CONTENT MARKETING LAB

アイディアが湧いてくるコンテンツの作り方_01「編集者が先輩から教わるネタ探しの方法」

作成者: CML|Oct 14, 2020 1:00:00 AM
  • 寄稿記事 株式会社Rdesign factory(アール・デザイン・ファクトリー)
    https://rdesignfactory.jp/
    代表取締役 川俣 沙織

    出版業界で実用書・タレント本・インタビュー雑誌などの編集者として働いた後、WEBディレクターへ転身。2020年にデジタルマーケティングプロデューサーとして独立。

    出版社における雑誌のWEBメディア・EC・CRM・システム構築のほか、他社メディア受託制作等を経験。コンテンツマーケティングを軸に、事業に最適化したコンテンツ制作のほか、メディアのブランディングや全体のグロース設計や戦略設計、運用オペレーションの設計や再構築を得意とする。

    「必要な情報が、必要な人に、必要なタイミングで伝わる」メディアづくりが信条。

WEBサイトを運用していると、ネタ切れで困ることが往々にしてありますよね。一年中企画を立てて記事を作る雑誌や書籍の編集者もそれは同じです。ここでの編集者とは、雑誌や書籍の販売部数を売り伸ばすために企画を立てて記事を作ったり、クライアントの商品やサービス販促のためのタイアップ記事を作ることを業務とする方を指しています。

編集者のゴールは、旬のネタ・読者の課題を日常的に探究し、自社のメディア・ブランドのカラーやニーズに合わせた記事を作り、ファンを醸成。最終ゴールは売上を伸ばすことです。オウンドメディアを運営されている方と目的やゴールは同じと言って差し支えないと思います。

さて、ここからが本題です。すべてではありませんが、通常編集部はネタ切れしにくい仕組みを伝統的に持っています。その辺りに触れながら、コンテンツ制作の現場でネタ切れしないコツを3回に分けて解説します。

もくじ

  • 編集者が最初に教わる5つの基本視点
  • ネタの種をコンテンツに育てる“異素材5展開”
  • ”異素材5展開”をもとに企画を考える
  • ネタ切れしないコンテンツ作りのコツは

編集者が最初に教わる5つの基本視点

編集者になった部員が最初に教わるのは、5つの基本視点です。同じニュースでも新聞や雑誌によって取り上げ方が違うのは、“視点”が違うためです。何かの情報に触れた際、下記5つの視点でその情報をどう料理できるか考えるところからスタートします。基本を踏まえている方は、読み飛ばしていただいて問題ありません。

ご覧いただくとおわかりのようにごくごく当たり前の内容ですが、なぜこれを挙げたかというと、この視点に含まれる「5.異素材を組み合わせる」点について深堀したいからです。

コンテンツ作りに慣れていない方のためにざっと説明したいのですが、まず「1.最新」については、情報は早ければ早いほど価値がありますので、日時や場所、最速でできる事象を扱うだけでコンテンツとして成立します。「2.わかりやすくする」「3.おもしろくする」については読んで字の通り。

「4.数を使う」のは、ひとつの情報を説明する際に「●●がわかる3つのポイント」「●●を構成する12のルール」など、数字を入れることで読み手の興味関心を高め、情報の多面性を示すことができます。ないよりあったほうが、やや心惹かれますよね。

「5.異素材を組み合わせる」のは、まさに編集らしさと言えます。最新ニュースはすでにテレビ・新聞・ネットニュースで先に報道されています。そのため、雑誌なりの視点をかけ合わせた切り口で情報を加工することで、価値をもたせているわけです。

ネタの種をコンテンツに育てる“異素材の5展開”

「5.異素材を組み合わせる」にはコツがあり、異素材と要素をかけ合わせて新しい切り口を考えます。代表的な要素となるのが、この5つです。ネタのかけ合わせによって、読み手にどのくらい驚きや発見を与えられるかが、ネタそのものを深堀りするかしないかのポイントとなります。

”異素材の5展開”をもとに企画を考える

上記をもとにコンテンツの企画を作ってみます。たとえば、WEBメディアのテーマが「こだわりのある暮らし」とします。そのメディアのコンテンツには、あまねく『「こだわりのある暮らし」に合うものだからこそ掲載する』という価値観が前提となります。いわゆる、雑誌がもつ「特徴」や「大テーマ」にあたります。

サンプルニュース:ブランドA初の新型イヤホンが発売

ニュース詳細
発売元:ブランドA(アパレル)
商品:新型イヤホン「シルキー」
特徴:業界初の片耳3gの最軽量モデル。ノイズキャンセリング機能付きマイク内蔵
色 :白
形 :筒型でブランドロゴ刻印入り
デザイナー:ブランドAのトップデザイナー鈴木氏
生産地:福井県鯖江市
*すべて架空の設定です

この新型イヤホン発売ニュースをコンテンツ化する際、メディアの特徴「こだわりのある暮らし」と“異素材の5展開”とかけ合わせ、企画の深堀りポイントを決めます。その考え方を見ていきます。素材とタイトルをまとめたのがこの図です。同じテーマでもかけあわせる素材によって展開のしかたがよくわかると思います。

かけ合わせた素材をもとに、企画の骨子を考えます。

1. 人:デザイナーにフォーカス

記事タイトル
ブランドA鈴木氏が手がけるこだわりのイヤホンとは
内容
イヤホンをデザインしたデザイナー鈴木氏にインタビュー。アパレルメーカーがイヤホンを手がけた理由、ブランドAならではのこだわり(素材・形・色)、使う方へのメッセージ。ブランドAならではのイヤホンづくりの世界観。

2. 場所:生産地にフォーカス

記事タイトル
イヤホンの名産地・鯖江市でブランドAが始めたものづくり
内容
イヤホンの名産地の今を探りながら、ブランドAが鯖江市を選んだ理由、鯖江市だからできたプロダクトの特徴を紹介。生産現場の取材を行い、現地で商品イメージカットを撮影。

3. 過去・現在・未来:ブランド全体にフォーカス

記事タイトル
ブランドAが今、鯖江メイドのイヤホン「シルキー」を作り始めた理由
内容
ブランドAの過去プロダクトを振り返りながら、今、イヤホンを作る理由、ブランドAならではの価値提供についてデザイナー鈴木氏にインタビュー。イヤホン業界の商品概況を紹介しながら、ブランドAの立ち位置を読み解き、イヤホン作りを通してブランドAが考えるこれからのブランド価値を読み解く。

4. ありえないもの:専門家とのかけあわせ

記事タイトル
イヤホンマニア山田三郎氏が極上フィット感の「シルキー」と出会った
内容
ブランドAのイメージ的にありえないイヤホンマニアの山田三郎氏をモデレーターに、ブランドAのイヤホン「シルキー」の体験レポートを行う。商品の初見の感想、1日密着取材と使い終えての感想、他のイヤホンとの違い(他社商品は出さない)などを詳細レポート。マニアならではの視点で商品のよさと仕様を丁寧に伝える。

5. 流行:「テレワーク」とかけあわせ

記事タイトル
テレワークもスタイリッシュに。イヤホン「シルキー」でWEB会議も快適
内容
テレワークでWEB会議が増える中、機能性が高いだけでなく、スタイリッシュなイヤホンとして「シルキー」を紹介。ブランドAならではのデザインの美しさ、暮らしの中で映えるイヤホンのイメージを見せながら、実用性を紹介。美しいプロダクトを使うことで、テレワークのモチベーションも上げよう、という記事に。

ネタ切れしないコンテンツ作りのコツは

なんだかタイアップ記事の企画のようになりましたが、「5.異素材を組み合わせる」企画展開のしかたはこんな感じです。

こういった展開のパターンをもっておくと、1つの情報から様々なコンテンツに昇華させていくことが自然とできるようになります。メディアの特性、ご自身の得意ジャンルとの組み合わせによって、無限に企画案を展開できるようになりますので、ネタ切れに困っている方は、一度ぜひお試しいただけたらと思います。

慣れるまでは時間がかるかもしれませんが、数をこなしていくと、わざわざ書き出さなくても自然とネタの展開案が思い浮かぶようになります。まずは、下記の手順でやってみましょう。

  • 作りたいコンテンツを5つの視点で眺め、何とかけ合わせられるかリストアップする
  • リストアップしたテーマでタイトル案を作ってみる。タイトルは最後に確定すればいいので、最初は長くてもOK。ユーザーに最も伝えたいことをまとめてみる
  • 素材とタイトルができたら、コンテンツのポイントを書いてみる
  • 1~4が実現可能か、自社メディアのブランドイメージと合っているか、自社メディアの過去記事に類似記事がないかどうか確認する
  • (必要に応じて)企画骨子を他のメンバーや上司に見せて、意見を聞く
  • リサーチを始めてコンテンツ作成に入る

ネタ切れしないコンテンツ作りのコツは、実はとてもシンプルです。1つの情報をいかに視点を変えて見られるか、その情報に何をかけ合わせたら自分たちのメディアにふさわしコンテンツになるか、という「視点の選択」にあると言えます。企画に困りましたら、ぜひこれらの基本を思い出していただき、かけ合わせてみてください。シンプルすぎる方法ですが、シンプルだからこそ、最強でもあります。