2000年頃から始まったインターネットの普及に伴い、誰でも気軽に情報にアクセスすることが可能になり、また情報を公開することが容易となりました。スマートフォン、タブレット、一人が一台のパソコンを持ち常時ネットワークにアクセスし、常に何かしらの情報を知ろうとしています。
消費者がそのような行動を増やす一方、多くの企業、特にB2Bの企業の多くはその流れに取り残され、とりあえずウェブサイトは持っているものの、インターネット黎明期からのマーケティング手法を維持し、過去の遺物とも言えるようなウェブサイトに情報を”設置”している状態が多くあります。
この様な企業はこの先、潜在見込み客や顧客に見つけてもらうことがますます難しくなり、売り上げが減少して行くことが予想されます。特に、インターネットで情報を探すという行為が一般化し、この傾向はさらに強まるためその傾向は加速して行くと考えられます。
今回のブログでは、なぜウェブサイトを用いたマーケティングが重要なのか、なぜウェブサイトを用いて潜在見込み客を獲得するということが重要なのかをお伝えさせていただきます。
総務省が行なった研究による、流通情報量と、消費情報量を示したグラフです。
(参照元:我が国の情報通信市場の実態と情報流通量の計量に関する調査研究結果(平成21年度)-情報流通インデックスの軽量-)
このグラフは、左が流通情報量の変化を示し(単位:ビット)、電話網での音声データ、インターネットでのブログ記事などのデータ、放送電波、書籍の販売量などを含み、オンラインとオフライン情報を総計したものです。右のグラフが消費情報の消費量推移を示すものです。
インターネット流通情報量が爆発的に増える一方で、消費情報量には推移が穏やかで、平成21年度のインターネットの流通情報量の7163ビットに対して、消費情報量240ビットと、流通量が消費量を圧倒し、消費しきれない情報がインターネット上に多く存在していることがわかります(平成13年を100としている)。
このように飽食のような状態のインターネット上では、自身が新鮮な情報をインターネット上に出し、その情報を見つけてもらわない限り、潜在見込み客や顧客などがウェブサイトに訪問してくることはありません。
インターネット黎明期である平成初期にウェブサイトを作った企業は、情報をウェブサイトに設置しただけの状態が多く見られます。これは、ビュッフェで次から次へと新しい料理が運ばれて来るのに、時間が経過しても一切料理を入れ替えずに、料理が食されるのを待っているような状態です。そのような状況では、おそらく誰にも見向きをされないでしょう。
そのような状況がなぜ起こってしまうのでしょうか。また、なぜB2B企業で特にそのような事態が起こってしまうのでしょうか。
なぜ、このようなことが起きてしったのでしょうか。簡単に日本の産業の発展と照らし合わせるとわかりやすいかもしれません。
戦後日本の産業構造は製造業(今でいうB2Bを中心とした産業)が牽引して来ました。戦後焼け野原になり、国策としても”ものづくり”をしないと経済成長が見込めず、消費者も”もの”のを買わないと生きて行くことが難しい時代でした。
旧帝国軍の優秀な技術者たちが軍の解体により製造業に流れ始めることから急速に日本の製造業は発展を始めます。そして、財閥解体とともに系列化した製造業に下支えされたインフラの充実により、その発展したインフラの恩恵を受けながらB2C企業が急速に世界を席巻していくことになりました。例えば、その代表的なのがSONYのウォークマンなどです。
時間とともに日本の製造業も海外との取引を増やしていくものの、発展途上国が安価な競合製品を作り始めたことにより日本のB2C企業が次第に競争力を失います。結果として、B2Cを下支えしているB2B企業にも影を落とし始めました(下図の赤線)。
上記の様に、戦後の日本の製造業は、作れば売れ、売り上げが成り立つ、という経済背景があったため、系列化した日本の製造業などのB2B企業は、引き合い営業に依存した営業サイクルを長年繰り返していました。引き合い営業や、元請けや下請けの構造に慣れしまった結果、”ど”新規を探さなくても仕事が上流などからおりてくることが当然のこととなってしまいます。
しかし、B2Bと一蓮托生であった消費者の消費行動に支えられるB2Cが勢いをなくしたため、B2B企業も当然のように仕事が減り、”ど”新規を探さなくてはいけない必要性が高まります。特に、商流の下流、弱い立場にいる下請けを行う製造業は”ど”新規を探さなくては死活問題となってしまいました。
この様なサイクルを繰り返しているため、自社の存在を世間に見つけてもらわなくても生きていけるB2B企業がほとんどでした。そのため、ウェブサイトなどを制作してもメンテナンスや更新などの必要性が低かったのです。
この様な背景がありながら、多くの企業は”ど”新規を開拓のすべを持っていませんでした。必要でなかったのでそのすべを持つ必要がなかったためです。つまり、引き合い営業に重点を置いた営業部を持っていたため、新規顧客開拓のための流れ”マーケティング”の術を持ち合わせていなかったということです。
その様に製造業などのB2B企業が弱体化し、従来の営業スタイルが潜在見込み客や新規顧客開拓に向かない一方で、消費者は溢れるインターネット上の情報を探す術をスマートフォン、タブレット、パソコン用いて常に情報を探しています。ちなみに、Googleの検索回数は、1秒間に約57,000回行われています(参照ページはこちら:in 1 second, each and every second, there are….)。
その膨大な検索回数と情報があるにもかかわらず、インターネット上に設置した自社の情報にアクセスが少ないのは何故なのでしょうか。
こちらは現代の消費者がどのような購買の行動をするかを示したZMOTと言うGoogleが唱えた概念です。P&Gが唱えたFMOT(First Moment of Truth)が元になっています(関連記事はこちら:【インタビュー】Robert Rose氏に聞く(4)「ZMOTとコンテンツマーケティング」)。
何かの瞬間にStimulus”刺激”を受けた購買者が、インターネットに接続し関連する情報を探し始める瞬間をZMOT、その後FMOT(First Moment of Truth)購買の瞬間を迎え、最終的にSMOT(Second Moment of Truth)により体験をします。
上記の図は、オンラインオフライン関係なく、どの様に購買者が態度変容を起こすかを3つの段階に分けて解説をした図です。左から、認知段階、検討段階、決断段階、と購買者の態度変容に沿って表記されています。
この様な購買者の態度と心理状態に合わせて企業は、マーケティングを行う必要があります。特に、インターネットで情報を探す現在の購買者に対しては、ウェブを用いてこの様な流れに沿ったマーケティングを行う必要があります。
そこで多くのB2B企業が陥ってしまっている状態が、冒頭でも述べたウェブサイトが製品カタログのような状態になってしまっているケースです。つまり、この購買者の態度変容でいうところの決断段階の人向けのマーケティング施策になってしまっているということです。
これは、まさに引き合い営業で行なっていたことをウェブサイト上で行なっていることと全く同じです。自社の会社名製品名を知っている人たちに対して、「この様な新製品ラインアップですが、いかがでしょうか?こちらから該当の商品を選んでいただけますか?」と聞いている状態と変わりません。
つまり、自社の企業名や製品名を知らない”ど”新規向けのウェブサイトを用いたマーケティングではない、ということです。”ど”新規顧客を獲得するには、自社の会社名や製品名を知らない潜在見込み客に自社を見つけてもらわないといけないということです。
この重要性は特にB2B企業に対して高まります。B2C、特に消費材系の製品は、対象となる潜在見込み客層のボリュームがB2Bの潜在見込み客層と比較して圧倒的に多いです。また、オンラインの広告や、雑誌など自社の製品サービスを露出させるための広告出向先が数多く存在します。
しかし残念なことに、B2Bでロボットアームを製造している企業が消費材系の製品を提供している企業と同じ様に、雑誌へ広告を出稿したり、オンラインの広告を出稿しても効果はないでしょう。
それだけに、B2B企業は特に自社努力により”ど”新規に”見つけてもらう”努力をしなくてはいけないということなのです。
このブログ記事を読んでくださっているご自身の一日を振り返ってみてください。どの様な情報をウェブサイトから得ましたか?おそらく動画や、文章で構成された情報ではないでしょうか。ソーシャルメディアや、自身のメール受信箱に届いた興味のある情報(コンテンツ)に数え切れない回数触れていると思います。
自社の製品サービスをより多くの潜在見込み客に知ってもらうためには、読者のあなたご自身が毎日触れている情報(コンテンツ)を提供している企業が世の中に存在している様に、ご自身も情報(コンテンツ)を用いたマーケティングを「Like a Publisher」 という視点で行っていかないといけません。
次回の記事では、ウェブサイトを用いたマーケティングを行う際になぜ情報(コンテンツ)が重要なのかをお伝えします。