元々はアメリカで提唱された概念ですが、日本でもコンテンツマーケティングに注目する企業が増えてきました。コンテンツマーケティングとは、コンテンツ(編集された情報)を通じて消費者に態度変容を促し、段階的に購買に結びつける技術のことです。しかし、明確な定義があるわけではないため、人によってその解釈が異なるようです。
そこでコンテンツマーケティングを理解するために、現在日本において議論されているコンテンツマーケティングを、認知獲得手法の違いに焦点を当てて4つの型に分類してみました。もちろん実際は、これほど明確に分類できるものではありませんが、代表的な型を知ることで、コンテンツマーケティングに対する理解が深まると思います。
分類を始める前に、コンテンツマーケティングが注目を集め始めた背景について説明したいと思います。
いきなり売り込むと拒絶されるが、商品を購入するための手伝いをすると最終的に売り込んでも喜ばれる。情報があふれる今日において、説明する順番はますます重要になってきています。しかし、ごく限られた時間内に情報を伝達することが使命であるマス広告を中心としたコミュニケーションは、段階的に説明することが得意ではありません。また生活者の時間に強引に割り込む手法では、以前と比べてメッセージが届きにくくなっています。
そもそも生活者の時間に割り込むという手法自体に問題があるのではないか?この問題点を克服するためにコンテンツマーケティングという考え方が生まれました。
一方的なメッセージでは煙たがられることが多い一方、生活者は自分の生活を豊かにするための情報を求めています。この「企業が伝えたいこと」と「生活者が知りたいこと」のギャップを「適切なコンテンツ」で埋めることでコミュニケーションを成立させるのがコンテンツマーケティングです。
コンテンツマーケティングの革新的なところは、この考え方であり、コンテンツマーケティングの一部を切り出してみても、単なるWebマーケティング、ソーシャルメディアマーケティング、動画マーケティングであり、その本質を知ることはできません。
コンテンツマーケティングは「適切なコンテンツ」の種類によって以下の4つのタイプに分類できます。
エデュケーショナル型は、いきなり商品を売り込むのではなく、お客様の疑問や困りごとに対してコンテンツで答える手法です。
商品購入にあたり、あふれるほどの選択肢がある現代において、お客様は疑問を持っているはずです。普段は気にならないけれど、いざ購入を考えると「ジューサーとミキサーはどう違うのか?」、「縦型とドラム型ではどちらの洗濯機がいいのか?」という疑問が急にわくのではないでしょうか?こうした疑問に対して的確に答えることにより、見込み客がまだ漠然としたイメージしか持っていない段階から関係性を構築し、商品購入を手助けしていくのがエデュケーショナル型の考え方です。このようなコンテンツは、一過性の広告とは違い、同じような疑問を抱く生活者がいる限り有効であり、資産となっていきます。
また、お客様に商品を正しく選ぶ知識を身につけてもらうことにより、購入した商品の満足度、そして購入体験そのものの満足度が高まり、その後の口コミも期待できます。海外での事例になりますが、埋め込み型のプールを販売しているRiver Pools and Spas社は、お客様の疑問に徹底的に答えることで成功した事例です。エデュケーショナル型は、商品に深く関連した情報を、ホットな見込み客に対して提供したい場合に特に有効です。
コンテンツSEO型は比較的新しい手法です。Googleが新しい検索アルゴリズムであるハミングバードアップデートを2013年9月に発表して以来、SEOの視点がキーワードや被リンク数からコンテンツの質重視へとシフトしました。コンテンツマーケティングを行うことがSEO対策になるようになったのです。
考え方としては、エデュケーショナル型とほぼ同じですが、敢えて違いを強調するならば、エデュケーショナル型が、わかりやすさを追求し、お客様が認知、検討、決定と購買プロセスを進む過程における離脱率の少なさを重視する一方、コンテンツSEOはその名の通り、検索順位を重要視するということです。
またコンテンツSEOの場合は、ロングテールキーワード狙いの比較的ライトな情報を量産して、結果的に幅広い層に対する間口を用意するという手法が採られることも多いといえます。情報をアクティブに検索している見込み客が多い場合に有効です。
以上紹介してきた2つの型は、既に顕在化している情報ニーズを満たすためには優れていますが、潜在ニーズを掘り起こす力はあまり強くありません。なるべく多くの潜在見込み客に対してリーチするためには別の方法が必要です。
次に紹介する2つの型は、従来の広告型認知モデルに対してコンテンツマーケティングを適用した例です。マス広告ほどではないが大量のリーチが必要な際に有効です。広告モデルの割り込み型の弱点を克服し、いかに自然に惹きつけるかという要素を取り入れています。
媒体内で、記事に近い形で掲載されるコンテンツです。古くは記事広告、最近ではフェイスブックのスポンサー広告や、ツイッターのプロモーテッドツイートなどが代表的な手法です。
生活者が接触している媒体上で自然な形での情報提供を行うところがネイティブ(自然な、馴染んだ)と言われる所以です。他メディアの力を借りることにはなりますが、商品のターゲットと、媒体の読者層がうまくマッチすれば、高い確率で関心を得ることができます。
誰もが興味を持つ「面白いコンテンツ」の力を利用して、生活者の関心を惹きつける手法です。この手法の良いところは、うまく当たれば爆発的な引力を発揮することです。
面白さで集めた生活者は、見込み客ではない確率も高いという課題はありますが、例えば、集客すれば比較的高い確率で商品購入につながる低関与度の商品には適しています。難易度は高まりますが、面白さと商品情報をうまくミックスさせることができれば、高関与度の商品であってもコンバージョンにつなげることができます。
海外の事例では、iPhoneやiPad などを粉々にするバイラルビデオでブレンダーの性能を示し成功したブレッドテック社の事例があります。
どの手法を選ぶのか、あるいは組み合わせるのかは、商品が認知型なのか学習型なのか、見込み客の質を問うのか、量を追うのかによって決める必要があります。認知させることが購買の確率を高めるような商品、言い換えるとターゲット層が広く低関与度の商品の場合、コンテンツマーケティングはマス広告にかないません。認知から購買にいたるまでに一定量の情報が必要な場合に強みを発揮します。
今回は、違いが大きく現れる、認知獲得手法に焦点を当てて4種類に分類しましたが、どの手法を採ろうとも、この後工程であるリードナーチャリング、そして最終的な購入に導くための説得型のハードセルコンテンツがなければコンテンツマーケティングは成功しません。
コンテンツマーケティングで認知は獲得できたが、その後はどうしようと考えるのではなく、購買そして、その後の永続的な関係性構築までを描いたシナリオ、つまりコンテンツマーケティング戦略を事前に策定しておくことが重要です。今回紹介した基本の4つの型が、自社に適したコンテンツマーケティングを適用するための一助になればと考えます。
この記事は、編集会議 2014年秋号に掲載された記事を加筆修正したものです。
同号にはコンテンツマーケティングに関する記事が豊富に掲載されています。
是非ご一読ください。