【対談レポート】楽天市場「ソレドコ」から学ぶオウンドメディア戦略とブランディング

  • 【対談レポート】楽天市場「ソレドコ」から学ぶオウンドメディア戦略とブランディング
  • 2019年11月28日に開催された、『CONTENT MARKETING DAY 2019』 のBtoCセッション ~楽天市場「ソレドコ」から学ぶオウンドメディア戦略とブランディング~より

楽天市場のオウンドメディア「ソレドコ」を運営する楽天株式会社の越井氏とコンテンツマーケティングを支援する株式会社はてなの磯和氏による対談レポートになります。

2015年に開始した「ソレドコ」の立ち上げから運営、KPI設計などの戦略や取り組みの成果について、対談形式で展開されました。

「ソレドコ」は開設当初は「それどこで買ったの?」というメディア名でスタートし、「買い物」にフォーカスした記事を提供していました。そして、現在は沼にはまるかのように、何かに夢中になっている人たちの、沼を集めた「沼」メディアとして、エッジの効いた内容やSNSで話題になる記事を提供しています。

冒頭、磯和氏から『オウンドメディアの目的は、ブランディング、リクルーティング、送客・集客など、企業の目的によって多様である』という前提から対談はスタートしました。

株式会社はてな サービス・システム開発本部 プロデューサー 磯和太郎 氏

オウンドメディアで解決したい課題とは?

はじめに、越井氏は『楽天市場の外にいるユーザーへのアプローチが課題だった』と、2015年当時を振り返った。当時の楽天市場は、『セールやクーポン等の施策で楽天市場内において販売促進する仕組みは整っていたが、楽天市場外からの集客において以下の2つの課題を抱えていた』と説明。

  1. 若年層に対して興味・関心を惹くコンテンツがなかった
  2. コンテンツを介して楽天市場の外からファンを獲得する仕組みがなかった

この課題を解決するために、以下のように言語化したという。

<課題>
楽天市場に興味・関心がないユーザーにアプローチして、「楽天市場でお買い物をしたい」と思ってもらいたい

<仮説>
オウンドメディアでユーザーに価値ある情報を継続的に提供することでメディアのファンになり、結果として楽天市場の利用意欲が向上するのでは?

<目的>
楽天非会員(特に若年層)ユーザーへのリーチとエンゲージメント

楽天非会員ユーザーに対して、オウンドメディアの良質な記事を提供し、ファンを増やしていくこと。ここのパートでは、「目的を定義することの重要性」が主に語られた。

フェーズを区分した戦略づくりを実施

その上で、越井氏は戦略については、

  • フェーズ1【集客】話題性のある記事制作と記事量産によるSEO
  • フェーズ2【送客】楽手市場のシーズントレンドを加味した記事制作
  • フェーズ3【ブランディング】ブランド認知度+α

とフェーズを3つに区分して、目的を設定したという。

このパートでは、目的をフェーズで区分することで、ハードルをいきなり高く設定するのではなく、「まずは話題性のある記事をたくさんつくる」という記事制作に集中すること。さらに、費用対効果を「3年間」に設定して社内コンセンサスを取ったことで、トライ&エラーがしやすい環境をつくったことが語られた。

楽天株式会社 マーケットプレイス事業 マーケティング部市場ブランディング課 シニアマネージャー 越井大志 氏

編集方針や編集体制を構築

次に編集方針として、以下の3つについて紹介された。

  • ガイドラインの作成
  • チーム編成
  • 企画の方針

「ソレドコ」の目的やポリシー、運用ルールをまとめた「ガイドライン」の作成は、チームメンバーの合意形成に有効だったという。

このガイドラインに準じて制作された「ソレドコ」の最初の記事 は、これまでの楽天市場のコンテンツとは大きく印象の異なる内容であった。

『マーケティング(販促)色を出さないこと、コト消費を優先にすること、として単純に商品を訴求するものではない』といったポリシーやルールに沿った結果生まれた記事であり、「ソレドコ」がリーチしたいユーザーに訴求するためには、これまでとは違ったアプローチが必要であることを説明した。

また、「ポリシーに反さない限り、書き手の表現の自由を尊重する」という点も「ソレドコ」では大切にしているという。

「ソレドコ」の編集チームは、楽天市場とはてな編集部によって構成されている、

楽天から主担当1名(記事確認、効果測定、SNS運用など)とサブ担当2名。「ソレドコ」の記事制作を担当するはてなから営業、ディレクター、編集責任者の3名に加えて、企画ごとにはてなの編集者が関わる。

また、企画は、

  • 3ヶ月前:楽天・はてな両者が参加して、シーズントレンド(クリスマスなど)や楽天市場の販促スケジュールを加味してブレスト
  • 2ヶ月前:はてなから企画案提出、実行するものを楽天と選定
  • 1ヶ月前:制作開始しリリース

というスケジュールで企画会議からリリースまでを進行している。

特に、シーズントレンドは楽天市場にとっては重要で、以下の記事(https://srdk.rakuten.jp/entry/2017/12/20/110000)は11~12月のクリスマスシーズンに売れるカニに関する記事で、トレンドを意識した企画で話題性が生まれると反響が大きいという。

数字以外に重要な成果とは?

次に、その戦略や方針・体制で進めてきた、楽天×はてなのオウンドメディア運営の成果について、磯和氏より以下に関する成果が紹介された。

  • 「ソレドコ」読者数
  • 楽天非会員の流入割合
  • ターゲットであった若年層の流入割合
  • 自然検索の流入など

この成果に対して、越井氏は『記事の本数が増えてアーカイブされていくことで、自然検索やSEOは上がっていった。つまり、コンテンツは資産になっていくことをそこで発見できた。』と数字以外に重要な成果があることに気づいたという。

さらに、フェーズ3の目的に設定した「ブランド認知」については、ブランドリフト調査を実施。

「楽天市場をおすすめしたいか?」という質問に対して、「ソレドコ」の記事非接触者より記事接触ユーザー、さらにはてなブックマークやTwitterなどのソーシャルメディアでアクションしたユーザーの方がおすすめしたい度が高くなった成果を紹介。

定性面においても、楽天市場に対してのポジティブなコメントが増加し、オウンドメディア「ソレドコ」の記事が楽天市場のブランディングやファン獲得にプラスの効果を上げていることを証明した。

実際に話題になった記事や成果の上がった記事を紹介し、3つのフェーズの目的に合わせてどんな成果があったのかが語られた。

これからのソレドコが考えるコンテンツマーケティング

最後に、今後の「ソレドコ」の目指す方向性について両氏の考えを聞いた。

まず、越井氏は、WEBメディア「デイリーポータルZ」との取り組みを紹介し、『企業・オウンドメディアとのコラボ推進で、ユーザーにより価値を提供したい』という。

自分たちのノウハウやアイデアだけでなく、外部とのコラボにより新しい価値が生まれるのではないか?という部分で、一緒に取り組みをしてくれる企業やオウンドメディアを探しているという。

一方、CMS「はてなブログMedia」の提供やコンテンツ制作を通じて「ソレドコ」のコンテンツマーケティングを支援するはてなの磯和氏は、『オウンドメディアを成功に導くために、CMSの機能を充実させていくとともに、コンテンツの成果の見える化を仕組みでサポートしたい』という。

例えば、はてなのCMSが連携している外部計測ツール(アトリビューション解析ツール)を活用して、記事がどのように読まれているのか、コンバージョンに貢献できたかなどを見える化することなどである、と仕組みづくりを進めていくという内容で、対談を締め括った。

対談全体を通して、「どのような目的で、どのようなスタンスで運営するか」が重要なポイントであると感じました。近年、オウンドメディアを運営する企業は増えていると思いますが、一方で立ち上げたものの継続できずに1年経たずに閉鎖するサイトも多くあると思います。

また、オウンドメディア運営に関するノウハウが、特にテクニカルな部分以前に多い印象があります。今回の対談で、オウンドメディアを運営する企業や担当者は、テクニカルな部分以前に、土台となる考え方やスタンスを明確に定義することが必要であると感じました。

その考え方やスタンスを定義し、目的や戦略を言語化して、オウンドメディアを運営する楽天と、コンテンツを支援するはてなの両社からそのヒントを紹介していただいた貴重な対談でした。

執筆:萬里小路 忠昭

思考設計士 | CONTENT MARKETING ACADEMY 特任講師
デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツ研究科修了(デジタルコンテンツマネジメント修士)

2010年ゼビオ株式会社に新卒入社し、店舗・ECサイトの運営やデジタルマーケティングのディレクションを担当。
2018年GMOアドマーケティングに転職し、約200社にマーケティング戦略に関するワークショップセミナーを実施。
2020年独立し、「マーケティングが機能する組織」をテーマに、チームビルディング支援やリーダーシップ研修を行っている。

NEWS LETTERをお届けします!

コンテンツマーケティングラボの最新情報を、
定期的にEメールでまとめて、お知らせします

当月の更新情報を翌月初にお届けします。

(購読すると弊社の書籍発売イベントの特典資料をダウンロードできます)

関連する記事