第一部は「コンテンツマーケティングとは何か?」という基本的な話でしたが、私のほうからはもう少し現場に近い、「コンテンツをいかにつくるか」という話をしたいと思います。
よくコンテンツマーケティングというと、SEOやシステムの秘策があるように思われがちですが、残念ながらそうではありません。簡単な魔法もなければ、正解もない。当たり前の手順をあれこれ逡巡しながら考え、検証を繰り返すとても面倒くさい戦略&戦術企画なのです。
つまり、マーケティングそのものということですね。「あれ、聞きたい話と違う…」と思われたかもしれませんが(笑)、気落ちせずに聞いてください。
第一部の繰り返しになりますが、コンテンツマーケティングの定義とは、次の3つで説明できます。
最後に難しい言葉が出てきましたが、「購買態度変容」とは、顧客に商品を知ってもらい、購買に至らせるまでのプロセス。みなさんがよく知っている言葉で言うと、「ランクアップ」のことですね。つまり見込み客をランクアップさせ購入に導いていくために、それぞれの段階で適切なコンテンツを提供していくということです。
フローにまとめると、以下のようになります。
私たちの考えるコンテンツマーケティングでは、上記の「購買態度変容フロー」を基本フレームとしてコンテンツマーケティング戦略を策定してきます。
こうしたフローは、実は従来のマーケティングでもたくさん紹介されてきました。有名な「AIDOMA」や「AISAS」は皆さんも聞いたことがありますよね。それらと基本的な発想は同じです。
ただこの「購買態度変容フロー」は、そこに「蓋然性(マーケティング課題の明確化)」と「検証性(IT・WEBによる効果測定)が付加されたものと言えるでしょう。
「蓋然性」とは、その情報提供が見込み客の心理や行動にコミットしているかを「4P(製品“Product”、価格“Price”、流通“Place”、プロモーション“Promotion”」の視点から判断すること。「検証性」とはアクセス解析などを用いながら、その施策が本当に効いているのかを確認していくこと。
つまり、マーケティングコミュニケーションにおける「何をしたらいい?」「で、どうだった?」がよりわかりやすくなるのです。
とはいえ、もちろん商品によってランクアップのプロセスは異なりますから、すべてにおいてコンテンツマーケティングが効果的だとは限りません。
では、どのような商品がコンテンツマーケティングに適しているといえるでしょうか?商品の特性を「顧客関与度」と「商品タイプ」の2軸から分類した下記のようなマトリックスを参考に、商品を4つの型に分けて考えてみましょう。
缶コーヒーやお菓子など、値段が安く「欲しい」と思ったらすぐに手に入る商品(図の右下のマス)は、従来のマス広告などが効果的なのでコンテンツマーケティングが適しているとは言えません。
逆に、値段が安くても健康食品など機能重視の商品(左下のマス)は、購入にあたって成分や効果をいろいろと調べることが多いので、コンテンツマーケティングによる購入後押しが可能です。
また、ファッションや時計などの商品(右上のマス)はロジカルな必要性よりも感情的な欲望が強く作用します。ただ値段が高くなるので購入にはある程度の情報が必要になります。この場合も、コンテンツマーケティングは効果を発揮できそうです。
最後に、「情報提供型」と書かれた左上のマスですが、これはその名の通り伝えるべき情報が多い商品。住宅や家電、サービス、保険などが該当します。購買プロセスが長く複雑なため、必要なコンテンツも多岐にわたります。媒体もマスやカタログ、人(営業)など様々です。言うまでもなく、コンテンツマーケティングがもっとも適しているのは、この情報提供型商品ですね。
情報提供型商品では、長い購買プロセスをたどる見込み客を着実にランクアップさせていく必要があります。情報提供型商品に必要なコンテンツをまとめると、主に以下の3つに絞られるでしょう。
まずは「自分ごとコンテンツ」。 「○○の選び方」や「○○成功のポイント」「ビギナーのための○○講座」といったタイトルのコンテンツで、「これはあなたのための商品ですよ」とフラグを立て見込み客に気づきを与えます。
続いて「ニーズ教育コンテンツ」。購入者の証言やアカデミックなデータなどを提供し、買うことで得られる得/買わないことで生じる損をロジカルに説得しています。でも、もちろんロジカルな説得だけでは不十分。
「感情刺激コンテンツ」を併せて提供し、購入者の実例などから買った自分をイメージさせる「疑似体験」をしてもらうことも重要です。
こうした「3大エデュケ―ショナルコンテンツ」を通じ、以下の図の左下から右上へと、着実にランクアップを図っていきます。
勘の良い方はすでにお気づきかもしれませんが、どのコンテンツにおいても効果的と言える手法があります。それは、「VOC(Voice of Customer)」、つまり「お客様の声」の活用です。
自分と同じお悩みを抱えているユーザーを登場させることで「自分ごと化」を促します。また実際にどのように課題を解決したのか(ニーズ学習)、その結果どうよくなったのか(疑似体験)を伝えることで共感や焦燥感を喚起させていく。
やり方によっては、上記フローのすべてをVOCで埋める、といったことすら可能です。こう考えると、VOCはコンテンツ手法としてまさに最強といえるのではないでしょうか。
ちなみに「購買態度変容フロー」の全体像を思い出していただくと、「自分ごとコンテンツ」の前にまず認知を促す「いいねコンテンツ」というものがありましたね。
これは従来テレビCMなどのマス広告が担っていた範疇でしたが、今やSNSやオウンドメディア等の発展によりWEBによるブランド認知が可能になっています。
代表的なのが、コンテンツマーケティング手法の典型ともいえる「ビジネスブログ」。ただこれも、たんに興味を引くコンテンツを発信すればいいというわけではありません。見込み客の問題解決につながり、商品の入り口をきちんと提示できるコンテンツを提供しなければランクアップは図れません。
かといって、ブランド認知のみを目的にしたいわゆる「イメージ広告」が無駄というわけでもない。それぞれの戦略に合わせ長期的なコンテンツプランを考えていくことが、今後ますます求められていくでしょう。