12月19日(月)~23日(金)の5日間にかけて開催された、「CONTENT MARKETING DAY 2022」本イベントも、3年目のオンライン開催となりました。
今年は「CX² 体験をデザインする」をテーマに、デザインからコピーライティング、CMSやメタバースなど、様々な領域の実践者たちが登壇しました。本記事では、イベントの内容を振り返っていきたいと思います。
CM-Day2022のCX² とは、 Customer Experience × Content Experienceの略。
顧客の体験全体の価値を高めていくべきという「Customer Experience(顧客体験)」と、優れたコンテンツによる特別な体験を創り出すべきという「Content Experience(コンテンツ体験)」の両方について考えていきます。
ここからは、テーマ別にセッションをピックアップしていきます。まずはテクノロジー分野。昨今注目を集めるメタバースやカオスマップ、コンテンツCMSといったトレンドの実践者たちに登壇いただきました。
今では当たり前のようにBtoBのSaaS界隈で取り上げられるカオスマップ。動きの激しいマーテクのトレンドを通して日本やグローバルの技術の潮流を俯瞰的に捉えることだと語るのは、カオスマップの生みの親である田島学 氏(株式会社アンダーワークス)です。
ここ数年、ツールのクラウド化により誰もが気軽にデジタルツールを導入できるようになりました。ツールを使っていくフェーズがひと段落し、これからはマーケティングテクノロジーのスタック化が進むと田島氏は言います。
近年注目を集めるCMS。CMSはコンテンツマネジメントシステムの略で、Webサイトのコンテンツを構成するテキストや画像などを、保存し管理するシステムです。データベースに保存されている画像やテキストを使うことで、専門的な制作知識が無くても、簡単にWebページを作ることができます。
今年のCM-Dayでは、CMSを扱う企業の方たちに、改めてCMSとは何か、CMSでコンテンツ制作はどう変わるのかについて紹介いただきました。
膨大なコンテンツを管理し、制作する大企業向けのCMSから、ブログやオウンドメディアに活用するための中小企業向けのものまで分かれています。
サイト管理にコストがかかっている方、コンテンツ制作管理を効率化したい方、そもそもCMSで何ができるの?という疑問にお答えするITツール紹介コーナー。今後も色んなテーマでツールを紹介していきたいと思います。
マーケティング領域ではCookieレス時代におけるWeb広告の話やオウンドメディアの戦略設計等のテーマで登壇いただきました。
「コンテンツの飽和が起こっている」と話すのは、コンテンツマーケティングに20年近く携わっている伊東周晃 氏(株式会社JADE)。
あまりに多くのコンテンツが短い間隔の中で生成されていくことで、Web上でコンテンツが飽和している状態に陥っていると言います。
実際、Google上で検索を行ったにも関わらず、サイトを1つも訪問せずに去っていく人の割合は約49%。検索経由のトラフィックが発生しにくい状況が発生しています。
コンテンツマーケティングの担当者は記事を通してユーザーとどんな関係性を築き上げたらよいのか。伊東氏は、自社に経済圏を作ることを目的にコンテンツを作るべきだと言います。
ここで言う経済圏とは、メンバーシップであったり、Eメールのサブスクライバーが該当します。なるべく自社がコントロールできる領域に顧客を囲いこむことが重要です。自社でコントロールできる順番は以下となり、下に行くほど自社の経済圏から離れていきます。
実はFacebookやTwitterなど、ソーシャルメディア上で獲得したフォロワーは自分たちのサブスクライバーではありません。Twitterというプラットフォームを使用する以上、コミュニケーションのコントロールはTwitter側が握っているのです。
企業がウェブコンテンツを収益に貢献させるための資産にすることができるか、といったテーマで毎年情報を発信する磯和太郎氏(株式会社はてな)。前半では磯和氏によるコンテンツマーケティングのトレンドについてお話を伺いました。
コンテンツマーケティングでは、コンテンツそのものよりも、裏側にある「戦略」と「組織づくり」が非常に重要だと語る磯和氏。単に量を作り続けるのではなく、組織のROIや事業戦略に応えられる、質を担保したコンテンツが重要だと語ります。
後半では、LINE社の山田賢人氏と一緒に、LINE社が取り組むコンテンツ戦略と実践について紹介いただきました。
LINEでは、ターゲットを潜在層、準顕在層、顕在層、顧客層の4つのファネルに分類し、ファネルごとに異なる目的や役割を立ててオウンドメディアを展開。オウンドメディアでは、コンテンツとして伝えるべき内容も明確に分けています。
顧客層に対しては「LINEキャンパス」というオウンドメディアで、サービスの使い方や活用法を紹介する反面、サービス認知まで至っていない潜在層に対しては、「おなじみ」という、オウンドメディアを展開。こちらは完全に認知系に振り切っていて、サイトのトンマナも「LINEらしさ」を排除し、店舗関係者が見る読み物として訴求しています。
顧客ニーズに応じてコンテンツ戦略を考える手法は、まさにコンテンツマーケティングの王道。大企業であるLINE社が、組織のいろんなしがらみをどのように乗り越えていったかという点についても、ご紹介いただいています。
「有隣堂しか知らない」本や文房具などの様々な世界を、スタッフが愛をこめて伝える、というコンセプトを元に、YouTube企業公式チャンネルを運営する有隣堂。今回は「有隣堂のYouTubeを裏で牛耳る女 有隣堂 広報」こと渡邉郁 氏に、ファンづくりの裏側を余すことなく語っていただきました。
2019年のチャンネル開設当初は、動画単体での収益化を目的に据えて、今とは異なる動画を作っていたという渡邉氏。しかし動画の再生数もチャンネル登録者数も全く伸びなかったそうです。
色々な試行錯誤を経て完成したのが今の「有隣堂しか知らない世界」。また、視聴者とコミュニケーションをする機会を経て、チャンネルを運営する目的も変化したそうです。
運営の目的は収益化ではなく、有隣堂のファンづくり。動画を通してもっと有隣堂を知ってもらいたい、もっと好きになってもらいたい。そのためにどんなコンテンツを発信すればいいか、チャンネル登録者数が19万人を突破した今も、考え続けていると言います。
ちなみに、有隣堂しか知らない世界では、マスコットキャラクターであるR.B.ブッコローが、文具を愛する社員たちに忖度なく爆弾発言をブッコんでいきます。なぜ企業の公式YouTubeチャンネルでここまで振り切ったことができるのか、そんな楽しい裏話も後半でお話しいただいています。
デザインの分野では、画像生成AIの話や広告バナーの話、コンテンツの現場から見るデザインディレクションの話などを紹介いただきました。
親子出演は今年初!専門学校でデザインを学んでいる竹島菜月氏と、現役デザイナーとして活躍する竹島千代子氏(株式会社communograph)による対談セッションです。
まもなく就活を始める菜月氏に、千代子氏がデザイン制作のポイントを伝授していきます。
今回の制作課題は「バナー広告」。ペルソナが異なる3つの商材をテーマに、制作と添削を行っていただきました。
例えば、モバイルバッテリーの広告バナー添削では、こんなアドバイスが。
バナー広告は一瞬の出会い。いかに目を止めてもらって「おお!」と感じて貰えるかが大事です。見ている人が「いいな」と思うこと、企業側が伝えたい情報がマッチしていることが重要だと千代子氏は言います。
デザインは、あくまで表現にすぎません。どんな人に伝えたいのか、どんなことを伝えたいのか、優先順位を決めることからデザインは始まります。母娘の仲睦まじい会話を通して、デザイン制作の奥を紐解いていくセッションです。
今年のCM-Day2022でセッション数が最も多かったコンテンツ分野。コピーライティングから動画コンテンツの撮影メソッド、ディレクション現場の裏側まで、幅広いテーマで登壇いただきました。
CXとは、すぐれた顧客体験をつくりだすために、顧客を深く理解することですが、そもそも「相手を理解する」とは何でしょうか?そう問いかけるのはコピーライターの近藤智子 氏です。
仲の良い友達や家族同士であっても、相手を理解することは難しいものです。企業が発信するメッセージ一つでも、伝えるべき顧客のことを深く理解していないと、思わぬところで地雷を踏んでしまうこともあります。
近藤氏のセッションでは、言葉をヒントに相手を理解するための、おすすめトレーニング方法を3つ紹介しています。
1.できるだけ遠い世界の人の話を聞く・読む
ターゲットが良く読む雑誌、メディアを見るのが効果的。どんな単語が出てきているか、どんな言葉遣いが使われているかに着目してみよう
2.よくある言葉や常套句は、一旦禁止してみる
あなたに寄り添う、上質な〇〇、こだわりの〇〇といったコピーは、使いやすい一方で曖昧なことば。多様してしまうと、受け取る側のズレも起こりやすくなります
3.別の言葉で言い換えると?と考える癖をつける
例えば「あなたに寄り添う」とは、お客さんと常に一緒にいるということなのか、お客さんが困ったときに一番に駆け付けることなのか、微妙にニュアンスが異なってきます。ことばに対して、意味の再確認を行ってみましょう。
私生活であれば、言葉をどう使うか、どう受け取るかは個人の自由ですが、コンテンツを作って発信する立場で考えたときに、言葉をどう受け止め、発信するかは、素通りできない問題になります。
普段何気なく使っている「言葉」について、もう一度見つめなおす機会となりました。
コンテンツディレクターとして、Webサイトやカタログ、動画など様々なコンテンツづくりに携わっている本條秀樹氏(株式会社日本SPセンター)。中でもインタビューコンテンツは、読者の顧客体験を高めるためにとても効果的だと語ります。
インタビュー現場とは、顧客体験の入り口です。インタビューで引き出した言葉は、動画や記事、対談コンテンツなど様々な場所へ展開されていきます。だからこそ、インタビューでは聴き手の引き出し方が一番重要になります。
インタビューで重要なのは、ユーザーから「エッセンスワード」を引き出すこと。エッセンスワードとは、「発見・共感・納得」があり、コンテンツの魅力を引き立てるうまみ成分のような言葉です。記事であれば見出しに、動画であればタイトルに使われます。
エッセンスワードを引き出せるかどうかでコンテンツの質は大きく変わります。例として挙げられているのが、キヤノン社のインタビュー動画。インタビューを通して、ユーザーから「発見・共感・納得」を引き出しています。
そして、後半ではエッセンスワードを引き出すための心構えとお作法についても紹介。説明を語りに変える5つの聞き方や、話し手のタイプごとに聴き方を変える話など、実際に本條氏が現場で使っている手法についてお話しいただいています。
インタビューをテーマとしたセッションはこれまでに無く、初の試み。しかしながら、CM-Day視聴者からも非常に人気を博したセッションとなりました。
コンセプト設計から情報整理、紙面構成からデザインディレクションまで、新卒から7年間編集の仕事に携わり続けているという三枝明佳 氏(株式会社日本SPセンター)。編集とは「誰かに伝えるための力」だと言います。
例えば、忙しいあの人に仕事を依頼する時、あなたは何を考えますか?
「今忙しいかな、いつ声を掛けよう…」
「何からどの順番で伝えよう…」
「メールかな、電話で伝えようかな…」
こういった考えが頭をよぎると思います。こうした考えは普段の生活で自然と考えているものですが、これこそが「編集」だと言います。言い換えると、こんな形でまとめられます。
逆に、相手の状況や好みを無視してコンテンツを作ってしまうと、それは編集力不足。うまく相手に伝わらず、相手の印象に残らなかったり、むしろ悪印象を与える場合もあります。
こうした編集力はセンスによるものではありません。相手へ気配りする意識と知識、技術を組み合わせることで誰でも編集力を磨くことができると言います。
そして後半では、日常のなかから編集力を磨くヒントを三枝氏と探していきます。例えば朝のニュースにあるテロップ。ぱっと見て、理解させて興味を引く工夫がたくさん隠れています。また編集のヒントは、ランチ時間にも。ラーメン屋の券売機には、視線を意識した情報配置が採用されています。左上に目が行くように、Zの補足で情報が並べられています。
編集、と聞くと専門的で難しいことのように見えますが、このように、身近な存在にも隠れているもの。普段の生活のなかで、楽しみながら編集スキルを磨いていくことができます。編集力のヒントがたくさん散りばめられているセッションでした。
いくつかのセッションを振り返ってみましたが、いかがだったでしょうか。DXをテーマにした昨年とは異なり、本イベントでは、コンテンツを通して顧客とどのようにコミュニケーションを取るか、最高の体験を届けられるかについて追究していきました。
記事では一部のセッションしか紹介できませんでしたが、期間限定でアーカイブ動画を限定公開中です!日々のマーケティング活動に、アーカイブ動画をぜひご活用ください。
コンテンツマーケティングアカデミーでは、コンテンツマーケティングの「いま」を探る、大規模調査を実施中です。
チーム体制・予算・戦略・業務プロセスなど幅広く調査を行い、これからの未来について考える材料となることを目指します。※集計したデータは、後日コンテンツマーケティングアカデミーの記事にて一般公開します。
また、アンケートに回答いただいた方には「CONTENT MARKETING DAY 2022イベント本編のアーカイブ動画」を先行してご案内します。
「動画を見逃してしまった…」という方はぜひコンテンツマーケティングに関するアンケートにご回答ください。(匿名で、個人情報が公表されることはありません)
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コンテンツマーケティングサーベイ 2021-2022
執筆:Content Marketing Academy 池口 茉里