CONTENT MARKETING LAB

コンテンツマーケティングにおけるアクセス解析のお作法とは?TRENDEMON代表に聞いてみた

作成者: CML|Dec 19, 2018 12:16:00 AM

テクノロジー大国イスラエル発の解析ソリューション「TRENDEMON」(トレンデーモン)を初めて知ったのは、今年3月にラスベガスで開催されたコンテンツマーケティングイベントに参加した時だ。

同社によるデモで印象的だったのは、「コンテンツマーケティングにおいて見るべきだ」という指標が明確にあること、そのためUIや操作性も非常にシンプルになっているという点だ。

コンテンツマーケティングというからには刈り取り施策にとどまらず、時間をかけたナーチャリングが前提になる。ということは、コンバージョンへの間接効果も測るアトリビューション分析が必須だ。

TRENDEMONはそのアトリビューション分析の「大衆化」をテーマに掲げている。

コンテンツマーケティングにおけるアトリビューション分析とは何か?

来日したAvishai Sharon氏(CEO)とHalel Porat氏(COO)の二人に話を聞いた。

後列左からAvishai氏、Amiran氏(Head of Product)、Halel氏。前列左から嶋添氏(Customer Success Manager)、宇田川氏(Business Development)

質問者(三友):アトリビューション分析に重きを置いた他の解析ツールとの違いは何でしょう?

Avishai氏:「まだ世界を見渡しても、コンテンツの価値を誰でも簡単に可視化できるアトリビューション分析ツールがない」というのが私たちの課題感です。

コンテンツ施策の中でいかに決断し、成果につなげるか、という視点で作られたツールは、現状まだまだ私たちが知る限りほとんどないのではないでしょうか?他社の解析ツールは、主に広告運用での利用を念頭に置いた場合がほとんどです。

これでは、ユーザーのカスタマージャーニーを明らかにすることはできません。コンテンツマーケティングにおいては、カスタマージャーニー上の断片的な個々のタッチポイントの数値を追うだけでなく、認知から態度変容に至るまでのユーザーの購買行動の理解にまで踏み込まなくてはならない、というのが私たちの思想の根本にあります。

三友:「コンテンツ分析に特化している」という点について、もう少し具体的に教えてください。

Avishai氏:自社の統計データによると、ビジネスゴールに貢献しているコンテンツは、全体の10~15%にとどまる、という傾向がみられます。TRENDEMONであれば、この10~15%にあたるコンテンツの傾向をより簡単に知ることができます。「コンテンツの勝ちパターン」が分かれば、自ずとコンテンツ制作やプロモーションの精度も上がってきます。

Halel氏:従来の解析ツールは、主にラストセッションの分析にとどまっていました。つまりカスタマージャーニーのそれぞれのフェーズがコンバージョンにどう貢献しているのか、ということが分かりません。

Avishai氏:これまでは、コンテンツの成果を測るKPIの元となる判断指標が少ない、というのが多くのマーケターの悩みでした。

そういった中でTRENDEMONでは、「読了率」「回遊率」という2つのコンテンツエンゲージメント指標を提供しています。

さらにコンテンツによるCV貢献が、カスタマージャーニーのどのフェーズで発生したかを明らかにする「ポジショニングスコア」という指標があります。単にPVという断片的な指標にとどまらないのです。

三友:最後の刈り取り施策だけでなく、その手前のコンテンツの成果もちゃんと可視化する、というTRENDEMONの特徴を踏まえると、購買に導くまでの間に多くのコンテンツが必要になる、というケースが前提になりそうですね。そうなるとやはり認知から購買までの検討期間が長い商材、つまり検討熟度を高めるためにコンテンツの必要性が高い分野での利用が特にはまる、という印象ですがいかがでしょう?

Avishai氏:最初は私たちも自動車や金融のように、カスタマージャーニーが長くて複雑なケースでの利用を想定していました。しかし日本では消費財ブランドなどによる利用も多いです。見込客が日常的にどのようなコンテンツを求めるのか、という点に関心があるようです。

また最近のどのブランドにも共通してみられる傾向ですが、自社が日常的に接触できるオーディエンスを増やそう、という試みが増えています。

TRENDEMONによるオウンドメディアの最適化は、カスタマージャーニーが長いケースだけでなく、短いケースにも有効です。共通点は、何らかの行動を起こさせるためにコンテンツを利用している、という点です。

三友:この場合の「オウンドメディアの最適化」とは、具体的にどのような作業を指しますか?

Avishai氏:たとえばコンバージョンへのアトリビューション貢献が高いが、読了率が伸び悩んでいる、という記事があったとします。もし画像やテキストの修正などによって、読了率を改善できれば、コンバージョンへの貢献度がさらに上がることになります。

また「回遊率」も重要です。たとえばコンバージョンへの貢献度に対するポテンシャルは高いが、回遊率が低いためにそれが損なわれているコンテンツが見つかったとします。そうであれば、たとえばページの下部にコンテンツのレコメンデーション枠を設置して遷移を促す、といった策がとれるでしょう。

3つ目はパーソナライゼーションです。もしユーザーの興味関心に応じたコンテンツをリアルタイムで表示できれば、サイト内行動を促進できます。適切なコンテンツはあるが、適切なタイミングで見せられない、というサイト構造の問題を解決できるのです。

すでにこの弊社のパーソナリゼーション機能を導入されたお客様ではPVだけでも数千~数万規模で純増しており、更に、ユーザーがCVに至るまでにかかっていた平均日数をこれまでと比較して約1ヶ月近くまで短縮することに成功しています。

各コンテンツのコンバージョン率や読了率といったコンテンツ指標を一元的に閲覧できる

三友:数ある指標の中から適切なKPIを選び取る、という難しさについてはいかがでしょう。たとえばメルマガの登録数といった一般的にはエンゲージメントの高さと関連する指標ですら、最終のビジネスゴールへの貢献度は低かったという場合もあります。特定の施策にとって適切なKPIを見極めるのは簡単ではなさそうです。

Avishai氏:カスタマージャーニーと具体的なビジネスゴールの関係性を明確にするという点について、従来は多くの企業が課題を抱えていました。

一番容易な分野はECでしょう。ECであれば全てのジャーニーがデジタル化されているからです。今後テクノロジーが進化するにつれて、個々のタッチポイントとビジネスゴールの関係性を可視化することは、どんどん可能になるでしょうが、それが難しい場合はアクセス数やクリック数、シェア数といった「ソフトメトリック」に頼ることになります。しかしその場合コンテンツを見た人が購買につながったのか?という判断が難しくなります。この難易度は業界ごとのデジタル化水準によって違うでしょう。

三友:特に潜在ユーザー層を対象にした長いカスタマージャーニーの場合、適切なKPI設定のハードルは特に上がりそうです。やりがちな失敗はありますか?

Halel氏:典型的な例としては、KPIを設定してみたものの、どの指標が最も重要なのか?なぜ重要なのか?という質問に答える難しさがあるでしょう。最も知りたいのはユーザーのカスタマージャーニーは何か?その中でどのようなイベントを完了させる必要があるのか?というもの。個別のKPIを決めるのはその後です。こうしたカスタマージャーニーやKPIの最適化は時間がかかります。

Avishai氏:先程ビジネスゴールに貢献するコンテンツの割合は、全体の15%ほどだ、という話をしました。この関連でいうと、この15%に入らない不適切なコンテンツをプロモーションしてしまうという失敗もあります。

重要な点は3つ。適切なコンテンツを選ぶこと。次にそのコンテンツが集客・ナーチャリング・コンバージョンフェーズのどれなのかを見極め、適切なチャネルでオーディエンスを集めること。3つ目は適切なオーディエンスを見極めること。TRENDEMONであれば、「このユーザーグループには、このコンテンツを見せるべきだ」といった判断ができます。

三友:確かにそれらが分かれば、カスタマージャーニーが立体的に浮かび上がってきそうです。よくクライアントサイドから出るオーダーとして、サイトに流入してからコンバージョンするまでの「黄金導線」を知りたいという要望があります。簡単ではない作業なので、アクセス解析者にとっては悩みの種でもありますが、御社であればどう対応されますか?

Halel氏:数多くのクライアントと働いてきましたが、私たちもよく受けるオーダーです。そうした黄金導線は複数ある場合が多いです。

ただ黄金導線というのは、「あるユーザーが最初に記事Aを読んで、次に記事B、最後に記事Cを読む」というような出し方ではありません。カスタマージャーニーの各フェーズにおける最適なコンテンツを探す、というやり方です。

TRENDEMONの「Navigator」機能であれば、それができます。たとえば購買フェーズごとにベストなコンテンツTop5をポジショニングごとに提示する、といったものです。

三友:「黄金導線」がいくつかある場合、それらを分ける切り口はどのようになるでしょう?

Avishai氏:ユーザーの流入チャネルごとや購買ステージごと、コンバージョンごとなど複数あり得ます。

三友:いきなり確固たる「黄金導線」が見つかるというよりは、コンテンツを最適化していくうちに徐々に浮かび上がってくる、というイメージを持っています

Avishai氏:私たちの関心は、そうした導線の中において、コンテンツの潜在力を最大限に引き出すことです。たとえば優れているものの、露出が足りないコンテンツがあれば、適切な集客によってカスタマージャーニー全体を改善できる、といった具合です。

効果的なコンテンツというのは、単に購買に導くだけものでなく、エンゲージメントを高め何らかの関係性を作り出す役割も必要です。そうしてコンテンツの閲覧者と最終的な購買者の共通点を探っていくのです。その場合のゴールは、コンテンツの閲覧者に占める購買者の割合を出来る限り高めることです。

TRENDEMONではこの作業をサポートできるよう、「ATTENTIVE(高頻度接触)オーディエンス」というユーザーを識別できる機能があります。

三友:「ATTENTIVEオーディエンス」というのは、「2セッション&3ページ以上読了」という条件を満たして、エンゲージメントが高いとみなされたユーザーのことですよね

Avishai氏:そうです。事前の宿題を済ませてきたようですね(笑)。しっかりコンテンツを読んでくれているのか?次のフェーズに移ってくれているのか?といったことをつぶさに追うことで、ユーザーニーズに対するリスニングツールとしての役割を果たします。

そうして企業とユーザー間のやり取りをコミュニケーションと呼べるまでの領域に高めていくことが狙いです。単に「コンテンツは次世代の広告だ」といった集客狙いのコンテンツ施策の次元ではありません。

三友:「ATTENTIVEオーディエンス」を定義することに加えて、なぜそのユーザーがATTENTIVEになってくれたかを知ることも重要だと思いますが、どういったやり方がありますか?

Avishai氏:良い質問です。基本的にはATTENTIVEオーディエンスがどんなコンテンツを読んでいるか、その時どのチャネルから訪問したのか、といったアトリビューション的な情報をつぶさにみていきます。

アトリビューション分析によって、コンテンツとゴールの相関関係にとどまらず、因果関係に迫ることができます。アトリビューション貢献が高いコンテンツへの露出を高めると最終成果が改善する、という傾向は、私たちが発見した重大なインサイトです。

そうすれば「高エンゲージメントユーザーが好むコンテンツはこういうものだ。同じ類のコンテンツをもっと作ってプロモーションしよう」といった提案ができ、具体的なアクションにつなげることができます。そうして立てた仮説を検証するフィードバックループをまわしていくのです。

三友:TRENDEMONをうまく使いこなすうえで、こうしたPDCAを適切にまわすコツはありますか?

Avishai氏:問うべきは2つ。ATTENTIVEオーディエンス数とビジネスゴールに相関関係があるのか?どのようにATTENTIVEオーディエンスを増やすのか?です。

前者についてですが、もし「一般的なユーザーのコンバージョン率はこの数値にとどまるが、ATTENTIVEオーディエンスに限るとこんなに高い」と言えることができれば、ATTENTIVEオーディエンスに投資する意味が出てきます。

そうすれば次の問いは「どのようにATTENTIVEオーディエンスを増やすのか?」です。どのコンテンツが最もATTENTIVEオーディエンス増に貢献しているのか?さらに露出を増やすべきコンテンツはどれか?特に有効なチャネルはどれか?といった観点で分析します。やはりコンテンツとその集客チャネルをセットで分析する視点が重要です。

こうした分析で示唆を見つけるコツは、ギャップを探すことです。たとえばATTENTIVEオーディエンス増に貢献しているが、露出が足りないコンテンツがある場合などです。

三友:読了率や回遊率、コンバージョン率、アトリビューションスコアなどを一元的に確認した上で、改善の余地があるギャップを探す、というのは改善策として非常にイメージしやすいと思います。本日はありがとうございました。