楽天市場のオウンドメディア「ソレドコ」を運営する楽天株式会社の越井氏とコンテンツマーケティングを支援する株式会社はてなの磯和氏による対談レポートになります。
2015年に開始した「ソレドコ」の立ち上げから運営、KPI設計などの戦略や取り組みの成果について、対談形式で展開されました。
「ソレドコ」は開設当初は「それどこで買ったの?」というメディア名でスタートし、「買い物」にフォーカスした記事を提供していました。そして、現在は沼にはまるかのように、何かに夢中になっている人たちの、沼を集めた「沼」メディアとして、エッジの効いた内容やSNSで話題になる記事を提供しています。
冒頭、磯和氏から『オウンドメディアの目的は、ブランディング、リクルーティング、送客・集客など、企業の目的によって多様である』という前提から対談はスタートしました。
はじめに、越井氏は『楽天市場の外にいるユーザーへのアプローチが課題だった』と、2015年当時を振り返った。当時の楽天市場は、『セールやクーポン等の施策で楽天市場内において販売促進する仕組みは整っていたが、楽天市場外からの集客において以下の2つの課題を抱えていた』と説明。
この課題を解決するために、以下のように言語化したという。
<課題>
楽天市場に興味・関心がないユーザーにアプローチして、「楽天市場でお買い物をしたい」と思ってもらいたい
<仮説>
オウンドメディアでユーザーに価値ある情報を継続的に提供することでメディアのファンになり、結果として楽天市場の利用意欲が向上するのでは?
<目的>
楽天非会員(特に若年層)ユーザーへのリーチとエンゲージメント
その上で、越井氏は戦略については、
とフェーズを3つに区分して、目的を設定したという。
このパートでは、目的をフェーズで区分することで、ハードルをいきなり高く設定するのではなく、「まずは話題性のある記事をたくさんつくる」という記事制作に集中すること。さらに、費用対効果を「3年間」に設定して社内コンセンサスを取ったことで、トライ&エラーがしやすい環境をつくったことが語られた。
次に編集方針として、以下の3つについて紹介された。
「ソレドコ」の目的やポリシー、運用ルールをまとめた「ガイドライン」の作成は、チームメンバーの合意形成に有効だったという。
このガイドラインに準じて制作された「ソレドコ」の最初の記事 は、これまでの楽天市場のコンテンツとは大きく印象の異なる内容であった。
『マーケティング(販促)色を出さないこと、コト消費を優先にすること、として単純に商品を訴求するものではない』といったポリシーやルールに沿った結果生まれた記事であり、「ソレドコ」がリーチしたいユーザーに訴求するためには、これまでとは違ったアプローチが必要であることを説明した。
また、「ポリシーに反さない限り、書き手の表現の自由を尊重する」という点も「ソレドコ」では大切にしているという。
「ソレドコ」の編集チームは、楽天市場とはてな編集部によって構成されている、
楽天から主担当1名(記事確認、効果測定、SNS運用など)とサブ担当2名。「ソレドコ」の記事制作を担当するはてなから営業、ディレクター、編集責任者の3名に加えて、企画ごとにはてなの編集者が関わる。
また、企画は、
というスケジュールで企画会議からリリースまでを進行している。
特に、シーズントレンドは楽天市場にとっては重要で、以下の記事(https://srdk.rakuten.jp/entry/2017/12/20/110000)は11~12月のクリスマスシーズンに売れるカニに関する記事で、トレンドを意識した企画で話題性が生まれると反響が大きいという。
次に、その戦略や方針・体制で進めてきた、楽天×はてなのオウンドメディア運営の成果について、磯和氏より以下に関する成果が紹介された。
この成果に対して、越井氏は『記事の本数が増えてアーカイブされていくことで、自然検索やSEOは上がっていった。つまり、コンテンツは資産になっていくことをそこで発見できた。』と数字以外に重要な成果があることに気づいたという。
さらに、フェーズ3の目的に設定した「ブランド認知」については、ブランドリフト調査を実施。
「楽天市場をおすすめしたいか?」という質問に対して、「ソレドコ」の記事非接触者より記事接触ユーザー、さらにはてなブックマークやTwitterなどのソーシャルメディアでアクションしたユーザーの方がおすすめしたい度が高くなった成果を紹介。
定性面においても、楽天市場に対してのポジティブなコメントが増加し、オウンドメディア「ソレドコ」の記事が楽天市場のブランディングやファン獲得にプラスの効果を上げていることを証明した。
最後に、今後の「ソレドコ」の目指す方向性について両氏の考えを聞いた。
まず、越井氏は、WEBメディア「デイリーポータルZ」との取り組みを紹介し、『企業・オウンドメディアとのコラボ推進で、ユーザーにより価値を提供したい』という。
自分たちのノウハウやアイデアだけでなく、外部とのコラボにより新しい価値が生まれるのではないか?という部分で、一緒に取り組みをしてくれる企業やオウンドメディアを探しているという。
一方、CMS「はてなブログMedia」の提供やコンテンツ制作を通じて「ソレドコ」のコンテンツマーケティングを支援するはてなの磯和氏は、『オウンドメディアを成功に導くために、CMSの機能を充実させていくとともに、コンテンツの成果の見える化を仕組みでサポートしたい』という。
例えば、はてなのCMSが連携している外部計測ツール(アトリビューション解析ツール)を活用して、記事がどのように読まれているのか、コンバージョンに貢献できたかなどを見える化することなどである、と仕組みづくりを進めていくという内容で、対談を締め括った。