コンテンツマーケティングを実践する上で最も重要なポイントは何か?それは設定したゴールを達成するための戦略、すなわちコンテンツストラテジーを練り上げることだ。
次にその戦略の成功に必要な個々の戦術も考えなくてはならない。コンテンツの種類はよくあるブログで良いのか。ほかに適切な手段はないのだろうか。実際に購買に結びつけるには、どのような工夫を盛り込む必要があるのか。
このような課題に答えているのがContent Marketing Institute(CMI)がまとめたコンテンツマーケティングの戦術書"Content Marketing Playbook: 24 Epic Ideas for Connecting with Your Customers"だ。CMIが毎年発表しているこの資料は、実際にコンテンツマーケターが取り組んだ施策やノウハウが盛り込まれた、いわばコンテンツマーケティングの戦術書だ。
今回CMIの許諾を得て、その資料の内容を日本SPセンターが独占的に日本語に翻訳した。CMIの創業者でコンテンツマーケティングの普及に取り組んでいるJoe Pulizzi氏も、日本語版の発行について推薦コメントを寄せてくれた。
ここからはこのPDFで紹介している24の戦術を紹介していく。PDFダウンロードをご希望の方はぜひバナーよりダウンロードしていただきたい。(無料)
継続的な更新がブログの決め手だ。継続すればブログは購読者を増やすのに最も効果的な戦術となる。
「どれくらいの頻度でコンテンツを更新すれば良いのか?」。これはとても難しい問題だが、その前に以下の視点から考えてみよう。
この条件をあなたが満たせるかどうかで判断すると、更新頻度は毎日かもしれないし、隔週になるかもしれない。重要なのは、「読ませる価値のあるコンテンツを用意できているか?」ということ。量よりも質の問題として考えよう。
ブログでこちらから発信したいものを並べていくだけでは、ダメだ。継続的な読者をつかむためにもターゲットのニーズに応える内容にしよう。
法人向けITサービスを提供するSAP社は、自社ブログ「Business Innovation blog」で掲載する記事のトピックを決めるために、徹底的に検索キーワード調査を実施した。ホットなトピックを探し当て、それぞれのカテゴリーに専門家を割り当て、「○○のことが全てわかる」コンテンツを作成した。その結果、以下の3つの成果を生み出すことができたという。
メールマガジンは今も昔も読者と直接つながるために有効なツールだ。よりよい効果を引き出すために、読者の興味に合わせて、カテゴライズされたメールを用意してみよう。(例:見込み客向けと既存顧客向けにそれぞれ異なるメルマガを発行)、受け取る頻度(日刊、週刊、月刊)を読者が選べるように設定すると更に効果的だ。
年々、モバイル端末でメールマガジンを読む人が増えている。モバイル端末で読みやすいコンテンツを制作する方法はレスポンシブデザインだけではない。シングルコラムでの表示や、フォントとボタンサイズの拡大、リンクの周りの余白を広くするなど、モバイル端末に適したデザインを取り入れたい(モバイル端末で読みやすいメルマガの作り方については、「2Key Techniques for Making Email Content More Mobile-Friendly」で詳しく述べている)。
メールマガジンを発行するだけであれば比較的簡単だが、読者に楽しみにしてもらえるレベルまで充実させるためには工夫が必要だ。アメリカの西海岸の島でアウトドア施設を運営するWhidbey Camano Islandsは、動画やインフォグラフィックを取り入れることで、より臨場感のあるコンテンツに仕立てあげている。このメルマガによって以下の成果を得ることができた。
事例紹介は、見込み客が商品やサービスを評価しようとしている段階で有効なコンテンツだ。質の高い事例紹介をつくるためには、見込み客が持つ疑問や懸念を想定し、それらに誠実かつ信頼できる回答を用意することだ。
事例紹介は、ストーリーを通して伝えることが重要だ。ストーリーを生き生きと伝えるために、テキストだけではなく、動画や写真もふんだんに活用するとよいだろう。
両足を失ってしまったにも関わらず、バイクのドラッグレースでチャンピオンに2度輝いただけでなく、ロッククライマーであり、スノーボードの公認インストラクターとしても活躍しているレジー・シャワーズ。彼のストーリーは、一度聞いたら忘れられない。シャワーズの義足を開発したPTC社は、同社のデザインソフトの事例紹介に彼のストーリーを盛り込んだことで、製品の魅力を伝えることに成功している。
ストーリーやハウツーを視覚的に伝えたいのであれば、動画は最も優れた手段だ。上手に活用すれば、ターゲットとなる視聴者にとって最も印象に残りやすく、高いエンゲージメントを獲得できるコンテンツになる。テキストや写真だけではストーリーを伝えきれないと感じたら、ぜひ動画にもチャレンジしてみよう。
制作した動画の掲載先は、YouTubeだけではない。他の動画プラットフォームも検討してみてもよいだろう。詳しくは「Video Content Channels:Which Should You Use?」で紹介しているので参考にしてほしい。
データセキュリティーに関するコンテンツは、無味乾燥になりがちだ。しかし、セキュリティーソフト大手のシマンテック社は、既存顧客と見込み客向けの動画メディア「SymantecTV」で、セキュリティに関する情報をドラマチックで共感しやすい動画コンテンツとして配信している。
例えば、シマンテックは「プロジェクト・ハニースティック」という動画の中で、モバイル端末の紛失や盗難の危険性を訴えている。見込み客が製品を検討しやすくなるよう、動画には事例紹介やアニメーション、顧客の声を盛り込んでいる。
社内に業界で著名な人物、もしくは自分の名前を売り込みたい人物がいる場合は、その人の名前で外部メディアに記事を寄稿するのも有効だ。企業のリーダーが知見を外部に公開することは、ブランドへのファンや親近感を生み出すことに繋がる。
価値のあるコンテンツに仕上げるためには、自社のブランドや商品の宣伝ではなく、読者が読みたいと感じているテーマを取り上げる必要がある。
かつてのLinkedInの強みは、ユーザーがビジネスリーダーとつながることができるというものだったが、今ではコンテンツの共有を重視した仕組みに変わってきている。
「LinkedIn Influencer Program」では、著名な人物が記事を発信し、フォロワーを増やすことができる。フォロワーは関心のある人物が書いた記事を読むことができ、企業は自社メディア以外の場所で見込み客との接点を設けることができるのだ。
インターネットでの取り組みの中心となるのが自社サイト。見込み客にとって関連性が高く、役に立つ情報を自社サイトに記事として掲載すれば、業界内での地位を確立できるであろう。読者をどのようにセグメントすべきか、また各セグメントはどのような関心をもっているのかを見極めながら自社サイトのコンテンツを整理するとよいだろう。
執筆するトピックを考える時に重要なことは2つだ:「主なターゲットは誰なのか?」と「コンテンツマーケティングで成し遂げたいことは何なのか?」―この2つが交わるスイートスポットに注目すれば、ターゲットに刺さるコンテンツが何なのかがわかる。Content Marketing Instituteを例にあげると、単に自社について書いただけの記事のページビュー及びソーシャルメディアでのシェア数は、スイートスポットを意識した通常の記事の25%程度しかない。
カナダのマクドナルドは、消費者からの質問を回避するのではなく、むしろ促している。そしてその中でも最も挑発的な質問に言及した質の高い記事を発信している。この「Our Food,Your Questions」は以下のような理由から記事コンテンツとしての成功例と言えるだろう。
インターネットが普及し、デジタル化が進んだ今でも、実際に人が会ってコミュニケーションすることを置き換える手段はない(だからこそ、イベントが最も効果のある手法だと多くの人に評価されているのかもしれない)。イベントは、単に参加者と交流を深めるだけではなく、既存顧客の維持にも非常に有効だ。
ブロガーやメディアがあなたのイベントに関する取材記事を書いてくれる場合は、「List.ly」を活用し、それらの記事のリストを作って、他のユーザーと共有することをお勧めする。List.lyを使えば、あらゆるコメントやフィードバックを一つの場所に集約できるメリットがある。Content Marketing InstituteもList.lyのアカウントを持っているので参考にしてほしい。
企業が開催するイベントで提供されがちなものといえば、新商品やサービスに関する退屈なプレゼンテーションと、そこで出されるあまりおいしくない軽食といったところだ。しかし金融サービスを提供するPSA Financial社は違ったアプローチをとっている。
同社が開催する「PSA Partnership Programs」では、ビジネスの分野で著名な専門家を招いて、参加者にリーダーシップに関する講義を行っているのだ。
ホワイトペーパーはBtoBにおいて人気のあるコンテンツ形式だ。新規顧客の認知獲得から既存顧客の囲い込みまで幅広い目的に使える。
多くの人がホワイトペーパーと聞くと文章で構成されたコンテンツを思い浮かべるが、図やグラフなどのビジュアルも活用してみよう。ホワイトペーパーを作成する初期段階でデザイナーを巻き込み、ホワイトペーパーの内容が一目で分かるようなグラフィックを作ろう。出来上がったグラフィックをVisual.lyやPinterest、Instagram、もしくはSlideshareにアップすれば、より多くの共有や拡散を狙うことができる。
経営者が最も知りたいことは何か?――
それは他の企業経営者が何を考えているかについてだ。IBMは企業の経営者向けに、彼らと同じ立場にある経営者の声をまとめた「Leading Through Connections」を発行した。このホワイトペーパーは、64カ国1,700人のCEOへのインタビューから得た情報をもとに作成。従業員同士やクライアントとのつながりを増やすためにテクノロジーが果たす役割や、共通の価値観を育てるためのリーダーシップの重要性について語っている。
インターネットにアップされたプレゼンテーションスライドは、視覚的にストーリーを伝える手段として効果的だ。見出しや箇条書きで構成されたこれまでのスライドよりも、短くて簡潔なテキストと目立つデザインを多用した方がよいだろう。
SlideShareは、プレゼンテーションスライドをウェブ上で共有するのには最適なプラットフォームだ。1カ月あたりの訪問者数は約5,000万人で、平均の滞在時間は1回の訪問につき約3分以上だ。押しつけがましくない形でリードを獲得するのにも使える。SlideShareをリード獲得ツールとして活用してみてもよいだろう。
WebマーケティングサービスのMaxymiser社は、「Customer Experience Imperative」という資料を通して、マーケティング活動でゴールとすべき最も重要なポイントについて語っている。それはカスタマーエクスペリエンスだ。
もちろん、カスタマーエクスペリエンスを説明するためのプレゼンテーションスライド自体が優れたカスタマーエクスペリエンスを提供している。以下がそのポイントだ。
ウェビナーやウェブキャストはブランド認知やリード獲得を図るのに効果的な手法だ。
より多くの人にオンラインセミナーを楽しんでもらうために、書き起こしを活用してみるとよいだろう。スライドに書き起こしを付けておけば、音声を聴くよりもテキストで読みたいという人たちに喜ばれるはずだ。
だらだらと続くウェビナーでオーディエンスを退屈させてしまうのは、避けたいものだ。人を魅了するようなウェビナーの例として、衛星測位システム(GNSS)に関する雑誌「Inside GNSS」によるものが挙げられる。
このセミナーは無人航空機に関するもので、視聴者の技術への興味を掻き立てるような素晴らしい内容だった。機器メーカーやシステム・インテグレーター、政府の政策立案者、エンジニア、一般ユーザーを対象に、今私たちが生きる環境と、未来の可能性について語りかけた。特筆すべきは以下のポイントだ。
ニッチな分野においてリーダーの地位を狙うのであれば、独自の調査レポートを作成してはいかがだろうか。同業他社と協業してデータを収集したり結果を分析することも有効なアプローチだ。
独自に質の高いレポートを作ろうとすると、コストと時間がかかってしまいがちだ。インフォグラフィックやプレゼンテーションスライド、ウェビナー、ブログ記事など、レポートを活用して展開できる他のフォーマットのコンテンツも検討してみるとよいだろう。
ウェブマーケティング企業のExactTarget社は、お客様に情報を提供すればするほど、長期的なクライアントになることを理解している。無料レポートシリーズ「Subscribers, Fans and Followers」を通じて、同社の見込み客や既存顧客である企業のマーケティング担当者にとって関心が高い「顧客データの活用方法」を次々に提供している。
特定のターゲット層に向けたコンテンツがたくさんあるなら、マイクロサイトを作ることを検討してみよう。絞り込まれたニッチな層をターゲットにしたマイクロサイトは非常に効果的だ。
コンテンツマーケティングの基本は、企業ではなく見込み客にとって関心が高いトピックに注力することだ。マイクロサイトを活用するのであれば、それはより一層重要な要素になる。さらに、関心を捉えるだけでなく、常に新しい情報を提供することも念頭に置くべきだ。
Salesforce社が提供している「Social Success」というマイクロサイトでは、“90対10の法則”を適用している。顧客の関心事について語ったトピックに90%を割り当て、製品に関する情報は10%に止めているのだ。「ターゲット重視」で「検索フレンドリー」なサイトを目指して改善し続けている。
見込み客の啓蒙は、マーケターであればだれもが関心を持っていることだが、実践するとなると難しいプロセスでもある。しかしSalesforce社は、マイクロサイト「Social Success」を通して、自社にとってプライオリティの高いターゲット層が抱える課題や関心事に沿ったコンテンツを提供することで、コールドリードのホット化に成功している。特筆すべきは以下のポイントだ。
ビジュアルには生来ソーシャルメディアで拡散されやすい何かがある。短いコンテンツが好まれる傾向にある今、インフォグラフィックの魅力は絶大だ。
インフォグラフィックは急激に普及しているものの、全ての情報がインフォグラフィックに適しているわけではない。複雑なデータを分かりやすく伝えたり、物事のプロセスを表現する際にとても有効だが、もし伝えたい情報が簡単な内容であれば、インフォグラフィックではなくよりシンプルでお手軽な図でも十分だろう。
消費税についての規定は楽しいトピックではない。しかし税金の申告ソフトを提供するAvalara社は、消費税の自動計算の効果がどれだけ大きいかをインフォグラフィックを使って示した。
誰もが好きなチョコレートを使って、誰もが顔をそむけたがる州によって全く違う消費税のルールを説明したユニークなものだ。キャッチ―なビジュアルを使って退屈になりがちな情報を魅力的に表現した例といえるだろう。
利便性の高いコンテンツを提供したいと考えているなら、役に立つツールをブランドコンテンツとして提供することをお奨めしたい。クライアントからよく受ける質問に対して、ツールを使って適切なアドバイスを提供できるかどうかを考えてみよう。
顧客に無料で提供できて、シンプルで役に立つものがないか考えてみよう。さらに、自社がその分野における専門家としての地位を築けるものは何なのかを考えてみるとよいだろう。
インバウンドマーケティングを手がけるPR20/20社は、「Marketing Score」というマーケティングスコアの無料評価ツールを開発した。これは人々が物事をランク付けしたりされたりするのを好む点に目を付けて企画されたツールだ。4つのパートからなる10~15分ほどのクイズに答えるとスコアが算出され、さらに改善のための具体策まで提示される。
外出先やパソコンの前にいないときにニーズが発生することが考えられるのであれば、モバイルアプリを検討してみよう。
モバイルアプリでは、機能を絞ったほうが良い場合が多い。一つしか提供できないとしたら、どんな機能が必要になるのか考えるとよいだろう。もし内容がウェブサイトと同じなのであれば、アプリよりも、モバイルに最適化されたサイトを設けるだけでもよいかもしれない。
P&G社は、公衆トイレを探すことができるアプリ「SitOrSquat」を作り、トイレットペーパー「Charmin」のブランド強化に役立てた。同アプリは、スマートフォンに搭載されたGPS機能によって、最寄の公衆トイレを探してくれる。その後、そのトイレの清潔度に関してレビューすることもできる。
モバイル端末やタブレットでコンテンツを楽しむ人が増加するにつれ、それらに最適化されたコンテンツが求められるようになってきた。モバイル端末に最適化し、より長くオーディエンスの興味を惹きつけることができれば、彼らがファンとなり購読者になってくれる可能性はより高くなるだろう。
モバイル端末向けの戦略の重要性に疑問を感じるようであれば、モバイル端末やタブレットからアクセスしているユーザーの割合を調べてみると良いだろう。Google Analyticsの「ユーザー」⇒「モバイル」⇒「サマリー」で確認することができる。
建設機械などを製造するCaterpillar社の顧客は屋外で仕事をしている人達だ。だから、モバイル端末用のウェブサイトがPCサイトの焼き直しであってはならない。同社のモバイルサイトでは、ディーラーとの迅速な連絡手段や、製品のスペック、機器をレンタルできる場所など、顧客が外出時に求める情報のみに絞り込んだコンテンツを提供している。
電子書籍は、ホワイトペーパーほど幅広く活用されてはいないが、文脈を持ったストーリーで情報を伝えることができるほか、ビジュアルを多用できること、コンテンツにより具体的な意図を持たせることができるなど、取り組む価値の高いコンテンツである。
電子書籍は、モバイル端末で読むのに最適なコンテンツだ。文章量を少なくし、大き目のフォントで余白を多めに取ったデザインにしよう。そして、ユーザーとの双方向性を考慮することが重要だ。さらに詳しい情報は「Content Marketing Design: 3 Guidelines for Creating eBooks for Tablets」で、紹介されている。
パソコンメーカーのDell社は、PCという範疇にとどまらず、見込客にとって関心の高いソーシャルメディアというトピックを取り上げた。2013年に発行した電子書籍「Social Media Predictions eBook」で、同社の知見を共有しただけでなく、Ann Handley氏やShel Israel氏のような、その道の専門家による考察も数多く紹介した。
紙媒体はまだ死んでいない。カスタムマガジンはブランド認知の向上や既存顧客の囲い込みのどちらにおいても、効果を発揮する優れた手法だ。またインフルエンサーに執筆を依頼する時も、オンラインよりも紙媒体のほうが、引き受けてもらえる可能性が高まるだろう。
カスタムマガジンは、捨てられてしまうと接点が失われるという懸念はあるが、デジタルコンテンツとして転用できないか検討してみると良いだろう。カスタムマガジンで使ったコンテンツを基に、ブログ、もしくはインタラクティブなコンテンツとして発展させることができるかもしれない。
金融取引、特に複雑なデリバティブ取引といえば、保守的で堅苦しく数字ばかりのイメージがつきまといがちだ。しかし、株式の仲介などを手掛けるTD Ameritrade社が出版する金融専門のカスタムマガジン「thinkMoney」(ネット版もある)は、異なるアプローチを取っている。投資に関する真面目な情報を提供する一方で、ウォールストリートの企業にありがちな堅苦しいトーンはない。thinkMoneyのアプローチは、シンプルで洗練されている。エッジが効いているが不真面目ではなく、軽妙でありつつも非礼ではない。これによって同誌は、Content Marketing Award(http://www.contentmarketingawards.com/)を受賞するにいたっている。
書籍は信頼や権威を確立するのに最も適した手法だ。業界の知識的リーダーが特別に書籍の中でノウハウを公開するというアプローチはBtoBでもBtoCでも有効だ。
書籍の執筆は、出版前でも出版後でも、様々なコンテンツとして活用できる。書籍の内容を単に別の文章に置き換えるだけでなく、ウェブ上でどのように再活用するのか、書籍の内容をどのように視覚的コンテンツとして表現するのかについても考えておくとよいだろう。
アイスクリームブランドにとっても、書籍の出版は有効だ。アメリカのオハイオ州コロンバスを本拠とするアイスクリーム企業Jenis Splendid IceCreams社は、2011年6月に書籍「Jenis Splendid Ice Creams At Home」を出版した。この本はWall Street Journalをはじめとする大手メディアから好評価を得て、グローバルな事業成長にも貢献したという。
ポッドキャストの制作自体は容易になりつつあるが、本当に効果を発揮するのは、シリーズとして継続的に配信した時だ。そのため気軽に始められる施策とはいえないだろう。重要なのは事前に目的を定めておくこと。ブランド認知を上げたいのか、顧客を囲い込みたいのか――それによって、制作するべきポッドキャストの種類も変わってくる。
ポッドキャストで「中の人」の声をうまく活用すれば、よりエンゲージメントを高めることができる。だからこそ、出演者のトーンや人物像を正しく設定し(多くの場合は情熱的で信頼できるトーンがよいだろう)、会話をうまく運ぶことが重要だ。
編み物関連の製品販売などを手掛けるアメリカのLion Brand社は、ポッドキャスト「YarnCraft」を配信している。編み物に集中している時でも、ポッドキャストなら、手を動かしながら聞くことができる。これがほかの形式だったらどうだろうか?編み物をしながら動画を観ようものなら、手元から目が離れ失敗してしまうかもしれない。編み物好きな同社の顧客にとって、ポッドキャストこそまさに最適のコンテンツなのだ。
デジタルマガジンの制作は、新しいコンテンツを一から作る方法から、既存のコンテンツを編集してまとめる方法まで、様々なやり方がある。またウェブマガジン単独で発行するだけでなく、紙媒体の補完物としての役割を担わせる場合もある。
読者がどのような環境でコンテンツを見ているのか(特にタブレットやモバイル端末上で)を想定するべきだ。各記事ごとに個別のhtmlファイルとして受信したいと思っているだろうか?紙媒体の雑誌と同じ見た目や雰囲気のアプリ形式で読みたいと思っているだろうか?どのようにインタラクティブ性を持たせることができるかも検討してみよう。
2009年に創刊した看護師向けの雑誌と、それに付随するウェブマガジンである「Scrubs」は、ターゲットとなる看護師にリーチするために、あえて医療関連ではないトピックも扱っている。世界最大の手術着メーカーで発行元のStrategicPartners社は、医療や業務を超えた領域で、読者となる医療関係者とつながっている。創刊当初から同社のMike Singer CEOは、読者や顧客の声を聞いて、学び、需要に応えることを徹底するという姿勢を示していた。
狙うターゲットにも左右されるが、ダイレクトメール型のニュースレターは継続的なつながりを保つのに有効だ。例えば医療業界では、患者や介護者がネットよりも紙の媒体を好むため、とても頻繁に用いられる手法である。
印刷物は、読者の手元に保管されることもある。これを積極的に促すためにはどうすれば良いか考えてみよう。例えば、3つ穴を空けて簡単にファイリングできるようにしているニュースレターもある。
アメリカの総合病院Mayo Clinicは、健康に高い関心を持つ読者向けのダイレクトメールを通じて、様々なアイデアや実践的な内容を含む情報を提供している。情報を得た顧客は、家族への医療サービスを決めたり、友達にアドバイスをしたりした。定期的にわかりやすいコンテンツを発信することで、これから医療サービスを検討しようとしている良質な見込客からの信頼とブランド認知を獲得することができたのだ。
アニュアルレポートといえばファクトや数字が羅列されている資料を思い浮かべがちだが、コンテンツマーケティングの施策としては、統計とストーリーが上手に組み合わさっているものこそ効果を出している。
質の高いアニュアルレポートは、読者と強いつながりを築くことにつながる。そのためには視覚的なコンテンツ(図やグラフなど)にも注目しよう。魅力的なビジュアルと心を動かすストーリーを組み合わせることが、ターゲットの心をつかむ鍵なのだ。
身寄りのない子供たちなどのために福祉サービスを提供する、アメリカのThe Austin Childrens Shelterは、貧困や暴力、機能障害など暗くなりがちなトピックを扱っている。しかしアニュアルレポートでは、軽薄な雰囲気になることなく、感動的なストーリーや魅力的なグラフィックを温かい雰囲気で伝えている。このアニュアルレポートに一度目を通せば、Austin Childrens Shelterが、信念をもってサービスを提供していることが分かるだろう。
ゲームは、制作に時間とリソースをかけなくてはいけないため、マーケティング施策として人気のあるコンテンツではない。しかし、うまく活用すると、ターゲットから強いエンゲージメントを獲得し、顧客化へとつなげることができる。また、その他大勢の競合コンテンツから抜きん出ることが可能だ。
伝えたい内容が複雑なため、時間をかけてターゲットに学んでもらう必要があるような場合、ゲームはもってこいだ。ゲームは知識レベルを上げることを後押しし、競争意識の中でブランドへの関心を高めることができる。
IBM社は、ゲームを活用したコンテンツのリーダー的存在だ。同社による”CityOne”というビジネスシミュレーションゲームの中で、プレイヤーは「銀行業」「小売り」「エネルギー」「水」の4つの主要分野で問題を解決する任務を課される。それぞれのシナリオでは、ビジネス上の意思決定を疑似体験し、実際のビジネスに関する理解を深めることができる。
またゲームでは、”Intelligent Infrastructure"という同社のコンセプトを具体的に伝えているほか、ITインフラに関する同社のビジョン「Smarter Computing」が、実世界でどのように地域の問題を解決できるかについて、プレイヤーに体験してもらうことができる。