「普及曲線」からコンテンツマーケティングを考える

  • 「普及曲線」からコンテンツマーケティングを考える
  • コンテンツマーケティングが、熾烈な見込み客獲得競争を勝ち抜くための大きなアドバンテージになる、と先に論じた。しかしだからといってコンテンツマーケティングが万能である訳ではない。今回は、コンテンツマーケティングがどのような場面で力を発揮するのか探ってみたい。

商品を普及させるための第一歩は
ボリュームゾーンに存在するニッチ市場を攻略することだ。

まずは「普及曲線」をもとに、コンテンツマーケティングを考えてみよう。

「普及曲線」とは、新しいアイデアや商品を採用する際の“早さの違い”に基づき、採用者を5つ(イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガード)に分類し、その分布を示したものである。

ある新しいアイデアや商品が登場した際、まずはイノベーターと呼ばれる“最先端のモノが好き”な層がいち早く採用する。その後、アーリーアダプターと呼ばれる“比較的新しいモノが好き”な層が採用し、その後うまくいけば、ボリュームゾーンであるアーリーマジョリティ、レイトマジョリティに普及していく。

このアーリーアダプターとアーリーマジョリティは属性が異なり、当然ニーズにも大きな違いがある。それ故に深い溝(キャズム)が存在する、と唱えるのがキャズム理論である。あるアイデアや商品が普及するには、このキャズムを超えられるかどうかが重要だ、という指摘だ。

では、このキャズムを超え、ボリュームゾーンであるアーリーマジョリティを攻略するには、どうしたら良いのだろう。キャズム理論の提唱者、ジェフリー・ムーアが著書「キャズム(原題:Crossing the Chasm)」で次のように述べている。

キャズムを超えるときの大原則は、特定のニッチ市場を攻略地点として設定し、持てる勢力を総動員してそのニッチ市場を支配することである。(P144)

キャズムジェフリー・ムーア著、川又政治訳

つまり、まず支配できそうなニッチ市場をターゲットとして攻略し、その後に別のニッチ市場を攻めるという手法を繰り返すのだ。するとまるでボーリングのピンを倒していくように連鎖的にニッチ市場を拡大していくのである。

とはいえ、この戦略は特にBtoCで実践するのは非常に難しい。従来のマス広告主体のマーケティングコミュニケーションは、ニッチ市場ごとにメッセージを「送り分ける」ことをもっとも苦手としているからである。

「新しいモノが好き」な層が形成する初期市場と
ボリュームゾーンとでは異なるアプローチ方法。

前項で述べた「ニッチ市場ごとのメッセージの送り分け」こそ、コンテンツマーケティングの活かしどころではないだろうか。なぜならコンテンツマーケティングの基本は、ユーザーの購入プロセスを分析した結果に基づいて、それぞれの段階で必要な情報をコンテンツとして提供することにあるからだ。商品発想でメッセージを考えると、どうしても最大公約数的な考えに陥ってしまいがちだ。しかし、ユーザーの情報ニーズから発想するコンテンツマーケティングのアプローチならば、ニッチ市場別に適切なメッセージを用意することができると言える。

自社商品を選んでもらうために、イノベーターやアーリーアダプターに対しては、他社商品との差別化のための強いメッセージを一本用意することが有効であるかもしれない。しかしアーリーマジョリティに対しては、彼らが今現在持っている興味にマッチしたコンテンツを、いかに細かなニーズ別に、いかに多く用意できるかどうかが勝負となる。

こういったマーケティングコミュニケーションには、アーティクル、ブログ、テーマサイト、啓蒙冊子など様々なメディアを活用し、適切なコンテンツを出版社のような発想(Like a Publisher)で、ユーザーの求めるテーマ・ニーズに合わせて発信するというコンテンツマーケティングの考え方がフィットするのではないだろうか。

ミラーレス一眼カメラの訴求を例に
コンテンツマーケティング活躍の場を考える。

例えばミラーレス一眼カメラを例に考えてみよう。

イノベーターやアーリーアダプターには一眼レフと比較した性能訴求が効くかもしれない。一眼レフの良さを経験しているか、あるいは少なくとも知識を持っているこの層に対しては、画素サイズ、感度、レンズの明るさ等のスペック情報を主体としたコミュニケーションや一眼ならではの写真としての味わいを訴求するのも有効であろう。

だが同じアプローチではアーリーマジョリティには効かない。そもそも一眼レフと比較されてもわからないし、自分のニーズにどのカメラがマッチするのかもわからない。アーリーマジョリティ市場の中には、例えば猫を上手に撮りたいと思っている女性、孫の入園式をきれいに撮りたいと思っている60代の男性、写真教室でモテたいと考えている若い男性などがいるかもしれない。このターゲットたちには統一メッセージで訴求したとしてもそれは効かない。「じっとしていない猫を上手に撮る方法」、「あとで娘に怒られないための孫の撮り方」、「カメラ女子にモテるためのデジカメ選び」といったコンテンツの方が効くだろう。それぞれは広告を作成するほどのテーマではないかもしれないが、アーティクルのテーマには十分なりうる。

こういったターゲット別、ニーズ別のアーティクルをウェブサイトに配置していけばいくほど集客力は高まっていく。商品が変わったとしてもベーシックなニーズは変わらないから、こういったコンテンツは賞味期間が長い。キャンペーンが終わったら使い捨てになるようなコンテンツと違い、情報資産となって価値を増し続けていくのである。

・・・今回、キャズム理論を引いて論じたが「そもそもハイテク商品についての議論ではないか」「理論の是非自体に様々な説があるのではないか」というような意見もあると思う。しかし商品が、単体としてもカテゴリーとしても複雑化している現代において、あらゆる商品が一般の生活者にとってハイテク化しているといえないだろうか。たとえばテレビで考えてみても、以前は放送を見るという単機能であったものが、いまやインターネット・録画・デジカメ写真の閲覧・スカイプ機能などできる事がどんどん増えてきている。果たしてこういった商品の進化についていける生活者はどのくらいいるのだろうか。この、商品を取り巻く状況の複雑化はコンテンツマーケティングの考え方を適用できるフィールドが増えてきていることを示していると考えられるのではないだろうか。

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ボリュームゾーンを攻略するにはニッチなターゲットセグメントごとに情報を送り分けることが重要である。商品の差別化情報をマス広告で発信する従来の手法では効果は望めない。この情報の送り分けを実現可能にするコミュニケーション手法こそ、コンテンツマーケティングなのだ。

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以下はアメリカでコンテンツマーケティングが盛り上がり始めた2012年に行ったインタビューの記事です。コンテンツマーケティング初期の記事なのでこれからコンテンツマーケティングについて勉強したい方に分かりやすい内容になっています。

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