェンシー ライティング/コンテンツディベロップメント AI/マシンラーニング コンテンツストラテジー コンテンツクリエーション ビジュアルストーリーテリング Email&コンバージョンプロセス&ワークフロー インフルエンサーマーケティング ROI/測定 ツール&テクノロジー etc…

その上で、米国のコンテンツマーケティングの研究は、日本より圧倒的に先を進んでおり、大きく水をあけられている状況にあるという。

次に、田中氏はCMWorld2019のkeynote(基調講演)で紹介された『現代人は時間がない。そのため、より好奇心を刺激するコンテンツが必要である』という言葉を紹介。2019年のトレンドとして以下の3つのキーワードをピックアップした。

  • MAIL(メール)
  • CAREER(キャリア)
  • STORYTELLING(ストーリーテリング)

2019年のCMWorldのテーマは「AMAZE YOUR AUDIENCE」(オーディエンスを驚かせろ)。オーディエンスを驚かせるために「CURIOSITY」(好奇心)が重要であるという。

自分たちでコントロールしやすいチャネルは「メール」

一つ目の「メール」については、以下の3つの理由からメールは最適なチャネルであると田中氏は説明。

  1. FacebookやInstagramなどのプラットフォームに左右されない
  2. GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)によるネット閲覧情報活用の規制が進んでいる
  3. メールは自分たちでコントロールできるチャネルである

1については、Facebook投稿のオーガニックリーチがプラットフォーム側のニュースフィードアルゴリズム変更に左右され、かつリーチする割合が減少傾向(現在は数%程度とされる)にあるとみられる点、そしてアジア全体のメール開封率が18.5%( GetResponse 調べ)と高い割合にある点を比較し、メールを活用したマーケティングが効果的であると述べた。

さらに田中氏は、『多くのコンテンツマーケターは、いろんな施策を満遍なくやっているが、どれも中途半端になってしまっている』と指摘。『オーディエンスが求めている期待値を超えるには、施策は絞って集中することが大事である』とした上で、ポイントとして以下の3点を挙げた。

  1. コンテンツの「質」が極めて重要
  2. 続ける「仕組み」づくりが必要
  3. ペルソナとカスタマージャーニーも必須

また田中氏は、自身が代表を務めるクマベイスのマーケティング施策を事例として紹介。ブログ記事やKindle本などのコンテンツ経由でメールマガジンに登録した人たち(サブスクライバー)に、さらにイベントやプレスリリースなどのコンテンツを届けてセールスにつなげる戦略フローが効果を上げていると明かした。

欧米では個人情報やCookieなどのネット閲覧情報を使ったコンテンツ配信は規制が厳しくなっている。日本も今後規制が厳しくなると予想されている。

コンテンツマーケターの「キャリア」。その求められるスキルとは?

二つ目のコンテンツマーケターの「キャリア」。冒頭のコンテンツマーケティングの研究テーマと同様、キャリアに関する職の研究も増えているという。その中で、田中氏は『コンテンツマーケターは「T型人材」となっていくことがキャリア構築に重要である』と説明。以下はそのスキルについて一部を紹介した。

〈「General」スキル(Tの文字の横)〉

ストーリーテリング ライティング ペルソナ設計 広告運用 ディストリビューション KPI設計 SEO セグメンテーション リサーチ デザイン プロジェクトマネジメント コミュニティ HTML/CSS プレゼンテーションスキル

Tの文字の縦は、上記の中で最も得意な分野を極めていく「スペシャル」スキルであるという。田中氏は『これからのコンテンツマーケターには専門的なスキルだけでなく、学校の教科書などでは学べないソフトスキルも求められている』と説明した。

〈ソフトスキル〉

理解力 コラボレーション クリティカルスキル アクティブリスニング パブリックスピーキング 好奇心 アジリティ 忍耐力 エモーショナル インテリジェンス

米国のコンテンツマーケティング関連の職業のポジション数は2017年1万7892件から、2018年2万3846件に増えているという。

「ストーリーテリング」は人の心を動かす

三つ目の「ストーリーテリング」については、米国で数年前から注目されていているものだ。田中氏は『米国ではジャーナリズム業界の知見を生かしてストーリーテリングがメソッド化されている』と紹介。特に、現在は動画やインフォグラフィックなどを用いてストーリーを視覚化する「ビジュアルストーリーテリング」がトレンドであるという。

田中氏は、これまでの経験から『Depending on Your Personas(結局は「ペルソナ」次第)であり、ストーリーがあって、ペルソナがいて、適切な見せ方(ビジュアライズなどを選択する)を考えることが必要である』と説明した。

近年、「コミュニティマーケティング」という概念が広がりを見せている。デジタルやオンラインではなく、アナログやリアルな場において、消費者や顧客などのオーディエンスとつながるアプローチも重視されてきているという。

「あなたは何者か?」に答えられる企業やブランドでなければならない

年に10万キロ以上移動し、世界各国を訪れている田中氏。そこで感じた最も重要なことは「CULTURE」であるという。
『カルチャーを醸成するのは、人、歴史、プロダクトである。そして、長く選ばれている商材はカルチャーがあり、それをストーリーで伝えている』

田中氏の話は徐々に熱を帯びていく。田中氏は、会場に『なぜ、そのビジネスを展開しているのか、をストーリーで伝えられているでしょうか?』と会場に問いかけた。

さらに、『コンテンツマーケティングは腰を据えて取り組むべき戦略であり、CMWorld2019のkeynoteでは最低18カ月間は取り組むべきであると主張されていた』と強調。その上で、『ビジネスで最重要なのはミッション。目的となるミッションにフォーカスすることで、ゴール、戦略、施策、具体的なタスクといった手段を考えることができる』と指摘した。

〈田中氏の指摘〉

  • オーディエンスにつながりたいと思ってもらえるか
  • カルチャーはあるか
  • 直接つながることのできる手段はあるか
  • オーディエンスと直接つながっているチャネルはあるか

田中氏は最後に、『マーケティングテクノロジーツールは現在、7000を超えるサービスが展開されている。つまり、「あなたは何者か」を表現しなければオーディエンスに選ばれないということである』と説いた。「手段から本質へ」「日本のコンテンツマーケティングを前進させましょう!」と強いメッセージを発信して、セッションを結んだ。

セッション全体を通して、

  • 自分たちでコントロールできる手段や施策に注力すること
  • 「伝える」ではなく、人の心を動かす「伝わる」表現がより求められていること

の2点の重要性を感じました。

コンテンツマーケティングに取り組んでいる企業は多くありますが、現実なかなか継続できない事例が多いと筆者は感じます。その原因は、顧客視点でのミッションや目的ではなく、企業視点の施策や手段が先行してしまうために、数値化された結果のみに目がいきがちであると感じます。

自分たちが提供する価値やその価値を享受するペルソナ、そのペルソナの心をどう動かすか、など数値ではない本質的な部分を定義することが結果的に、オーディエンスに選んでもらえるマーケティング活動になる。だとするならば、今回のセッションはその必要な考え方やスキルの理解が進み、実践していくためのヒントが多くあった、貴重なセッションでした。

執筆:萬里小路 忠昭

思考設計士 | CONTENT MARKETING ACADEMY 特任講師
デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツ研究科修了(デジタルコンテンツマネジメント修士)

2010年ゼビオ株式会社に新卒入社し、店舗・ECサイトの運営やデジタルマーケティングのディレクションを担当。
2018年GMOアドマーケティングに転職し、約200社にマーケティング戦略に関するワークショップセミナーを実施。
2020年独立し、「マーケティングが機能する組織」をテーマに、チームビルディング支援やリーダーシップ研修を行っている。

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※リンク先は、CMD2019メディアスポンサー「エムタメ!」によるレポート記事です。

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