企業のコンテンツから「マーケティング臭」を消す方法

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  • 企業コンテンツの「マーケティング臭」を消すための取り組みとは?

先日クマベイスさん主催のマーケティングイベントにスピーカーの一人として参加してきた。

同社が出版した書籍「コンテンツマーケティング最前線02」の出版記念イベントだ。

他のスピーカーは、「セーラー服おじさん」こと小林秀章氏と、SEO分析ツール「MIERUCA(ミエルカ)」を手がけるFaber Company取締役、山田明裕氏のお二人。

そこにクマベイスの田中森士社長が司会で入るという座組だった。

この日に話し合ったテーマの中で、「良質なコンテンツとは?」というものがあったが、その時に話した内容を改めて言葉にして整理しておきたいと感じたので、まとめてみたい。

「良質なコンテンツ」とは何だろうか?

一般の読者や視聴者に対して「良いコンテンツとは?」と質問すれば、おそらく「面白い」「勉強になる」「笑える」「癒される」といった主観的な内容が返ってくるだろう。

ただ私たちが作ろうとしているコンテンツは、何らかのマーケティング目標を課せられた「マーケティングコンテンツ」なので、当然それだけでは足りないということになる。

それでは良質なマーケティングコンテンツの条件とは何だろうか?

  • 集客できる
  • 態度変容を促せる
  • コンバージョンにつながる

など細かく洗い出せば色々あるかもしれないが、より俯瞰した視点で見た場合、「マーケティング臭」がしないマーケティングコンテンツというのは、重要な条件ではないだろうか。

ここでいう「マーケティング臭のするコンテンツ」とは、ユーザーが「宣伝くさい」「企業の言いたいことを一方的に言っているだけ」といった違和感や嫌悪感を持つようなコンテンツのことだ。

CMやキャンペーン広告のようなプッシュ型の宣伝コンテンツは、特にそうなりがちだろう。

こうした違和感や嫌悪感の原因は、コンテンツを発信している企業側の下心を感じてしまうからではないか。

ただ本来、企業が作るコンテンツに何らかの意図や狙いがあること自体は問題ではないはずだ。

コンテンツ発信のメリットが全くなければ、企業として長く続けていくことは難しい。

「ユーザーを第一に考えているため、自社のメリットは全く考えていない」といった類のコンテンツマーケティング施策にしても、その姿勢自体が一種のブランディングになる等の間接的メリットがあるはずだ。

そのため問題は、コンテンツの裏側に意図や狙いがあること自体ではなく、それらが「下心」として捉えられてしまうことではないか。

「意図」と「下心」の分かれ目は何だろうか?

一言でいえば、企業に対する信頼の有無だと思う。

マーケティング対象の商品・サービスが一定の水準なのに(ここは大前提だろう)、それでも信頼されないのは、消費者への理解が欠けている、もしくはそういう印象になっているからだ。

つまり「こちらのことを分かってくれていない。自社の都合しか考えてないな」と思われている状態だ。

ではどうすれば「自分のことを分かってくれている」という実感を持ってもらえるだろうか?

「あなたって30代男性ですよね」と言っても、理解を示したことにはならないだろう。

ちなみにマーケティングコンテンツを発信するからには、

  • 対象の消費者
  • 彼らが抱える課題
  • それが解消された時のゴールイメージ

の3つがあることが大前提になるはずだ。

そうであればマーケティング文脈において「自分のことを分かってくれている」という実感につなげるには、少なくともこの3要素への理解を示す必要があるだろう。

ちなみにこれら(登場人物・ゴール・乗り越えるべき障壁)は、一般的に「人間がストーリーを感じるために必要な3要素」として知られている。

つまり消費者のストーリー(登場人物・ゴール・障壁)を語れるくらい相手を理解しているかどうかが信頼の有無、=「意図」と「下心」の分かれ目になりそうだ。

ただ個人同士のコミュニケーションならばともかく、企業レベルで実践することは簡単ではない。

とはいえ信頼や共感を得ているコンテンツマーケティング施策の事例をみると、消費者理解に基づいたコンテンツ発信を組織レベルでまわせる仕組みを工夫しているケースが多い。

いかに組織が一人の消費者(ペルソナ)の「イタコ」になれるか、という観点での仕組みだ。

たとえば転職エージェンシーのパーソルキャリアが運営するオウンドメディア「未来を変えるプロジェクト」。

キャリア志向の高い20~30代のビジネスパーソンを対象にしたメディアだが、ペルソナの好みや課題感を的確に突いた記事が多く、Facebookを中心に数千シェアされることも珍しくない。

コンテンツ制作の秘訣を知りたくて、3年ほど前に取材したことがある。

彼らの場合は、ペルソナとなるビジネスパーソンたちが参加する招待制のイベントを開催。そこでなされたキャリアに関する議論をベースに記事や特集に仕上げる、というやり方がユニークだった。

実際のペルソナから出た生の意見をベースにしているから、刺さる記事になるというわけだ。

パーソルキャリア主催イベントの様子

ペルソナのイタコになる仕組みを工夫しているという意味では、北欧雑貨や家具などを販売する「北欧、暮らしの道具店」も当てはまりそうだ。

同メディアは、「フィットする暮らし」をテーマにしたライフスタイル系のコンテンツで多くの女性ファンを集めている。

ライフスタイル系の記事の場合、繊細な書きぶりが求められやすい。

ちょっとした言葉の使い方の違い一つで、「これを書いている人は分かってない」という風にもなりがちだからだ。

そうした絶妙な勘所を抑えたコンテンツを組織として作っていけるように、同メディアを好きでいてくれるファンの中から人材を採用しているという話を、以前に青木耕平社長がセミナーにて紹介していた。

ファンの心に刺さる勘所は、ファン自身が一番知っているという考えだ。

そういう意味では、育児系のオウンドメディアもそうした作り方をしている成功事例が目立つ。

たとえば次の2つの育児メディアは、いずれも育児ママもしくはパパ自身が書くコラムを中心に据えているメディアだ。

育児の楽しさや苦労を味わっている当事者が作るコンテンツだからこそ、根強いファンを獲得できるのだろう。

こうしたやり方は、知識やノウハウを提供する教育型コンテンツでも同様だ。

アメリカで住宅向けプールの施工を手掛けるRiver Pools and Spas社は、自宅にプールを設置する際に必要な情報を自社サイトにて発信している。

こうしたコンテンツは外部ライターではなく、日々顧客と接している営業担当者が執筆しているという。

ペルソナと定期的に顔を合わせているスタッフだからこそ、的確な疑問解決コンテンツを作れるというわけだ。

だからといって、マーケティングコンテンツを作る際に、いかなる場合でもこうした仕組みを作らなくてはならない、ということではないと思う。

たとえば慣れ親しんだジャンルでの刈り取り型施策に必要なインサイト獲得であれば、「検索キーワードの分析やAmazonレビューの読み込み」といった力業で済む場合もあるだろう。

大事なのは、その時々のマーケティング目標に応じて、求められる「イタコ度」とその達成に必要な作業・仕組みを明確にすることだと思う。

執筆:三友直樹(コンテンツマーケティングラボ編集長)

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