前回は、コンテンツマーケティングが脚光を浴びるようになった要因の一つとして、トリプルメディアという考え方について説明しました。今回は、もう一つの要因であるZMOTという考え方について紹介します。
情報オーバーロードといわれるように、生活者は消費できる情報量の何倍もの情報に日々接しているといわれています。では必要な情報は足りているのかというと、そうではないようです。ウェブサイトの利用状況などのデータを収集しているAlexaのデータを見ると、世界で最もアクセス数の多いサイトはGoogle.comとなっています。Youtube、Facebookと続き、4位には中国の大手検索サイトであるBaidu.com、5位にもYahoo.comと検索サイトが続いています。どうやら生活者は、情報があふれているため広告による情報は無視するけれど、必要な情報は足りず、情報を求めて検索をしているようです。皆さんも経験があるように、何かを知りたい、調べたいと思ったら検索するという新しい習慣が定着しつつあるのです。
こういった生活者の変化にマーケティングを対応させるために、Googleは2011年にZMOT (Zero Moment of Truth)という、購買における消費者行動の変化に関する考え方を提唱しました。ZMOTを理解するためには、その前提となるMOT(Moment of Truth)のことを理解する必要があります。
MOTとは、2002年頃にP&GのCEOであったアラン・ラフリーが提唱した概念です。生活者が商品を知って使うまでを、
という3段階で分けて考え、その中で、お客様が最初に商品と出会うことになるFMOT(First Moment of Truth)と、お客様が家庭で商品を使いその価値を体験するSMOT(Second Moment of Truth)という2つの瞬間が大切だという考え方です。
リピート購入ではなく初回購入という観点でみると、店頭での陳列や情報提供、つまりFMOTが購入決定を大きく左右します。例えばテレビCFで新しい洗剤が発売されたことを知り店頭を訪れたとしても、陳列棚を見てセール中の別の商品を買ってしまったという経験があるのではないでしょうか?商品の情報を事前に調べる手段が少なかった時代には、店頭こそが商品購入を決定づける最も重要なメディアであり、店頭におけるコミュニケーション手段としてパッケージや店頭展示、POP等が重視されてきました。
しかしインターネットの普及や検索エンジンの進化により、この行動様式が大きく変わりました。Googleが5,000人、12カテゴリーの商品に対して調査を行ったところ、現代の消費者は、実は店頭に行く前にウェブサイトなどで調査をし、購入することを決めてから出かけることが多く、この段階で得た情報が購入決定の重要な要因になっているという事実が判明しました。Googleは、この購入前の情報収集の段階を、FMOTの前の段階ということでZMOTと名付け(ファーストつまり1の前なのでゼロ)、今後は、ZMOTの段階での情報提供がますます重要になっていくと結論づけたのです。
ではZMOTでの競争に勝ち抜くためには、どういった情報を提供すればよいのでしょうか?これを知るためには、生活者がどういった情報を調べているのかを知る必要があります。GoogleによるとZMOTの段階において、生活者は比較サイトや商品レビュー記事などを読んでいます。この段階は幅広く情報収集をしている段階ですから、いきなり売り込むのではなく、生活者の情報収集行動を支援する姿勢で情報を提供することが最終候補に残るコツとなります。そしてこれはコンテンツマーケティングが得意な領域です。
Googleは検索アルゴリズムのアップデートにより、ZMOTに対応した質の高いコンテンツを高く評価するようになってきています。それまでのSEO対策といえば、キーワード選定や被リンクの数などが重視されていましたが、コンテンツそのものの重要性が見直され、コンテンツマーケティングがSEOの視点からも注目されるようになりました。前回紹介したトリプルメディア時代におけるオウンドメディアの台頭と、今回紹介したZMOTというSEO視点の追い風により、考え方としては昔からあったコンテンツマーケティングがますます注目を浴びるようになったのです。
日本においてはオウンドメディアの観点からコンテンツマーケティングを語る会社やSEOの視点からコンテンツマーケティングを説明する会社が多いのは、こういった背景があります。概念的な説明はこれくらいにして、次回からはコンテンツマーケティングの実践方法について紹介していく予定です。