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【実践解析特集vol.2】「カスタマージャーニーマップ」に「コンテンツマップ」を追加する

作成者: CML|Aug 7, 2018 7:06:00 AM
  • 寄稿記事 本記事は、ウェブマーケティングの設計・効果測定コンサルティングサービスを提供する、and,a株式会社の取締役CAO中田吉彦氏による寄稿記事です

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ユーザーに“刺さる”コンテンツを作るには

会議の席上でコンテンツの解析が真面目に議論されるのは、コンテンツのパフォーマンスが思わしくない時です。

「訪問者数が少ない」「SEOがうまくいっていないので、検索エンジンからの流入が少ない」「コンテンツから遷移してコンバージョンするユーザーが少ない」など、犯人探しが始まります。

チーム内の誰が悪いということではなく、大抵の場合、「ユーザーに“刺さる”コンテンツが何なのかが解析できていない」という話になります。

そうして解析担当者に視線が向けられます。「このコンテンツは、ユーザーのニーズに合ったものなのか?」「解析はきちんと行われているのか?」「改善策は何なのか?」など。

前回ご説明したペルソナとカスタマージャーニーマップがきちんと設定できていれば、それらを“共通言語”として、議論することができます。

しかし、設定できていなければ、その会議の場に“共通言語”はありません。最悪の場合、担当者や外注先を変えてゼロから再スタートということになります。

このような“最初からやり直しの戦術”は、たいていの場合、実を結びません。なぜなら、またしてもペルソナとカスタマージャーニーマップがきちんと設定できていない状態から、コンテンツ制作を始めてしまうことが多いからです。

コンテンツのパフォーマンスが上がらない時のあの無力感。それを感じなくても済むように、今回も説明を進めていきましょう。

「カスタマージャーニーマップ」に「コンテンツマップ」を追加する

前回は「ペルソナ」設定から出発して、「カスタマージャーニーマップ」設定までを説明しました。

今回は図1にあるように、さらに「コンテンツマップ」を追加します。各購買プロセスで必要なコンテンツと媒体をこの枠に書いていくのです。

図1 「カスタマージャーニーマップ」と「コンテンツマップ」

ここからは、「購買プロセス」に沿って、「コンテンツマップ」を作っていきます。「購買プロセス」とは、図2にあるように、「認知」から「購買」に至るプロセスのことです。

図2 購買プロセス

今回はデジタルマーケティングツールの購買プロセスを例に、コンテンツマップを作っていきます。

例として取り上げるのは、Ptengineというヒートマップツールです。このツールをウェブサイトに導入すると、ユーザーが「どこまで読んだか」「どこを熟読したか」「どこをクリックしたか」が解析できます(図3)。

図3 ユーザーがウェブページの「どこまで読んだか」「どこを熟読したか」「どこをクリックしたか」が解析できるツール「Ptengine」のレポート画面

コンテンツマップ、つまり必要なコンテンツと媒体・フォーマットの組み合わせを考えるにあたって、重要になる項目が「情報ニーズ」です。

まずは購買プロセスのスタート地点、「認知」から見てみましょう。

前回設定した「カスタマージャーニーマップ」の「認知」フェーズにおける「情報ニーズ」を見ると、「ヒートマップツールはPtengine以外に何があるのか?」と記載されています(図4)。

図4 「認知」段階における「情報ニーズ」の例

これが、「認知」段階における「情報ニーズ」の例です。

「ヒートマップツールはPtengine以外に何があるのか?」という「情報ニーズ」に対しては、「目的別 ヒートマップツールの選び方」といった商品種類の紹介コンテンツをウェブサイトやブログで発信するのが効果的です。

「コンテンツ」と「媒体・フォーマット」が決まったら、図5にあるように、「コンテンツマップ」に記入します。

図5 「認知」段階における「コンテンツ」「媒体・フォーマット」の例

次は「認知」に続く購買プロセス、「情報収集」フェーズの情報ニーズです。

ここでは、「どうやって選んだらよいのだろう」「導入に際しての社内からの質問にも回答しなくてはならない」という情報が記載されています。これらの「情報ニーズ」に対しては、「導入後に後悔しないヒートマップツール選びチェックリスト」「導入FAQ」の2つのコンテンツをウェブサイトで発信するのが効果的です。「導入FAQ」の内容が充実していれば、「導入に際しての社内からの質問にも回答しなくてはならない」という「情報ニーズ」にも対応できるはずです。

これらの内容を「コンテンツマップ」に記入すると、図6のようになります。

図6 「情報収集」段階における「コンテンツ」「媒体・フォーマット」の例

ここからは、「購買プロセス」の後半戦です。

「情報収集」の次の購買プロセスである「比較検討」フェーズの情報ニーズは、「ヒートマップを活用したサイト改善の事例集ってあるのかな?」というものです。この「情報ニーズ」に対しては、「導入企業インタビュー」が有効です。全文をウェブサイトで公開するのもよいのですが、第一段落のみウェブで公開し、全文はPDFで提供。そのPDFファイルのダウンロードにはメルアド等の入力が必要という風にすれば、リードを獲得できます。

これらの内容を「コンテンツマップ」に記入すると、図7のようになります。

図7 「比較検討」段階における「コンテンツ」「媒体・フォーマット」の例

「比較検討」の次の「購買プロセス」は、最終段階の「購入」です。情報ニーズは、「設定、操作は分かりやすいのかな?」「サポートの対応スピードは速いのかな?」というものです。

これらの「情報ニーズ」に対しては、「操作・設定ガイド」「導入ユーザーの声」(サポートが充実していることが分かる内容)が有効でしょう。

「操作・設定ガイド」は、動画で確認したい人もいれば、じっくり読みたい人や必要な箇所だけ確認したい人もいるので、動画とウェブコテンツ、両方用意しておきたいところです。

「導入ユーザーの声」はウェブで公開します。これらの内容を「コンテンツマップ」に記入すると、図8のようになります。

図8 「購買」段階における「コンテンツ」「媒体・フォーマット」の例

以上で、「購買プロセス」の4つの段階それぞれの「コンテンツ」「媒体・フォーマット」が設定できました。これで、「なぜこのコンテンツが必要なのか?」という問いにロジカルに答えられるようになります。

適切なメディアの選定

コンテンツを配信する際には、コンテンツの役割に適したメディアやフォーマットを選ぶ必要があります。

参考までに、Smart Insights社による分類を見てみましょう。

同社は、コンテンツの役割を4象限に分けて、それぞれの位置づけに適した26項目のメディアやフォーマットを”Content Marketing Matrix”(英語)として紹介しています(注)。日本語の解説は、前出の『Webコンテンツマーケティング サイトを成功に導く現場の教科書』P44-45にあります。

(注)英語Smart-Insights-Content-Marketing-matrix

図9 Smart Insights社のコンテンツマトリクス
出所『Webコンテンツマーケティング サイトを成功に導く現場の教科書』P44
(書籍に掲載されている図とはデザインが異なります)

縦軸の見方:上にいくほど情緒的伝達、下に行くほど論理的伝達に適している。

横軸の見方:左から右に向かって、認知から購買に至る購買プロセスを表している。

図9のそれぞれの項目の解説は下記の一覧にある通りです。たとえば先述の「目的別 ヒートマップツールの選び方」というコンテンツは9番の「ガイド(GUIDES)」に分類されるものです。

図10 メディアフォーマットの種類
出所『Webコンテンツマーケティング サイトを成功に導く現場の教科書』P44

番号 項目名 説明
1 バイラル(VIRAL) 面白い動画を作成して、バズることを狙う手法。
2 クイズ(QUIZZES) クイズで認知を図る方法。商品名を覚えてもらうときなどに有効。
3 動画(VIDEO) 動画を用意して自社サイトやYouTubeなどの動画サイトにアップして認知を図る方法。
4 コンテンスト(COMPETITIONS) 写真コンテストなど、ユーザーに作品を応募してもらう方法。
5 ゲーム(GAMES) たとえば自動車会社が車のレースゲームを用意するなど、ゲームを通して認知を図る方法。
6 記事(ARTICLES) ブログなどを利用して、トピックスに基づいた記事を配信する手法。
7 電子書籍(EBOOKS) PDFなどで電子書籍を配信する方法。実際にアマゾンなどで販売あるいは配信する手法もある。
8 インフォグラフィック(INFOGRAPHICS) 複雑な情報を一目でわかるビジュアルで表現したインフォグラフィックを利用して配信する手法。
9 ガイド(GUIDES) 買い方ガイド、選び方ガイドなどのガイドを用意して認知を図る手法。
10 プレスリリース(PRESS RELEASES) プレスリリースを配信する手法。
11 トレンド情報(TRENDS) 業界動向、流行の兆しなど、今後のトレンドについての情報をまとめ認知を図る方法。
12 ウィジェット(WIDGETS) PCやスマホ用のウィジェットを配布して認知を図る方法。
13 メール配信(ENEWS) 商品や業界の最新ニュースを登録したユーザーにメールで配信する手法。
14 デモビデオ(DEMO VIDEO) 商品の使い方などを説明したデモビデオを配信する手法。
15 レポート、ホワイトペーパー(REPORTS & WHITEPAPERS) 業界動向や今後のトレンドをまとめたレポートやホワイトペーパーを配信する手法。
16 有名人による推奨(CELEBRITY ENDORSMENTS) 有名人に商品やサービスの推奨をしてもらう手法。
17 コミュニティフォーラム(COMMUNITY FORUMS) 商品ユーザー、同じ業界ユーザーなどのテーマ別にコミュニティを作り、ユーザー間での情報共有を活性化させる手法。
18 評価記事(REVIEWS) ユーザーあるいは専門家に、商品を使用した感想などを評価記事として書いてもらい配信する手法。
19 イベント(EVENTS) イベントを開催する手法。
20 評価(RATINGS) 商品やサービスについて、ランク付けしてもらう手法。
21 インタラクティブデモ(INTERACTIVE DEMO) 一方的にデモ映像を流すのではなく、ユーザーが実体験できるようなインタラクティブデモを使う手法。
22 商品特長(PRODUCT FEATURES) 商品やサービスに関する特長をまとめた情報を用意する手法。
23 ケーススタディ(CASE STUDIES) 導入事例、納入事例などを用意する手法。
24 チェックリスト(CHECKLIST) 商品選び時の確認ポイントなど、チェックリスト方式で情報提供を行う手法。
25 価格表(PRICE LIST) 価格表を用意する手法。
26 計算機(CALCULATIONS) 仕様やオプションによって最終的な価格が大きく異なる場合に計算機やシミュレーター、早見表などを提供する手法。

どのメディアにどのフォーマットで配信するか迷った時などに参考になるでしょう。

「ペルソナ」設定から出発して、「カスタマージャーニーマップ」「コンテンツマップ」の設定へと進めば、「なぜわが社はこのコンテンツを制作したのか?」が分からなくなることはありません。

「なぜそのコンテンツを作ったのか?」をロジカルに説明できなければ、その「コンテンツをどう解析すべきか」を決めることもできません。

「どんな指標を見ればいいのか?」「その指標がどうなれば、コンテンツマーケティングは成功なのか?」。これらの問いに答えるためには、今回行った「コンテンツマップ」設定が必要なのです。

次回は、今回設定した「コンテンツマップ」に追加する2つの要素、「CTA(Call to Action)の設定」「KPI(重要評価指標)の設定」について解説します。