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CONTENT MARKETING DAY 2024 レポート 第2弾:Z世代に共感されるオウンドメディア戦略とは?

作成者: CML|Apr 11, 2025 7:47:53 AM

Z世代に共感されるオウンドメディア戦略の鍵を握るのは、頻繁な更新ではなく、受け手の感情に寄り添うストーリーを通じて情報を届け、時間をかけて信頼を育む設計のコンテンツを活用すること—と田坂氏と早志氏は主張します。
このような考え方を体現しているのが、甲南女子大学のオウンドメディア『シーソー』です。同メディアは、従来の大学広報の枠を超えたアプローチによって、Z世代からの支持を集めています。
では実際に、『シーソー』ではどのような取り組みが行われているのでしょうか?以下で詳しく見ていきます。

登壇者のプロフィール

田坂 友宏
医療機器メーカーでの販売促進、広告宣伝、マーケティング、ブランドリニューアルなどの業務を経て2018年に甲南女子大学に入職。2021年のオウンドメディア『シーソー』の立ち上げから運用に至るまでを担当。

早志 祐美
京都精華大学デザイン学部卒。中川政七商店を経てバンクトゥに編集職として入社。京都のホテル・Potelの観光メディア「ポmagazine」や、JR大阪駅ビル・大阪ステーションシティのWebメディア「do-ya?(ドーヤ?)」などの企画や編集を担当。京都精華大学デザイン学部 非常勤講師。

 

従来の大学広報の課題

大学広報は長年「資料請求モデル」に依存してきました。高校生が進学情報サイトから資料を請求し、大学案内を見て興味を持つ流れが一般的です。しかし、田坂氏によれば、資料請求を行うのはすでに一定の関心を持つ層に限られるため、潜在層へのリーチが難しいという課題があります。

さらに、大学公式サイトに情報を掲載するだけではZ世代に届きにくいという問題もあります。
彼らは企業や公式情報に一定の警戒心を持ち、SNSなどの個人発信を信頼する傾向が強まっているからです。

田坂氏は、SNS広告や進学情報サイトでの露出は短期的な効果は見込めるものの、広告を出し続けない限り認知が低下してしまう問題もあると指摘しました。広告頼みの広報戦略では 持続的な影響力を維持しにくいのが実情です。

 

CEP(カテゴリー・エントリー・ポイント)という視点

大学選びの意思決定では、特定の大学への興味が高まる前に 「どんな大学があるか」を知る段階(CEP:カテゴリー・エントリー・ポイント) があります。CEPとは、特定のブランドや商品を選択する前に、そのカテゴリー自体を認識するポイントのことです。

田坂氏は、CEPの重要性を指摘し、 例えば関西のように大学が多い地域では、この初期段階で認知されなければ、受験生の比較リストにすら入らない可能性があると述べました。CEPを意識した情報発信ができなければ、受験生が特定の大学に興味を持つ前に選択肢から外れてしまうのです。

そのため、大学広報は単なる情報提供にとどまらず、受験生の興味や価値観に関連するテーマの発信が求められます。具体的には、大学名や学部情報を伝えるだけでなく、ライフスタイルや価値観と結びつけたストーリーを届けることで、受験生が「自分に関係がある」と感じられるようにすることが大切なのです

しかし、それだけでは不十分です。Z世代は、単なる情報提供ではなく、共感できるストーリーやリアルな体験を求めています。
そのため、従来の広告施策に頼らず、彼らの価値観に寄り添った、新しい形の情報発信が必要となります。

 

Z世代に響く情報発信のポイント

ストレートに事実を伝えるか、ナラティブで共感を生むか。特性をふまえ、情報発信の手法を使い分けるアプローチが重要となる。

Z世代は、企業や公式の情報発信に対して一定の警戒心を持っています。
SNSの普及により、企業が一方的に発信するメッセージよりも、個人のリアルな体験を通じた情報の方が信頼されやすい特徴があります。

そのため、従来の大学広報のように「進学のメリット」や「キャンパスライフの魅力」を一方的にアピールする方法は、Z世代には響きにくいと言えます。特に、「明るく、前向き」な、いわゆる意識が高いメッセージばかりを強調すると、逆に興味を持たれないケースもあります。
田坂氏は、Z世代の価値観に寄り添った情報発信の重要性を強調しています。


たとえば、「将来の夢が決まっていないのは悪いことなのか?」という不安や迷いに共感する姿勢が、Z世代の心に響くと田坂氏は述べています。
また、Z世代が日常で興味を持つトピックは、必ずしも進学や学問と直接つながっているとは限りません。K-POPやファッション、SNSなどの身近な関心事をきっかけに、マーケティング、デザイン、文化研究、心理学といった学びに自然と導く視点が求められます。
学問を「勉強」として押しつけるのではなく、「自分の好きなこととつながっている」と感じられるようなストーリー設計が大切です。


さらに、Z世代に響くのは、大学が一方的に発信する「進学のメリット」ではなく、学生自身のリアルな体験や本音の声です。自分に近い存在から語られることで、「これは自分にも関係がある」と受け止めやすくなります。
こうした考え方を体現しているのが、甲南女子大学のオウンドメディア『シーソー』です。学問とトレンドを掛け合わせ、Z世代の興味を起点に自然な形で学びにつなげる仕組みをつくり、彼らに寄り添うコンテンツを発信しています。

『シーソー』の成功要因

大学の学びを、Z世代が興味を持つトピックと結びつけるために、『シーソー』ではA面とB面の二軸でコンテンツを展開しています。

 

興味を引くテーマを、専門的な視点(A面)と学生の実体験(B面)の両面で用意し、Z世代の持つ興味を学びへと自然につなげるアプローチ。

 

例:推し活の研究

  • •    A面(アカデミック):「なぜ人は推しを作るのか?」(文化社会学の視点から分析)
    •    B面(カジュアル):実際に推し活を楽しむ甲南女子大学の学生にインタビュー

 

 このようなアプローチにより、「推し活が社会学の視点で分析できる」といった新しい気づきを生むことができます。これは、『シーソー』が掲げる「遊びが学びに、学びが遊びに」というコンセプトとも通じるものであり、日常の興味が学問へとつながる視点を提供しています。


田坂氏は、Z世代には、作られたメッセージや過度に演出されたコンテンツを見抜く力があると述べています。
そうしたZ世代が嫌う「公式感」をなくすために、『シーソー』全体として以下の工夫を取り入れています。

•    プロのカメラマンを起用し、雑誌のようなビジュアルを採用
•    カメラ目線や作り込まれた写真を避け、自然体の表現を重視
•    学生が参加するサブコンテンツを活用(「わたしがみた景色」「甲南女子大学用語集」)

 

これらの取り組みにより、学生のリアルな声がより自然に伝わる仕組みになっています。

長期的なオウンドメディア戦略のポイント

オウンドメディアにおいては、広告による即時的なリーチと、ストック型コンテンツによる長期的な価値の両立が鍵となります。甲南女子大学の『シーソー』は、年にわずか3回の更新ながら、共感を呼ぶストーリー設計によってZ世代に継続的な影響を与えています。

頻繁な更新に頼らなくても、共感性の高いコンテンツを蓄積していくことで、メディアとしての魅力や存在感を保つことができるのです。

さらに、LINEやメールといったプッシュ型の施策を組み合わせることで、更新頻度が少なくても、必要なタイミングでターゲットに情報を届け、継続的な関係性を築くことが可能になります。

Z世代は、ただ情報を受け取るのではなく、自分に近い存在のリアルな声や体験に共感します。

シーソー』では、在学生が撮影した写真を紹介する「わたしがみた景色」や、学生の間で使われている言葉を紹介する「甲南女子大学用語集」など、在学生の視点を活かした企画を展開。高校生にとっても、在学生のリアルな姿に触れることで、大学の情報を“自分ごと”として捉えやすくなります。

このように、一方的に情報を届けるのではなく、共感やリアルな声に重きを置いたコンテンツを継続的に発信することこそが、ターゲットとの信頼関係を築く鍵となります。さらに、メディアとしてのメッセージがぶれないことも、長期的な接点づくりにおいて非常に重要なのです。

 

セッションのまとめと感想

Z世代に響くオウンドメディアの本質は、「正しさ」を一方的に伝えるのではなく、迷いや揺れ動く気持ちを肯定し、自分なりの答えを見つけられる余白を残すことにあるという視点は、本セッションを通じて特に印象深く感じられました。

なかでも心に残ったのが、早志氏が示していた「曖昧さを受け入れることが共感につながる」という視点です。進路や将来について迷うことをネガティブに捉えるのではなく、その揺れ動く感情そのものを肯定する姿勢が、Z世代に安心感や信頼を与えるという考えには深く共感しました。

また、『シーソー』のコンセプトである「曖昧に揺れている私の未来を見つけるキャンパスマガジン」は、まさにそうした価値観を体現しています。従来の大学広報が「進学のメリット」を前面に打ち出していたのに対し、『シーソー』は多様な視点やリアルな声を通じて、読者自身が考えを深める場をつくっている点が際立っていました。

Z世代に響く情報発信のあり方は今後も変化していくと考えられますが、答えを押しつけるのではなく、共感を起点に、受け手が自分なりの答えを見つけられる余白を残しながら、価値観に寄り添う発信を続ける——その姿勢こそが、『シーソー』が成果をあげているオウンドメディアである最大の理由であると、強く実感しました。



▼『シーソー』の取り組みに興味を持たれた方は、ぜひ実際の動画をご覧ください

 

【CMD2024】甲南女子大学オウンドメディア「シーソー」~年3回しか更新しないオウンドメディアの存在意義と、Z世代に届ける「ホンネ」コンテンツのつくりかた~
【田坂 友宏氏・早志 祐美氏】

 

 

 

執筆:ウー・ピーター
CONTENT MARKETING ACADEMY リサーチャー
※本記事は執筆及び画像作成にあたり、ChatGPTを利用しています。