CONTENT MARKETING LAB

今さら聞けない!コンテンツマーケティングの基本の「キ」

作成者: CML|Jun 9, 2014 5:32:00 AM
 

「価値ある情報や体験」こそがコンテンツである

まず最初に「コンテンツ」の意味について考えておきたい。コンテンツという用語の使われ方は多様化しているが、本来はメディアや出版物における「中身」や「内容」となるもの、つまり、ターゲットユーザーにとって価値がある情報や体験のことを指す。よって、この定義からコンテンツマーケティングとは、「内容重視のマーケティング」ということができるだろう。

そしてこのコンテンツマーケティングの特長を考えるにあたっては、従来型の広告モデルと比較することでより明確になる。広告モデルの場合、一般的には広告枠を購入した後、コンテンツを作る。一方、コンテンツマーケティングモデルの場合、先にコンテンツを考え、配信する形式や媒体を決める。つまり、「どこで伝えるか」よりも「何を伝えるか」を重視するモデルなのだ。 

コンテンツマーケティングは100年以上の歴史を有する手法

コンテンツマーケティングの歴史を振り返ってみよう。今から100年以上も前に、農業機器を取り扱う会社John Deere社が、農業を営むターゲット層との関係構築を考え、農業のノウハウや最新情報を掲載したカスタムマガジン『The Furrow』を刊行したことが、最も古い事例だとされる。

農家向けの雑誌「The Furrow」(1895年創刊)。下記画像は1897年発行のもの(contently社blogより。同誌は現在も発行を続けており、最新号はこちらより見られる。

このJohn Deere社の事例のように、商品を売り込む前に、ターゲットのニーズに沿った情報提供を行い、信頼される関係構築とニーズの拡大を図るといったアプローチは、LEGO社やP&G社など大手企業もカスタムマガジンやWebマガジンなどを通して実現してきた。

LEGO社が発行する雑誌「LEGO Club」。1987年に同誌の前身となる「Brick Kicks」として創刊。

P&G社によるティーンの女の子向けウェブマガジン「BeingGirl.com」。

注目の理由は、インターネット社会の到来に起因するテクノロジーの進化と消費者行動の変化

これまで挙げてきたように、ターゲットのニーズに応えるために、「枠」ではなく「内容」を重視したマーケティングというのは現代のように広告モデルが発達する前の時代から普及していた。しかし、なぜ今になってこのアプローチが脚光を浴びているのだろうか。そこには以下3つの要因があると考えられる。

1.「プッシュ型」から「プル」型へ

インターネットの普及で、コンテンツを人に届けるまでのコストが格段に下がり、結果インターネットがなかった時代に比べて世の中全体のコンテンツ量が急増してきている。コンテンツが増えるということは、ターゲットにとっては「情報が選べる」状態を意味しており、企業がメディアを通して投げかける(プッシュ型)コンテンツに頼らなくても消費者の自身の興味・関心を元に、情報を自発的に取りにいく(プル型)ことが容易になった。

2.「検索して調べる」ことが今まで以上に身近に

テクノロジーの進化により、いまやモバイル端末でインターネットにアクセスすることは普通のこととなった。このことはいつでもどこでも知りたいことを検索できる状態になったということでもある。加えて検索エンジン最大手のGoogleも検索結果画面の精度向上に余念がない。こうして検索して調べることが今まで以上に身近になった現代においては、自分が探しているコンテンツに、いかに素早くたどりつけるかが非常に重要になったといえるだろう。

3.認知から購買の間に、ターゲットが収集する情報量が増えた

たとえば、なにか購入する前にSNSにおける友達の口コミなどを参照する経験はないだろうか。ネットを使った情報収集が盛んになることで、店頭へ足を運ぶ前に複数の情報源にあたることが当たり前になってきている。グーグルの調査データによると2011年時点で消費者は平均して10個以上のソースから参考になる情報を見た上で、店頭に足を運んでいる。今までのように商品やサービスを認知させるだけでは、なかなか売り場に人を集められない状況になってきている。

このような状況から、ターゲットの興味・関心に見合ったコンテンツを用意しておかない限り、接点を設けることが難しい状況になってきているのだ。ただ単に情報を提供するだけでは不十分な時代になったのだ。ターゲットのニーズや背景、購買意欲の度合いなどの状況を丁寧に考慮し、必要としているコンテンツを届けることが何よりも重要なのだ。

コンテンツマーケティング実践時に忘れてはならない3つの基本原則

今の情報のかかわり方とマッチするコンテンツマーケティング。しかし、ただ闇雲に「コンテンツを充実させよう!」と意気込むだけでは上手くいかない可能性が高い。実施する際に意識しておきたい3つのポイントを紹介する。

1.ミッション・ステートメントの明確化

コンテンツマーケティングを実践する前に、誰に、何を、どのように届け、どのような結果を導き出すか、という施策全体のミッションを明確にしておこう。

ここで注意すべきなのは、ビジネスとしてのミッションではなく、マーケティングのミッションであるということ。よって、「市場拡大」「購入者数アップ」「売上アップ」など企業としてのビジネスゴールを掲げる場ではない。どのようなターゲットにリーチしたいか、彼らにどのように変わってほしいか、その結果ビジネスにどのような影響があるのか、コンテンツマーケティングとしての方針を明記しておく場なのだ。

そもそもターゲットにコンテンツを提供する目的や理由がわからないまま、コンテンツマーケティングを実践するのは不可能だ。ミッションを具体化し、さらにドキュメント化することは、コンテンツマーケティングに関わる人全員が、同一の目標に向かって進むためにも重要だと言えるだろう。

2.ターゲット設定(ペルソナ設定やセグメンテーションなど)

効くコンテンツを作るには、最初にターゲットを設定することが重要だ。誰に届けるのかがを明確でないと何を伝えるべきかもぼやけてしまうからだ。ターゲット設定をする場合は、以下のどちらかを取り入れてみよう。

  • ペルソナ設計
    ターゲットを人物像として描きだし、彼らのニーズや生活、価値観を丁寧に洗い出す手法。ライフスタイルや人間関係まで考慮するとより具体的なターゲット像が見えてくる。
  • セグメンテーション
    特定の習性や価値観を持つ人物ごとにグループを作り、ターゲット層を分けて考える手法。属性が問われず、具体的な人物像として描きにくい場合に活用するとよいだろう。

重要なことは、いずれかの方法でコンテンツを届けるターゲットが明確になっても、それがゴールではないということだ。

ターゲット像が導き出されたら、今度は、彼らが企業や商品に対して抱いている情報ニーズ(何が知りたいか?どのような機能を期待しているか?など)と彼らが置かれているコンテキスト(環境や状況)を分析しよう。この2つに注目することで、彼らがどのような内容のコンテンツを、どのような形式で欲しているのかが徐々に見えてくるはずだ。

3.購買プロセスの洗い出し

次に、ターゲットが商品やブランドを認知した後、どのようなプロセスを経て購買に到るのかを洗い出し、フレームとして可視化しよう。このプロセスをうまく成し遂げるためにはカスタマージャーニーマップやコンテンツストラテジー開発フローなどを活用するとよいだろう。

コンテンツストラテジー開発フロー。購買の検討度合(横軸)によって、異なるニーズに対応するコンテンツを抽出するためのフレームワーク。

購買プロセスを洗い出したらターゲットがゴールに至るまでの各ステージにおいて、どのようなコンテンツを用意するべきかを検討しよう。各ステージでターゲットがどのような媒体と接点を持っているのかについても細かく分析しておくとよいだろう。

このとき重要なのはあくまでも顧客目線で考えるということ。企業側の都合で「●●を伝えたい」「●●だと感じてもらいたい」と考えるのではなく、あくまでもターゲットの情報ニーズやコンテキストを意識して考えることが大事だ。

話題の手法だからといって、単に「コンテンツを作りたい」との思いだけでコンテンツマーケティングを進めるのはナンセンスだ。前述の3つのポイントを参考にしながら、しっかりと戦略立案を行い、ターゲットに対して確実にアプローチできるコンテンツ開発が今求められているのではないだろうか。