前回の記事では「編集者が先輩から教わるネタ探しの方法」をご紹介しました。コンテンツはネタの種があってこそ次に展開できるわけですが、企画者が思いついたものが読者であるユーザーにとっていいコンテンツかどうかは別問題です。
ユーザーにとってのよい記事とは、自分の興味・関心とマッチしているかどうかに尽きます。今回は、いわゆる“愛されコンテンツ”、ユーザーにとってのよいコンテンツ作りのコツをお届けします。
ペルソナとは自社サービスや商品の代表的なユーザー像のことで、年齢や性別などの基本的な属性のほか、価値観やライフスタイルまでユーザーを細部までイメージできるよう描きます。
WEBメディアにペルソナが必要なのは、ユーザーが朝起きてから寝るまでの行動のどこに、自分たちのサービスと接してもらえる場所や頻度、ポイントがあるかを検討しやすくし、実際にサービスリリース後の効果測定でズレがあれば調整していくことが必要なためです。もしペルソナなしでメディアを運営されている場合は、ご検討いただくことをおすすめします。
設定するペルソナの代表的な項目は以下のとおりです。
「すでに御社にペルソナがある場合は、次へ進みましょう。ペルソナをもとにしたユーザーのライフスタイルと価値観をベースに、コンテンツの素(もと)となる情報をまとめていきます。作っておくと迷いが起こりにくいですし、困ったときに立ち返る場所として使えるのでとても便利です。リストアップするのは、まずこの3つです。
これだけだとわかりにくいので、前回記事の続きとして、設定を考えてみます。
メディアの前提
・WEBメディアの名前:「and LIFE」
・WEBメディアのテーマ:こだわりのある暮らし
・コンテンツの条件:「こだわりのある暮らし」に合うものだからこそ掲載する
*すべて架空の設定です
このメディア「and LIFE」のペルソナを作ってみました。東京都三鷹市在住・33歳・既婚・経理職正社員の女性、北欧真菜(ほくおう・まな)さんです。
イメージが湧きにくい場合は、メイクや服装がわかるイメージビジュアルを添えるとぐっと身近な人物として感じることができるようになりますので、実際にペルソナを作るときはぜひ試してみてください。
この条件でコンテンツの素をリストアップしてみます。ペルソナ用のシートは以下よりダウンロードできますので、こちらを参考に作ってみてください。
ペルソナ用シートダウンロード(Excel)
・丁寧な暮らし、ライフスタイル
・ティータイム・おやつタイム
・北欧ブランドの製品
・飾っても使っても楽しい雑貨や道具
・ちょっと手がかかるけど楽しい料理レシピ(週末用)
・散歩
・おしゃれインテリア
・在宅勤務のワークスペース(2人分)
・2人のWEB会議が重なっても困らない環境
・通勤疲れ
・家が欲しい
・子どもが欲しい
・貯金したい
・リノベしなくてもできるワークスペース作り(賃貸の場合)
・リノベ―ション(持ち家の場合)
・お茶やおやつの購入
・北欧ブランド商品の購入
・週末ならではの時間がかかるけど楽しい料理
・散歩(インテリア、雑貨のショップや街)
・自分で疲れを癒すケアをしたり、グッズを買う
・人の力を借りて疲れを癒すケアや場所へ出かける
・最新の不妊治療や検査、健康法の実施
・マンションや住宅の見学
・住宅ローン問い合わせ
・家計の見直し
・お金の増やし方の実行(投資)
簡単に挙げてみるだけでも、これだけリストアップできます。ここではスペースの都合もありますのでこの程度に留めますが、通常は思いつく限りできるだけ多く書き出します。「ちょっと変かも?」と思うような内容でも、あとで別の切り口と組み合わせて新たな視点になることもありますので、書き留めます。
リストアップしている時点で気づいた方もいらっしゃると思いますが、ここまでくると、情報がグループになって点在していますので、それらをつなげるだけでコンテンツのタイトルから展開案まで見えてきます。
1.ペルソナの暮らしに「ありそうなもの」
⇒丁寧な暮らし、ライフスタイル
2.ペルソナの「悩み」「課題」
⇒在宅勤務のワークスペース(2人分)
3.読後ペルソナにとってほしい行動
⇒リノベしなくてもできるワークスペース作り
これらをつなげるとひとつのコンテンツが作れますね。
記事タイトル
内容
丁寧な暮らしで人気のインスタグラマーのAさん・Bさん宅を取材し、ワークスペースの
様子をレポート。賃貸でもここまでできる工夫のポイントを写真とコメントで紹介。
コンテンツ自体は単発でその場限りの1本を考えるのでもよいのですが、真菜さんのペルソナを通して暮らし全体を俯瞰してみると、インテリアや雑貨だけでなく、家計の見直しや投資まで話が広がる点が面白いと思いませんか?ペルソナが必要なのは、コンテンツのディテールや幅、バリエーションを自在に増やす可能性を大きく広げるためなのです。
余談ですが、コンテンツの素を作るときに短文でのリストアップが苦手な場合、マインドマップで思いつくキーワードを端から上げていくのもひとつの手です。
前回の記事を書くとき、私が作ったマインドマップを参考に添付します。このマップでキーワードを出してから、上記の1~3の点を見つけてもくじを立て、入る項目をピックアップして文章にしました。マインドマップは「SimpleMind Pro」を使っています。
コンテンツの素を作るのに慣れるまでは少し時間がかかると思います。短文で項目のリストアップが得意な方は最初からその方法でやってみてください。そこまでアイディアが固まっていない、ペルソナから思い描ける内容が広がらない場合は、キーワードをとにかく挙げていく方法を試してみてください。
どちらのやり方も、慣れてくると「アイディア出しをしないといけないのに集中力も時間がない」というときに、頭が疲れていてもキーワードをひねり出すことがそれほど難しくなくなってくるから不思議です。ぜひお試しください。