結論から申し上げると、感性と行動力をうずうずさせる楽しさでした。2020年はコロナ禍を経て急速に全体としてのDXが進み、データの重要度がかつてなく上昇。コンテンツマーケティングにおいては、「センスメイキング」という物事の因果関係を見つける力としての技術を使いこなすことで、データから有益なインフォメーションを引き出せる流れが来ています。
カンファレンスは全体を通じてデータの組み立て方や用途に合わせた使い方を知った上で、コンテンツマーケティングの精度を上げる考え方や方法、その背景をくまなく網羅。初心者から上級者まで隅々まで夢中で視聴してしまう、まさに学園祭的な楽しさが詰まったものと言えます。イベント終了後も期間限定で有料のオンデマンド視聴が可能ですので、見逃した方やコンテンツマーケティングとは何かを体に沁み込ませたい方は、以下のイベントページからご視聴いただけたらと思います。
Content Marketing Day 2020 イベントページ
というわけで、2020年11月18日(水)~20日(金)にかけて開催された「Content Marketing Day 2020 ~SENSE MAKING 直感と理性のマーケティング~」は、コンテンツマーケティングの「学園祭」と題されたオンラインカンファレンス。『海外(米国)の先進的なコンテンツマーケティング手法や、国内の現場の実践ノウハウを通じて、企業の枠を越えたコミュニティの形成と活性化につなげ、CX・DXの真の成果に結びつけることを目的』としたセッションが揃い、企業スポンサーなし、コンテンツマーケティングの理念に賛同し、実践ノウハウを共有する方々が集いました。
全40件に及ぶセッションはいずれも最先端の情報と事例を備え、昨今のコンテンツマーケティング事情を知るには贅沢すぎる内容。本稿では、公開日ベースでセッションを振り返ります(ITツール紹介を除く)。
11月18日公開は15セッション。コンテンツマーケティングにおける最前線の情報はもちろん、プロならではの経験値と感覚値が心の奥にまで深く響く複数の事例、オウンドメディア運営の基礎的な考え方と最新ニュースを得られるセッションが大集合。「センスを磨く」「ストーリーを描く」「基礎を整える」の3つに分けてご紹介します。
やはり外せないのは基調講演。『【基調講演】コンテンツマーケティングにおけるビッグデータとセンスメイキング』。本メディア「CONTENT MARKETING LAB」ファウンダーの渡辺一男氏による講演です。
というテーマを中心に話題が展開。
ビッグデータを扱うとき、通常はデータサイエンスを使いますが、コンテンツマーケティングにおいては相関関係でわからないことが非常に多く、因果関係を知ることが非常に重要と言います。
『センスメイキング 本当に重要なものを見極める力』の著者であるクリスチャン・マスビアウは、センスメイキングについて「異なる様々なデータを集めてそれらを統合する力」と話していますが、渡辺氏はコンテンツマーケにおいて「意味や因果関係を見つける技術」と定義。
最初にデータを集めて、その次に重要なのがセンスメイキング。そのあとシナリオを作って、最終的にストーリーテリングをする。見ている数字群がデータなのかインフォメーションなのかは「問い」によって決まるので、意味や因果関係を見つけるためには、問題を“ミステリー”と捉え、推理力を働かせる必要がある、と。
その事例として、「JTBD」のフレームワークを使って不足しているコンテンツは何かを調べた例、「FCBグリッド」のフレームワークを使ってユーザーとの適切なコミュニケーションを分析した例を紹介。
結論として「コンテンツマーケティングにおいては、因果関係を知ることが非常に重要。意味や因果関係を見つける技術としてのセンスメイキングの手法を使えば、データから有益なインフォメーションを引き出せるのではないか」と締めくくります。
新たな局面を迎えているこの時勢に、積極的に自分のものにしたい考え方でした。
セッション視聴ページ『【基調講演】コンテンツマーケティングにおけるビッグデータとセンスメイキング』
渡辺氏セッションと併せて押さえておきたいのが、株式会社JADE 代表取締役の伊藤周晃氏の『2021年、コンテンツマーケティングを解き放とう ―企業と顧客をつなぐこれからのコンテンツ発信モデル―』です。
重要な点は数々ありましたが、この3点をテーマに紐解くと、エンゲージの高いオーディエンスの価値を可視化し、耳を傾けてくれるオーディエンスとの関係を活かす新しいビジネスモデルを作れるならば、コンテンツマーケティングは手段ではなくビジネスモデルになる可能性があるそう。ポイントはオーディエンスとのエンゲージメントのしかたです。
また、コンテンツマーケティングとしてのメディア運営は複利のある取り組みであり、1年目と2年目の取り組み方は異なるもの。メディア側からの話をオーディエンスに聞いてもらいやすくなる状態を作るアプローチをしながら、売上を上げることと、コスト削減の両方を考えて運営していくのが正当な評価につながるそう。
過去を顧みるに、リーマンショックやコロナ禍など不況のタイミングでコンテンツマーケは発展してきました。
メディアがオーディエンスとの信頼を重ね、合意に基づく関係性によってパーソナルデータを提供していただき、ファーストパーティをつかむ契機としてコンテンツマーケティングは存在しています。サードパーティcookie問題やダークソーシャルなど、計測できない・計測しにくい世界が増えても、それすら、コンテンツマーケティングにとっては追い風であると。
適切な戦略と計画に基づいた変化を見据えて、本質をとらえた運営ができるなら、今は大きなチャンスの時期。メディア運営を見直すきっかけとして、この機を活かしたいと感じました。
セッション視聴ページ『2021年、コンテンツマーケティングを解き放とう — 企業と顧客をつなぐこれからのコンテンツ発信モデル —』
この基礎編がとにかく豪華です。これだけの内容を揃えてオウンドメディアの基礎を自分の内側に叩き込める機会はそうそうありません。特に基礎の基礎として注目したいのは下記2つです。
オウンドメディアはWEBサイト、ブログ、SNSと多種多様な形がありますが、オウンドメディア構築にあたっての基礎となる考え方、展開の仕方を懇切丁寧に聞ける機会は、実はなかなかありません。
そんな中で、磯和氏の講演では、昨今のオウンドメディア事情を踏まえた上で、これから始める方の指針になる考え方、フロー、指標がわかりやすく解説されています。現在運営中の方にも、ご自身のメディア運営の振り返りとしてご覧になると、新たな視点の気づきになると思います。
セッション視聴ページ『サスティナブルなオウンドメディア運営を実現するための視点』
そしてもうひとつ。今最もアツイのがYouTube。まさにレッドオーシャンと化している市場ですが、「今からでも大丈夫」と背中を押してくださるのが、宮脇氏のセッションです。
今からでもYouTubeに参入すべき理由、やるべきこととやってはいけないこと、チャンネルの戦略設計やYouTube内SEO、コンセプトやコンテンツ設計の基本と、これから始めたい人が知っておきたいことをあまねく網羅しています。
その網羅性のすばらしさを示しているのがこちら。ご覧ください。
企業の場合、自社サイト運営の傍ら「YouTubeもやっておこう」と参入するケースも多いですが、それを戒めるかのようにYouTube担当者を定め、「真剣にYouTubeに向き合い」、これらタスクをしっかり運営しましょうと宮脇氏は投げかけます。
YouTubeを知り尽くした方ならではの0から10までの内容を、こんなにも短時間でまるっと学べる機会はめったにないと思いながら視聴しました。YouTube参入を考えている方に必須のセッション、見逃した方にはぜひオンデマンド視聴でご覧いただきたいです。
セッション視聴ページ『【ゼロから始める】成功へ導くYouTube運用戦略 — 現役マーケター×Youtuberが語る —』
良セッション揃いで全てを紹介できないのが残念ですが、メディア運営を通じてコンテンツマーケティングを運営しているひとりとして、これらセッションを見て感じたことをまとめました。
このほかにも、これからのマーケティングに欠かせないシニアマーケティング現況やストーリーテリング、デザインの基礎、時代のニーズに合わせたペルソナ設計など色々ご紹介したいのですが、あまりにも長くなるので今回はこちらで締めたいと思います。
カンファレンスをご覧になった方々の声もこちらにまとめましたので、オンデマンド視聴の参考にご覧ください。
Content Marketing Day 2020@今年はオンライン学園祭
終わりに、KT氏のセッションまとめを引用させていただきつつ、締めたいと思います。
KT氏の情熱的なセッションは視聴していて胸が熱くなりました。とくに上記のまとめです。
データ活用が進む今、データだけでは人の心は図れず、言葉だけでも人の心は動かせません。だからこそ、データを使って文化を伝え、情熱をもって伝えたことが受け継がれていく仕組みを作るのが、コンテンツマーケティングに携わるものの役割なのかもしれません。そのために必要なのが、直感と理性のマーケティングなのかな、と思います。
セッション視聴ページ『恩返しのサイクルが人を動かすコンテンツを生み出す — 感謝と継承の物語 —』
記事は、次に続きます。
関連リンク:Content Marketing Academyによるセッション紹介記事(note記事)