CONTENT MARKETING LAB

マーケティングソフトウェアMarketo社に学ぶ、“これぞフルコース”のコンテンツ施策

作成者: CML|Oct 4, 2013 4:43:00 AM

「Marketo」は、マーケティングオートメーションに特化した企業向けのソフトウェアである。このソフトウェアを導入することで、自社サイト上のコンテンツやメールマガジン、ソーシャルメディアなどに触れたユーザーの中から、より購入の確度が高いユーザーを特定し、営業に受け渡す優良見込み客の抽出を効率化することができるという。

Marketoのウェブサイトには、“マーケティングを支援するためのツールのスペシャリストだ”と頷けるようなコンテンツが散りばめられている。中でも、マーケターの視点から考えて作られているコンテンツには、参考にできるポイントが多く含まれているので、そのいくつかをご紹介しよう。

文章のフォーマット化でコンテンツに読みやすさを

ツールの効果を訴求するために、顧客の導入実績をウェブサイトに掲載する企業は少なくないと思う。言葉では機能を説明しにくいツールは、それによって得られた効果を可視化した方が、導入メリットが伝わりやすく、さらに、顧客企業の箔がつくことでツールへの信頼感を感じさせることもできる。

Marketoのサイトにも既存顧客の導入実績がいくつも載せられていが、注目すべきところは、その紹介の仕方だ。コンテンツの構造を、Highlights(要約)→Challenges(課題)→ Solution(解決策)→Benefits(得られた利益)と統一された流れで紹介している。

利用実績の文章の流れを統一している。

他企業によくある成功事例や導入実績のコンテンツでは、顧客企業名、商品名、担当者のコメントだけが書かれているだけのものが多いが、そのようなフォーマットでは、導入の背景にどのような課題があり、ツールを使えばどのように解決し、どんな効果が得られたのかまで掘り下げられていないので、具体的なイメージが掴みにくい。Marketoのように、導入実績から得られた結果に目を向けた事例紹介を行うことで、新規顧客は自社が直面している課題解決において、どのようにこのツールを活かせるか考えることができるだろう。

ウェブ上で行われるセミナーを活用し、見込み客を育てていく

次に特筆すべきコンテンツが「ウェビナー(ウェブ上で行われる動画セミナー)」だ。Marketoはウェブナーを通して、ツール導入を検討している担当者へマーケティングの最新動向やノウハウの提供を行っている。自社の社員や外部の講師を招き、「ソーシャルマーケティングにおけるROIの考え方」「B2Bにおける見込み客の考え方」「予算をうまく使いこなすためのプロセス設計」など、幅広いトピックについての講義を無料で提供している。

「ソーシャルマーケティングにおけるROIの考え方」をテーマにしたウェビナー。動画の中で紹介された資料はスライドとしても公開されている。

このような取り組みの背景には、そもそも、マーケティングオートメーションのツールは、マーケティング戦略が整い、施策が決定していないと需要が生まれない商品であるという、販売プロセスの特徴があると言えるだろう。Marketoという商品を紹介する前に、より汎用的かつ実践に移しやすい知識を提供することで、ターゲットになぜこの商品が必要なのかを啓蒙し、ツールの必要性を間接的に感じさせているのだ。

ウェブから簡単に申し込めるデモで、ツールを体験してもらう

Marketoは企業向けのソフトウェアである。購入に至っては、担当者一人の判断ではなく、社内稟議を行い、マネジメント層から承認を経て初めて購入が決まるという流れも少なくないだろう。よって、社内にMarketoのツールを推薦する前に、まずは試用してみたいと考える担当者もいるはずだ。

このニーズに応えるのが「FREE TRAIL REQUEST」だ。氏名とメールアドレス、企業名などを入力すれば、デモ版を利用できるアカウントが提供される。デモアカウントを入手するために、営業マンに問い合わせる必要がないため、「一度お試しをしてしまうと、売り込まれるのではないか」という担当者の懸念を回避しながら、ツールの特徴を知ってもらい、具体的な導入イメージを抱かせることができる。

「FREE TRAIL REQUEST」の申込画面

購入後の手厚いフォローで、顧客満足度を上げていく

Marketoのサイトは新規顧客の獲得に向けた施策だけでなく、すでに購入してもらった顧客への満足度アップに貢献するようなコンテンツも用意されている。その一つが、既存顧客向けのプラットフォーム「Marketo Community」だ。このプラットフォームでは、製品情報はもちろん、トラブルシューティングの記事やオンデマンド式のトレーングが用意されている。また、Marketoの顧客であるユーザー同士による、ベストプラクティスの共有や、製品チームへの要望を発信する行う場も提供されており、既存顧客同士でのコミュニケーションも図れるようになっている。このような場を既存顧客に提供することで、ツールの活用幅を広げてもらい、囲い込みとアップセルにつなげていくのが狙いであろう。

事例から見る「コンテンツストラテジー開発」の実践

Marketoのウェブサイトは、弊社が提唱する「コンテンツストラテジー開発フロー」に忠実な設計になっている。

商品に対して必要性・欲望を自覚しはじめた「そろそろ客」には、他の顧客企業の利用実績を見せることで、自分と同じような課題を抱える企業が抱える課題、それに対するベネフィット・魅力を訴求し、“自分ごと”であるという気づきを与えている。

購買態度の変容が十分にははかれていない「いまはまだ客」に対しては、ウェビナーという学ぶためのコンテンツでより“必要性を刺激”し、相対的な判断材料を求めている「もっと知りたい客」に対しては、デモの機会を提供している。

さすがは、マーケティングオートメーションの先駆的企業といったところだが、皆さんも「コンテンツストラテジー開発フロー」と照らし合わせながら、自社のウェブサイトのコンテンツを見直してみてはいかがだろうか。

執筆:岡徳之(Noriyuki Oka Tokyo