AIをどう活かす?考えてから使うか、使いながら考えるか——それが問題だ。

  最終更新日: 2025.08.22

  • LAB用サムネ
  • AIを使うとき、思考を整理してから使うべきか? それとも、使いながら整理していくべきか?前回紹介したジェレミー・アトリーの「AIを使う前にまず考えを整理せよ」という立場に対し、機械学習の第一人者であり、DeepLearning.aiの創設者としても知られるアンドリュー・ン(Andrew Ng)が、「まず使ってみることで思考が整理されていく」という対照的な考え方を示しています。

 AIを使う際には、まず自分の考えを整理することが重要であると、前回の記事で紹介したスタンフォード講師ジェレミー・アトリー氏は強調していました。
彼は、AIを使う前に、思考の前提や背景を明確に整理しておくことが大切だと述べています。
一方で、今回の記事で取り上げるアンドリュー・ン氏は、事前にすべてを整理しきらなくてもよいという立場を取っており、異なるアプローチを提案しています。
今回はその考え方をもとに、AIをどう使うかについて、もう一つの角度から考えていきます。

1) 思考はAIに任せていい?

AIを活用する際、どこまで自分で考えを整理し、どこからAIに任せてもよいのでしょうか。

すべてを明確にしてから使うべきという考え方もあれば、曖昧なまま使いながら考えていくという姿勢もあります。
どちらの姿勢を取るかは、AIをどう使いたいのか、そして自分がどんな思考をしたいのかによって変わってきます。

2) 曖昧なまま使うことで、思考が整理されていく

明確な問いやゴールがなくても、AIとの対話を始めてみることで、思考が少しずつ形になっていく
そんなスタンスを示しているのが、アンドリュー氏です。
彼はニュースレター『The Batch』で、「Lazy Prompting(怠けプロンプティング)」という考え方を紹介しました。

これは、すべてを明示的に整理してから使うのではなく、まずは曖昧な状態のままAIに投げかけてみて、出力を見ながら意図や方向性を調整していくという方法です。たとえば、プログラムのエラーメッセージを貼り付けるだけでも、AIは「修正を手伝ってほしい」という意図を汲み取って応答してくれる——といったように、完璧な指示を与えなくても実用的な応答が返ってくるケースは多いとしています。実際、アンドリュー氏も「多くのLLMは明示しなくてもユーザーの意図をくみ取ろうとする」と述べています。

ただし、この方法は誰にでも万能ではないとも述べています。十分な文脈を与える力を持ったうえで、“どこまで手を抜いてもAIが応答できるかを試す、いわば熟練者向けの高度な使い方であり、誤った出力が致命的になる場面では慎重になるべきだとしています。

アンドリュー氏がこの手法を紹介しているのは、主にソフトウェア開発やコード生成の文脈です。この考え方は、文章執筆や思考の下ごしらえにも応用できると私は考えています。たとえば、あるテーマについてモヤモヤした状態でもAIに相談してみると、返ってきたアウトプットをきっかけに、自分の中で思考が可視化され、構造が見えてくることがよくあります。

実際に私自身も、この記事の構成に迷っていた際、「このテーマをどう展開できるか?」という曖昧な問いをChatGPTに投げかけてみたところから執筆を始めました。明確なゴールがない状態でも、返ってきた出力を眺めるうちに自分の中のひっかかりが見えてきて、構成の軸が定まっていきました。こうして得られた視点は、そのまま記事全体の流れや見出し構成にも反映でき、執筆のスピードと質の両方を高めることにつながりました。

つまり、「思考が整理できていないから使えない」のではなく、「整理できていないからこそ使ってみる」。そんな逆転の発想として、Lazy Prompting は実務の中でも役立つアプローチになり得ると私は感じています。 

3) AIは“チームメンバー”か、“ツール”か?

AIと向き合う際、“チームメンバー”として扱うのか、それとも“ツール”として使うのかという視点があります。
ジェレミー氏はAIを“チームメンバー”と捉え、協働のためには人間の側での丁寧な準備が欠かせないと主張しています。
一方でアンドリュー氏は、“ツール”としてAIを活用し、考えがまだ曖昧な段階からでも使いながら整理していくことに価値を見出しています。
AIをどう位置づけるかによって、どのタイミングで使うか、どんな問いを投げかけるかも変わってきます。
ときには、準備が整っていない段階だからこそ、AIを使う意味が見えてくることもあります。

4) 整理しきれないからこそ、AIを使う価値がある

頭の中で漠然としていた観点や考えの断片が、AIとのやりとりの中で少しずつ整理され、思考の流れや新たな気づきにつながることがあります。

こうしたプロセスは、「まとまっていないから使えない」のではなく、「整理しきれていないからこそAIを使う意味がある」と捉えることができます。

AIは、完成された問いにだけ応える存在ではなく、まだ形になっていない思考を動かすきっかけにもなり得ます。

このように、アンドリュー氏の「まず使ってみる」という姿勢は、問いが未完成な段階においてもAIを有効に活用できる可能性を示しています。

まとめと感想

実際に私自身も、まだ考えが整理しきれていない段階でAIとやりとりすることで、新しい視点が得られると感じています。

「考えてから使うか、使いながら考えるか」、AIとの向き合い方を考えるうえで、自分の思考のあり方を見直すきっかけになり得る、これからの活用において本質的な問いの一つと言えるでしょう。

だとすると、「それが問題だ」ではなく——「それでいい」のかもしれません。

 

 


 

執筆:ピーター
CONTENT MARKETING ACADEMY リサーチャー
※本記事は執筆及び画像作成にあたり、ChatGPTを利用しています。

NEWS LETTERをお届けします!

コンテンツマーケティングラボの最新情報を、
定期的にEメールでまとめて、お知らせします

当月の更新情報を翌月初にお届けします。

(購読すると弊社の書籍発売イベントの特典資料をダウンロードできます)

関連する記事