さて第3回は、求人サイト[日本仕事百貨]です。
今回、取材のお願いに応えてくれたのは、株式会社シゴトビトの長島遼大さんです。
ご協力いただき、ありがとうございます。
[日本仕事百貨]は多くの商品を取り扱う百貨店のようで、いきいきと働く素敵な人たちのインタビューが掲載されているメディアですが、一つ一つの記事を読んでいくとあることに気づきます。
「ここって、求人サイトだったんだ!」
インタビュー記事を読み進めていき、記事末にさしかかると、「求人」の募集要項などが並んでいることで求人のための記事だったことに気づくのです。
もちろん、最初から仕事を探すことが目的で、検索してたどり着いたという人も多いと思います。
不安や焦りを抱えた求職者がいたとしたら、そんな緊張感をも解きほぐす「穏やか」で「落ち着いた」トーンのページデザイン。それがまるでカフェで休憩でもしているかのような気にさせる、他に類を見ない求人サイトなのです。
この[日本仕事百貨]の前身は、2008年にスタートした「東京仕事百貨」。当初は東京近郊の仕事を中心に扱っていましたが、「働くこと」「生き方」「仕事の選択肢」をより広く伝えるため、全国へと視野を広げ、[日本仕事百貨]として2012年にリニューアルしたのだそうです。
立ち上げ当初から一貫していた「生きるように働きたい人のために情報を伝える」という芯があるところが、単なる求人サイトではない所以だと感じます。
求人メディアというと「求人広告を出しませんか」と営業をかけるのが一般的な「きっかけ」です。
ところが[日本仕事百貨]では「求人」を出すことへの営業はしていないというから驚きです。
「ありがたいことに営業は一切しておらず、ご紹介だったり、リピーターの企業が主だったところです。私の役割は、その求人の最初の窓口なんです。お問い合わせがあった会社さんと1時間ぐらいオンラインでお話させてもらうところから始めます」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
求人広告枠内に入る募集要項などを聞くのが一般的ですが、[日本仕事百貨]では全く違う考え方で打ち合わせが進みます。
「そもそも、その会社さんの課題って求人なのか、というようなことから入って、『じゃあ、求人であれば、どういったところを伝えられると良いかな』とか『どういった人にお話(インタビュー)を聞けると良さそうか』というのを必ずヒアリングさせてもらいます。逆に『こういったことを記事で伝えておかないと入社後のギャップになりますよね』ということも確認し合います」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
求人記事で取り上げたり、募集をする職種は幅広く多種多様です。
「大手の求人媒体で、一般的な年収や条件を並べても埋もれてしまうけれど、日本仕事百貨では自分たちの価値を伝えることができると言ってくれる方々は多いです。例えば、働き方に特徴があったり、一つのプロダクトをとても丁寧に作っているようなお仕事ですね。だから、『ひとに対しての考え方』や『伝えたいことがキチンとある』会社さんや自治体さんが求人記事を出したいと言ってくれるのだと思います」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
求人広告というと、企業側としてはどうしても「キレイに見せたい」のが心情です。
ところが、長島さんは「良いことはもちろんですが、課題だったり、大変なことも伝えてもらう」ようにしているそうです。
「クライアント側がネガティブに思っていることなど、そこまで出してみることによってファンが生まれたりもします。実はそこが一番知りたい情報でもあったりするので、キレイに作っちゃうと良い部分だけ見せることになる。求職者にとってどういう伝え方が必要なのか…求職者目線がすごく大切だと思います」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
例えば、これらの記事のサムネを見た時にちょっと驚きました。
※本来、この2つの記事は隣合わせには並んではおりません
この会社は株式会社ウダツといい、リノベーション物件の再販会社。
記事の後編はコチラです。
一般的に考えて、求人広告に「うちの会社はあと10年で閉業しますよ」とわざわざ書く企業は少ないと思いますが、とても良心的であり、その潔さに個人的にファンになっちゃうぐらいとても興味深く、今後の10年見届けたくなりました。ステキな会社です。
では、「求職者目線」というのは具体的にどういうことでしょう。
「自分自身が過去に転職活動をした時に感じたことなんですが。企業側としては[職種][経験年数][年収]などでふるいにかけるしかない現状があって、仕事を探す人も転職を考えているタイミングってどちらかというと自分に自信がなく、過小評価している人も多いと思うんです。それは相互にとって良いマッチングになってないな、と気づいたんですよ」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
一方で、企業側としても「未経験でも育てたい」「人柄を見たい」と伝えたいと思っていてもなかなか求職者と繋がっていかないのが歯がゆいところです。
「[日本仕事百貨]の求人記事として大事にしていることは、まるで取材している人の横に立って話を聞いているかのような読み物であること。働いている人たち(取材対象者)それぞれがどんな想いで、どんなふうに働いているか伝えること。一番大切なのは『ここで働いている自分がイメージできるか』どうかだと思うんです。募集要項にある職種や年収だけでは伝わらない、つかめない人たちに対して『届く』といいなと思って記事を作っています」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
「求職者目線」は、「記事を探す」際の、記事・求人のカテゴライズの仕方にも表れています。
形式的なスタイルや数値ではなく、その本人に合った選び方が大切。
「それに加えて『日本仕事百貨』が大切にしていることは、『自分でも知らないような仕事との偶然の出会い』というのもあります。『その人に合った』というマッチングより『その人が知らないような仕事や生き方に出会ってほしい』という気持ちもありますね」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
もちろん、多くの人に読んでほしいという気持ちはあっても、明確なKPIは設定しておらず、PV数や「バズる」ことからも一線を画している[日本仕事百貨]。
「本当の理想を言えば、『一つの会社(仕事)に、一人が出会えれば』『その人が豊かに働くことができれば』…それが目指しているところだったりするので、一般的なオウンドメディアとは真逆にあるかもしれませんね」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
ここは本当に、「人が集まる」「また来たくなる」「居心地の良い」メディアなんだと感じます。
個人的な経験から言うと、求人広告を漁るように見ている時期って心がどんどんすり減っている感覚があります。どの求人もライバルが多く、強烈な競争社会を感じますし、大卒ではない自分が生き残れるワケがないとネガティブなことしか考えられなくなるものです。
「転職活動によってすり減るのではなく、生き方の選択肢が増えたり、考え方が広がったりと、『未来をつくっていきたい』という想いを大事にしてやっているところもあります」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
そんな想いが一つ一つの求人記事からにじみ出ています。
記事を制作した担当者(取材者)が「入社した後に、ご様子をうかがう」という窓口になったりもしているようです。他の求人メディアではなかなか聞かないケアです。
求人の募集期間は原則2週間。ですが、記事は削除されずにずっと残ります。
「転職サイトって、転職できたら多分もう見ないと思うんですが[日本仕事百貨]って転職後も引き続き読んでくれている人が多いんです。また、そもそも転職を考えていない人も読んでくれていて、『御守り』的に思ってくれる人がいて嬉しかったですね」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
求人メディアである[日本仕事百貨]のターゲットは「転職する人だけのものではない」のです。それは予想外でした。
募集期間が終わってしまった求人記事でも、後から記事を読んで興味を持つ人がいます。
「[日本仕事百貨]では、その企業の募集期間が過ぎた後、次にまた求人記事を掲載する時に『掲載したタイミングで連絡をします』といった再募集の通知を送るという機能があるので登録してもらえれば気づけるといった仕組みもあるんです」(株式会社シゴトビト 長島遼大さん)
もし、自分が20代で[日本仕事百貨]の記事を読んだとしたら、記事末の求人広告に吸い込まれるように応募していると思います。絶対に!
それほど魅力的な求人メディアです。
これからも[日本仕事百貨]のやさしくて、丁寧な記事づくりに大いに期待しています。
執筆:魚住 陽向
編集:Content Marketing Academy 村上 健太