CONTENT MARKETING LAB

感覚脳と論理脳――両方にきちんと“届く”コンテンツ戦略とは?

作成者: CML|Oct 15, 2013 5:23:00 AM

どちらかだけ、ではなく両方に作用することをゴールに。

「人は“感覚”でモノを買い、購入後に“論理”でそれを正当化する」という考えは昔から唱えられてきたが、コンテンツマーケティングにおいては、この概念を一度捨ててみることが必要だ。なぜなら「感覚」が、人を購買へと導くことは事実である一方で、購買を検討する上での要因はそれだけではない ―― ―人は検討したり疑ったりする「論理」という要因も持ち合わせて購買の決定をしているからだ。

大切なのは、生活者はモノを買う際に、感覚脳と論理脳の“両方”を働かせているということを認識しておくこと。想定される購買プロセスの各ステップにおいて、感情と論理がどのように作用しているのかを理解すれば、コンテンツのクオリティアップにつながるだけでなく、より効果的なコンテンツマーケティングプランを立てることが可能になるだろう。

ネット検索がもたらした新たな課題――いかに適切なコンテンツを、狙い通りに届けるか

言うまでもないことだが、コンテンツマーケティングは従来の割り込み型マーケティングとは異なる考え方のものだ。不特定多数に対して一方的にメッセージを発信する従来型の広告とは一線を画し、見込み客の行動に寄り添い、適切なチャネルやタイミングを狙って、求められる情報をコンテンツとして発信していくという考え方に基づいている。そして、コンテンツを重要視する流れをさらに加速させているのがインターネットだ。インターネットの普及により、生活者は気になる企業や製品について能動的に調べるようになり、求めている情報が見当たらないサイトから離脱してしまうようになった。サイト上で見込み客にとって有益な情報を最も効果的な形で届けるためにも、コンテンツマーケティングという考え方が飛躍的に広まったのだ。

インターネットは可能性と同時に課題ももたらした。今、一番の課題は、多くの情報が氾濫する中で、いかに適切なターゲットにアプローチし、自社が用意したコンテンツに触れてもらうか、ではないだろうか。この課題を解決していく上では、感覚と論理のバランスを考えてコンテンツを企画することが必要になってくる。感覚脳と論理脳に適切に働きかけるコンテンツは、生活者に認知してもらいやすくなり、結果、コンバージョンアップにつながることも期待できるだろう。

購買プロセスのステップ別に見る「感情」「論理」の働き方

では、購買プロセスの中では、どのようなタイミングで感情と論理が働いているのだろうか。

まずは下記の表を見てほしい。購買プロセスを大まかなステップに分け、各フェーズにおける感覚的思考、論理的思考それぞれの度合いと、そのフェーズに適したコンテンツについて記したものだ。

購買プロセスのフェーズ 感覚的思考 論理的思考 適したコンテンツ
Awareness
(認知の段階)
もっとも強く作用する まったく作用しない 関心をひくための、感覚に訴えかける短めのコンテンツ
Interest
(興味をもっている段階)
強く作用するものの、やや弱まりつつある あまり作用しないものの、少しずつ強まりつつある 興味を正当化できる理由となるコンテンツ
Evaluation
(比較検討している段階)
あくまで論理的思考を補足する位置づけに止まる かなり強く作用する
※このステージで過ごす時間が長ければ長いほど、購入の動機は強くなる
十分に深い情報提供を行えるコンテンツ。最初に発生した感覚的な購買意欲を正当化するための具体的理由となるコンテンツ。
※ここで必要とされるコンテンツが提供できないと、信頼を失うことになる。
Purchase
(購入の意思決定の段階)
強く作用する どれだけ作用するかはケースバイケース Awarenessの感覚を後押しするようなコンテンツ。
※決断を下すとき、支払いのときなどに、自分の決定が間違っていないか、という気持ちが何度も表れる。Awarenessでターゲットをひきつけた“感覚”を強化することを考えよう。
Loyalty
(ファン化の段階)
強く作用する 一旦作用しなくなっていたが、ここからまた強く作用し始める 関心をひき続けるコンテンツ。
※製品やサービスについての好印象を持ってもらうだけでなく、それを選んだ自分自身の満足にもつながるように。

この表からも、人は感覚脳だけでなく、論理脳も働かせてモノを買うということがわかる。一方で注目したいのは、感覚と論理は購買プロセスの異なるタイミングで、異なる表れ方をしているという点だ。多くの企業でコンテンツマーケティングへの取り組みが本格化する中、発信しようとしているコンテンツが、どのステップのどのような思考に働きかけるものなのかを理解し、戦略をチューニングしていくことが今後の課題だろう。

たとえば記事内で取り上げられている、執筆者による書籍プロモーションの事例。刊行された書籍の認知度を高める(上表のAwarenessにあたるステップ)アクションとして、手軽に見られるちょっと風変わりなショートムービーを制作。興味がない人でも閲覧しやすい「短さ」、感覚を刺激し興味を強くひきつける「面白さ」をコンテンツの肝にしたところ、執筆者自身のホームページへのアクセス数は増加。つまり、“感覚”によって認知されるようになり、関心を持った生活者が“論理”を使って能動的にリサーチし始めたということだ。

徹底した顧客目線でコンテンツを考えること。それがコンテンツマーケティングの基本だが、心理状態をも考慮した目線でコンテンツマーケティングプランを考えることは、戦略面での新たなメリットをもたらしてくれるだろう。