コンテンツマーケティングにおいて、「バズを呼ぶような集客力」を目的にコンテンツを作っている企業も多いだろう。しかしそれが最終的なマーケティングゴールとどう結びつくのかを明確にしないまま、“とりあえず”コンテンツをばら撒き続けているというケースも多いのではないだろうか。そこで参考になるのが、今回取り上げる「Hub & Spokeモデル」だ。
今回取り上げる記事はアメリカ・アリゾナ州でコンテンツマーケティングサービスを展開するVertical Measures社のブログからのものだ。Vertical Measures社の述べる「Hub & Spokeモデル」がもたらしてくれるメリットと、その活用方法を紹介しよう。
Vertical Measures社によると、Hub&Spokeモデルは、二つの異なる目的を持ったコンテンツで構成されるという。その二つとは、 ターゲットの読者のメールアドレスなどの連絡先を取得するための「Hubコンテンツ」と、そこへの“読者の流入数を増やす”ための複数の「Spokeコンテンツ」だ。ポイントは、両者を単体で考えるのではなく、効果的に組み合わせることでマーケティングゴールを達成するという考え方にある。
Hubコンテンツの役割とは、ターゲットのメールアドレスなどの連絡先を得ることだ、とVertical Measures社は述べている。連絡先と、そのターゲットが興味を持っている事柄に関する情報が取得できれば、その後ニーズに合った情報を発信する、いわゆるリードナーチャリングを行い、マーケティングゴール達成へと近づけることができるからだ。そのためには、対価を払ってでも「知りたい」と強烈に思わせる必要がある。だからこそ、他でも読めるような浅い情報ではなく、丁寧なリサーチに基づく、幅広さと深みのあるハイクオリティなコンテンツを用意する必要がある 。つまり、読者の行動喚起を力強く後押しする、コンテンツ全体構成の中心に位置づけられるコンテンツだ 。
Hubコンテンツの具体的なコンテンツ形態としては、pdfなどでのユーザーガイド、ホワイトペーパー、内容の濃い動画やウェビナーなどをVertical Measures社は挙げている。
一方でSpokeコンテンツの役割とは、Hubコンテンツへのアクセス数を増やすことだ 。なぜならば、Hubコンテンツはターゲットが連絡先などの対価を払わないと閲覧できない、いわば流入経路が限定されているからだ。なので、Spokeコンテンツのポイントは、いかにより幅広い層への接触機会を増やし、Hubコンテンツに誘引する興味を煽るか、だ。
Spokeコンテンツの具体的なコンテンツ形態としては、プレスリリース、ネイティブ広告、ペイドプロモーション、ブログ記事、FacebookなどのSNSでの投稿などが挙げられる。
重要なのは、両者は単体で機能するのではなく、組み合わされることで初めてその機能が発揮されるという点だ。HubコンテンツがなければSpokeコンテンツは単なる断片的なコンテンツ群に過ぎず、マーケティングゴールを達成できない。逆にSpokeコンテンツがなければ、Hubコンテンツだけでは十分な流入数を稼ぐことはできない。
Hub & Spokeモデルを実際にどのように活用すべきかについて、成功事例から学ぶことができる。今回は3つの事例をピックアップしよう。
まず一つ目の事例として紹介するのは、アメリカ・ボストンで家電・照明・配管などの販売・設置・アフターサービスを提供しているYale Appliance社だ。
同社では、Hubコンテンツとして「Buying Guide」を、Spokeコンテンツとして「ブログ記事」を位置づけ、コンテンツを制作・配置している。
同社がターゲットをコンバージョンさせるために用意したHubコンテンツは、家電や照明の選び方をターゲット目線で丁寧に解説した「Buying Guide」だ。驚くべきは、その種類の多さで25種以上に及ぶ。キッチン周りだけでも「食洗機」「レンジフード」「IHヒーター」「プロ用キッチン用品」などがあり、中でも「冷蔵庫」に至っては「冷蔵庫」という広義のものから「キャビネット一体型の冷蔵庫」や「キッチン一体型冷蔵庫」などニッチなものまで充実。ニーズに合わせたeBookのBuying Guideが用意されている。
細分化されたHubコンテンツを用意する目的は、“ターゲットのセグメント化”だ。サイトで情報収集を行うターゲットはBuying Guideへと誘導され、ダウンロードするために居住州・メールアドレスの入力を求められる。ダウンロードしたBuying Guideによってターゲットの興味軸が明確になるため、商圏範囲内であるボストン市内のターゲットに絞り、よりニーズに適したきめ細かな情報をEmailで送り分ける、という戦略だ。情報ニーズを明確にすることで、質の高いリードナーチャリングができるようになる。
Yale Appliance社がSpokeコンテンツとして機能させているのは、「ブログ記事」だ。HubコンテンツのBuying Guideのようにニッチなテーマに絞って深堀した読み応えのある内容ではなく、幅広い情報を充実させている。記事のテーマになっているのは、実際にセールスパーソンがショールームに訪れたターゲットからよく聞かれる疑問。様々な有名ブランドを扱うYale Appliance社だからこそ発信できる家電・照明の専門家としての中立的な見解を、ターゲット視点で展開しているのだ。市場の情報ニーズに合ったSpokeコンテンツを、更新頻度高くブログで発信する…そのことで、幅広いターゲット層との接触機会を増やすことに成功している。
ターゲットは、自身の課題を解決するべく同社のブログを見つけ、その後はさらなる情報ニーズを満たすためにYale Appliance社のサイト内を回遊。興味のあるプロダクトに関するブログを読み進むうち、Hubコンテンツである「Buying Guide」のダウンロードへと誘導される。まさにHub & Spokeモデルの考え方を活かしたコンテンツ配置になっているといえる。
二つ目の事例として紹介するのは、参照記事の執筆者であるVertical Measures社の取り組みだ。
Hubコンテンツとして、グーグルのペンギンアップデートのペナルティを無効化するためのeBook「Penguin Recovery Kit」をリリース。Spokeコンテンツとしては、メルマガ配信・プレスリリース・SNS投稿などを行い、多くのビジネスチャンスを獲得したという。
Vertical Measures社に学びたいポイントは、Hub & Spokeモデルの運用方法だ。Spokeコンテンツをタイムリーに発信する一方で、Hubコンテンツは四半期に一度のペースで制作。フットワークの軽いSpokeコンテンツから、念入りに制作されたHubコンテンツへの流入を促すことで、すべてのHubコンテンツが年月を経ても常に上位のダウンロード数を稼ぐことができるのだ。コンテンツ制作のリソースを効率的に使った、理想的な運用だといえるだろう。
最後に紹介するのは、コンテンツマーケティングで大きな成功を収めた代表格であるRiver Pools & Spas社の事例だ。
同社のHubコンテンツは、「Fiberglass Pool Buying Guide」などのeBook、Spokeコンテンツはブログ記事だ。
同社の取り組みで注目したいのは、属性の明確なリードの獲得方法だ。同社のHubコンテンツ、「Fiberglass Pool Buying Guide」は自宅へのプール設置を検討している人にとって役立つ情報がターゲット目線で編集されているeBookだが、購読には名前・居住州・メールアドレスの入力が必要である。メールアドレスだけを入力すればいいeBookよりもターゲットにとっての入力のハードルは高い。
しかし、同社はSpokeコンテンツとして様々な視点から綴ったブログ記事を日々投稿し、検索による流入を大幅に獲得。そして、ブログ記事にはHubコンテンツであるeBookへのリンクが設けられているので、ターゲットは自身の興味軸にフィットしたブログ記事を読み進め、自然にその流れでeBookの購読へと移行するので、リードをある一定数以上獲得することができる。属性が明確なリードを獲得できるので、その後のきめ細かいリードナーチャリングが可能になるといえる。