コンテンツマーケティングの歴史

  • コンテンツマーケティングの歴史
  • 日本においてはまだ黎明期にある“コンテンツマーケティング”。ところがその歴史は意外にも古い。なんと紀元前4200年頃から存在していた考え方だというのだ。今回はコンテンツマーケティングの歴史を振り返りつつ、改めてコンテンツマーケティングの影響と重要性を考えてみたい。

太古の昔から人類は「コンテンツマーケティング」を利用していた!?紀元前4200年頃に端を発するコンテンツマーケティング

「コンテンツマーケティング」は2000年頃から注目され始めた比較的新しい概念であるが、実はその考え方自体は、太古の昔から存在していた。一説によると、最も古いコンテンツマーケティングは紀元前4200年頃に描かれた壁画ではないかと言われている。

ContentMarketingInstitute(コンテンツマーケティング協会)が作成した、コンテンツマーケティングの歴史を表したインフォグラフィック。紀元前4200年前から始まり、その歴史を端的に表現している。

紀元前4200年頃に制作されたとされる「槍で熊から身を守る6つの方法」と題された壁画。その壁画の目的は何だったのだろうか。もしかすると、はるか昔の槍職人が、槍の販売促進を狙い槍の必要性を訴えるために描いたのかもしれない。その心の内を知ることは今となっては難しいが、この壁画の存在は、適切なコンテンツを時代に即した適切なメディアで伝えるという、コンテンツマーケティングの本質を表しているといえるだろう。

“コンテンツマーケティング”の原点・雑誌「The Furrow」の登場

さて、時は進み1895年、コンテンツマーケティングの原点ともいえる雑誌「The Furrow」が登場する。「The Furrow」は、農機具メーカーの『John Deere』が、農作物の育て方や、新しい技術の紹介をするために農家向けに発行した雑誌であり、世界40ヶ国で今も発行され続けている。

John Deereが発行する農家向け雑誌「The Furrow

The Furrow」は、自社製品のカタログ誌ではなく、農家が必要とする情報を提供する農業情報誌。ダイレクトに自社の農機具を売り込むのではなく、農家が必要としている情報を提供することで信頼を勝ち取る、いわばコンテンツマーケティングの先駆けともいえるスタイルを100年以上前から構築していたことになる。今でいうところのリードジェネレーションや、リードナーチャリングを既に行っていたともいえる。
そして1980年代、イギリスにおいて“Customer Magazine”ブームが起こり、アメリカでは“Customer Publishing”時代が到来する。代表的な制作物としては、飛行機の機内誌などが挙げられる。そしてこの頃から、企業が自ら出版物を制作するスタイルが徐々に増え始めてくる。だが、実際に制作していたのは出版系のCustomer Publishing会社である。コンテンツマーケティングの基本コンセプトである“Like Publisher”という思想は、コンテンツマーケティングを提唱するメンバーに、当時を経験してきた出版業界出身者が多いことにも由来している。

インターネットの登場で影響力を増すコンテンツマーケティング

1980年代までのコンテンツマーケティングは、紙メディアを中心としたものであり、マーケティングコミュニケーションの補完的な存在だった。しかし1994年にネットスケープを始めとするブラウザが誕生し、1998年にGoogleが登場すると、コンテンツマーケティングを取り巻く状況は一変、次第にその影響力を強めていく。Googleを始めとする検索エンジンの登場によって、ユーザ自ら情報を求めることが可能になったからだ。CMI(コンテンツマーケティング協会)によると、初めてコンテンツマーケティングという言葉が使われたのもちょうどこの頃、2001年のことである。

マイクロソフト企業ブログ「Channel9

また、ユーザの心理変化もコンテンツマーケティングへとシフトした大きな要因だ。情報が適切であれば、ユーザは情報のソースにこだわらない、つまり、メーカー自らが情報を発信したとしても、適切な情報さえ発信すれば、ユーザは抵抗なく受け入れるようになってきたのだ。このような状況変化の中、マイクロソフトが世界で最初の企業ブログChannel9を2004年に開設した。これは、マイクロソフト社の社員自らが、情報を発信することで、企業イメージの向上につなげた好例である。

Blendtec社の動画サイト「Will It Brend?

その後、2005年から2006年にかけてYouTube、Facebook、Twitterを始めとするソーシャルメディアサービスが登場すると、コンテンツマーケティングは水を得た魚となり、見込み客をプルする力を増していく。
この頃の成功例としては、2007年に登場したWill It Brend?が挙げられる。ミキサーメーカーのBlendtecが、商品の性能や耐久性を証明するために、iPhoneやiPad等、様々なものを粉々にする動画を紹介。Blendtecはこの取り組みにより、売上を約7倍に伸ばしたといわれている。

コンテンツマーケティングで最も重要なこととは?

ここまで、コンテンツマーケティングの歴史をざっと振り返ってきたが、コンテンツマーケティングを理解する上で、一つ重要なポイントがある。それは、コンテンツマーケティングをそのアウトプット形態であるメディア視点で見るべきではないということだ。コンテンツマーケティングは、時代に合わせて適切なメディアを選択しているだけで、メディア視点で見てしまうと、その本質がつかめなくなる恐れがある。それではIMCやウェブマーケティング、ソーシャルメディアと何ら差異がなくなってしまう。コンテンツマーケティングの肝は、「ユーザが欲している情報とは何なのか?」を最重要視する考え方であり、学ぶべきは100年以上も続く、この当たり前だが忘れがちなコンテンツ重視の姿勢なのだ。

さて、Googleは過剰なSEO対策よりも、コンテンツを重視することを今年5月に宣言した。

2011年にはコンテンツマーケティングの初めての世界大会ともいうべきContent Marketing Worldがオハイオ州クリーブランドで開催された。私たちも参加したが、世界18ヶ国から600人以上が集まり、その大きなうねりを感じ、実り多い時を過ごした。近頃は欧州各国でも盛り上がりを見せ、来年は欧州での開催が検討されているとか。世界中でコンテンツマーケティングの機運が高まりつつある中、2012年は日本のコンテンツマーケティング元年となることを期待したい。

“コンテンツマーケティング”は2001年頃から使われ始めた言葉だが、その概念自体はかなり以前から存在していた。今から100年前に発行された農業誌『The Furrow』においてすでに、適切なコンテンツを、時代に即した適切なメディアで伝えることは行われていたのだ。そして今やインターネットの活用が一般化。ユーザーが主体的に情報を検索し、推奨し合うことはもはや当たり前になった。Googleも今年5月、コンテンツを重視していくことを宣言、いよいよコンテンツマーケティングの気運が高まりつつあるといえるだろう。

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以下はアメリカでコンテンツマーケティングが盛り上がり始めた2012年に行ったインタビューの記事です。コンテンツマーケティング初期の記事なのでこれからコンテンツマーケティングについて勉強したい方に分かりやすい内容になっています。

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