CONTENT MARKETING LAB

「ネイティブ広告」は、本当に「ネイティブ」な「広告」であるべきなのだろうか?

作成者: CML|Nov 6, 2013 6:12:00 AM

ネーミングと実態の間にある“ギャップ”が、マーケターを惑わす原因に。

Wikipediaによると「ネイティブ広告」とは、

… is a web advertising method in which the advertiser attempts to gain attention by providing content in the context of the users experience.….The advertisers intent is to make the paid advertising feel less intrusive and thus increase the likelihood users will click on it”

「ユーザーの行動に合わせて価値あるコンテンツを提供し、生活者の興味・関心を惹きつけようとするウェブ広告の形態の一つ。…広告主の意図としては、広告を押しつけがましくないように見せることで、クリック率を上げようとするものである」

とある。

つまり、ウェブサイトなどの各種媒体・ブログ・SNSなど、外部のプラットフォーム上に、周囲の記事の一部として見えるように配置される記事型広告やタイアップ、またFacebookのスポンサー広告やTwitterのプロモツイートのようなSNS上のコンテンツ型広告などである。

ネイティブ広告は、周囲のテーマや文脈に沿った記事や、読者の興味に合わせたコンテンツとして、企業から広告を表示するため、読者はさほど抵抗感を感じることなく情報に触れることができる。また、記事やコンテンツの内容としては、製品やサービスをあからさまにアピールする内容ではなく、読み物として充実したものであるため、より多くの生活者を惹きつける。SNSの更なる進化に伴い、あらゆる可能性がでてきた昨今、マーケターの間で何かと話題にのぼることが多い手法だ。

しかし、この記事の著者であるRobert Rose氏は、実はネイティブ広告は「ネイティブ(=自然)」でもなければ、「広告」でもないと主張。より大きなブランドコンテンツを使ったマーケティング戦略の一部に過ぎないという。

コンテンツマーケティングでは、いかに惹きの強いコンテンツを作るかだけでなく、どのように集客し、生活者をコンテンツへ導いていくのかということも重要だといわれている。そのため、ネイティブ広告の根底にある「自然に溶け込み、伝える」という手法は、本当に効果をもたらすのだろうか――。「ネイティブ広告」というネーミングにとらわれて広告を制作することの危険性について、著者は記事内で警鐘を鳴らしている。

“ネイティブ(=自然)”を追求しすぎることでコンテンツ力が弱まってしまう可能性も。

ネイティブ広告が今注目されている大きな理由は、ウェブサイトなど各種媒体の一部に溶け込ませることで、ユーザーが違和感を抱かないネイティブ(=自然)な見せ方が可能であることと、エンゲージメント性の高いコンテンツをランディングページなどに誘導させることなく直接発信できることであろう。

生活者が興味を持っているテーマに合わせて、コンテンツを発信することは昔から行われてきたことなので、この手法自体は決して新しい方法ではない。例えばテレビの世界。出演している芸能人たちはトークや芝居で視聴者を惹きつけるが、一方で書籍や映画など様々な「商品」に関わりがあり、そのプロモーションとして出演している。現代では、同様のことをインターネットに場を置き換えて、オンラインパブリッシャーやソーシャルメディアが中心となり実現しようとしているわけだ。

しかし、コンテンツマーケターとしての視点から考えると、ネイティブ広告の「ネイティブ」という側面に固執しすぎることには、少し疑問も感じられる。

なぜなら、コンテンツマーケティングで成果を出すためには、生活者の目に留まるような目立つコンテンツを作り、影響力の高いコンテンツで生活者に次の行動(例えば、購買やお問い合わせなど)を促すことが必要だからだ。そのため、周囲の編集記事との差別化を図り、より際立ったコンテンツとして張り合うことも求められるだろう。コンテンツマーケターとしてやり遂げなくてはいけないことは、驚きがあったり、予想をいい意味で裏切ったり、利便性が高いコンテンツを提供しオーディエンスである生活者を、閲覧中の媒体から“さらう”ことなのである。「周囲の情報の流れに“自然と”溶け込んで見える」ことだけに着目してネイティブ広告を作ることは、結果として、効果を弱めてしまうことにもつながりかねない。より際立ったコンテンツを作るという意味では、「ネイティブ」でなければないほど、ウェブサイトの情報と広告の情報が相互に補完しあい、パワフルな効果を発揮するということだ。

ネイティブ「広告」が果たすべき目的とは――。従来の広告とは異なる目線で考えよう。

ネイティブ広告を語る人々が共通して強調していることがある――それは、ネイティブ広告でユーザーがたどり着くのは割り込み型のバナー広告でも、宣伝を重視した行動喚起(Call To Action)でもなく、それがユーザーにとって有益な「コンテンツ」であるということだ。

このコンテンツ重視の展開を「広告」という言葉の由来や概念から考えると、目的のずれが発生していることに気づかされるのではないだろうか。

どんな形態であれ、広告が持つ本来の目的は、”製品やサービス”をプロモーションすることだ。それなのに、ネイティブ広告の目的は、製品やサービスをプロモーションする “コンテンツ自体”へのエンゲージメントを図ることになってしまっている(場合によっては、製品やサービスをまったくプロモーションしないものだってあるかもしれない)。

成果を生まないネイティブ広告の分析として、記事内ではAdam KleinbergによるAdAgeへの寄稿記事が紹介されている。その内容によると、自社の製品・サービスに対するアクション(つまり、購入・成約・問い合わせなど)を生まないネイティブ広告は、自社のビジネスゴールに関係ない部分に作用してしまうことも少なくないという。つまり、ネイティブ広告のクリック率はバナー広告に比べて高いかもしれないが、それらがすべて売上などのビジネスゴールに直結しているとは言えないというのだ。

このような状況からも、コンテンツへのエンゲージメントを強化したところで、“広告”が目指すべき製品やサービスへのプロモーションが達成できるかどうかは疑問だ。

本記事では、マーケターが「ネイティブ広告」で成果を上げるためには、通常の広告とは異なる角度で考えることが重要だと謳っている。従来型広告とネイティブ広告の効果は何をゴールとしているかが異なるので、同じ基準に立って優劣をつけるのではなく、それぞれの特徴を活かしていくことが成功への鍵だという。

ネーミングはともかく、実践してみる価値は大きい。

「ネイティブ広告」というネーミングに関する議論やその評価は、あくまでメッセージ発信者視点の議論であり、受け手側であるユーザーには関係ない。インターネットの歩みとともに発展を遂げたこのアプローチ方法は、実践してみる価値の大きいものであることは事実である。

コンテンツマーケターの仕事は、ユーザーにとって有益で、他社にはないような際立ったコンテンツをつくること。そして、それらのコンテンツを活用して見込み客にアクションを引き起こさせることである。もし、同じ価値観を持った“同士”と呼べる外部のサイトやメディアがあるのならば、彼らに場を借りてコンテンツを提供していくことも一つの手である。ただ、その際に目指すべきものは「他社プラットフォームでのエンゲージメントを図ること」ではなく、その先にあるマーケターとしての目的や、他社にはない独自性の高いコンテンツ提供によるブランドバリューの向上であることを忘れてはいけない。

コンテンツマーケティングの考え方を取り入れ、戦略的な活用方法を見出せば、ネイティブ広告の価値はより評価されていくだろう。「ネイティブ広告」というネーミングにとらわれすぎず、マーケターとしての本来の目的を明確にしながら、ぜひ実践してみたい手法である。