CONTENT MARKETING LAB

コンテンツマーケティングに必要なSEO施策とは?

作成者: CML|Jul 22, 2014 7:19:00 AM

別々の施策として取り組んでしまいがちな、コンテンツマーケティングとSEO。しかし両者を組み合わせて施策を行うと、質の良い検索トラフィックをスピーディーに集めることが可能になる。

本セミナーでは、コンテンツマーケティング×SEOを成功させる方法が4部構成で語られた。

Googleのアルゴリズム更新後は競合の順位変動をチェックせよ

第1部でアメリカの最新事情を紹介したグリセルフーバー氏はまず、Googleの最新アルゴリズムに関して、5月に行われたパンダアップデート4.0を例に挙げた。英語クエリにおいては一部の一般ユーザーも気づく水準であり、約7.5%ものクエリに影響があったとされる。具体的には被リンク購入などの検索順位を意図的に上げる行為がなされたコンテンツや、質の悪いコピーコンテンツが順位を下げているという。

グリセルフーバー氏はこのように話す。「とくに大きな影響を受けて、約80%も順位を落としたのは米大手オークションサイトのeBayだ。順位が落ちたページを見ると内容が薄めだったり、他サイトへのリンクが多かったり…といった特徴が見られた。一方、日本では本アップデートでそれほど悪い影響はなかったようだが、今後こういったアップデートが行われたときには、競合の順位変動がどうなっているかをまずチェックすべきだ。また、万一急に順位が下落した場合も、データさえあれば原因を読み解くことができるだろう」。

Ginzamarketsのグリセルフーバー社長。データによって検索順位変動の原因を追求する重要性を説いた。

続いてグリセルフーバー氏が話題にしたのは、アメリカで急成長しつつあり、検索エンジンとしても使われ始めたビジュアルツールだ。当初は女性を中心に支持されていたPinterestとinstagramは、最近では男性による人気も獲得し、アメリカ国内で大人気のサービスとなっている。

「Googleが得意としているのはあくまでも“比較”。インスピレーションが欲しいときに、ユーザーが使うのはPinterestとinstagram。昨今、とくに発展途上国においてはビジュアルコンテンツがかなり大切にされている。そのような国ではパソコンやタブレットではなく、モバイルしか持っていない人も少なくない。モバイルですぐに写真を撮影してアップし、instagram上でお店を開けるようになる日も、そう遠くはないだろう」。

目指すはエピック・コンテンツマーケティング

モバイル中心の発展途上国に対し、先進国ではスマートフォンやタブレット、デスクトップが併用されるなど、マルチスクリーン化が進んでいる。これに伴い、ユーザーによるインターネットの利用時間や利用シーンは大きく変わってきている。

「どの端末でも最適な形でコンテンツが表示されるように、Googleが推奨するレスポンシブデザインを実践するのが理想的だ。さらに誰がどの端末でサイトを見ているかまで解析するとなおよいだろう」。

次に同氏はリンクビルディングについて「リンクを購入する人はほとんどいなくなった」と語った。リンクの獲得方法によっては、Google検索結果における効果はプラスにもマイナスにも転じ得る。

「変なリンクをはることはやめるべきだ。自然にリンクをはってもらったり、権威のあるサイトからリンクをはってもらったりするためには、より質の高いコンテンツを作ることが欠かせない。キーワードは“エピック・コンテンツマーケティング”(Epic Content Marketing)だろう」。

壮大(Epic)で長い間ユーザーの役に立つコンテンツは作るのが難しい。しかしそのような質の高いコンテンツだと、Google側にも「良質なもの」として認識され、検索順位が上がりやすくなる。

「コンテンツ制作を行う中で出てきている課題は、いかにユーザーの要望に応じるかということ。やや難しいことではあるが、キーワードなどのデータを参考にしながら、ユーザーが質問してくれそうなキーワードを検討する必要があるだろう」

リクルートキャリア:コンテンツ×SEOで先手を打つ

ここからは各社の事例を見ていきたい。まずは株式会社リクルートキャリアによる事例から。

「リクナビNEXT美人社員がオバチャーンと一緒に考えた“おかん並に転職で役立つ”次世代機能プロジェクト」。大阪のオバチャンたちが結成したアイドルグループ“オバチャーン”とのコラボ企画で、 Facebookで5,000以上の「いいね!」を獲得している

「有料外部リンク時代が終焉を迎え、自然発生リンク時代が到来した今、SEO対策としてコンテンツに振り切った施策を行ったことが成功要因のひとつになった」と話すのは、小川崇彦氏(中途事業本部 領域企画統括部 メディア企画部 集客・編集グループ)。

海外と日本では、コンテンツSEOへの意識に大きな差があるという。日本にはコンテンツSEOに関するノウハウがあまり根付いていないからこそ先手を打ったと小川氏は語る。

リクルートキャリアの小川崇彦氏。検索アルゴリズムの更新を受け、コンテンツによる自然発生リンク獲得策に舵を切ったと話す。

同社ではコンテンツ作成の施策について、KPIの設定、施策検討、上司・社内調整、実施・モニタリングの4ステップに分けて進めてきた。やや難易度が高い上司・社内調整においては、コミュニケーションを図る相手の立場に立ち、施策の目的について数字を用いて丁寧に伝えた。

「上司は決済者。彼らにその施策を行うことが投資として有効か理解してもらうことが大事。主に有料外部リンクのリスクを理解してもらうこと、ROIを提示することに注力した。このときに振り返りができる指標を置いて、数字をわかりやすく示すことが欠かせない」

結果的に本施策で138本の自然発生リンクを獲得し、コンテンツによるリンク獲得はできる、との結論に至った。

千趣会:ECサイト・SEOともにテスト/検証が欠かせない

続いてはSEOに力を入れてきた、通販サイト「ベルメゾン」などを展開する株式会社千趣会の事例。販売企画本部 販売戦略部 販売戦略チーム 久保 孝徳氏は、「動的なURLの短縮や被リンク購入、カテゴリ登録など、できることはほとんどすべてやってきた。現状SEOは重要な集客手段で、ビジネスインパクトが大きい」と話す。

通販サイト「ベルメゾン」。サイトのSEO施策にも積極的に取り組んできたという。

2012年のペンギンアップデート時、関連会社で検索流入が激減したことがあった。リスクの大きさを受け止め、ベルメゾンでは外部施策を禁止した。さらにSEOを完全内製化(インハウス化)する取り組みも実施した。

「社員全員がSEOに関する知識を持つ=Webで販売する意識を持つということ。それによってバイヤーはSEOを意識して商品名を考え、カタログコピーライターはSEO意識を持ってコピーを書き、コンテンツ制作担当者はSEOに強いページを作る」。そして出来上がったサイト全体のSEOの改善を、久保氏らSEOチームがサポートする形をとっているという。

千趣会の久保孝徳氏。SEOの内製化にあたり、社員全員がSEOへの意識を高く持つことが重要だとした。

続いて「ECサイト、SEOともにテストが命。SEO施策の効果を検証し、優先順位をつけるべき」と話す久保氏は、過去の成功事例を紹介した。

一例として、あるカテゴリーにdescriptionを追加したところ、SEO順位が上がり、検索経由での受注がアップしたという。予想をはるかに上回る効果は、テストを実施しない限り把握できなかった結果だという。

制作したコンテンツにユーザーを連れてくる力はあるか?

最後に「not provided問題」にフォーカスするのは、Ginzamarkets 株式会社 ヴァイスプレジデント 清水 昌浩氏。同問題に関して3つの対処法を挙げた。

「1つめはキーワード順位の競合比較を行うこと。キーワードまたはキーワード群で比較し、上位サイトに対して差を縮めているかどうか、追いかけることが実務上重要になる。2つめはウェブマスターツールとGoogle Analyticsの連携。3つめはページごとにトラフィックや新規率、コンバージョン、ソーシャルへの影響などを見るページセントリックだ」

海外の文献によると、SEOのアプローチについては、ページレベルで情報を統合して考えるべきとするページセントリックを参考にしないと成り立たないのでは、と見る人が多いという。

Ginzamarketsの清水昌浩ヴァイスプレジデント。SEO担当者を悩ます「not provided問題」について、3つの対処法を示した。

次いでテーマはコンテンツのSEO対策へと移った。清水氏はSEO施策として、ユーザーの情報ニーズに応えるコンテンツの重要性を指摘した。

例えば同氏は、「マンション購入のメリットデメリット」と検索しても、知りたい情報がヒットしなかった経験があるという。

「不動産領域はSEO激戦区。それにもかかわらずなぜ知りたい情報が見つからないのかというと、サイトの多くが今すぐ購入する気のある人向けのコンテンツばかりを展開しているからだ。彼らは『新築マンション×湾岸エリア』のようなキーワードを理想としているのだろう。一方で、“まずは調べたい”人向けの情報は圧倒的に少ない」

全検索のうち、単純に情報を探すための検索(インフォメーショナルクエリ)は約85%、ブランドワードでの検索は約10%、購入するつもりでの検索は5%ともいわれる。コンテンツを作る際にはその数値を改めて意識する必要があるとした。

最後に清水氏が指摘したのは、SEO担当者の役割における変化だ。

「昔はSEO専任担当を置いたものだったが、近年は兼務が大半。また、以前は外部からリンクを買っていればよかったが、昨今はコンテンツ制作者や事業マーケター、特集/企画ページ作成者などが担当するようになった。しかし彼らは決してSEOに詳しいとはいえず、パンダアップデートやアルゴリズムの変化に敏感ではない点が残念だ」

コンテンツ面だけではなく、SEOというテーマに関して、まずは何よりも「関係者たち」にジブンゴト化してもらう必要があると締めた。