「Webコンテンツマーケティング サイトを成功に導く現場の教科書」出版記念セミナーの第1部・2部では、コンテンツマーケティングの考え方と戦略的なコンテンツのつくり方を紹介してきました。
今回はこうしてつくった戦略やコンテンツの効果をいかに最大化させるかについてお話ししたいと思います。必要なことは大きく2つ。コンテンツを見つけてもらうための施策「コンテンツプロモーション」と、戦略の効果を最大化するための「チューニング」です。
その前に、コンテンツマーケティングの全体像をおさらいしてみましょう。最初に戦略を決め、次にコンテンツをつくり、サイト運用がスタートする。そしてアクセス解析をベースにした問題解決を行いながら戦略をチューニングし、戦略そのものの効果最大化を図ってく。この流れは一般的に「PDCAサイクル」と呼ばれています。
さらに戦略実行のDOの中にもより細かいPDCAが存在します。つくったコンテンツが全体の中できちんと機能しているのかを見ていくためのサイクルです。
これからお話しするプロモーションおよびチューニングが運営上どう位置付けられるのか把握することはとても大切です。ぜひこの全体像を常にイメージしながら聞いていただければと思います。
ではまず、コンテンツを見つけてもらうための施策、「コンテンツプロモーション」から始めていきましょう。企業がコンテンツをユーザーに届ける(=コンテンツプロモーション)にはどういったルートがあるのか。その流れを表したのが下の図になります。
すでに企業と関係ができている顧客には、コンテンツを直接配信します。手段はオウンドメディアやSNS、メルマガなどです。するとそれをきっかけに、まだ関係を築いていない見込み客へもコンテンツがシェアされていきます。もちろんこの見込み客へは、広告などのペイドメディアによって直接告知することもできます。
さらにもう一つ、「インフルエンサー」という存在も忘れてはいけません。SNSでの拡散を狙う場合、多くのフォロワーを抱え影響力を持つインフルエンサーをいかに早く捕まえられるかが鍵とも言われています。
この図を見ると、潜在的な見込み客にリーチするには、SNSを介した「コンテンツのシェア」がいかに重要かわかります。そして、シェアされるコンテンツをつくるにあたっては、「どういう人がどういう動機でシェアするのか」という視点が欠かせません。
続いてシェアを生むためのWeb上の仕掛けのポイントについてお伝えします。
1つめは、SNSのシェアボタンをサイトのどこに置くか。これは弊社でもよく議論になるポイントです私どもが運営しているコンテンツマーケティングラボでは上下2箇所に設置しています。ユーザーはコンテンツを読み評価してからシェアするのだから記事の下のみに置けばよいという考えもあるのですが、皆さんもそうであるようにユーザーの行動は一概に「こう」とは言えません。いろいろな行動を想定し上下の設置に落ち着きました。またウェブ制作会社のLIGさんのサイトではサイドにSNSのシェアボタンが固定設置されています。こうしておけば、ユーザーがどんなタイミングでシェアしたいと思っても対応できますね。
配置だけでなく、どのソーシャルボタンを設置するかも重要です。闇雲にあらゆるSNSのボタンを設置しても、ユーザーを迷わせるかもしれません。たとえばFacebookやTwitterに加え、一般ユーザー向けコンテンツではLINE、ビジネス向けではLinkedInなど、ペルソナとの親和性の高いソーシャルメディアを選ぶ視点も大切です。
OGPとは「Open Graph Protocol」の略称です。ユーザーがFacebookやTwitter、Google+などのSNSでコンテンツをシェアした際に、そのページのタイトル・URL・概要・アイキャッチ画像(サムネイル)を制作者の意図した通りに正しく表示させる仕組みのことです。
この設定をしないと、例えばFacebookでは該当ページの画像がランダムに拾われます。その中からシェアしたいユーザーが画像を選ばなくてはいけません。またTwitterの場合では画像などが表示されなくなってしまうため、せっかくシェアされてもフォロワーの興味を引けず、適切に拡散されない可能性が高くなります。OGP設定によってユーザーの負担を減らすとともに、クリックされやすくする効果もあるのです。
私どものコンテンツマーケティングラボでは、その月に公開したコンテンツの紹介を中心としたメールマガジン(登録フォーム)を展開しています。このメールからも記事をシェアすることができます。メルマガ内の記事ごとにシェアボタンをつけて、リンク先のコンテンツ記事をシェアできるようにしているのです。
加えて、メールマガジンの最初には「このメールの情報をシェアしよう」というボタンも設けています。どういうことかと言いますと、メールマガジンのHTMLページをあらかじめ作っておいて、そのページをシェアできるようにしています。こうすることで、シェアしたいというユーザーをとにかく取りこぼさないようにするのも一つの手ではないでしょうか。
続いてチューニングのノウハウに入っていきましょう。最初にお話したように、チューニングには戦略最大化とCTA最大化の2つの目的があります。まずは日常的に行うことの多い後者からお話ししていきます。この時重要となるのは、「流入(Acquisition)」「行動(Behavior)」「コンバージョン(Conversion)」の3軸(ABC軸)から見て最適化を図っていくことです。
たとえばレシピのeBookをダウンロードできるサイトがあったとしたら、このサイトへどれくらいアクセスがあったのか(=流入)、どんなページを閲覧したのか(=行動)、ダウンロード(=コンバージョン)したのかをみることになります。
各段階でのPV数とクリック数を調べると、普通はAからCへ向かうにつれ通過数が減っていきます。その割合を評価しながらクリック数を上げるためにあれこれ手を加えていくのが、一般的なチューニング方法です。
ちなみにコンテンツマーケティングラボでは、ページ内のスクロール率も分析しています。これによって見出しごとの通過率を計ることができます。
そうすると例えば、「見出し1は8割のユーザーが読んだのに、見出し2に入ると半数以上が離脱した」といったことがわかります。それならば、見出し2の関連性や掴みが足りないのでは?などのようにボトルネックを細かく探れるようになるのです。よく制作現場では、文章を画像の先に置くのか、あるいは先に画像で掴んでから文章を読ませるのか、などの議論がされますが、そういったレイアウトにおけるベストプラクティスも、ある程度数字で測れるようになるかと思います。
こうしたCTA最大化のチューニングを繰り返しながら運用を続け、ある程度プラクティスやアクセス解析データが溜まったら、それらのファクトをもとにコンテンツマーケティング全体の戦略見直しに入りましょう。
まず見直すべきことは、ペルソナとカスタマージャーニーマップが正しく設定されているか。CTA最大化のチューニングを行っているのになかなか成果が出ない場合は、そもそも発信すべき相手を間違えているのかもしれません。
カスタマージャーニーマップを見直す方法としては、見込み客の態度変容段階ごとに既存のコンテンツをマッピングし、それがコンバージョンに貢献しているか否かで整頓するといいでしょう。非貢献コンテンツが多いフェーズがあれば、統合ないし削るなどの判断ができます。ちなみにコンバージョンへの貢献度を見る場合、一般的なアナリティクスでは「セッション」で確認しがちです。そうすると直前の行動しかわからなくなるので注意が必要です。「ユーザー」で見ることで、離脱したけれど最終的にコンバージョンしたユーザーがアクセスしていたコンテンツも「コンバージョン貢献コンテンツ」として把握できます。
コンテンツマーケティングをより良いものにしていくには、サイト運用と同時進行で、今日お話したような戦略やコンテンツのチューニングを随時行っていく必要があります。
すると「走りながら考えればいいということですか?」と聞かれます。確かにその通りです。ただしコンテンツマーケティングは走り出す前の戦略立てもまた重要であることはすでに何度も繰り返してきた通り。つまり走り出す前に考えたことを検証するのが「走りながら考える」の実態ではないかと考えています。走る前にもちゃんと考えたうえで、走りながらもまた考える。その2つがあって初めて、戦略が自社の商品や狙いにフィットした形になっていくのではないでしょうか。