CONTENT MARKETING LAB

コンテンツマーケティングの可能性とは?【野島光太郎氏&村上健太氏】

作成者: CML|Oct 9, 2024 3:00:00 PM

コンテンツマーケティング・アカデミーでは、ワークショップやセミナーを通じて、マーケティング現場に関わる様々な企業・立場の方々と情報交換を行い、コンテンツマーケティングに関わる議論を深めています。

その中でも特にユニークな視点を持たれているのが、「データのじかん」の編集長でありウイングアーク1st株式会社の野島光太郎さん。

野島さんは、広告代理店でアートディレクターを経験されたのち、一部上場企業/外資系IT企業での事業開発・経営企画に携わり、ウイングアーク1stでは「データのじかん」「UpdataTV」「情シスのじかん」をはじめとしたコンテンツ企画制作でもご活躍中。幅広い経験と深い知見をお持ちの方です。

 

コンテンツマーケティング・アカデミー関連でも、20246月に開催された招待制の勉強会「サロン」へのホスト役でのご参加や、2023年開催のCONTENT MARKETING DAY2023 コンテンツVer.に登壇いただきました。

招待制の勉強会(サロン)イベントレポートはこちら

CONTENT MARKETING DAY2023 コンテンツVer. 野島さん登壇詳細はこちら

 

毎回、野島さんからは、コンテンツマーケテイング実践だけでなく、さらにそれを俯瞰した経営・ビジネス戦略の視点もふまえ、深い議論につながる問題提起をいただいています。

CONTENT MARKETING DAY2024 開催決定を記念して

マーケティングの現場でコンテンツを活用しようとすると、悩みや気づきが尽きません。

日々の勉強会を通じて得た気づきを、どう現場で活かすのか?
現場のマーケテイング現場の課題を、どう解決していくのか?
そもそも「コンテンツをマーケテイングで活用する」とはどういうことなのか?

そうした議論の起爆剤となるべく、国内最大規模のコンテンツマーケテイングのコミュニティイベント「CONTENT MARKETING DAY2024(CMD2024)」の開催が決定となりました。

 

  • イベント名:
    CONTENT MARKETING DAY 2024(CMD2024)
    〜 ⽣成AI 時代だからこそ考えたい 〜 次のコンテンツマーケティングへの挑戦
  • 日時:2024年11⽉15⽇(金)12:00〜11⽉30⽇(⼟)23:59
  • 開催場所:オンライン開催
  • 参加費:無料・事前申し込み制
  • 定員:上限なし
  • ハッシュタグ:#CM_Day2024
  • イベント申込はこちら

第8回目となる今回のテーマは「次のコンテンツマーケティングへの挑戦」。

マーケティングに関する知見を発信し、みんなで日本のコンテンツマーケティング業界を盛り上げていくために、次の時代のコンテンツマーケティングを切り拓いていきます。

今回、CMD2024開催決定を記念した特別企画として、当イベントに登壇いただく野島光太郎さんと、コンテンツマーケティング・アカデミー主催の村上健太による対談を実施。ウェブマーケティングの難しさと、コンテンツマーケティングの本質・可能性について語り合いました。

 

目次

  1. 「ウェブマーケティングやめとけ問題」について考える
  2. 「小さな勝ち筋」を重ねて市場を切り開けるのがコンテンツマーケティングの強み
  3. オウンドメディアに潜む「ネガティブループ」から脱する方法
  4. コンテンツは、マーケターが生み出せる立派な「商品」
  5. 価値の拠りどころを増やせ!どんと来い属人化!
  6. 「ゼロイチの力」がマーケターの必須スキル。ウェブマーケティング“から入る”のはやめておけ!

「ウェブマーケティングやめとけ問題」について考える

村上:

本日はよろしくお願いします!

私個人として野島さんのお話は、いわゆるコンテンツマーケティングの本筋とはちょっと違う部分の話も入っていて、それが面白いなといつも感じています。

「コンテンツマーケティング」と一言で言っても、本場米国と日本で全然違っているんですよね。日本のコンテンツマーケティングというと、SEOLP改善WEB広告と…といったイメージが根強いのですが、米国での議論よりもずいぶん限定的な領域に押し込められてしまっていると感じます。

本来はもっと広く中長期にわたって、マーケティング・コミュニケーション全体にも関わっていく話だよね、ということを改めて考えたりしています。

 

今回、話のきっかけとしてお持ちしたのですが、Google検索で「ウェブマーケティング」と入力すると、その後に「やめとけ」「しんどい」というワードが上位にサジェストされるんです。

 

 

これを自分なりに整理してみると、少なくとも

・代理店の扇動

・人材の誤解

・経営層の無理解

があるのではないかと。

それぞれのプレイヤーが、それぞれ、それなりに合理的な行動をしているのかもしれませんが、いみじくもその結果として「WEBマーケティング やめとけ」という言葉が広まってしまった。

今後これを広げないためには、もしかすると業界全体に通底するような、正しい「あるべき姿」とか「目指すもの」もしくは、こうしてはいけないぞ、という「アンチパターン」のような共通認識があったほうがいいのかもしれないですが…野島さんはどう思われますか?

 

野島さん:

そうですね。施策ばかりに目が向いて本質からズレるマーケティングは、企業イメージを下げる行為だと思うんですよね。

「デジタルゴミ」というときつい言い方になってしまいますが。顧客を幸せにしていない、代理店や事業者しか幸せになれない、ましてや現場のマーケターもやりたくない、そんなウェブマーケティングはやめてほしいなと個人的には思います。特に今マーケターを目指している方には意識してほしい。

 

村上:

なるほど。気を付けていきたいですね。

ここで、6月のサロンで野島さんにお話しいただいた「大きな勝ち筋/小さな勝ち筋」という話を振り返りたいと思います。

 

「小さな勝ち筋」を重ねて市場を切り開けるのがコンテンツマーケティングの強み

 

野島さん:

まずこの図を解説すると、一番大きなマーケットがTAM、ターゲットされたものがSAMで、実際売上を上げているのがSOM。これはよく市場の切り口と入り方としてよく言われているものだと思います。ここで「大きな勝ち筋」「小さな勝ち筋」という2軸に分けているんですが、マーケティングに限らず企業活動はこのどちらかには間違いなく当てはまる活動であると思っています。

マーケティングで言うと、いわゆるSTP分析とかPEST分析とか、どんどん絞り込んで、よりターゲットの精度と可能性を高めているのが、ある意味「大きな勝ち筋」。ただ一方で、このアプローチはどんどん勝ち筋を狭めていくので、場合によっては市場が全くない可能性もあるんですよね。

 

「大きな勝ち筋」を狙うことは、もちろんマーケティングとして優先順位は高いと思います。

ただ、コンテンツマーケティングやオウンドメディアって、必ずしもこの「大きな勝ち筋」と相性のいい策でもないんですよね。むしろ、活動のほとんどは「小さな勝ち筋」をどんどん探していく取り組みだし、そこが強みでもある。 

例えば、SEO1位になるっていうのは、「大きな勝ち筋」を特定のキーワードで上げていく面では効果的かもしれませんが、それをSEOでやることが本当に営業効率やマーケティング効率の向上につながるのかを一旦考えてみてほしいんです。そこまで明確なターゲット選定、ターゲットの切り口が見えているのであれば、別の施策でやった方が効率的かもしれない。

コンテンツマーケティングは、狙うべき領域っていうのがどこにあるのかを整理できるものだと思います。「小さな勝ち筋」を探すために、スモールスタートで他の施策にも挑戦していき、その小さな成功と失敗を繰り返すことで、文脈が増えていく。「小さな勝ち筋」を見つけていく方がコンテンツマーケティングの価値をより発揮できるのかなと思っています。

 

村上:

市場の全体規模を捉えることと、実際に自社が利益を上げられる規模には差があって。野島さんは、その差を踏まえて勝ち筋を考えていらっしゃる。私はそこがすごく面白いなと感じます。

「大きな勝ち筋」は、いわばビジネスの主戦場。競合と正面からぶつかり合う総力戦になるかもしれませんね。一方で、「小さな勝ち筋」に目線を向けると、ショートカットみたいな感じで小さなターゲットを直接取りに行くことができる。そうしたピンポイントでニッチな層を取りにいけるというのがコンテンツマーケティングの強みだといえますね。

 

野島さん:

そうですね。自社メディアをはじめ、様々なチャネルを使い分けられるからこそできる施策。ワールドワイドウェブ(WWW)がない時代では考えられないですよね。ここはチャンスといえばチャンスだし、"Contents is King"と言われた背景はまさにここなのかなと思いますね。

 

村上:

なるほど。仰る通りですね。ただあえていえば、「小さな勝ち筋」ってROIReturn On Investment:投じた費用に対して、どれだけの利益を上げられたかを示す指標)が悪くみえてしまいがちですよね。

「オウンドメディアを通じて得られるリードやコンバージョンよりも、ウェブ広告を打った方が短期的に集客できるから、いつの間にかコンテンツを作るよりも広告管理がメインの仕事になってしまった」という担当者の方の相談をよく受けるんです。上層部が価値や目的を正しく評価してくれないと、「小さな勝ち筋」を探る施策に挑戦できないんですよね。

でも、「大きな勝ち筋」と「小さな勝ち筋」を区別できれば、違う考え方や施策が生まれてくると思うんです。なるべく少ないコストで新しい市場をどう開拓していけるか、という思考に持っていける野島さんのお話は、非常に腑に落ちるところがあります。

 

野島さん:

ありがとうございます。最初から「大きな勝ち筋」を取りに行こうとするから、全体のトラフィックやコンバージョンといった大きな数字が必要になってしまい、効率が悪くなると思うんです。一方で、「小さな勝ち筋」として、ロングテールで小さな市場をどんどん集めていけば、「大きな勝ち筋」に対抗できる程度のボリュームを獲得できると思います。

ニッチなコンテンツを上げ続けることで、ロングテールのテールの方を全部取りに行く。その積み重ねでユーザーも増やしていく。そのテールをいかに大量に獲得するかという視点で「入り口」を増産することに注力したというブランディングの事例も聞くのですが、これはまさにコンテンツマーケティングの仕組みと同じだなと。

 

村上:

ニッチであることを開き直るのも大事ですよね。数値は悪いかもしれない、でもそこにはまだ他が手をつけていない市場があるはず。だからこそ「なぜやるのか」という議論を社内でできるといいですよね。

 

オウンドメディアに潜む「ネガティブループ」から脱する方法

野島さん:

「なぜやるのか」の他にも、コンテンツマーケティングの使いどころや、コンテンツマーケティングの強み・弱みを理解できているか、ということも重要ですね。私も他社様のコンテンツマーケティング支援を行うことがあるのですが、うまくいかない場合は「ネガティブループ」に陥っているケースが多いんです。

例えば、コンテンツの発信に対してあらゆる細かなチェックが入ってしまい、一切の「遊び」が作れないような制作体制になってしまっている場合。ロジカルなコンテンツを作れていても、全体で見たときに同じようなコンテンツが横に並んでいるような状態になってしまうケースが多いんです。

 

 

1つのコンテンツのフィードバックの数や反響をデータとしてどう捉えて、オウンドメディアとしてのPDCAをどう回していくか。この部分がある程度担当者に委ねられていないと、他の打ち手に挑戦ができないんですよね。

色んな打ち手を試しながらマーケティング分析を行っていくことで、自社のユニークポイントや打ち出すべきコンセプトが見えてくると思うんです。逆に言えば、それをやらないと同じようなコンテンツや自分たちに優位性のないコンテンツが増えていき、オウンドメディアとしての効果が見込めなくなってしまう。これが「ネガティブループ」です。

 

もちろん業界にもよると思います。例えば医療系のメディアはファクトチェックが厳しいと思うので、なかなか担当者レベルでのコントロールができない場合もあると思うんです。でも、この「ネガティブループ」から脱するための工夫をしないと、効果が出ないコンテンツを作り続けるという負の連鎖に陥ってしまう。これも「ウェブマーケティングやめとけ問題」の1つだと思います。

 

村上:

なるほど。コンテンツマーケティングをやろう!と決めたら、その強み・弱みをしっかり理解していかないといけないですね。

今のお話を聞いていて思い出したのは、米国でのコンテンツマーケティングの重鎮ロバート・ローズ氏が唱える「ビルディング・オーディエンス」です。オーディエンス(ファン)を購入に導く「ムービング・オーディエンス」と、それを構築する「ビルディング・オーディエンス」それぞれを考えたバランスが大事だという論です。

ビルディング・オーディエンスには「自社のファンを増やすために、どれだけ多くの人に自社の価値を届けられるか」いうところも評価軸になっています。そこには、切り捨てられがちな「購買意欲はあるけれども準備が整っていない見込み客」でさえも、拾い上げようという視点も入ってきます。

その世界観では、もしかするとコンテンツマーケティングで獲得する市場は、これまで議論してきた「小さな勝ち筋」に限らないかもしれないですね。ファンという存在が企業にとって非常に重要だと考えれば、ファンコミュニティを育てることはビジネスにとって「大きな勝ち筋」つまり、顧客を集める主戦場だという見方になります。実際、ロバート・ローズ氏は購入検討期間が非常に長いエンタープライズ・ソフトウェア企業に在籍していたそうですが、長期的な関係構築を目的としたオウンドメディア経由で、全リードの3分の1を集めていたそうです。

 

野島さん:

確かに「小さな勝ち筋」は、ある種自分たちを正当化するための都合の良い言い方にはなっていると思うんです。本来であれば全体のオーディエンスを当てはめて、顧客体験やブランドの価値を高めていくという面でコンテンツマーケティングをもっと活用するべきだと思います。しかし、国内ではまだそこまで昇華させられていないのかもしれませんね。

コンテンツは、マーケターが生み出せる立派な「商品」

村上:

「なぜ日本と米国でコンテンツマーケティングの役割に差があるのか」。ひとつの仮説として、日本のビジネス環境に最適化された独自の組織構造や人材活用法に理由があるんじゃないかと思うことはあります。

営業部、商品開発部、経営企画部など、それぞれの部署の中にうっすら自覚していないレベルでマーケティング的業務が広がっている。中には重複する業務や相反するプロジェクトもあるが、縦割り組織に埋もれ、現場担当者は自分たちだけででできることに集中してしまいがち。さらに現場周辺に自覚的なマーケティングの実践者が少なく「そもそも論」を語る機会もない。

米国の場合は、マーケティングひと筋の人も多く(ジョブ型採用)、それなりの方々が専門的な教育を受けたり、長い現場経験を積んでいます。日本と似たような縦割りはあるにせよ、本来はどうあるべきなのか、何を目指すべきなのかという感度が明らかに高いように感じます。(米国は雇用の流動性が高いので、話が通じない会社は早々に辞めてしまえばいい、というのもあるのかもしれませんが)

本来マーケティングは扱わなければならないビジネス領域がとても広く、外的要因にも敏感にならなければいけないものなので、一度に全てを完璧にこなすのではなく、長距離走のように一定のパフォーマンスを継続して出していくことが大切だと思います。そう考えると、「そもそも論」を語りながらも現実に向き合い、組織として全体の横串を通すような動きが、マーケティング業務にも必要なのではないかと思うことが多いです。

 

野島さん:

マーケティングが縦割りの部署間でそれぞれシステム化される状況だと、KPIがサイロ化されて、「内部の関係者にウケが良く、社内チェックが通りやすい」コンテンツが生まれてしまう可能性が高くなることが問題ですよね。

営業や商品開発と一緒にコンセプトを考えて製品を作り、ユーザーを開拓していくというのもマーケティングの仕事だと思います。ですが、コンテンツマーケティングに関して言えば、ユーザーのニーズを汲み取り、顧客体験をサポートするコンテンツを作るというのもマーケティング部が提供できる価値であり、立派な「商品」だと思うんです。ユーザーにとって必要な情報を適切に届けるコンテンツを設計するというのは、サービスの一部を考えることと言っても過言ではありません。

お客様からの反響がある良いコンテンツを作るためには、やはり短いスパンでPDCAを回して調整していく必要があります。しかし、複数部署を跨ぐコンテンツ制作となると、より膨大な時間と労力がかかってしまう。制作自体は今後生成AIの活用でより容易になっていくはずですから、市場の動向や顧客ニーズを理解しているマーケターがコンテンツ施策の全体を動かしていければ、より価値のあるコンテンツ制作のサイクルにつながると思うんです。

 

村上:

そうですよね。なんとなく日本の現場批判ぽくなってしまいましたが、ぜんぜんそのつもりはなく…。逆に米国流を進めて、マーケティングオペレーション、マーケティングディレクター、インサイドセールス、コンテンツディレクター、コンテンツオペレーター、SEOディレクター、SEOエンジニア…などと分業化が進みすぎるのは、日本の現場ではデメリットもあると思います。仕事がつまらなくなってしまうんです。

マーケティングに真剣に取り組みたいというモチベーションの人が、企業全体のマーケティングやブランディングという大きな流れを把握できずに、遥か下流の「部分の仕事」を繰り返し続けることが「ウェブマーケティングやめとけ問題」の原因のひとつだと思います。

野島さんが仰る立派な「商品」としての価値あるコンテンツは、ふだんの役割を飛び越えた、様々な視点や部署横断的な能力が必要ですよね。刺激的でチャレンジングな楽しい仕事の先に、「商品」にたりえるコンテンツがあるといいなと思います。

 

価値の拠りどころを増やせ!どんと来い属人化!

村上:

低いROIに苦慮しているマーケターの方は多いと思うんですけど、施策に取り組んでいくための工夫について野島さんはどう思われますか?

 

野島さん:

「データのじかん」も厳しい時期があったので苦しむ気持ちは分かります。ただ私たちは今まで、一施策のROIの低さを認めて考え続けてきたし、可能な手段を全部使ってきました。その試行錯誤の中で、さまざまな「価値の拠りどころ」が生まれてきたと思います。

例えば、記事コンテンツで政府のとある大臣に取材をするとします。その記事がセールスリードを作れているかというと、単体かつ短期的な指標でいえばゼロで、何の価値も生まれていないかもしれない。しかし、「あの大臣と対談をした」という経験はメディアの信頼性という指標での大きな価値につながり、別の企業の代表に取材打診をする際にそのコンテンツが活きることもある。

コンテンツマーケティングの良いところは、外部環境に依存しすぎないというのもあると思うんです。自分が持つ手段に幅を持たせられるから、一つの指標で価値が出せなくても別の指標での価値を自分で生み出すことができる

 

村上:

優れたライターさんやデザイナーさんも、広い人脈の中で色んな仕事をされている方が多くて、その人脈や経験の幅が付加価値になっていたりしますよね。僕も仕事をする上で大事だなと思っているのが、「人と同じ土俵で戦わない」ということ。視野を広くというと当たり障りのない言い方になってしまいますが、見えづらい「小さな勝ち筋」を把握してそれぞれにアプローチをかけられること自体に価値があると思うんですよね。価値を横に広げていく力というか。

 

野島さん:

大事ですよね。ウェブマーケティングで言うと、相対的に見て暗黙知が少なすぎるので、優位性が減っていると思うんです。だから人と同じ土俵で戦うことになるし、精度を深めるために範囲も狭くなる。属人化できる部分が少ないというのも「ウェブマーケティングやめとけ問題」の一つかもしれないですね。

 

私個人としては、属人化したところを自分の拠りどころにしていった方が、付加価値というか相対価値は間違いなく上がっていくと思っていて。自分の領域を広げていき、知識や経験をつなぐだけで、それは自分で吸収した暗黙知になる。そうすることで、価値をより生み出していけるんじゃないかと思います。

 

村上:

属人化はチャンスでしかない!のかもしれませんね。「生成AI時代、どんと来い!属人化」がキーワードですね!

 

「ゼロイチの力」がマーケターの必須スキル。ウェブマーケティング“から入る”のはやめておけ!

村上:

最後に野島さんに聞いてみたいのが、ノン・ルーチンの仕事に取り組むマインドセットです。新しいことを始める怖さや大変さは感じませんか?

「計画のグレシャムの法則」という言葉がありますよね。「ルーチンワークは創造性を駆逐する」っていう。ルーチンワークをし続けているあまり、本来持っているクリエイティビティとか発想の柔軟さが失われてノン・ルーチンな仕事をしなくなっていく。でも野島さんがやっていることって、ほぼ全てがノン・ルーチンワークだと思うのですが。

 

野島さん:

いえいえ。正直、今はもう新しいことはやってないですよ。取材先が新しいとか、チャネルが新しいとかはもちろんあるんですけど。とはいえ、新しいことへのチャレンジは嫌いではないですね。

私は元々デザイナーをやっていたのですが、ゼロからイチを生み出す苦しみを十分味わってきたので、ものづくりのコツや力の抜きどころが感覚として身に付いているんだと思います。ここが分からないと怖さを感じるんじゃないかな。あと、ゼロからイチを生み出す苦しみを味わってきた人って、多分別の領域にいっても踏ん張りがきくんですよね。扱うツールや媒体が違ったとしても、どうにかする底力があるというか。

 

村上:

ノン・ルーチンワークがいつでもできる、クリエイティブの基礎筋力を鍛えておくのってすごく大事ですよね。

 

野島さん:

もちろんルーチンワークがダメという話ではないのですが、いきなりルーチンワークから入ってしまうと、「誰かに消費される職業」に陥ってしまう可能性はありますよね。それで言うと、先ほどから何度も挙がっている「ウェブマーケティングやめとけ問題」は、正しく言うと「ウェブマーケティング“から入る”のはやめておけ問題」なのかもしれません。

 

村上:

伏線が回収されましたね!!マーケターにも、ゼロからイチを生み出す力が必要。また、細かいスパンでPDCAを回していく企画・制作能力や、価値を転換させる視野と経験の広さ…。今日お話だけで、コンテンツマーケターに必要なスキルや考え方がたくさん上がりました。

野島さん、貴重なお話をありがとうございました!

 

 

実際、今日お話しした内容で苦労されているマーケターの方々は多いと思います。そんな悩めるマーケターの皆さんにコンテンツマーケティングの知見を発信するイベント「CONTENT MARKETING DAY 2024」を今年も開催します!ぜひ野島さんの考え方をマーケターの皆さんに共有したいなと思っておりますので、今回もどうぞよろしくお願いします!

ウィングアーク1st野島光太郎さんのセッションページはこちら

 

編集:CONTENT MARKETING ACADEMY
執筆:成瀬光