これまで「SEO戦略」でもっとも大切な要素といえば、ページ単位では“キーワード”であり、サイト全体としては被リンクの獲得だった。もちろん検索ワードとしても使われる“キーワード”が今後もなくなることはないが、グーグルは検索ワードの背景にあるユーザーの意図にまで踏み込んで理解しようという姿勢をさらに強めるようになった。つまり、検索ワードとサイト側で設定したキーワードのタグを単にマッチングさせて検索結果を表示するのではなく、各々のサイトが持つ情報やコンテンツが検索ワードとどのような関連性を持っているのかをしっかり理解して検索結果を表示するというものだ。
実際、ユーザーの検索方法は変化している。ネット上の情報量が膨らみ続ける中、ユーザーは自分のニーズによりぴったり一致する情報を探すために、多くのキーワードを組み合わせた長いフレーズを入力して検索するようになった。しかし入力された単語同士の関連性を考慮しない従来のアルゴリズムでは、ユーザーが入力した言葉の“真意”を理解することができず、本当に求めている情報を上位表示するのは難しい。つまり、グーグルにとって単語と単語の間に込められた「意図」を理解した検索の重要度が増してきている。
ユーザーの意図を汲み取る検索結果を導き出す機能をより進化させるために、グーグルはハミングバードの導入により会話型の検索機能を強化した。1つのキーワードに対して1つの結果を出すという単純なものから、複数の言葉の並びや関係性から意味を吟味した上での検索結果を出すようになったのである。
「ナレッジグラフ」をご存知だろうか。ユーザーが求めている情報が何かを検索エンジンが理解し、検索結果として通常のサイト一覧だけでなく、その情報自体を直接表示させる仕組みである。ハミングバードの導入によって、それまでも導入されていたナレッジグラフの可能性はさらに広がったと言える。
記事の中で紹介されている例を以下に二つ挙げよう。
「Bud Grant」を検索すると、ミネソタ・バイキングスの前任コーチだった人物の情報がナレッジグラフとして表示される。個々の単語を読み取るだけでなく、文字と文字との組み合わせを理解した上で特定の個人だと判断。関連情報を表示している。
また「バナナのカロリー(calories in a Banana)」の検索結果としては、検索エンジンはこの質問が栄養素について調べているものだという意図を読み取り、検索結果ページにウィキペディアからの栄養素情報を引用し表示させている。
私たちが今までグーグルでの検索において持っていたイメージは、例えば図書館で古いコンピューターを使って本を探すときのようなものではないだろうか。つまり、関連するトピックをキーワードとして入力すると、関連する結果が一覧として表示されるというイメージだ。しかし、それは人々が情報を得る方法としてはきわめて不自然なものである。
では、自然な方法とは何か――それは“会話”に他ならない。私たちの日常の情報収集は会話を通して行われているのだ。つまり、一つの質問を投げかけて一つの回答を得るようなコンピューター相手の単純なやりとりとは異なり、複数のキーワードが組み合わされた文脈の中にあるたくさんの問いかけと答えを総合的に理解して情報を得るという複雑な流れだ。ハミングバードという新しいアルゴリズムの導入により、検索エンジン自体がそういった“会話”を理解し、あたかもその“会話”に参加しているような存在として、求められている答えを表示する機能を持つようになっている。
グーグルは検索結果を構成する判断材料として、そのコンテンツがユーザーの関心にしっかり応えられるものかどうかという点を重視してきた。今回のハミングバード導入のメイン機能である“意味”重視の検索アルゴリズムや、オーガニック検索に関するデータ提供の廃止(Google Analyticsで、流入元の検索キーワードが全て”not provided”と表示されるようになってしまうこと)などを同時に考慮すると、もはや「キーワード」を中心にすえたSEO戦略自体が時代遅れになりつつあることに気が付くだろう。
では、新たな検索アルゴリズムを介してもユーザーに適切なコンテンツを提供していくために、コンテンツマーケターが抑えておかねばならないことは何だろうか?それは、潜在的顧客が製品やサービスに対してどのようなニーズを持っているのかをしっかりリサーチすることだ。どのような検索フレーズが使われるのかを推測し、有益なコンテンツをあらかじめ用意しておく――「ユーザー目線で考える」というコンテンツマーケティングの基本をしっかり実践することが、新アルゴリズムにおいても重要であることは間違いない。