Content Shockを乗り越える…議論を経て見出された唯一の方法とは?

  • Content Shockを乗り越える…議論を経て見出された唯一の方法とは?
  • Content Shock論は、世の中の情報量が増えているため、ターゲットにコンテンツを届けるための障壁が上がっているという主張だ。この議論は、業界を巻き込んで賛否両論を呼んだ。一連の議論を受けて、著者のMark Schaefer氏がたどり着いた見解を紹介する。

1月以降、アメリカのコンテンツマーケティング界隈で、話題となっているContent Shock論争を紹介する今回のシリーズ。3本の記事を通じて、Content Shock論の紹介と、それに対する反響、問題を乗り越えるための戦略をお伝えする。最終回の今回は、Content Shockへの対応策として、Schaefer氏が示した内容を紹介したい。Content Shock論は、コンテンツマーケティングの第一人者であるJoe Pulizzi氏をはじめ、著名なコンテンツマーケターによる反論も受けたが、Schaefer氏の考えは揺るがなかったようだ。

それでもContent Shockはある、Schaefer氏は主張変えず

1月に投稿したこの記事が、著名なマーケターを巻き込んだ白熱した議論に発展した状況を受け、Schaefer氏は3週間後に再度 記事 を投稿した。その中でContent Shock論への反響について、「多くは共感できるというものだった。強く反対した人でも、コンテンツの増大という基本的な考えまでは否定していない」と述べ、概ね賛同を得られたとの考えを示した。

Schaefer氏が再度投稿した記事。1月の記事へのコメント数は、3週間で350件以上に上ったほか、数十件の電話やメールがSchaefer氏のもとに殺到する事態となったという

Content Shock論の根拠ともなっている、コンテンツ間の競争激化を示すエピソードとして、Schaefer氏はFacebookの例を引き合いに出した。Facebook社のExecutiveであるRichard Sim氏は去年12月、多くの企業ページで、投稿をファンに閲覧してもらうことが年々難しくなっているとして、こう語ったという。

On a given day, when the average person visits their News Feed, there are an average of 1,500 possible stories we can show. As a result, competition for each News Feed story is increasing.

平均的なユーザーのニュースフィードに表示され得る投稿数は、1日に1500に上る。その結果、投稿を閲覧してもらうための競争が激しくなっている。

「これこそがContent Shockだ」とSchaefer氏は言う。

企業だけでなく個人によるコンテンツも乱立するFacebookは、コンテンツ間の競争が非常に激しい。Content Shock論が示すように、質の高いコンテンツを作るだけでなく、それを閲覧してもらうための努力も一層求められる環境になっているということだろう。

Content Shockを乗り越えるための戦略とは?

繰り返しになるが、Schaefer氏はコンテンツマーケティングの可能性自体を否定しているわけではない。3月に投稿した記事 ”10 Strategies to Battle Content Shock”(Content Shockを乗り越えるための10か条)の中でSchaefer氏は、「コンテンツマーケティングを継続する唯一の方法は、競争の少ないニッチな市場を見つけ、そこに質の高いコンテンツを数多く投入することだ」と主張している。つまり検索結果を自社のコンテンツで埋め尽くすことで、競合他社にContent Shockを与えることができるという。コンテンツの作成に際しては、「質が他社と比べて最も優れている必要はないが、他社に先駆けて数多くのコンテンツを投入しなくてはならない」としている。

Schaefer氏が3月に投稿した記事。「コンテンツを制作する手をゆるめるな」と語る

またContent Shock論では、コンテンツを広める施策の重要性も強調していたが、それに関連する戦略も示している。他のブランドとのコラボレーションによるコンテンツ作成、著名なブログ上のスペースを買いスポンサードコンテンツとして提供する手法、メディア上にネイティブ広告を出稿して露出を増やす方法などについて触れている。お金を払って記事を書いてもらう手法には賛否両論があるとするものの、「収益源を求める媒体と、露出先が欲しいマーケターの思惑が一致するため、しばらくは重宝されるだろう」と述べている。

一方でユーザーの嗜好に合わせて情報をキュレーションするツールの普及によって、コンテンツを広く届けることが難しくなっているとも語る。キュレーションアプリのZiteをはじめとするこのようなツールが、ユーザーの嗜好にそぐわないコンテンツをはじいてしまうからだ。そのため「検索結果画面の上位を狙うために、質の高いコンテンツを作ろうという従来のコンテンツマーケティングの考えは単純すぎる」とSchaefer氏は主張している。今後は、情報ツールをどのようにかいくぐってコンテンツをユーザーに届けるかについても考える必要があるとしている。

我々の印象に残った内容は、Schaefer氏が最後に述べた以下の戦略だ。

「人間味のある形で読者とつながることで、信頼を得ることができる。そして信頼は読者との絆につながる。読者との絆は何にも勝るものだ。“Content Shock”に対する重要な対策は、人間味のある対応だと信じている。もっと人間らしくあろう」。

しかし企業にとって短期的な収益を度外視して、利他的な行動を取ることは簡単ではない。これに関してSchaefer氏は、こう語っている。

「結局のところ、人間味を出すことが収益への近道になると信じている。消費者は人間から物を買いたいと思っている。プレスリリースやCMソングによってではない」。

上記を含め、Content Shockを乗り越えるためとして、Schaefer氏が一連の戦略を示したことは、コンテンツマーケティングにおける戦略の重要性を改めて浮き彫りにした。Content Shock論が主張するようにコンテンツ競争が激しくなっているからこそ、「コンテンツをどう機能させることで、ゴールを達成するのか」という俯瞰的な視野が求められる状況になっていると言えそうだ。

戦略の重要性は、調査でも示されている。2013年にContent Marketing Instituteが実施した調査 によると、コンテンツマーケティングに成功していると答えた企業とそうでない企業について、取り組みの有無で差がついた項目は、以下の2つだった。

  • 「ドキュメント化されたコンテンツストラテジーがある」
  • 「コンテンツストラテジーを統括する責任者がいる」

コンテンツストラテジーの重要性は、これまでにも頻繁に語られてきたテーマだ。今回のContent Shock論は、「コンテンツマーケティングの限界」という刺激的な見せ方によって、それを改めて突きつけた形となったようだ。

執筆:三友直樹(日本SPセンター)

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