カスタマージャーニーマップは元々UX(ユーザーエクスペリエンスデザイン)の世界で開発されたものです。UXにおけるカスタマージャーニーマップは、商品やサービスを使用する際に、企業が意図した体験を生活者が経験できているかどうか、更によりよい経験を生み出すためにはどうするかを検討するために使われます。
1999年頃にアメリカのデザインコンサルタント会社IDEOで使われ始めたといわれています。またカスタマージャーニーマップの代表例としては、UX分野のコンサルティング会社Adaptive Path社のものが有名です。ユーザーの体験が見事に可視化されています。
さてコンテンツマーケティングにおいては、このカスタマージャーニーマップを利用し「顧客の情報ニーズ」を確認するために使用します。UXのカスタマージャーニーマップが、主に「顧客のニーズ」という広い範囲に焦点を当てているのに対して、コンテンツマーケティングのそれは「顧客の情報ニーズ」という狭い範囲に焦点を当てているという違いを知っておくことが重要です。このことを理解しておくと、コンテンツマーケティングにしか利用しないのに、UXで用いるような複雑なカスタマージャーニーマップを描いて無駄に時間を消費してしまったという失敗を防ぐことができます。
さて、カスタマージャーニーマップの作り方を説明する前に、消費者行動を段階的に考えるようになった購買行動モデルの歴史について簡単に紹介したいと思います。コンテンツマーケティングにおいて、なぜカスタマージャーニーマップを利用するようになったのかが理解できます。
購買行動モデルとして最初に登場したのは、1898年にAIDモデルとして登場し1900年に修正されたAIDAモデルです。諸説ありますが、このAIDAモデルが1960年頃までに下記のようなファネル(漏斗)の図と共に用いられることが多くなったといわれています※。(※注:Wikipediaより。)
AIDAモデルは、まだテレビもない時代に、広告で見込客を説得する際の行動モデルとして開発されました。その後様々なモデルが登場し、1956年には、日本でも有名なAIDMAモデルに発展していきます。テレビが登場しても1900年に開発されたAIDAモデルが有効であり続けたことは驚きです。(もちろん今でも新聞広告などの狭い範囲で適用すれば有効です。)
しかしインターネットやSNSがコミュニケーションチャネルに加わり、顧客との接点が多岐に渡り出すと、ファネルで考える時代は終わったという説が登場します。代表的なのは2009年にマッキンゼー社が提唱したConsumer Decision Journeyモデルです。
消費者が何かのきっかけで商品を購入する必要性が発生すると、まず初期候補を思い浮かべます。次にActive evaluation(能動的な評価・検討)プロセスで積極的に情報を収集し始めます。最初は候補にすら入っていなかった商品であっても、例えば検索して見つけた情報で印象を残すことができれば、ここで購入候補に入ることができます。まさにコンテンツマーケティングが力を発揮するポイントです。次に店頭などでの購買、そして商品の使用体験がロイヤリティにつながり、うまくいけば、このサイクルが繰り返されていきます。
これまでのモデルが、いかに消費者に心理変化を引き起こし、説得しようかという視点であったのに対して、ジャーニーモデルでは消費者を旅人と見立て、その旅程がうまくいくようにサポートする視点に変化しています。消費者をコントロールしようという考え方から、観察し支援しようという考え方への変化です。この「購買を支援する」という考え方がフィットするため、コンテンツマーケティングにおいて多く利用されるようになりました。コンテンツマーケティングにおいては、一方的にAIDA等の心理変化マップを適用するのではなく、顧客の観察(ペルソナ)から一つ一つマップを作り出していきます。
それではコンテンツマーケティングにおけるカスタマージャーニーマップの作り方を紹介していきます。購買に至るまでのステップは、商品そしてペルソナによって異なるということを念頭におき一例として参考にしてください。ペルソナや商品によっては、分岐が発生することもありますので、実際にはもう少し複雑になることが多いですが、見込み客が必要としている情報ニーズを、認知から購買に至るまでの時間軸で把握することができれば、どんな形のジャーニーマップになってもかまいません。
ペルソナ設定を行うことで、誰に、何をまでが明確になったと思いますが、カスタマージャーニーマップを作成すると、コンテンツをどんな順番で伝達したらよいのかが見えてきます。商品やサービスによって認知から購買に至るまでのプロセスを何段階にするかは異なりますが、基本的には以下の要素を整理しながらマッピングを行います。
カスタマージャーニーマップでどういう情報を、どういう順番で伝えるべきかが明らかになったら、その情報ニーズに答えるコンテンツと、伝える媒体やフォーマットを記述していきます。これをコンテンツマップと呼びます。