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事例から学ぶ! コンテンツマーケティングを成功に導くSEO対策とは

作成者: CML|Sep 7, 2015 4:05:00 AM

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2015年7月29日、Ginzamarkets 主催の『Ginzametrics Open SEO セミナー』が開催された。Ginzamarketsは、コンテンツマーケティング&SEO管理プラットフォーム「Ginzametrics」を提供する企業だ。同カンファレンスは「コンテンツマーケティングやSEOにおけるコンテンツの有効活用について考える」をコンセプトに、東京での開催は今回で4回目となる。

オープニングトークには、Ginzamarkets株式会社CEO レイ・グリセルフーバー氏が登壇。「アメリカの最新事情:コンテンツマーケティングとSEOの取り組み」をテーマに「コンテンツ制作とソーシャルでのプロモーションを一緒に行うことで、外部リンクは自然と増えていくが、両方を上手く回せていない企業は多い」と問題点を指摘した。

その後3つのセッションが行われ、サイトへの検索流入を向上させたいという課題に対して社内体制を中心に刷新したエイチ・アイ・エス社の二つの事例とゴルフダイジェスト・オンライン社の取り組みが各社の担当者によって紹介された。

デバイスやプラットフォームの分散化が進行。個々の状況に合ったSEO対策が欠かせない時代に

昨今、アメリカではデバイスやプラットフォーム、チャネルなど、あらゆるものにおいて、市場の分散が進んでいるとレイ氏は話す。顧客獲得の競争率が高くなることから、ロングテールのトラフィックを作る戦略が今まで以上に重要性を増すようになる。

アメリカの最新事情について話す、Ginzamarkets株式会社CEOレイ・グリセルフーバー氏。

結果、検索エンジンやSNS周りの対策も無視できないが、ペイド広告やメールなど、あらゆる流入元を意識しなければならない点で、マーケターの仕事にかかる負荷が高まっているという。しかし、上手く対応できていない企業は少なくない。

この先企業が取るべき対策は、それぞれの置かれた状況によって異なると、レイ氏は指摘する。大きく以下の5つのステージがあるという。

  • サイトの構造を最適化
  • コンテンツを増やす
  • ロングテールのワードの順位を上げる
  • 外部リンクが増えてくる
  • ビッグワード寄りの流入を増やす

流入元の多様化・複雑化が進んでいることにより、今後はよりいっそう、自社の現状を客観的に見てどの対策を行う段階にあるかを分析する必要性が高まるとレイ氏は述べた。

ここからは各社の事例を見ていきたい。まずは株式会社エイチ・アイ・エスの2つの事例から。

エイチ・アイ・エス:全社にSEO的思考を浸透させ、より良いサイト作りに成功

his-j.comドメインの本体サイト。海外/国内旅行コンテンツを掲載している。

同社では、以前は部門ごとに会員情報を管理し、his-j.comドメインの本体サイト、別ドメインでのホテルやレンタカーなどのサイトを部門ごとに運営していた。クロスセルを実行しやすくするため、会員情報と主力コンテンツをまとめるための会員統合プロジェクトがスタートし、2014年12月に統合の第1フェーズが完了した。

ところが、ページによっては検索順位が下がってしまうといった課題が生じたという。例えば、これまでは「○○(地域名) ホテル」と検索すると特集ページとホテル単体ページ両方が上位に表示されていたのに対し、統合後は特集ページしか表示されないという問題が起こった。特集ページに閲覧が集中し、ホテル単体ページの閲覧が減ったことが要因だった。そこで同社はSEO対策の社内体制と単体ページのSEO対策を徹底的に見直すという解決策を選択した。

「SEO協力会社と手を取り合い、社内で週1回勉強会を開催してもらうなど、社員に対しSEOの知識やノウハウを共有し、SEOに興味関心を持たせたり、主要サイトの代表者間で情報共有を円滑化したりする取り組みを行った」と話す野村さやか氏(本社情報システム本部デジタルマーケティンググループ)。

PDCAサイクルの確立にも力を入れた。旅行はシーズンものであるため、時期ごとに盛り上がりそうなテーマを毎月定め、3〜4ヶ月前には協力会社に共有。関連キーワードの検索ボリューム予想データを出してもらい、それを営業系の部署が確認。施策実行後は改善すべき点を今後に生かす……といった流れを作ったのだ。

結果、移行前と比較して、自然検索による流入数は150%に増加。また、より多くの社員がSEOの知見を高め、システム構築やページ制作の川上のところから、SEO的思考が浸透する効果を得た。SEOへの理解を一部の社員だけではなく、全社的に求めたことが、成功の要因といえるだろう。

エイチ・アイ・エス:社内でSEO戦略を仕組化し、PVは120%増

2つ目の事例は、同社海外支店に勤める社員やエコツアー・ボランティアツアーなどの専門店社員が発信する旅行情報ブログ「旅ブロ」だ。旅ブロは、運用コストの高さと流入をもっと増やしたいという二つの課題を抱えていた。2014年11月までは大手ブログサービス上で運営していたが、維持費が高い上にPVが伸び悩んでおり、改善が必要な状況だったのだ。

そこで同社が決めたのは、旅ブロを自社のhis-j.comのサブドメインに移し、同時にコンテンツの質の向上を図ることだった。PV不調の要因は、書き手によって記事の質にばらつきが出ており、質の低い記事も少なくないためと分析。運用コストが抑えられる上にデザインの自由度も高い自社メディアに引っ越しした上で、コンテンツの質を高めることを決めた。

「コンテンツの質を上げたい」という同様の悩みを持つ企業は同社だけではない。今や多くの企業が中身のあるコンテンツ作りに力を入れ始めているものの、Ginzamarkets社カントリーマネージャーの黒瀬淳一氏によると、60%の企業が「企画力、編集スキル、ノウハウ不足」、48%が「リソース不足」、39%が「KPIやパフォーマンス評価」を課題感としているという。

エイチ・アイ・エスの旅行情報ブログ、旅ブロ。海外支店スタッフが、旅行に行きたくなるような情報を発信している。

「企画力、編集スキル、ノウハウ不足」の悩みを抱えていては、上司から投稿するようにと言われても、実際にどんなことを意識して文章を書けば良いのかブログを書いた経験の乏しい社員にはわからないもの。同社でも仕事だからと事務的に投稿する社員も多く、記事のクオリティには差が生まれ、日記のような体裁の記事も少なくなかった。

「約半数が検索からの流入だったため、ドメインが変わると旅ブロの検索順位が下がるのではといったデメリットを懸念する声が上がる一方、有益なコンテンツを加えることで、本体サイトの価値が向上するのではといったプラスの見方も強かった」と話す、大石学氏(本社情報システム本部 デジタルマーケティンググループ)。

2014年11月に“引っ越し”を行うのと同時に、ブログの担当者を調査し直した上で、彼らに社内Google+を通じて記事執筆に関する知識やノウハウ、トレンドをSEOの視点を交えて共有する試みも始めた。

「毎月の定期レポートの作成も始めた。工夫しているのは、PVのランキングだけではなく、PVの伸び率や平均閲覧時間のランキングも出していること。単純なPV上位ランキングでは、ハワイやソウルなど定番人気スポットばかりがランクインし、それ以外の担当者のモチベーションを上げることができない」と大石氏は語る。

結果的に移転から4ヶ月でPVは元の水準に回復。さらに現在はコンテンツの質が上がったことで、以前の120%増という素晴らしい結果も出している。より良いコンテンツを作る意識を社内に根付かせた功績は大きい。

GDO:顧客視点を重視したコンテンツ作りでPV・CVが大幅アップ

続いては、ゴルフダイジェスト・オンライン社のGDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)の事例だ。福永和洋氏(お客様体験デザイン本部 コミュニケーション企画室 室長)は、「あらゆる業種でコンテンツマーケティングが強化され始め、車メーカーがゴルフとコラボしたコンテンツを作るようになってから、コンテンツを文脈から捉え直さなければならないと考えるようになった」と振り返る。

ゴルフメデディアの草分的存在である、GDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)。ゴルフに関する情報を総合的に発信している。

同社が抱えていた課題も、先のエイチ・アイ・エス社と同じく、検索流入をもっと増やしたいということだった。ゴルフに関するWEBコンテンツが増えた今、ユーザーは必ずしも同社のサイトを選んで訪問するとは限らない。今後ユーザー獲得競争は激しくなるばかりだといえよう。
これまでは「ユーザーニーズ以上に、ゴルフの専門知識や制作側が面白いと思った新情報をすばやく提供することに力点が置かれ、ユーザーが欲する情報が乏しかった」と福永氏は振り返る。

そんなプロダクトアウト的発想から、ユーザーが真に欲するコンテンツを提供する顧客視点の発想に転換しない限り、ユーザーから選ばれるメディアではなくなってしまう――そんな危機意識を持つようになった同社が選択した方法は、ユーザーを把握して、ニーズのあるコンテンツ作りをすることだった。

ユーザーニーズを把握してコンテンツを制作することの重要性を説く、福永和洋氏(お客様体験デザイン本部 コミュニケーション企画室 室長)。

最初にテコ入れしたのはユーザーニーズの把握・整理だ。定量的なアプローチでは検索ワード/ボリューム、自社の検索順位データなどから、ユーザーニーズと不足しているコンテンツを把握し、定性的なアプローチでは狙う層を設定し、ジャンル×習熟度などの軸でペルソナ別にユーザーニーズやユーザーが抱える背景・動機を仮説を立てて整理した。

福永氏によると「ペルソナの主義や心情を洗い出すのにかなりの時間をかけ、探究心や達成感、連帯感などゴルフに対する本音別に、テーマやマインドを細かく分類した」上で、出てきた企画は編集会議の場で、中身をディティールまで詰めた。

しかし、大事なのはその先だ。記事公開=目標達成ではない。同社が重要視するのは、ユーザーに記事を読んだ後に何をしてもらいたいかだ。いかに記事が多く読まれようとも、読後に何らかのアクションにつながらなければ意味がない。

「ユーザーにECサイトで商品を購入してもらいたいのか、サイトをもっと閲覧してもらいたいのかなど、読後にどうなっていてほしいのか具体的に考えた。場合によってはテキストだけでなく動画を入れたり、次に読みたくなる関連リンクは何なのか、といったところまで落とし込んでいる」と福永氏。

それらの地道な努力の結果、PV・CV(商品購入)ともに大幅に上がった。記事がターゲットとなるユーザーにしっかり読まれ、次なるアクションも生まれている理想的なあり方といえよう。

オペレーションは3段階。自社のフェーズを的確に見極めればSEOも上手くいく

最後に登壇したのは、Ginzamarkets社カントリーマネージャーの黒瀬淳一氏だ。2015年1月、同社で第2回FOUND Conference in Tokyoを開催した際、参加企業にコンテンツマーケティング実施目的を聞いたところ、SEO、トラフィック獲得の順に声が多く挙がったという。

「この背景には2012年頃から、Googleが各ページのコンテンツ内容を重視し始めたことが関係している。外部リンクや内部構造、ドメインの評価などコンテンツ以外の要素も当然大事だが、それだけでは勝てなくなった。コンテンツが充実していなければ、検索順位で上位に来ることはない」と語る、Ginzamarkets株式会社カントリーマネージャー黒瀬淳一氏。

その結果、さまざまな企業がコンテンツ制作に力を入れるようになった。しかし、前出のように、オペレーションが上手く回らず、なかなか成果が出ないと悩む企業は少なくない。SEO対策の重要性が認識されてきているのは良い傾向だが、ビジネスゴールを達成するにはオペレーションが重要だということを忘れてはならない。

黒瀬氏は、オペレーションには3つの段階があると語る。「第1段階は試行錯誤しながら読まれる記事の傾向など、コンテンツの勝ちパターンを見つける『フィジビリティ』。第2段階は誰でも運用できるように、一つひとつの作業を整理する『標準化』。第3段階は関係者が多くなっても上手く運用を回していけるようにする『スケール化』です」

SEOやソーシャルなど、各取り組みのオペレーションでそれぞれの段階が違っていても良い。今、自分たちがどの段階にあるのか正確に把握し、取り組みを行ってゆくことが、ゴールにたどり着く最短の近道なのだ。