4月。都内某所でコンテンツマーケティング・アカデミー主催の『コンテンツマーケティングサロン』が開催されました!
毎回1名の方をホストに、1名をゲストにお呼びして、コンテンツマーケティングにまつわる深~いテーマについて、会場みんなで深く語り合うことを目的としています。
参加者のみなさんも、コンテンツマーケティングの現場の第一線で活躍する実力者の方だけをご招待した、サロン形式の非常に濃密な勉強会です。
この記事を通じて、ホスト、ゲスト、そして会場参加の実力者の方々の熱い議論の様子を、少しでも感じていただければ幸いです。
参加は招待制。メンバー限定の勉強会としてサロンが開催されました。
記事だけでオウンドメディアを捉えない
今回のテーマは「オウンドメディアに本当に必要なものとは何か?」。
このテーマに沿って、書籍「誰も教えてくれない編集力の鍛え方 ~AI時代を戦う編集者・ライターの生存戦略~」を執筆されたまむしさんをホストにお迎えしました。
お相手となるゲストは、2013年頃から様々なオウンドメディアやブランディングコンテンツのプロデュース、企画制作に携わるQetic株式会社の宍戸麻美さん。ブランディング、コンテンツ制作現場の目線から様々なご意見をいただきます。
司会は、Content Marketing Academyの村上健太さん。
司会の進行のもと、会場に参加されたみなさんと楽しくにぎやかに、時には激しく意見が交換されました。
苦しかったオウンドメディア立ち上げ時代
まむしさんは過去、自社のオウンドメディアをゼロから立ち上げることになった経験があり、その際にかなりご苦労されたとのこと。
一生懸命、記事を企画・制作し続けているにもかかわらず、オウンドメディアのビジネス価値や投資に対するリターンを、うまく社内にアピールできない日々が続いたといいます。
編集者ひとりでオウンドメディアを立ち上げられたそうです。
そうした日々の中で「これ以上オウンドメディアを続ける意義はあるのか?」というところまで追い詰められたとのこと。
会場内のオウンドメディア担当者の方の中には、深く頷くかたもちらほら。大なり小なり、みなさん一度は感じたことのあるお悩みのようです。
当時のまむしさんはこんな感じだったとのこと。…なかなかつらいですね。
会場のみなさんにも「同様の経験がないか」「どうやって事業貢献を説明するべきか」と話が振られました。
猛者が集まる会場からは、様々な意見や経験談が飛び交い、イベント開始早々白熱する事態に。この話題は、会場に集まったみなさんの琴線にもふれたようです。
当時のまむしさんの解決の糸口はオウンドメディアを「『記事』だけで考えないようにした」こと。
記事だけでビジネス価値を出そうとする(アウトプット)だけではなく、記事を作成する過程やそこから得たノウハウを社内に展開する(スループット)ことで、身近なビジネス貢献につながったのです。
例えば、記事作成で培った文章術を営業研修に応用する、記事取材で築き上げた専門家人脈を社内活用できるようにするなど。
こうした活動を続けたところ、オウンドメディアの存在価値が理解され、自社ビジネスにとってなくてはならない存在になれたのです。
オウンドメディアの目的を再定義する
確かにまむしさんの仰るとおり、コンテンツ担当者は常にコンテンツだけで成果を出そうとする傾向があります(…私もそうかもしれません)。
でも、広く社内全体に目を向けてみると、様々な部署・様々な仕事があるわけです。よく探すと、実はコンテンツ企画制作のノウハウが応用できる業務もあるかもしれません。
オウンドメディア編集者の強みは、さまざまなビジネス貢献に応用できるのです。
まむしさんは、こうした取り組みを続けながら、オウンドメディアの目的を再定義。結果的に社内理解も高まり、社内リソースを増やすことにも成功したとのことです。
アウトプットだけでなく、スループットも。
簡単なようにも聞こえますが、おそらく大変なご苦労と地道な努力があったと思います。こうした活動を続けられた、まむしさんの熱い想いが感じられました。
この製品が選ばれることは、本当にHAPPYなのか?
まむしさんのお話を受ける形で、後半は宍戸さんの実体験・事例をふまえながら、もう一歩コンテンツに踏み込んだ話になりました。
どのようにコンテンツを作っていくべきなのか?
良質なコンテンツとはそもそも何なのか?
とても興味深いテーマです。
宍戸さんが関わるオウンドメディア「RealStyle by Jeep®」と「Cheki Press(チェキプレス)」は、コンテンツマーケティング・グランプリ2023を史上初めて同時受賞するなど、一般読者だけでなく業界内からも高い評価を集めているオウンドメディアです。
コンテンツを作る前に考えておくべき「世界観」
宍戸さんは「RealStyle by Jeep®」を立ち上げた際、まず「オウンドメディアの世界観」について徹底的に考えたといいます。
というのもJeepという車は趣味性が強く、目的地まで移動するという理由だけで選ばれるブランドではありません。だからこそ「Jeepを所有する幸せとは何か」を考えぬきました。
- Jeepに乗る人たちはなぜ乗るのか?
- Jeepに乗る楽しさってなんだろう?
- お客様にオウンドメディアに訪問してもらう意味は?
- オウンドメディアで、どんな体験を提供したい?
ブランドを知らない人達、距離がある人はJeepに関する感度が低い状態。そうした「輪郭がぼんやりした状態」から、「なるほど!」「好き!」に変えるための情報こそがコンテンツだと宍戸さんは言います
一貫した世界観のための、ブレないアウトプット
とはいえ、最初の1~2年間はコンテンツ運営でも苦労する点が多かったそうです。
編集部では「どんな言葉を使うとJeepらしいのか」「どんな絵をつくれば受け手に伝わるのか」を考えたものの、こうした世界観がライター、カメラマンなど他のチームメンバーになかなか伝わらないといったことが多かったそうです。
オウンドメディアにおいて「世界観の共有」は非常に重要です。
- 伝えたい世界観をチームに伝えられているか
- チームみんなが世界観に納得しているか
- 世界観を伝えるために、どんなアウトプット(言葉や絵など)が必要か
しっかりとした「世界観の構築・共有」と、それを正確に受け手に伝えるアウトプット、その両方がそろって初めて「優れたコンテンツ」が生まれるのです。
宍戸さんはそのために長い時間をかけてきたし、これからもその努力は続けていかなければいけないと仰っていました。
そのためにはプロデューサー、ディレクター、ライター、カメラマン…などコンテンツに関わる全員が、同じ世界観とアウトプットイメージを共有することが、なによりも大切です。
結局「良いコンテンツ」ってなんなの?
Content is King -コンテンツが最も重要であるという考え方は、コンテンツマーケティングと共に広まった言葉です。
とはいえ、そもそも「良いコンテンツ」とは具体的に何を指すのでしょうか?例えば上司が「良い記事を書いて」と要求したとき、私たちはどんなコンテンツを作ればよいのでしょうか?
一般的には「大勢から読まれるコンテンツ」が良いコンテンツと言われがちです。しかし本当にそうなのでしょうか?
討論コーナーでは、サロンの参加者から様々な意見が飛び交いました。
良いコンテンツの基準は「企業の世界観を伝えられているか」
様々な意見が飛び交いましたが、企業の核となる価値観やビジョンを反映したコンテンツこそが、真の意味での「良いコンテンツ」だという意見が多かったです。
また、Content is Kingでいうところの「King」は、単なるコンテンツではなく、企業自身であるべきだという意見も出ました。
今は個人がコンテンツ化する時代。会社自身もコンテンツ化し発信する時代が来そうです。
共感できるコンテンツに必要なのは読者目線?それとも企業目線?
良いコンテンツの条件の一つに「共感できるコンテンツかどうか」という話も出ました。
読者が共感できる情報が盛り込まれているのか?という悩みは、オウンドメディア運営の皆さんに共通した悩みです。
共感とは「バズ」のように万人受けすることなのか?
企業側・読者側、どちらの目線に立てばいいかなど議論が弾みました。
また参加者からは、「オウンドメディア運営者は、ライターや映像ディレクターなどの外部クリエイターに対して何を期待するのか?」というサロンならではの生々しい話題も出てきました。
この質問には様々な意見が飛び交い、白熱した議論となりました。
BtoBオウンドメディアの場合
外部クリエイターには、ユーザー目線で考えてくれる人材が欲しいという意見がありました。
自社のセールスやコンバージョンに必要なことはデータ分析などからある程度見えているが、一方で読者の本当の関心や本音はデータから見えてこない部分もあるとのこと。
なので外部には、データで捉えきれないような、読者の視点をもって共感するコンテンツ企画制作を期待したいとのことでした。
BtoCオウンドメディアの場合
先のBtoBの意見とは逆に、ユーザー目線のコンテンツは自分達で作りたいので、具体的にセールスやコンバージョンにつながるコンテンツを期待したいという意見がありました。
また別のオウンドメディア編集長の方からは、取り扱うテーマが身近かつ多岐にわたるため、企業のコンセプトや世界観を理解してくれる人、伝えてくれる人が欲しいという意見がありました。
コンテンツマーケティングサロン勉強会の感想
今回の勉強会は非常に濃密な2時間でした。
1日中議論しても足りないんじゃないか?というぐらいです。
個人的に驚いたのは「オウンドメディアの担当者」と一口に言っても、オウンドメディアを持つ立場と、それを支援する立場で「良いコンテンツをどう作るか」に対するアプローチが違ったこと。
例えば、支援側はいかに企業側の納得いく形でコンテンツを作れるか、企業側が伝えたいことをきっちりキャッチアップ出来るかという視点が多かったです。
一方で企業側としては、自分たちが考えるコンセプトをしっかりメンバーと共有できるか、チームとして自社の中で役割を果たせるかどうかという視点が多いと感じました。
同じような立場や、自社だけの勉強会では支援側・企業側の2つの視点で討論できないのではないでしょうか。
コンテンツマーケティングの現場で活躍する実力者だけが集まる、サロンならではの気づきだったのかなと思いました。
執筆・編集:Content Marketing Academy
コンテンツマーケティング・サロン第一回アーカイブ動画はこちら