今、日本でもゲーミフィケーションがマーケティング手段として注目を浴びています。ゲーミフィケーションを展開する上で、成功の秘訣とは何でしょうか。
人は楽しくてやりがいのあるものを求める生き物です。ゲーミフィケーションはその特性を活かしたマーケティング手法ですね。ゲームのように、チャレンジすることで獲得できる特典や地位を用意するという意味では、飛行機の利用率に合わせて、様々な特典を獲得する航空会社のマイレージシステムもその一例といえるでしょう。ゲームのような仕組みと要素を利用して、人々を楽しませるだけでなく、何かを達成することにより得られるメリットやステータスを提供する。これは、今までも行われてきた手法ではあるのですが、今日において重要なのは、どのようにコンテンツに取り入れて実践するか、という点です。
ゲーミフィケーションは、オンラインゲームのようなものを使って自社の事業やサービスを広める、というものだけではないということですね?
ええ、それだけではありません。ゲーミフィケーションとはゲームそのものではなく、マーケティングにゲームの仕組みとスキームを盛り込んで顧客に行動を起こさせる、というものです。ゲーミフィケーションを利用すると、人々にメッセージをより深く理解してもらうことができる、ということも立証されています。そのため、軍隊では軍事戦略を教える際に活用していたり、医学部でも医学の授業にゲーミフィケーションを取り入れていたりします。そして、ゲーミフィケーションの利点はそれだけではありません。ゲーミフィケーションによって測定基準を増やすことができるのです。
つまりゲーミフィケーションは、エンターテインメントだけが目的なのではなく、どちらかと言うと学習や育成、顧客との関わりを深めることが目的、ということでしょうか?
興味深いことに、実は今挙がったすべての目的に適用することができます。先ほど述べたように、教育にも適しているので啓蒙的なコンテンツを提供する際も活用できますし、難しいことを楽しく語る際にも使えます。また、顧客間でステータスを競い合わせるなどして競争心をかきたて、顧客同士の関係値を作り上げることにも活用できます。例えば人々にとって、利用しているサービス内でリーダーとして認識されることはステータスであり、サービス継続における強力な動機となります。ですから、ブランドマーケティングにおいて、競争心を掻き立てるようなゲーム要素を取り入れることは、ひとつの有効な手段だと思いますね。
お話をお伺いしていると、コンテンツマーケティングにおけるゲーミフィケーションの有用性を感じますね。今後、ゲーミフィケーションはソーシャルマーケティングや広告のような影響力を持つようになるとお考えですか?
間違いなくそうなるでしょうね。アメリカではゲーミフィケーションのためのプラットフォームもあります。メジャーなのは “Badgeville(バッジビル)” や“Bunchball (バンチボール)”が提供しているプラットフォームです。これらを活用すれば、自分でゲーム要素のロジックを考えだす必要がないため、簡単にマーケティングに取り入れることができます。 “Badgeville(バッジビル)”は、人々のコメントにゲーム要素を持たせるためのプラットフォームです。たとえば、ブログでのコメント回数によってバッジを与え、コミュニティの中でステータスを上げるなどの仕組みを簡単に作ることができます。バッジ獲得者はターゲットへの影響力も強いので、バッジ獲得者に的をしぼったコンテンツの配信なども可能になります。さらに、コンテンツ自体を特典として提供することも可能なのです。
話は変わりますが、セミナーにてお話されていた“One world journeys”プロジェクトは、コンテンツマーケティングの成功事例として非常に興味深い事例ですね。
“One world journeys”は当社が軌道に乗ることになったという意味でも、非常に思い入れのあるコンテンツです。EPSONがスポンサーとなり提供しているこのコンテンツのそもそもの目的は、世界の有名写真家が撮影した絶滅危惧種や、環境破壊されつつある場所などを紹介することで、環境問題へのメッセージを提起することでした。つまり、環境問題への意識が高いブランドとして認識させる、ことが第一義でした。それに加え、著名な写真家が撮影したクオリティの高い写真を掲載することで、EPSON社のプリンタの品質をも印象付けることに成功しました。この意味において、“One world journeys”は非常に成功したコンテンツだと思いますね。
ブランドイメージだけではなく、ブランドへの理解も促進させるという意味では理想的なコンテンツですね。それでは最後に、日本のマーケティング担当者に向けてメッセージをお願いします。
実は私がコンテンツマーケティングに取り組み始めたのは、日本においてでした。ですから今回、日本の皆さんにコンテンツマーケティングについてお話することを、非常に感慨深く受け止めています。日本の皆さんにお伝えしたいのは、コンテンツマーケティングは楽しいものだということです。だから恐れずに、楽しみながら取り組んでほしいと思います。コンテンツマーケティングは、マーケティング業界におけるテレビ以来の黒船なのですから。